京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2875 関西百名山シリーズNo.5,6 子ノ泊山・烏帽子山


【日程】2008年3月15日(土)~16日(日) 
【参加者】7名

《1日目》3月15日(土) 晴れ
【行程】京都8:36-(オーシャンアロー5号)-新宮12:48-13:10=(レンタカー)=浅里登山口13:42-51~詰ノ滝14:44-46~ヤケ嵓ノ頭15:27-31~浅里辻15:39-44~子ノ泊山16:12-24~浅里辻16:49-50~桐原登山口17:14~浅里登山口17:42-45=林道ピックアップ地点17:51-52=△円満地公園19:31
【歩行データ】歩行9.1㎞ 3:51 延登高 976m 延下降 976m 2座登頂

関西百名山も簡単に行ける所ばかりではない。レンタカーとセットになったFきっぷを使い南紀の2山を登った。侮るなかれ南紀の山、谷は深くして水量多し、山は屹立し難行苦行。決してハイキング程度の低山ではなかった。
京都駅6・7番線は、この日で廃止になる"あかつき"・"なは"号の回送列車が停車中で鉄道ファンの異様な人だかりができていた。その後に入ってきたオーシャンアロー号に乗り込むと温泉旅行の気分、紀伊田辺の駅弁をオーダーし、お酒が飲めれば完璧なのだが・・・
変化に富んだ海岸線を楽しみ新宮に到着するとレンタカー(TOYOTAヴィッツ)を2台借りT野さんとTCの運転で今日の目的地子ノ泊山に向かった。
浅里登山口は標高約305m、登り始めたのは13:51。普通ならそろそろ下山の時間だ。M子Lを先頭に西谷右岸の登山道を辿る。すぐに傾斜を増し谷は水量多く滔々と流れる。その谷に橋はなく15分も行くと最初の渡渉点となる。飛び石伝いで渡れるが女性陣はおっかなビックリ。何とかクリアするが試練はこれで終わらず、この後2回渡渉があった。
右手に"詰ノ滝"が現れる。落差は20m位あろうか壮大な滝だ。スリリングな渡渉を堪能して枝沢から尾根に取り付く。「やまびこ新道S58年開設」と標識のある登山道に入る。これまた急登路で300mの標高差を700mの距離で登る。平均勾配42.9%。
尾根の断崖の北を巻いて稜線に達すると視界が開けた。"ヤケ嵓ノ頭"のようだが何の表示もなく確信が持てない。今日のミッションは「1.ヤケ嵓ノ頭の正確な位置を記す」、「2.浅里辻の正確な位置を記す」、「3.烏帽子山を山座同定する」の3題。2.5万図に登山道の記載がなく概略図から目星を付けてきたがヤケ嵓ノ頭を特定することガできないまま先に進んだ。やがてピークに達すると「ヤケ嵓分岐点」の表示、来た道の方向に「ヤケ嵓頭を経て浅里へ」の矢印、右手には「尾根登山口」の矢印が向いている。そうすると先ほどの開けた所がヤケ嵓ノ頭のようだ。
ここで参加者に「現在地は地図上では何処?」と問題を出すと地図と地形を見比べること暫し、女性陣から答えが出ないのでT野さんがおもむろに事前に配布した地図に私が予想で書き入れていた「ヤケ嵓ノ頭」の位置だと明解して頂き、TCがその根拠とされた地形の説明をしてみんな納得。
ミッション2の「浅里辻」、大台・大峰の山域では「辻」と言えば分岐点のこと、山のピークであったり峠であったりするがこの理屈からすると、この先の鞍部になければ「ヤケ嵓分岐点」を「浅里辻」と見るのが正しそう。
さらに進むと左から林道が現れ稜線の南東側直下を併走する。リーダーは林道を歩くが、登山道にこだわるK城さんとTCは稜線を行く。いよいよ山頂に近づくと林道は左に去り四方L達も登山道に復帰する。登り詰めると視界が開け子ノ泊山(907m)山頂に達した。1等三角点が置かれ展望が良い。
