京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉丹沢三峰・主稜《山紀行665》

富士山の夕陽(檜洞丸より)

 

丹沢の主要なルートに塔ノ岳から蛭ヶ岳、姫次を通り焼山に到る「主脈」、蛭ヶ岳から檜洞丸を通り大室山に到る「主稜」、そして丹沢山から宮ヶ瀬に到る「丹沢三峰」の稜線がある。今回それらをつないで宮ヶ瀬から三峰、主脈の一部、主稜を通り大界木山、西丹沢への縦走を行なった。

【日程】2008年12月20日(土)~21日(日)

【参加者】48期 H.Y.

 

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【1日目】H20.12.20 晴れ

【行程】桂川20:45-大垣23:04-19-(ムーンライトながら)-横浜4:41-54-厚木6:15=宮ヶ瀬6:45~御殿森ノ頭7:25~高畑山7:56~金冷シ8:26~松小屋ノ頭8:43~本間ノ頭9:43~無名ノ頭10:01~円山木ノ頭10:14~太礼ノ頭10:35~瀬戸沢ノ頭10:47~丹沢山11:18~不動ノ峰12:07~棚沢ノ頭12:20~鬼ヶ岩ノ頭12:35~蛭ヶ岳12:59-13:16~ミカゲ沢ノ頭13:43~臼ヶ岳14:08~金山谷ノ頭14:49~青ヶ岳山荘15:30-16:08~檜洞丸16:13-30~△青ヶ岳山荘16:35

【登山データ】歩行 20.0? 9時間50分 延登高 2,796m延下降 1,561m 18座登頂

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青春18きっぷの季節の"ムーンライトながら"はいつも満席。夜行グッズ(空気枕・アイマスク)を取り出しすぐにお休みモードに入り、横浜直前までぐっすり眠った。茅ヶ崎まで引き返し相模線で厚木に入り1時間後までないバスは待ってられないのでタクシーを奮発(6,300円)、一人で乗るときつい。厚木までのJR代よりも高くついた。

宮ヶ瀬三叉路から200mほど南行くと登山口がある。パウチされた掲示には「6~9月はヤマビルに注意」とあり蛭の"名所"を物語っていた。登山道はなだらかに高度を上げる。2.5万図では稜線を通っているが実際は南東側に一段下って付いている。木の間隠れに宮ヶ瀬湖が見え長丁場にピッチを上げる。御殿森ノ頭(580m)は縦走路から20mほど入ったところが山頂で分岐に「←御殿森ノ頭」の指導標がある。山頂には小さな祠が一つあるだけで山頂を示すものは何もない。

巻き道の登山道は面白くない。稜線に無理やり出ると微かに踏み跡が付いている。そのまま稜線を辿り高畑山(766m)に達する。3等三角点「金沢」が置かれ山頂標識の傍らには展望櫓まで備わったいい山頂だ。鞍部で巻き道の正規登山道が交差し今度は北側へ巻いて行った。稜線道を進み送電線が上空を通る鉄塔に達すると前後が刈払われ展望が利く。いま登って来た高畑山が望める。その後には宮ヶ瀬湖越しに仏果山(747m)の姿もくっきりしている。

送電線まではしっかりした巡視路があったが844mピークへは少々怪しくなった。金冷シ(約835m)は岩場をよじ登り稜線を進む。展望が良く南に大山(おおやま・1,252m)の姿が素晴らしい。

松小屋ノ頭(903m)には展望はなく序々に高度を上げるといよいよ丹沢三峰、本間ノ頭(約1,345m)、円山木ノ頭(えんざんぎのかしら・1,360m)、太礼ノ頭(たれいのかしら・1,352m)だが2.5万図には東峰、中峰、西峰と表示されている。本間ノ頭には3等三角点「鳥屋村」が置かれている。3峰とも展望は利かず欲求不満が溜まる。本間ノ頭と円山木ノ頭の間には無名ノ頭(約1,350m)があるが山頂標識もない。

瀬戸沢ノ頭(1,375m)を過ぎると丹沢山への最後の登りとなる。ここまで来て初めて人と出会った。メジャーな登山道である大倉尾根を登って来たというが随分早いものだ。標高1,250mを超えた辺りから薄っすらと雪が残り徐々多くなっていった。堂平からの登山道が合流すると丹沢山は近い。

