京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉京都百名山シリーズNo.23 八ヶ峰

平成29年5月27日(土)

 

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写真1: 八ヶ峰山頂にて

 

八ヶ峰(800m)は若丹国境尾根にある展望の良い山。新緑の山毛欅林は清々しく気持ちの良い尾根が続く。八ヶ峰からオバタケダン(729m)に到る国境尾根を歩き主会縦走を行った。

 

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【メンバー】 山本浩史L(車)、中尾論、土井司                                                                         計3名

【行  程】 桂川7:00=8:33八原・笠谷橋8:42~9:28知井坂峠~9:42八ヶ峰9:53~知井坂峠10:06~10:30 P772~11:14 P721~11:28 P720 11:51~12:18送電鉄塔~12:42オバタケダン12:55~13:17タケガタン~14:05前谷尾根取付=15:02八原・笠谷橋15:06=15:15自然文化村河鹿荘16:10=園部IC=(京都縦貫道)=沓掛IC=17:23桂川

【登山データ】 晴れ 歩行15.7㎞ 6時間20分 延登高1,075m 延下降1,075m 3座登頂

 

八ヶ峰の登山口は麓の案内板に3ヶ所案内があり、五波峠、名田庄染ヶ谷の家族旅行村、そしてここ知見八原の笠谷橋の傍らからの登ることができる。案内板には登山道途中にスキー場跡の表示があり、こんな山中に嘗てスキー場があったことに驚かされた。しっかりした登山道を歩き高度を200m程上げると水場があり、傍らにはクリンソウが咲いていた。ギンリョウソウもあちこちに顔を出し、イワカガミの葉が光沢を持って敷き詰めたようになっていたがもう花期を過ぎ花を見ることはできなかった。

スキー場跡と思しき緩傾斜と潰れた小屋を見て登り詰めると知井坂峠(712m)に到った。2.5万図には単に「知井坂」とだけ記され峠を現すよりも其処に到る「道」のことを示しているようだ。嘗ては峠の道沿いだったのだろうが峠が洗堀で掘り下がったためか、稜線の高い所にお地蔵さんがあった。赤い前掛けを付けてもらい今も旅人の安全を守っているのだろう。広い林道跡を東に進むと登山道が右に分岐し稜線に乗り上った。送電鉄塔を過ぎると登山口から丁度1時間で八ヶ峰(800m)山頂に達した。2等三角点「八ヶ峰」が設置され、青葉山(693m)を始め北から東方向の展望が得られた。休憩していると五波峠方向から男性が一人登ってきた。挨拶を交わし知井坂峠に戻るがピストンを避け堂本方面への道を少し下り直下を巻く林道を経由して峠に戻った。

若丹国境稜線に乗り出し北西へと進んだ。オバタケダンまで行くがそれは遥か先だ。若丹国境稜線は山毛欅の新緑が美しく、下草のない稜線は清々しく気持ちよく歩ける。途中に山名のある山はなく、2.5万図に打たれた標高点がチェックポイントで地形の変化を辿り常に現在地を把握して進んだ。先ずはP772で山名があっても良さそうなピークで展望も少し得られた。次はP721で大畠谷川支流の源頭を大きく回り込むようにして進んだ。P721は展望もなく通過した。稜線から始まる谷の源頭部は夫々いい感じにRを描き鹿の遊び場のように緩やかに始まる感じのよさだった。

そろそろ昼食にしたいがオバタケダンまで行くのは難しく、P720の展望の利かない山頂で昼食を取った。朝は晴れていたが寒気が入っているようで雲が多くなってきた。じっとしていると寒さを感じ20分程の休憩で先に進んだ。送電線が頭上を越え稜線には送電鉄塔が建っていた。切り開かれて展望が利き、これから行くオバタケダンやタケガタンを見ることができた。地形が複雑に変化し国境稜線が90°左に曲がり急斜面のピークに取付く、その鞍部に干上がりそうな池があった。

道中、真新しい標識で「←堀越峠」や「←頭巾山」など書かれているが随分先の地名が表示され混乱を引き起こしそうな表示だった。オバタケダンの直前で「←オバタケダン」「柵野坂→」の指導標があり国境稜線が鋭角的に北西に跳ね上がっていること知れた。

オバタケダン(729m)山頂は、3等三角点「盛郷」があり西側が開かれヤマボウシが白い花を付けていた。暫し休憩し長老ヶ岳などの姿を確認した。此処からは国境稜線を離れ南丹市美山町のエリアとなった。歩き出した途端にブナの林ではなく松やエゾユズリハの嫌な植生に変ってしまい。踏み跡も確認できずこの先どうなることか・・・ でもしばらく進むと植生は落ち着いてきた。タケガタンはオバタケダンより14m高い743mあり期待していた展望は得られなかった。

南に下ると送電巡視路らしき道が現れ稜線の左側を巻くように進んで行くが上空を送電線が横切った処で途絶えてしまった。送電巡視路ならば送電鉄塔を通っていないのが変で、諦めて予定ルート通り急斜面を下って行った。谷が近づくと傾斜は益々急で木に摑まりながら這い下りて行った。どうにか谷に達し林道となり谷の合流地点でしっかりした西畑前谷林道となった。西畑集落入口の橋に鎖のゲートがあり車は侵入できない。空き家の目立つ集落は田植えの済んだばかりの水田と耕作放棄田圃が入り交ざるが山里は長閑な風景を醸し気持ちが良い。府道369号線に出ると黒くなった雲から俄雨が降り出し杉の木の下で雨宿りをするとすぐに止んだ。