暫し休憩して、ミッション3の烏帽子山の山座同定をと思ったら、別の登山者がお節介にもあの山が何、その山が烏帽子と語っている!これではミッションも興ざめ、諦めて那智山や大峰奥駈の山々そして熊野灘、素晴らしい眺望を楽しんだ。山頂には撮影クルーが休憩中で何の撮影だろう。そう言えば山形弁の外国人俳優と登り道ですれ違った。
時刻は既に16時を過ぎており、ゆっくりしてはいらない都合12分の休憩で引き返し浅里辻(ヤケ嵓分岐)に達するともう17時が近いこのまま急坂と渡渉の"やまびこ新道"を下ると明るいうちに下りられそうにない。K城さんの持っていたガイドブックに浅里辻で分岐する浅里桐原林道への下山路が載っていた。すぐに林道に出て林道歩きが長くなるが暗くなっても危険はないと判断し分岐を東へと進んだ。小ピークの北を巻き745m峰との鞍部から谷間を下る。ミッション3の代わりに「この登山道がどこを通っているか」と課題を出しみんなに考えてもらった。
当"足ながツーリスト"はお客様に如何に楽しんでもらうかのサービス精神が旺盛で、途中から先走りして浅里登山口へ急行。"山は決して走らない"がモットーの当ツーリストとしては異例ながら4.8キロの林道を小走りに車を回送してきた。登山口から2キロ地点でみんなをpick upし30分ほど時間短縮に貢献できた。
新宮市内のスーパーでビールと刺身を買い込み那智勝浦町の円満地公園に急ぐ。18:30には着く予定と伝えていたのに1時間遅れだった。今夜宿泊しているのは我々一行だけで17時で勤務を終了した担当の女性が着いたら携帯に電話してと言われていたのにあまりに遅いので待っていてくれた。バンガローにはキッチン、ガス、ベッド、寝具、トイレ、シャワーもあり完璧だ。早速食当O野さん指揮のもと夕食準備が始まった。話に花が咲き気付いたら23時だった。

《2日目》 3月16日(日) 晴れ
【行程】△円満地公園6:15=大門坂P6:39-50~陰陽ノ滝7:13-15~尾根取付7:48~稜線分岐8:37-39~烏帽子岳9:50-10:20~帽子岩10:30-44~鬼杉谷下降点11:24~三ノ滝落口12:24-41~二ノ滝12:56-58~青岸渡寺熊野那智大社13:40-14:01~大門坂P14:34=那智山蓬莱乃湯14:44-15:30=紀伊勝浦15:50-16:05-(スーパーくろしお32号)-京都20:18
【歩行データ】 歩行10.8㎞ 7:44 延登高 1,056m 延下降 1,056m 1座登頂

5:00起床、O野さん、N田さんの手際よい準備で昨夜の鍋物が雑炊となりお腹一杯詰め込んで予定より15分早く出発することができた。30分ほど走り那智山の麓、大門坂駐車場(標高約115m)に車を停め歩き出す。那智川を渡り、東ノ谷の右岸を行く。やがて「←烏帽子山 陰陽の滝→」の指導標が現れ混乱する。2.5万図には陰陽の滝の手前で左岸に渡り陰陽の滝を通り烏帽子山に行くはずだ。それなのにまだ右岸を歩いているので陰陽の滝方向が正しいはずと直進すると堰堤の向うに陰陽の滝が現れた。道は行き止まりで登山道は変わっていることが判明した。
分岐に戻り滝を高巻き河原に戻ると本流の渡渉点、水量は多い。渡渉点を探してTCが瀬踏みをしているとズルっと滑り左足膝下まで水没!それを見てかどうか女性陣の半分は靴を脱いで水中渡渉となった。左岸に渡り暫く行くと尾根取付(標高295m)。
