京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2740 冬山合宿:比良全山縦走

【日程】2006年1月7日(土)~9日(月)

【参加者】5名

【記録】 48期 H.Y.

権現山までの全山縦走を目指しての企画だったが、記録的な豪雪とルートファインディング失敗のため、1本目の蛇谷ヶ峰で敗退となり3日間の予定を2日に短縮しての下山となった。

 

1日目(1/07): 雪

【行程】 出町柳BS 7:45=朽木学校前BS 9:45-58--朽木スキー場11:25-57--▲蛇谷北東尾根16:30

 

松葉杖を付いた本来のリーダーMさんの見送りを受け、風邪でNさんも脱落し総勢5人でよく晴れた出町柳を京都バスで出発。八瀬に差しかかる頃には雪が降りだし、大原ではすでに10数センチの積雪。チェーン装着のための長い停車があり終点の朽木学校前に着いたのは37分遅れの9:45だった。待合室で準備を整えいざ出発! 

朽木スキー場へ行く車だけしか走らない県道295号線は除雪が整い問題なく歩ける。しかし車はそうではないようで左側の側溝に落ち脱輪で動けない車が道端に傾いている。運転者がひとり寂しく救援を待っていた。スキー場まで4.6㎞の道程を1時間27分かけて歩く。蛇谷ヶ峰へのルートは3つあり今回の朽木スキー場ルートは桑野橋ルートの4.7㎞、てんくう温泉ルート2.5㎞を抑えて最短の2.1㎞、標高差は462mで難点は少々急登であること。

全国的に豪雪の続く今冬、朽木スキー場も例外ではなく今日の積雪は160㎝。簡単に昼食を済ませ、期待に胸を弾ませいよいよ山に入る。トレースは全く無く、Aリーダーを先頭にラッセル開始。いきなり始まる急登に速度は牛歩以下、2時間経ってもまだスキー場のアナウンスが聞こえ木の間越しにゲレンデも見える。女性の身長を超える雪の壁を突き崩し乗り越え悪戦苦闘、漸く展望の開ける稜線に出ることができたのは既に16:20、1日戦って蛇谷に辿り着くことは出来なかった。少し進み風の防げる適地(蛇谷東北尾根の標高790m地点)を今日の天場と定めこの日の行動を停止した。新装備の“槍Ⅱ”テントのデビューで5人がひしめき合って潜り込むと中は暖か。でも荷物がかさばりかなり窮屈。鍋の湯気で結露がすごく内張りが本体に密着してしまい垂れてきた水滴がテントの隅に溜まり水浸しとなってしまった。

食当、Oさん特選の豚汁を囲み、なごやかに夕食をしていると、風邪で寝ているはずのNさんから回復したから「Mさんと一緒に明日合流する」との連絡が入る。さて明日は何処まで行けるか検討した結果、蛇谷、滝谷の頭を越えて須川峠(ボボフダ峠)から“畑”に下山するのが交通の便を考えると無難だろうとのことに決定した。誰かが冗談で「ここで連泊」と言ったのは、何かの暗示だったのだろうか?

 

【登山データ】1日目: 歩行 6.1㎞ 6:32 延登高 682m 延下降 62m  0座登頂

2日目(1/08): 雪

【行程】 ▲蛇谷北東尾根7:22~蛇谷ヶ峰8:50-9:05~蛇谷南尾根12:20-30~縦走路尾根直前13:20~蛇谷ヶ峰14:22-26~蛇谷北東尾根(前日テン場)14:55-15:03~朽木スキー場16:10-53~朽木学校前BS 17:50-17:55=安曇川ST 18:20-19:21-京都ST 20:30

 

昨夜も断続的に雪が降ったようだ。寒気が居座り今日も雪の予報。5時起床、正月らしくお雑煮の朝食で腹ごしらえをして7:22出発。出だしは稜線上の緩い斜面で膝上とは言え比較的楽なラッセルで順調に進む。それでも最後の登りは急登で、夏道25分ほどのコースタイムを1時間半かけて蛇谷ヶ峰(902m)に到着した。雪が舞い遠望は殆ど利かないが一瞬陽が差し朽木の集落や雲洞谷山を見ることが出来た。山頂の指導標の頭だけが辛うじて雪上に顔を出し、掘り起こして記念撮影をした。

山頂の時点では余裕で須川峠に達することができるだろう皆が思ったことだろう。Kさんを先頭に南尾根を下り始める。下りのラッセルはやはり楽、順調に進んだが落とし穴はこの後。本来のルートは標高850mほどの小さなコブから90°東に折れ三ノ谷の東側の尾根を下り、少し登り返して滝谷の頭に至る。しかし標識・目印はすべて埋もれ、分らないまま二ノ谷と三ノ谷の間の尾根を下りてしまった。西へ大きく反れていることに寒川さんが気付き修正するが、もうその時点では既に曲がり角を通り越していたようだ。全面に深い谷とその向こうに滝谷の頭と主稜線が見えたとき誤りが確定し、山本が持参したGPSで現在位置を特定すると蛇谷南尾根の標高785m地点だった。Aリーダーの偵察で谷は深く対岸への登りは難しいとの結果だった。引き返し、GPSによるリカバリーへのナビを始めた矢先、低温のためか動かなくなってしまった。正規ルートへのトラバースを試みるが時刻は既に13:20、未練は残るがAリーダーの冷静な判断で撤退を決定、元来た道を引き返す。