駐車地点に戻ると他に車はなく登ったのは我々だけだったようだ。温泉を求めて河鹿荘へと移動し汗を流した。周山街道の渋滞を避け園部へと抜けて京都縦貫道で帰路に着いた。イオン桂川の中国料理で反省会をして解散した。

 

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写真2: 若丹国境稜線の新緑の山毛欅林を行く

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写真3: 送電鉄塔よりタケガタン(743m)を望む

No. 3659 裏比良 猪谷(ししだに) 沢登り

2017年5月14日(日)

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【メンバー】LA.T、SL秋房伸一、上坂淳一、藤井康、織田直子、高橋秀治、高橋幸三郎、土井司、TS、TW、他体験1名 計11名

【天候】快晴

【行程】5月14日 坊村8:30〜横谷林道(車デポ)〜猪谷出合9:30〜入渓10:00〜第1ゴルジュ出口6m10:30〜第2ゴルジュ入り口8m〜第2ゴルジュ深い釜3mで怪我発覚12:30〜少し沢を下り北東方向の急斜面を登って登山道に復帰14:30〜横谷林道15:00〜車デポ地


【記録と感想】51期 A.T
前回比良の沢に登ったのは、確か貫井谷を登ったのが最後だっただろうか。
比良の沢をいまさら一本一本塗りつぶしていこうというつもりは無いが、八幡谷と猪谷はなんとなく興味がある沢である。
そこで、新緑祭でせっかく近くまで行くという機会に恵まれたので、以前に猪谷に登りたいと秋房さんがおっしゃっていたので、お誘いして遡行することになった。
新緑祭に関係する例会が無かったこともあって、参加者が次々名乗りをあげてどんどん参加者数が増える。
しかし上坂さんや秋房さんをはじめ高橋さん等、頼りになるメンバーにご参加いただけるので、何とかなるだろう、何とかならなければ撤退するのみ、ということで増えるに任せていると、最終的には11名の大所帯となった。

5月14日【快晴】
坊村で皆さんが作ってくださった朝ごはんを食べながら、藤井さん達を待つ。
昨晩は遅くまで飲んでいたので非常に寝不足で、天気もドンヨリとして曇っており、全く沢登りをしようという気が起きないが、例会として表明した以上、訳もなく中止というわけにも行かない。
幸い、藤井さん達が坊村へ到着する頃には日が照ってきて、いかにもそれらしい天気になり安心である。
坊村駐車場で一旦荷物や人員を分けて、三台の車に乗り込んで横谷林道へ。
車を横谷林道にデポして、猪谷へ向かう。
猪谷の入り口にはずいぶん古いワンボックスの車が捨ててあるが、苔むして、屋根には立派な草が生えていて、ちょうど車が植木鉢か盆栽の様になっている。
蛇谷に打ち捨ててあるワンボックスの廃車もなかなかの趣があると思うが、こちらの廃車は苔や植物と相まって芸術的なセンスを感じるほどの見事な出来栄えである。

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堰堤をいくつか越えて入渓。
少し歩くとすぐに小さな滝があらわれるが、高さは無いものの乗り越しの部分が少し厳しい。
お助けヒモを出して通過するが、その後の滝も、11人もいると通過にはけっこうな時間を要する。
寒いので絶対水に浸かりたくないと思い、深いところは無理矢理登攀したりしながらやりすごして行く。
第一ゴルジュをこえて、第二ゴルジュに入ったところ、1mくらいの釜の深い小さな滝を越えた辺りで、下から何か叫んでいるのが聞こえたので見ると、織田さんがうずくまっている様で「指を怪我した」という様な誰かの声が聞こえたので、遡行は中止して下山することにする。
すでに滝の上に登っていた四人で右岸をいったん登り返し、ロープで下の織田さんのところまで戻り、撤退の旨伝えて先に下りていただく。
上坂さんが最後に懸垂下降で下りてくるのを待つが、下降したあとロープが屈曲して下りて来ないので、これの回収にずいぶん時間を食ってしまった。
しかも上坂さんが滝壺にルベルソ4を落としてしまった様だが、結局見つけることは出来なかった様で諦める。
エスケープは、計画していた通り右岸を登って登山道まで登り返すことにするが、岩盤があってはいけないので第1ゴルジュと第2ゴルジュの間あたりまで沢を下降して登り返すことにする。
滝を1、2個下りた辺りで第2ゴルジュ入り口の8mの滝を懸垂下降しようというところで、上坂さんが「懸垂下降するよりもここから右岸を上がってしまった方が良いのでは」と言われ、たしかに右岸は見える限りは歩いて上がれそうなので、その地点から登り返すことにする。
急傾斜を、木の根などを踏みながら登って行くと、やがて人工林になり、そこをさらに登って行くと立派な登山道に出た。
登山道をてくてく歩いていくとあっさりと林道に出る。
ずいぶん苦労して時間をかけても、登山道を歩くとすぐという。沢登り岩登りはだいたいそんなものである。
30分も歩くと車のところに無事戻ってこられた。
織田さんの指だが、本人は「大丈夫だ」と終始言っておられ、遡行を続行しましょうと言っておられ、本人も明るかったので、思ったより軽度の怪我だったかなと思ったが「動かせるようなら骨折ではないです」と二度ほど織田さんに言ってみても、二度とも指を動かそうとはしなかったので「これは骨折しているのでは」と思った。
後日織田さんが病院へ行かれたところ、けっきょく骨をプレートで固定する手術をすることになったようで、全治に6ヶ月以上はかかるとのこと。