標高差350mを急登する。平均勾配は33%、M子Lのお望みだった"好きな時に休憩"取りながら登り詰めると烏帽子山から南に流れる瓶子尾根に達する。この尾根を南下すれば大杭峠を越え光ヶ峰が連なる。しかもしっかりした踏跡があり食指を動かされる。しかし今日の目的は烏帽子山、左に進路を取り折角貯めた貯金を吐き出すように急坂を下り618mの鞍部に下りる。登り返しも厳しい。
アップダウンを繰り返して大きな岩が前面に現れこの張り出しを左から巻いて登る。遊び心旺盛なTCは反対側から登って岩の上へ、これが素晴らしい眺め。写真を撮っているのを見つけてK城さんとS野さんが上部の取り付きから寄り道してきた。これが尾根の名前にもなっている瓶子岩のようだ。
道草食っているうちに一行は烏帽子山(909m)山頂に達していた。後を追おうと急ぎ足に歩いた途端に山頂に達してしまった。今日は時間があるのでゆっくり時間を過ごした。落ち着いたところで今日のミッションが始まる。ミッション1:「子ノ泊山を山座同定する」、ミッション2:「大塔山を山座同定する」、ミッション3:「大雲取山を山座同定する」の3題だが開けているのが北方向だけでミッション1を実行する。コンパスをあわせてほぼ同定できた。蔵光山塊の最高峰なのだが特徴のないピークでどのピークかまでは微妙だった。
そして三角点の不思議。この山には1等三角点「帽子石山」が置かれている。昨日の子ノ泊山も1等三角点があった。直線距離で11キロしか離れていない近すぎる。明治期の1等三角点選点の際には約40キロ四方に一つが基準だったはず。点の記を見てみると子ノ泊山が明治20年8月8日、烏帽子山明治28年9月3日にそれぞれ設置されている。この真相や如何に?
烏帽子山を後にして西の尾根を下る。10分ほど歩くと大きな尖がった岩、これが帽子岩だ。縦走路は直前で左に反れ急降下しているが岩には梯子が掛かり登ることができる。露岩で文句なしに素晴らしい展望が得られる。横から見るとこれが烏帽子そのものの形をしている。山名の由来が納得できる。この展望で残り2題のミッションを実行、大雲取山はすぐ同定できたが、大塔山はその奥遠すぎて見えなかった。
帽子岩からの下りは恐ろしく急。鞍部に達すると途中まで登りに使った東ノ谷ルートが谷に下りて行く。ただ指導標には「難路」と書かれていた。小さなピークを乗り越し鞍部から巻くように下りだし尾根の先端で林道に出る。水平道で幾つもの谷を越えるが何れも水量が多く落差のある滝もあり東ノ谷へと流れ込む。林道の分岐点で鬼杉谷へと下降すると、やがて水流が現れ赤テープに惑わされ渡渉するが、林業者の目印だったようで、右岸に戻る。
那智川本谷に出合う直前に一旦左岸に渡渉する。本谷出合で再び渡渉し連続して本谷も渡る。林道に上がり暫く行くと右岸の高みに山ノ神の祠がある。このあたりも2.5万図の登山道は正しくない。山ノ神から再び河原に下り左岸に渡渉する。この辺りまで来ると水量が増し、谷が深くなる。東に大きく切れ込み枝沢を渡渉する。ここで臨時ミッション:「現在地は何処でしょう」、この顕著な地形を地図で見て判断し現在位置確認の方法を確認してもらった。
登山道が河原に近くなると優美な滑滝が木の間隠れに見えてきた。12時を過ぎM子Lは昼食ポイントを物色しながら歩いている。しかし谷筋は苔むしなかなか腰を下ろせるポイントが無かったのでここは絶好のポイントだ。優美な滑滝の下、20mほど先は三ノ滝の落口だ。
烏帽子、妙法、大雲取の三山に囲まれた地域を那智山という。那智川の4つの谷(本谷、東ノ谷、西ノ谷、新客谷)には48滝があるという。その最大の落差があるのが本谷の那智大滝、「那智の滝」として知られている。その上流にあるニノ滝、三ノ滝も一かどのものだ。