この間殆ど絶え間なく雪が降り続き再び戻った蛇谷ヶ峰山頂部はトレースが完全に消されていた。しかし北東側には明瞭なトレースが残っており、てんくう温泉への分岐路の先に続いていた。彷徨している間に別のパーティーが入ったようだ。他のトレースがあるとは考えもしなかったので釣られて入ってしまったがすぐに気付き、真直ぐスキー場へのルートを下りる。昨日の天場で小休止し、この雪では明日になればトレースは完全に消されてしまうだろうとのAリーダーの判断で今日中にスキー場に下りてしまうことになった。「ここで連泊」という言葉が現実のものとなりかけたが、さらに宿泊地が昨日より後退しようとは誰が想像できただろうか?

スキー場への下りは恐ろしく急で昨日はよく登ったものだと皆感心しながらの下山だった。スキー場に到着すると再び方針が変わり、安曇川行きの最終バスに乗って帰ることになり、夕闇迫る県道295号を朽木学校前へと急いだ。バスは18:17発、余裕で到着したが1本前の17:47のバスが遅れており早く乗ることができた。運転士曰く次のバスは「回送だ」とかで「時刻表に偽りあり」か?安曇川駅前の食堂で軽く打ち上げのグラスを上げ、夕食を摂り、湖西線で京都に帰着解散した。

 

【登山データ】2日目: 歩行 9.1㎞ 10:28 延登高 347m 延下降 967m  1座登頂 計: 歩行 15.0㎞ 17:00 延登高 1,029m 延下降 1,029m 1座登頂

 

【感想】47期 C.O.

昨年に引き続き今年も参加しました。

積雪は昨年以上で、今年もラッセルが存分に楽しめました。来年同じ企画があるかわかりませんがあると信じて、今年は比良を歩きこもうと思いました。

読図の役にたてなかったので、鍛えておこうと思います。

【感想】48期 J.I

 無雪期は楽勝のはずの比良が、積雪期は難しいものだと実感させられた山行だった。雪は深く、ラッセル入門の私は、猫の手にもならない状態(トホホ)だった。元々3日間の行程だったが、2日間で十分ラッセルの醍醐味(?)を堪能できたと思う。ただ、朽木スキー場への帰り道は急坂で、下りるのが大変怖かった。でも、山行はとても楽しかった。穐月リーダーをはじめとするパーティの皆様のおかげで無事下山できたものと思い、感謝している。

 さて、帰宅した翌日の朝、テントを干そうとしたら、スタッフバッグともども凍っていて、取り出すのにも一苦労。四苦八苦して取り出したら、テントと一緒に握りこぶし大の氷塊がゴロン。手先も冷えたが、心も冷えた。嗚呼、二日目で下山して本当に正解。バシバシに凍ったテントで再び寝る-そして、びしょぬれになるというのが冬山の王道をゆくということなのかもしれないが、まだまだそこまでは練れていないなというのが実感である。

【感想】48期 Y.K.

目を見張る程の積雪・遅々として進まないラッセルに雪山の厳しさを思い知らされた。視界は余りにも白く、美しさや静けさと共に恐ろしさが同居していた。それだけにパーティー山行はなんと心強かったことか。重い装備を持ってあがった井上さん、健康志向の食事5人前(※当パーティー基準)を用意したOさん、豪雪の中さっさかとラッセルしたYさん、そしてここぞの場面で撤退判断をしたAリーダー。基本的な雪山生活の確認としては有意義な合宿だったし、合間から見えた雪景色には目を奪われた。しかし個人的に、あのルートミスはいくら雪山といえどあり得ないわけで大変ヘコんでしまった。おまけに撤退時にも懲りずに山頂付近でトレースにつられてしまい反省しきりである。同コンディションとはいかずとも、いつかリベンジをしたいものである。

【リーダー所感】25期 D.A.

今回の雪の比良は魔女が住んでいるように思えた。降り続く雪とスノーモンスターのように白く覆われた木々、股まで潜るラッセル、雪の壁、標識もテープも殆ど隠れてしまったルート

今回、今までに無く豪雪で、ワカンではどうあがいても全山は無理だったのだが、蛇谷までで敗退した原因がルートミスとなるとリーダーへの叱責は免れない。しかし失敗した時に何時も思うのは登山技術云々より山に対する敬虔な畏怖を忘れていたのでは無いかと言う事だ。

去年も通ったルートでおなじみの蛇谷、多少間違っても直ぐにリカバー出来るという甘い考えがどっかに有ったように思う。引き返す途中でも何度も道を間違えそうになった、元来た道だから、トレースが有るから、GPSが有るから、テープが有るから、これらは皆ブービートラップである。ちょっとでもなめると雪山は決して許してくれない、一面の銀世界に本当に魔女がいるような気がした。

しかし一方雪山入門コースとしては非常に楽しかった。

有り余る積雪量と壁のような傾斜や積雪状態が様々なルートは足ばかりでなく膝や手やストックやスコップも使って体中でラッセルができた。全くと言っていいほど夏道の消えたルートは読図の実力を試す事ができた、新しいエスパースのテントも試す事ができたし、テント生活も楽しかった。何より其れらを皆でやれた事は収穫だった。

又来年も何らかの形で1月の比良に入ると思う。