この怪我の原因としては、お助けヒモを掴んだときのもので、お助けヒモはスリングに一度手首を輪に通してから掴まないといけないのだが、慌てていてスリングを指で掴んでしまったからだということである。
自分も強く引っ張り上げたりしたので、もしかすると最初の滝から我慢しておられたのかもしれない。
今後は、スリングに手首を通すという注意は、これまで以上に徹底して呼びかける様にしたい。
それにしても怪我をした織田さんには申し訳ないが、天気も良く、みなさん明るい方ばかりで、久しぶりに上坂さん、秋房さん高橋さん達とご一緒に沢登りも出来たし、実に楽しい一日となった。織田さんには申し訳ないが。
猪谷も、途中までとはいえ、見上げると先までずっと滝が続いていて、とても美しい良い沢だなと思ったので、また来年にリベンジしたいと思う。
ルベルソ4の欲しい人「我こそは」と思う人がいたら、第二ゴルジュの滝壺にルベルソ4が落ちていますので拾いに行くと良いと思います。(上坂さんにはその後、また別の某所谷底で拾ったルベルソ3を差し上げた。)

【感想】48期 上坂淳一
 さしぶりのA.T例会は、手ごわい滝をサクサク突破し、難渓猪谷をまるでハイキングでもするかのような遡行でした。エスケープでさえも何事もなかったかのように終え、お風呂とソフトクリームまで満喫の一日でした。
リーダーの手腕はもとより、同行の皆様も逞しく、賑やかで楽しかったです。
終了点までは到達できなかったことは、また次回のお楽しみにしたいと思います。

【感想】 52期 秋房伸一
 久しぶりの比良の谷。比良全山縦走の時、イクワタ峠北峰手前の猪谷の源頭があり、それは長閑な景観なので、その下はどうなっているのかと興味があった。

 シーズンの初めということもあって、ヌメリはひどくなく、リーダーがロープを張ってくれたお陰で、怖いところもなく、滝の直登を楽しめた。お助けの出番も多くあり、「団体競技」としての沢登りを満喫できた。

 事情により、途中で撤退することになったが、私は、さほど大きな滝もなかったことでもあるし、そのまま懸垂下降をしながら沢を下るのかと思っていたが、リーダー判断で、登山道まで詰め登った。人数と安全を考えると、登ってよかった。「道に迷ったら、谷を降りずに、登り返す」というのが、登山の基本だが、今回は道迷いではないが、登り返しの実践的トレーニングにもなって有意義であった。

 下山後の風呂で、ヒルが太ももに付いていたのは、想定内ではあるが、やはり嫌だったのと、下降でドボンしたからか、ニコンの防水30mスペックのカメラが、浸水して壊れてしまったのは、残念な要素であった。

【感想】53期 髙橋秀治

A.Tリーダーとは蛇谷遡行以来の沢例会とあり参加させて頂きました。第2ゴルジュ途中の滝で巻き道を探しに登り最後の一手が出ずに途方に暮れていた時に、上からお助けを出して頂き無事難無く通過できた時、入会当時に演習林の中のツボ谷遡行をご一緒願い、最後の滝は巻かずに登りましょうと言って頂き、必死にロープにしがみついた事を懐かしく思い出しました。また沢例会は、参加者皆で助け合い遡行してく例会ですと入会当時に秋房さんから教えて頂いた事も再度実感できた例会でした。

上坂理事長をはじめ、久しぶりに皆さんの笑顔にふれ充実した一日を過ごせありがとうございました。

 

【感想】56期 土井

五月晴れの中、今年初の沢登りで期待を込めて入渓、

滝と新緑がよくマッチし大変綺麗で気持ちのいい沢でした。

しかし手ごわい滝が次から次へと現れ、お助けなしではクリアできませんでしたが

いとも簡単に登っていくA.Tリーダーの技術の高さにあらためて関心した次第です。

この沢は私の再度チャレンジしたい場所に加わりました。

皆さん、機会があればご一緒させて下さい。

追記:ヒル担当からは卒業できたようです。

 

【感想】57期 TW

やっぱり沢は楽しいなぁ、と思った山行でした。

怪我をされた方がいるのに、パーティーの足を遅らせ、残念ながら一番足手まといになっていたのは私なのに。こんなことを書くのは不謹慎かもしれませんが、それでもやっぱり沢は楽しいなぁ、と。

寒くて暗いゴルジュから見る、明るい緑や空。織田さんが確実な足どりで滝を登る姿に感心したり、身体の重さがないみたいにスイスイと先頭を登るA.Tさんに感動したり。

高橋さんが教えてくれたルートやコツを忘れず進めば、こわい滝でも案外登れることができて、驚くやら嬉しいやら。ご一緒させていただいた皆さまにはご迷惑をおかけし、助けてもらってばかりでしたが、満喫させていただきました。

A.Tリーダー、ご一緒させていただいた皆さま、どうもありがとうございました。

 