三ノ滝は高巻き登山道からは木の間隠れにしか見ることができない。ニノ滝へ向けて尾根の張り出しを乗越手前に分岐があり、三ノ滝への道があった。希望を聞いてみるが誰も下りて行こうという人は無くパス、ニノ滝へと向かう。苔むした危なっかしい岩壁を左に見て急坂を下る。「今大地震が来たらあれは崩れるだろうな。京都の山岳会グループ下敷きになる。なんて不運なことになりかねないね」なんて話しながら通過する。下りきるとニノ滝の滝壺。豪快な滝だ。滝の傍には樹齢何百年という杉の木、その前には沢山のお札が打ちつけてある。修験道の行場のようだ。
滝壺のすぐ下を渡渉する。15m位の川幅があり、しかも滑りやすい。渡ったと思ったらまた左岸に右岸にと渡渉を繰り返す。そして本谷最後の渡渉点、「この先の河原は進入禁止」の看板、すぐ下が那智大滝の落口であることが知れる。ここは西ノ谷との合流点ですぐに西谷も渡渉する。これで今山行の渡渉は終了。西ノ谷沿いに進みどんどん高度を上げる。妙法山への尾根を分岐しトラバース道を進み舗装道路に下りると西国三十三箇所の第一番札所那智山青岸渡寺の境内だ。本堂前の広場は三重塔と滝が望めるポスターなどでよく見る風景だ。お寺に参拝すると、隣の巡礼者は般若心経を唱えていた。
本堂を南に行くと熊野三山の一つ熊野那智大社、ここに到る参詣道も併せて世界遺産に登録されている。後鳥羽院の頃は都の上皇、公卿殿上人の参詣が盛んだったという。参道には那智黒の碁石や硯を売る土産物店。店が途切れると熊野古道の面影を今に留める杉木立の石段道で大門坂を下る。駐車場に帰り着いたのは14:34、残された時間はあまり無い、大急ぎで那智山蓬莱乃湯に立ち寄る。入浴料420円と良心的な値段の温泉で喜んだのも束の間、体を洗おうとすると石鹸・シャンプーが無い!
思い思いにお土産を買い、紀伊勝浦駅へと向かう。レンタカーを返却し駅に着いたのは"スーパーくろしお号"発車の10分前だった。昨夜のおつまみの残りと酒、ビールは車販で仕入れ、反省会、4時間の乗車もあっという間に過ぎてしまった。
2日間の思いをこめて 「那智の山 深く流るる 滝川の 御幸の道は 春の中辺路」 詠み人知らず
【歩行データ計】歩行19.9㎞ 11:35 延登高 2,032m 延下降 2,032m 3座登頂 《山紀行638》


【感想】 36期 Y.T
調べていたより両方とも結構きつい山で、沢の渡渉で難儀しました。子の泊山は詰の滝(500m付近)からヤケ嵓ノ頭への登りがきついでした。ヤケ嵓ノ頭の標高は820mと書いてありましたが、稜線に登りついた800m付近のようでした。熊野灘が霞んで見えました。頂上での課題は「頂上で烏帽子山の同定」でした。コンパスで208度でした。翌日、烏帽子山に登った時にコンパスを逆にして確認したらばっちりでした。下山は沢を避けて尾根道を下りました。
烏帽子山も登り口、下山口近くでは沢の渡渉で難儀しました。標高のわりにアップダウンがきつく、岩の多い山でした。頂上での「子の泊山の同定」に続いて烏帽子岩で「大塔山と大雲取山」の同定を行いました。大塔山は大雲取の稜線に遮られて見えないようです。ここから林道終点までは読図に失敗しました。青岸渡寺の端から烏帽子岩が見えました。写真から烏帽子岩を地図に落としてみました。25000図の「烏帽子山」の文字の「帽」の右のようです。
いずれの山も人の少ない静かな山でした。ちらほらと春の花が芽吹きだしていました。久しぶりのバンガロー泊まり、美味しい夕食を頂きました。次回は吉野の桜、楽しみにしています。


【感想】40期 K.N.
 川を渡って山道を歩き、また川を渡って山道を歩く。そして川を渡る…。前を歩いていた背の高い人の片足が川に落ちるのを見て、すっかりビビッてしまいました。私は足が短いので必ず川にはまるでしょう。そこで、はじめから川にはまって向こう側に行くことにしました。靴を脱いでザックに入れ、裾を思いっきりめくって水に入る。水は冷たかったのですが、後から足がぽかぽかしてきました。
 苔むした巨岩や巨木、古道の雰囲気をたっぷり味わえました。那智の4つの滝も見ることができ感動しました。ありがとうございました。


【感想】  48期 M.K.
那智勝浦は初めて、往復JR特急利用でバンガロー泊のリッチ山行に是非行きたいと思いました。軽い気持ちで参加しましたが、1日目から渡渉で緊張の連続でしたが2日目になると慣れてきました。1番印象に残ったのは岩や木が緑一色に覆われた那智原生林。2番目は渓流の透明な水と静けさ。3番目はそれぞれ特徴のある滝。
1日目の岩壁ノ滝は巨大な岩壁を一気に落ちる豪快な滝で幅も広かった。2日目の陰陽ノ滝は丸い岩が上下に重なり上は二筋に分かれ下は岩をなめて流れ、滝壺はエメラルドグリーン。夜美ノ滝は丸いギザギザの大きな岩をなめるように流れ、幾筋かに細く分かれていました。三ノ滝は上から見ただけですが豪快で滝壺は緑で美しい。二ノ滝は綺麗な滝らしい形で滝壺が広かった。自分の足で歩いて見たものはどれも素晴らしく、特に本谷の渓流の滑滝のような流れは気持ちが落ち着き何時までも居たい所でした。
4番目は天気に恵まれ展望がよかった事。1日目の子ノ泊山からは北に大峰・台高の山、東に熊野灘、南に烏帽子山が見えました。2日目の帽子岩からは、昨日の子ノ泊山や熊野の山並が見え青空で素晴らしかった。ミッション1日目は自分の地図に1.2.は記入していてカンニングになるので保留しましたが、T野さん・Y本さんの読図の凄さに感心しました。3.烏帽子山尖っているので直ぐ分りました。
この時季花が少なくてバイカオウレン・シロバナノネコノネソウが見られただけですが、天然のシイタケを西田さんに教えてもらい初めてで嬉しかった。リーダーS方さんのルート探しや渡渉に挑まれる姿は素晴らしかった。Y本さん、T野さん、読図・渡渉・運転全てにお世話になりました。O野さん、N田さん食事の準備ありがとうございました。


【感想】     50期 J.O.
水も滴るいい南紀。岩肌のあちこちから水が染み出て、苔やシダなど鮮やかな緑に覆われている。初日の子ノ泊山。登山口からすぐ広い沢に出る。豊かな水流を「渡る」と聞いてドキリ。沢の徒渉はワタシの最も不得意とするトコロだ。少しでも平らな石を探してそっと足を乗せる。ゆっくり、ゆっくり。2日目の烏帽子山は徒渉の連続。大きな石がゴロゴロ。どの石も青々と苔むして、いかにも滑りそう。向こう岸まで何メートルだろう。どうせ濡れるなら・・・ 靴と靴下をザックに放り込み、素足で水に入る。冷たいが、いい気持ち。滝にもいくつか出合う。「どこからこんな水が」と驚くほどの水量だ。豪快にしぶきを上げつつ落ちて行く。エメラルド・グリーンの淵に春の日差しが注いでいる。
今回のミッション。子ノ泊山での(1)と(2)「○○の正確な位置を記す」はお手上げ。(3)「烏帽子山の山座同定」では「あの左端の山」と自信無く答えたら、意外。正解だ。1年近くコンパスをぶら下げて回った甲斐があったと喜んだのも束の間。2日目。Y本TCの御前でコンパスの使い方がなってないことが判明してしまう。昨日はまぐれ当たりだったのだ。シルバ・コンパスによる正しい山座同定法を教わる。
那智大社から下った大門坂の終わる辺りでレンゲの花と土筆を見かけた。民家の庭には黄色い蜜柑(甘夏?)がたわわに実っていた。無人販売三宝柑は小さいがギュっとしまった南紀の味だった。


【ヘロヘロリーダーてん末記】  42期 M.S.