【感想】59期 TS
沢登りにはまだ早過ぎると思ったが、我慢できず参加した。足首辺りまで水に浸かっているうちは快適だった。しかし、水を被ってウエットスーツの中に水が入ると寒かった。
猪谷には小滝が連続する中に、約7mのやや大きな滝がある。小滝を超えていくのは楽しく、大きめの滝は私にとっては少し難しい課題だった。しかし、A.Tさんの登りを観察して、真似すれば登ることができた。いい勉強ができた。
比良山系の他の沢もこんな渓相なのだろうか?すべての沢に入ってみたい。

 

【感想】57 織田
悪渓に部類に入る猪谷、前日の雨もあり滝の水流に岩場から剥がされるんじゃないかと行く前から心配してました。入渓すると暗いゴルジュの中でも少し入る光が緑を美しく際立たせ、体を動かす内に怖さはなくなってきました。沢登りも雪山も危険な所ですが、人が比較的少なく厳しく美しい自然の中に身を置かせて頂いてる感じが私は好きです。沢登の一番好きなところは、身体全体を使って自然の中で遊ばせてもらえるところかなと思っています。手足を使ってる間に童心に帰っていきます。テンション上がりすぎないように気をつけています。しかし、今回自分の不注意のせいで遡行を断念せざるを得なくなりました。皆さん楽しみにされていたのにと思うと申し訳ない気持ちで一杯でした。また来年リベンジしましょうとリーダーや上坂さんが仰って下さることが大変嬉しく、また参加された皆さんの温かい援助やお心遣いに感謝致します。

 

【感想】56期 高橋幸三郎
今回初めて訪れた猪谷は、次から次へと息をつく間もなく滝が現れ変化に富む大変楽しい遡行だったと思います。また遡行中は渓流の背後に折からの新緑が映え、なかなか見応えのある風景を堪能いたしました。ただ事前にNETからの情報から予想していた通り小生にとっは少々、手強い沢だった事もあり緊張するような箇所もありましたが、同行の皆様の適切な手助けもあり、お陰さまで無事に下山する事ができました。

 

【感想】57期 藤井康司

ガイドブックに「悪い谷」の部類と記されていたので、どんなところかと思っていた。確かに渓相は暗く、流木、虫の類も多かったが、小滝が連続し緊張感あふれる醍醐味のある沢だった。水しぶきの中にホールドを探しにいったり、ロープやお助け紐の安心感もあり、シャワークライムを存分に楽しむことができた。

 

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〈個人山行〉京都百名山シリーズNo.22 鉢ヶ峰

平成29514()

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八ヶ峰(779m)は美山かやぶきの里の北側に位置する山で、姿は見えない。どっしりとした山容を見せている白尾山(749m)は里から見ることができ地元では此方の方が親しまれているようだ。昨夜は高島市坊村の葛川キャンプ場であった山岳会の新緑祭に参加した。朝食を済ませ皆より一足先に出発し府道783号、110号、38号線を使い京都北山を横断した。

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【メンバー】 山本浩史L(車)、田中靖之(車)、YN(車)

【行  程】 △葛川キャンプ場7:308:40かやぶきの里8:5510:13送電鉄塔11:06 P69211:26鉢ヶ峰11:5412:11 P69212:28津ノ本谷川下降点~12:44 P70513:07白尾山13:1614:21大内BS14:58かやぶきの里15:1015:15自然文化村河鹿荘16:02=千代川IC=(京都縦貫道)=沓掛IC17:25桂川

【登山データ】 晴れ 歩行13.4 6時間03 延登高927m 延下降927m 2座登頂

 

昨夜はよく飲んだ、若干残っているかなと危惧しながらも久多峠、佐々里峠を越えて美山かやぶきの里へと車を走らせた。参加者3人がそれぞれマイカーなので長時間駐車となることを恐縮しながらも観光駐車場に車を止めた。折しも田植えが行われた田圃は水が輝き茅葺の家屋群が何とも絵になる。茅葺集落と反対方向に進み津ノ本谷川の谷間へと入って行った。獣害防止ネットがあり林道入口のゲートは鎖錠されているが歩行者は脇の扉を開け通り抜けることができた。

今日は先頭を田中さんに任せた。送電線尾根に取付く予定だが巡視路が必ずある筈だ、林業の作業道に入り登って行くと直ぐに途絶えてしまった。急斜面だが微かな獣の踏み跡を辿り這い上がると何処から現れたのか巡視路に合流した。この時点で田中さんの息が上がり激しく呼吸をしていた。「体調悪いのか?」と問うと、歩き出しは何時もこのようだと云うので様子を見ることにした。略真直ぐな尾根は上空を送電線が走り、まるで電車の架線のようだ。高度を300m程上げた所に送電鉄塔があり皆に現在位置は何処だと課題を出した。地形を見るとこの先稜線は東に振れ上空の送電線が分かれる地点なのでその変化を読み取ってYさんがいち早く正解を出した。

東側に回り込んで再び送電線が上空を通る処にはやはり送電鉄塔があり、木が刈られ展望が利いた。これから向かう鉢ヶ峰や白尾山がしっかり見ることができた。此処からの稜線は何度も屈折を繰り返して複雑だ。イワカガミの葉が沢山あり花を期待するがもう終わってしまったのか花は見つからなかったが標高680m位に達した処で初めてピンクの花を見つけた。

再び読図課題を出し現在位置を特定してもらうと、これは中々難解だった。何回折れてどっちに向いているかを知ることが大事で特徴のない稜線では地図を確認しながら歩くと云うことが大切だ。正解は標高約680mの稜線が北に盛り上がった処だった。この後話をしたりして地形確認が疎かになってしまい北へ向かう顕著な尾根に入ってしまった。先に続く稜線が出てこないのでこれはおかしいと気付き、5分のロスで元に復帰することができた。

再び現在位置確認を問うとP692に達していることを確認し後で帰路分岐する道も確認できた。北微西に進むとイワカガミが益々多くなり、咲いている花の数も沢山になった。この地域の花はピンク一色ではなく先の方が白、根元がピンクになっている花が多い。急登になって登り切ると鉢ヶ峰(679m)山頂に到った。3等三角点「下村」があり小さな山頂プレートが掲げられていた。残念ながら展望は得られないが昼食休憩を取った。

来た道を引き返しP692に戻ると見ておいた南西尾根へと入って行った。登り出しで送電線尾根の取り付いたとき、左手に続いていた林道があった。津ノ本谷川の奥から発する登山道がある。その登山道が合流する峠が子の稜線を越えている。標高は600m余りで稜線の方は随分下ってしまった。この先はP705への登り返しとなるが、等高線が詰まっている。登ったピークには「P705」のプレートが掲げられていた。後はなだらかに進んで白尾山(749m)に到った。3等三角点「北村」があり鉢ヶ峰、送電線尾根のピークなど歩いてきたルートを見ることができた。

南南西の尾根を進みだすと「←かやぶき、←内久保」と「大内→」の指導標があった。かやぶきや内久保への道はP616を経由してかやぶいへは送電線尾根の取り付きの反対側に下りてくるようだ。内久保は何処に下るのだろう。我々は計画通り南南西尾根の「大内」を目指し下って行った。急斜面を下り尾根が西南西に向きを変える地点で稜線を離れた。此の手前から展望地があり尾根の先はP677P682が存在感を持ち、砂木谷川から上がってきた林道が無残にも山肌を傷付けていた。

急斜面をジグザグに付けられた登山道を進みやがて青谷川に到った。谷沿いの登山道からダート林道となって登山口に達した里道で由良川を渡り、府道に達すると大内バス停に到った。ここから車道歩き3.4㎞でかやぶきの里へと戻らなければならない。暫く行くと「蓮如の滝」が白尾山の斜面に流れるのが車道からも確認できた。落差は62mあり近くまで行けるようだが車道から写真を取るに留めた。37分掛けてかやぶきの里に戻って来ると光線状態が良く茅葺集落が益々英になる姿を強めていた。

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〈個人山行〉南紀の沢 滝本本谷

2017年5月1日(月)  【参加者】CL小松久剛 秋房伸一 計2名

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燈明滝

 

【天候】5月1日(月)晴れ

【記録】52期 小松

4/30 19:00京都駅イオン発=23:40熊野川町瀧本 村はずれの林道にて前夜泊

5/1 林道~滝本本谷をナメラゴの滝上まで遡行、フェンス沿いの巡視路~導水管巡視路~発電所~駐車スペース=帰京

 

【記録】小松

3年前に一度、雨のため、途中敗退した滝本本谷に再チャレンジすることにした。

7時30分出発。前回は宝竜滝の左岸巻き道をうまく見つけることが出来ず、変な所を高巻きしてしまって時間を要したが、良く見るとかつて滝見道であったところには丁寧に赤テープも貼ってあり、また、取りついてみると手がかりも支点もあって、念のためロープは出したものの、8時30分頃容易に宝竜滝1段目をクリアすることが出来た。2段目は左岸から容易に巻き登ることが出来る。

宝竜滝の上はしばらくゴーロ帯となり、その後谷が右に曲がる付近で深い釜を持った斜瀑がかかる付近に到着(9時)。

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斜瀑を登攀

 

ここは落ちても深い釜に入るだけなので、右岸を慎重にへつる。見た目よりも容易で、ロープも不要であった。斜瀑の上はコッペ滝がかかり、日がさして美しい。

堰堤の左岸側をコッペ滝とまとめて巻き登ると「藤綱の要害」と言われる平維盛が隠れ住んだ場所を過ぎると、奥コッペ滝がかかる。前回は奥コッペ滝前で敗退したが、今回は明るい日差しが降り注ぎ、何の問題もなく先に進む。

奥コッペ滝は右岸を容易に巻き登れる(9時40分)。

奥コッペ滝上は40mほどのナメ滝が美しい。

イオの谷を右に見送り、ゴーロ帯を越えると前方に巨大な燈明滝が姿を現す(10時10分)。

高さ、幅共に大きく、南紀らしい大滝だ。

下から見上げると階段状に見えたため。試しに滝の右に取りついてみたが、滑る上にほとんど手がかりがなく、非常に難しい。

リスは豊富にあるので、念のためハーケンを一本打ってトライしてみたが、どうしても手がかりを見つけることが出来ず、体勢を崩して5mほどフォール。秋房の適切なビレイにより、下までは落ちずに済んだ。

諦めて左岸の小尾根を容易に巻き、懸垂してハーケンを回収して先を急ぐ。

燈明滝上すぐには白滝という、これまた大滝がかかっており、右岸の樹林帯を容易に巻き上がる。

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白滝17m

 