リーダーの資格はあるが実力が伴わないのにリーダー役を引き受けたのは、休憩と叫べて先頭を歩いて速度が決められる利点だけで、後の事は力強い参謀にお任せした次第で、なんともつたないリーダーに付いてきてくださった皆様と2人の参謀にまずはお礼申し上げます。
15日 特急オーシャン号に乗り、旅行気分で車窓からの春の海を眺め、駅弁を楽しみ、新宮に着いて、レンターカー2台で子の泊山の登山口 浅里登山口へ向かった。地図が読めないリーダーは山の中、木にある赤いテープ、ヘロヘロテープを目印に歩いた。
子の泊山行きは、まずもって大きな(私にとっては)渡渉場面が2回もありで、水嫌いな私はびびってしまったが、そこは2人の力強いナイトに支えられ無事通過。道中は登って、下って、登って、下って、登って、下って、といやになるほど繰り返しもう頂上だと自分に言い聞かせながら登った。が、帰路は渡渉場面には暗くなる頃と予想され、2人の参謀は帰路を変更した。怖い場面を通らずに帰れると喜んだが、浅里登山口の車を降りた場所に戻るには1時間も歩かねばならなかった。
そこは韋駄天山本さんが一足先に走り降りて車を取りに行ってくれた。それでも30分ほど歩いた頃にお迎えの車がやってきて、N田さんの意見で全員7人が乗り込んで、浅里登山口へそこから2台の車はその夜の宿へと急いだ。
食料担当のO野さんの気配りのきいた2種類のなべをいただいて、非会員を交えてにぎやかな楽しい夕食となった。バンガローはベッド・トイレ・シャワー室・キッチン・冷暖房付の豪華設備に満足。
16日 おそ足の心配で、準備できるや否や山へ向かった。今日の山は昨日とは違って簡単と言うツアーコンダクターの言葉に期待したが、またもや、渡渉場面もあり、これはまだ許せる範囲内でクリア、登って、下って、登って、下って、岩登りもありで、これまた面白い山登りになった。(誰かが曰くです。)
烏帽子の形の岩の上で、Y本さん出題の3ヶのミッション(子ノ泊山・大塔山・大雲取山を山座同定する)は、ポッシブルの方に任せて、私は「インポッシブルだー、上り下りでヘロヘロ考えられへん」と、まだまだ下り道が残っている行程に体力保持のため、他のことは考えられなかった。
とにかく下山を早くと、今日は帰りの電車の時間があるので私は駆け足で、(誰かによれば普通かもしれないが)先を急いだ。那智の滝近くでまたもや渡渉場面に出くわしたが、溺れることなく渡り、最後には穏やかに荘厳に流れる那智の滝を臨んで、無事に終わったことを深く感謝した。
寺の前より烏帽子の岩がちょこりんと見えたのには、ようやれたなーの達成感を感じた。電車の発車時間までの余裕はあまりなく、近くの天然温泉で疲れを取り、電車に乗った時には役目を終えてほっとした。天気と仲間と何かに恵まれてヘロヘロになったが楽しい思い出の山行きになった。