白滝上はゴーロのサイズが増し、なかなかに厄介。

ゴーロを抜けると右からナメラゴの滝が落ちる。

これは右岸ルンゼを登るが、ズルズルでやや登りにくい。

ナメラゴ滝を越すと先ほどまでの滝の連続が嘘のように、ナメの連続となる(12時)。

この先は凡流が続くので、右岸にあるらしい巡視路なる道を探しつつ、遡行を続けるが見当たらず。

結局ナメラゴの滝落ち口すぐ上まで戻り(12時30分)、右岸から鹿よけネット沿いの道をしばらく辿るとあまり踏まれていなさそうな登山道に行き当たり、それを下ると導水管の巡視路に行き当たった(13時20分)。

後はそれをたどって容易に発電所に下ることが出来た(13時40分)。

 

【感想】52期 小松久

雨の中、暗い沢を暗い気分で遡行した記憶だけが残る前回の遡行とは異なり、明るい陽光が降り注ぐ中、巨瀑をめぐる沢登りが出来て、良い沢初めとなりました。

この冬は珍しく気持ちを切らさずにクライミングの練習をしていたので、調子に乗って燈明滝に取りついてみましたが、かなり手ごわく、安易に滝に取りつくべきでないことを再確認するとともに、念のために中間支点を打っておくことの重要さにも気づくことが出来たので、気持ちも引き締まりました。

長距離アプローチを一手に引き受けて下さった秋房さん、ありがとうございました。

 

【感想】 52期 秋房伸一

「滝本本谷」という名前の通り、滝の本家というか、バリエーション豊かな素晴らしい滝が、次々と現れ、沢初めとしては期待以上の醍醐味でした。泳ぎや直登もほとんどなく、沢初めには最適でした。2人で行く沢登りは、実は初めてで、ロープワーク等、改めて復習するよい機会となりました。小松リーダー、ありがとうございました。

No. 3657 明神東稜と明神主稜

2017年4月29日(夜)~5月2日

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【メンバー】L A.T、辻博史 計2名

【天候】快晴→吹雪→快晴

【行程】4月29日夜:京都〜平湯
4月30日:平湯〜上高地5:30〜明神館6:30〜瓢箪池9:30〜ラクダのコル16:50(幕)
5月1日悪天候のため停滞
5月2日ラクダのコル5:00〜明神本峰9:00〜明神Ⅱ峰11:00〜Ⅲ峰12:00〜前明神沢下降14:00〜岳沢登山道16:00〜上高地16:40

【記録と感想】51期 A.T

 明神岳といえば2015年の夏に、辻さんと2人で今回と同ルートを辿っていて、我々は明神岳の素晴らしさに感銘をうけ「次回は残雪期にもぜひこのルートをたどりましょう」という話をしていた。

 それでその翌年は何となく時間が過ぎてしまい実現出来ずにいたものだったが、今年こそはということで、企画することになった。

 

 メンバーははじめ、四人くらいいたので、これは賑やかになりそうだなと思っていたが、何だかんだの事情で一人二人と参加中止となり、けっきょくのところ、夏を同じように辻さんと二人で行くことになったのであった。

 

4月29日

夜から出発し、平湯料金所前で仮眠。

 

4月30日(快晴)

暗いうちから起きて、あかんだな駐車場へ。

バスに乗って上高地へ到着。

トイレへ行ってからさくさく歩いて明神館へ。

明神館から明神岳を見上げると、夏に歩いたひょうたん池手前の大平原みたいなところはすべて雪で埋まっていて真っ白に光っている。

明神館で少し休んでから出発。

宮川を少し登ると雪が出てきて、圧雪された固い雪の急斜面をどんどん登る。

夏と違ってガレ場が雪で安定しているので歩きやすいといえば歩きやすいが、斜面が急で疲れる。

途中、辻さんがアイゼンを着けると言うので、自分もあわせて装着。

少し上がるとさっそく宮川のコルが見え出したので、「これは楽勝ですね」「今日のうちに主稜まで出てしまいますか」何て話をしていたのだったが、やはり夏にも同じような会話をこの辺りでしていて、結局すぐにバテバテになってしまったのだった。

そして今回もまあやはり、まったく同じようにその後すぐにバテバテになって歩みが遅くなってしまった。

やたらと息が上がって苦しい。

特に辻さんは疲労がひどく、ひょうたん池までたどり着くと、「今日はもうここで」ということを言うので「いやいやそれはさすがに有り得無いでしょう。」と辻さんを励まし、前進することに。

ひょうたん池で大休止したあと、ハーネスを装着して第一段階に取り付く。

取り付きのところで、左側直登方向の頭上からロープが二本ぶら下がってきている。

二本というところからみると懸垂下降で使用した様子だが、未回収で置いていったものなのか、それともロープが抜けなくなってあきらめて残置していったものなのか。

このロープをつかんで登ろうか、とも一瞬思うが、ロープが草付きの中途半端なところまで登らないとつかめないのと、下手にロープをつかんで上がっても、撤退用のラインであればその先で詰まってしまう、ということ。

そもそもぶら下がっているロープが信頼出来る支点によってセットされているのか解らないということで、このロープを使うのはやめておくことにする。

一方で右を見ると草付きを少しトラバースしたところに立ち木などがあり、こちら側からなら支点をとりながら登れそう。

また、踏み後もあることから、ロープを出して確保しながら右側に進路を取ったが、これが間違いだったかもしれない。

踏後はどんどん右にトラバースしながら、うまく弱点を突いて登っていくルートで、ルートの取り様は悪くないというか、ここから以外では難しいだろうというルート取りだが、右から大きく回り込んで登っていくために直登するよりもかなり遠回りで長い。

たしか1~2ピッチで行けるはずの第一段階を6~7ピッチかけて登ることになった。

また、悪い草付きや、午後からの気温の高さで雪が腐って足元がいつ崩れるか、という雪壁を長いことトラバースさせられ、大変に神経をすり減らしながら登った。

けっきょくラクダのコルに到着したのは日の沈む一時間前くらいだった。

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二人ともかなり疲労困憊している体にムチ打って、スノーソーとスコップで急いでテントサイトを作る。

その日の夜から天気が荒れる予報で、そうでなくても地形的に風も強そうなので、念入りに壁を作った。

テントをたて 、ご飯を済ませて就寝。

夜になりときどき強い風が吹いて、テントがバザバサとバタついて、吹き飛ばされやしないか、と心配しながらウトウト眠る。

 

5月1日(吹雪)

 4時頃、テントを少し開けて外を覗くが、真っ白になっていて一寸先も見えない。

また眠って6時ころ、日が出るがあたりは相変わらず完全にホワイトアウト

辻さんと相談し今日は完全に停滞することを決める。

テントの回りを雪かきして、壁をさらに高くしたり、テントの張り綱をしっかり張り直したりする。

それでも天気がここまでひどいのはまだ早朝だからだろうと思っていたが、けっきょく夕方くらいまでずっとホワイトアウトしていて、1日テントの中で寝て、起きて雪かきして、の繰り返しだった。(こうなるとわかっていれば文庫本のひとつももってくればよかったが。)

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夕方になりようやく天気が回復する。

辺りは絶景。

踏み跡は、来た道の分も行き先の分もすべてきれいさっぱりなくなってしまった。

この日登ってくる人は誰もいなかった。(当たり前か)

 

5月2日(快晴)

4時頃起きて準備し5時頃出発。

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見るとバットレスの岩は下半分は完全に雪に埋まり、右半分も雪がかぶさっていて、こんなコンディションはどの記録の写真をみても無かったというくらい雪が多い。

雪が多いので岩が埋まって楽に登れるかと思ったがそうではなく、ガリガリの固い雪の表面にパウダーの層が積もった様な微妙なコンディションの雪壁で、安定せず心もとない気持ちで登る。

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ときどき露出する木の枝を掘り出して、束にしてガースヒッチで支点にしたり、岩のクラックを見つけてカムを使ったり。

2ピッチほど登ってバットレスへ着くが、岩登りセクションも下から考えていた様に簡単ではなく、雪に埋まっていることでかえって難しい。

雪は岩の表面にパウダーが少し被っているだけで踏み固めたり出来るものではないし、岩のホールドやスタンスを隠してしまっているため非常に困難な登攀。

一歩上がっては雪を払ったり氷をピッケルで砕いたりしながら、次のホールドやスタンスを探さないといけないが、何しろ安定している姿勢ではないので、早く次のホールドスタンスを見つけないと滑り落ちてしまう。

そのため、一歩一歩上がるのも覚悟しながら登る。

本来はスラブ壁を右に登るのが一般的の様だが、すべて雪と氷に覆われているため、支点を探し出せるとは限らない。

そのため、左のクラック沿いから登ることにするが、こちらのクラックにも氷が詰まっていて容易ではない。

ピッケルで氷を砕いて砕いて、ようやくホールドを探り当てながら一歩体を引き上げ、クラックの上部にカムをセット。

もはやフリーで上がる気もさらさら無いのでカムや残置ハーケンをつかみながら上に抜ける。

荷物も冬山テント泊装備なので、岩の上に体を引き上げるごく簡単な動作でもとても力がいる。

後ろにひっくり返りそうになりながら必至で体を岩の上に上げて、ようやく乗り越すことができた。

その後のピッチも雪壁を登れば良いだけなので余裕かと思ったが、雪の状態も良くなく、なかなか支点も取れずに恐い思いをしながら、最後山頂の小さな雪庇状を壊して山頂に到着。

上空ではヘリが飛んでいて、何度も我々の上空を旋回して様子を見ている様だったが、頂上に着く手前くらいからいなくなった。

辻さんをビレイして辻さんも登頂。

前に夏に登った時もそうだったが、とても充実感があり、苦労したぶん、とても嬉しい気持ちになった。

辻さんと握手をする。

天気も快晴で、登ってきた東稜や前穂高岳奥穂高岳、焼岳や上高地、御岳、果ては富士山までよく見えた。

その後のルートだが、辻さんはもうそのまま奥明神沢で下山してしまいたい様子だったが、自分はどうしても明神主稜をたどって行きたかったので、辻さんに頑張りましょうと言うが、辻さんはとてもウンザリした様子である。

明神Ⅰ峰から慎重にⅡ峰とのコルに下りる。

コルからⅡ峰を見上げると、これまた下1ピッチ分はほとんど雪に埋まっていて、これはまた簡単に登れるのではないか、と考えたがこれまたとんでもない話で、雪で埋まっているのはあくまで表面だけであり、足場のほとんど無いような岩を、雪を掘り出してホールドスタンスを探したり支点を探したり。

時には無い雪を無理に固めてごまかして上がったりしながら登る。

登りやすそうなところから登っていたが、気がつけば夏のルートからはだいぶ上に外れてしまっている。

一歩一歩恐い思いをしながら、大きく岩が露出している所まで何とか上がり、クラックにカムを入れ、安堵のため息が出る。

夏の1ピッチ目終了点の少し手前あたりで、ロープの流れが悪くなって一旦ピッチを切る。

2ピッチ目は完全に岩が露出していて登攀はとても容易。

ここへ来てようやく爽快感のある登攀が出来た。

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本来例年通りの積雪なら、バットレスも先ほどの1ピッチ目も、岩が露出している筈なので、このような感じで登れたはずなのだが。。。

Ⅱ峰の上から登ってきた東稜を見るが、今日は誰も登ってこなさそうで、この日に登頂したのは多分我々だけだったろうと思う。(昨日の吹雪では当然だが)

その後Ⅲ峰からⅣ峰(だったかな?)への下りでラッペル用に岩に捨て縄が巻いてあり、見ると確かに急な下り。

辻さんは疲労からだいぶ弱気になっているようで、懸垂下降で下りたいとのこと。

辻さんの持参した捨て縄を拝借し、岩に二箇所巻いて懸垂下降で下りる。

先行して懸垂で下降してみるが、途中で空中懸垂になるところがあり、荷物が重いため疲労した腕に応える。

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懸垂の途中でうっかりピッケル(バイル)を下に落としてしまう。

ちゃんと脱落防止ヒモを着けていたはずだったのだが、懸垂下降のセットをする拍子にうっかり外れてしまったのかもしれない。

このバイルを落とすのは楊梅の滝から落としたのとで、これで二回目になる。

直前に辻さんに「このバイルが登攀中にいちいちひっかかってイライラして、投げ捨ててやりたくなりましたよ」という様な話をしていたので、もしかするとバイルが世を儚んで身を投げたのかもしれない。

幸い、ちょうど下りたところの斜面にバイルが横たわっていたので、無事に回収が出来、心のなかでバイルに詫びた。

そこからしばらく歩くと、這松帯から先に下りやすそうな沢筋がある。

これが前明神沢とみて違いないだろうということで、雪渓をさくさくと下って行く。

長い雪渓を、脚がガクガクになるまで下った頃に岳沢登山道に合流。

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16:50頃、なんとか無事、明るいうちに上高地まで戻ってこられた。

上高地で登ってきた明神岳を見上げながら安堵でガックリ脱力して、最後に辻さんに「こんなことに付き合っていただけるのは辻さんだけですよ」と言うと辻さんに「もう二度と付き合わない」と言われた。

 

今回の山行は、登攀もさることながら山行中のトレースはほぼ雪で埋まっていて、自分でラッセルして足場を固め無いといけない、テント場もナイフリッジ状の雪稜を一からならして作らなければならないしで、本当に大変だった。

また、明神主稜の縦走は自分の希望でお付き合いさせてしまった。

しんどい目、恐ろしい目にあわせてしまって、誠にすみません。

 

しかし辻さんも毎回怖い目を見て、「これで最後だ」という様なことを言っておきながら、それをすっかり忘れて結局また次も来ているという懲りない人である。

今回の山行で愛想をつかされてしまったが、そうは言っても、次回もけっきょくお付き合いいただけることだろう、というのが自分の見立てである。

 

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【感想】53期 辻 博史

明神岳は以前夏季に同ルートを登ったことがあったので(この時もA.Tさんに連れて行っていただきました。)残雪期の方が登りやすいかもと思っていました。ところが過去の記録よりも雪の量が多く、その雪も腐れ雪でピッケルも足元も安心ならぬ状態でさんざんでした。

ひょうたん池からラクダのコルまでの間で、記録では1~2ピッチロープを出した記述の物ばかりでしたのでそのつもりでしたが、今回は5~6回はロープを出して上りました。また、夏の時もそうでしたが一気に高度が上がるため、すぐに息切れする状態になり、初日の幕地(らくだのコル)に到着したのは16時過ぎでした。(夏場は同じルートで12時前に到着していた)

2日目は予報通りのガス、強風、雪の悪天候停滞となりましたが、正直、この停滞があったため、ゆっくり休息できて助かりました。

3日目に登頂をしましたが、核心部といわれるバットレスにいたる取付きが前日の風雪で状態が悪く、岩に付いた氷雪を払いながらの登攀となり、その後のバットレス登攀後もロープなしでは上がる気がせず、ずいぶん時間を掛けての登頂になりました。

また、主稜登頂後の2峰の登り返しがまたまた状態が悪く、今回の山行で一番怖い思いをしました。

今回、雪の付き方や雪の状態によって、山行の難易度がこんなにも違うのかといろいろと学ぶところが多かったです。また、久々に「やばい!」と思うこともありました。2峰の登り返し後は弱気になり、3峰からの下降は懸垂下降をお願いするなど、まったくダメダメでした。(今思うとクライムダウンした方が早かったですね。)

毎回、厳しい状態でもリードされるA.Tさんはすごいと思います。技術・体力だけでなく、メンタル面でも非常に強いなと毎回関心します。今回もA.Tさんが全行程リードをしていただいたおかげで無事、帰ってこられました。ありがとうございました。