丹沢山(1,567m)は日本百名山の山で総体山名であるとして最高峰の蛭ヶ岳百名山の山とする人もいるがそのままの山名の山でしかも1等三角点「丹沢山」があるのでやはりこの山を百名山の山とするのが正当であると思う。現地に行くと百名山の標識もあった。10数人の登山者が思い思いに場所を占め昼食中。大倉尾根から登って来た人達だ。みやま山荘の小屋もありここを目的地として引き返す人が多い。今季2度ほど降雪があったそうで山頂部では10センチほど積もっていた。気温は高いが風は強くゆっくりはしていられない。

快晴の澄んだ空の下、西の方には裾野まで遮るものもなく雄大な富士山が見える。南アルプスや奥秩父からだと富士山は南に位置するため日中ほぼ逆光となる。その点、丹沢は東隣の山で日の光を背負って富士を望むことができる。

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丹沢山から西は丹沢主脈となり核心部の山域に入った。この稜線は樹林に混じりササ原の部分があり展望が良い。前方には不動ノ峰が大きく構えている。不動ノ峰山頂直下に東屋風の休憩舎があり、壁の後で風を遮り昼食を取った。不動ノ峰(1,614m)山頂も展望が良く富士山はもとより、愛鷹山箱根山伊豆半島の山々もしっかり見える。

棚沢ノ頭(約1,600m)、鬼ヶ岩ノ頭(1,608m)を通り下りだしたところの岩場は"鬼ヶ岩"と名付けられ鬼の角の向うに蛭ヶ岳が聳えていた。蛭ヶ岳(1,673m)は丹沢の最高峰、蛭ヶ岳山荘があるがひっそりしていた。唯ひとり居た男性は、塩水橋に下ると言っていた。山頂には3等三角点「蛭ヶ岳」があったそうだが現況は「亡失」とされている。

蛭ヶ岳からは"丹沢主稜"となり私にとっては処女ルート、ひと気は全くなく静か。急斜面を下りだすとすぐに雪はなくなった。鞍部は1,400mを切り蛭ヶ岳が厳しい山容で聳えている。登り返してミカゲ沢ノ頭(1,421m)から振り返れば蛭ヶ岳が素晴らしい。次のピークは臼ヶ岳(1,460m)、縦走路から100mほど南に分岐した所がピークとなっている。この山域では登山地図に名前のある山も殆ど山頂標識がなくあっけない気がする。他の山域なら私製のプレートがいくつもありそうなものだが・・・

200mほど下降し神ノ川乗越(かんのかわのっこし・約1,255m)に到る。蛭・檜の最低鞍部で檜洞丸へ向けて登り返しとなる。次の金山谷ノ頭(約1,360m)も縦走路から外れる。ロープで通行止めされているが乗り越えてピークに立つ。やはり標識はなく展望も利かない。金山谷乗越(約1,300m)に下り、檜洞丸へ向けての最後の登りとなるが疲れた体にこの登りは辛い。山頂直下にある山小屋"青ヶ岳山荘"が今日の宿だ。

扉を開けるとなんと人がいっぱい。20人ほどだろうか、この季節にこんなに沢山の人が居るとは予想しなかった。団体かと思ったがみんなクリスマスパーティー目当ての常連さんだった。このパーティーは常連さんが皆のシャンパンや食料を持ち込み一見さんも含めて楽しい一夜を過ごそうと言う企画で、一度参加すると常連さんにならなければいけないようで、私も来年は酒をボッカしてという運命に嵌ってしまったようだ。

16時頃かパーティー?飲み会?が始まり、夕陽の時間の檜洞丸登頂を挟んで延々22時過ぎまで続いた。18時頃にはメインディッシュのチキンが出て、昭和世代の皆は歌声喫茶よろしく"館長"のギターに合わせ懐かしの歌で盛り上がった。そして小屋番"トンボさん"の怪しげな司会で手作りキャンドルのオークションがあり、クリスマスケーキと、この日誕生日だと言う小屋の女性ヘルパー、ダテちゃんのバースデーケーキも出て最高潮に達した。

そして忘れてはいけないのは、この宴会の途中で見に行った夕陽は、富士山の左肩に吸い込まれるように沈む壮大な眺めだった。

 

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【2日目】H20.12.21 晴れ一時ガス

【行程】△青ヶ岳山荘6:15~檜洞丸6:18~熊笹ノ峰6:37~大笄6:42~小笄7:26~犬越路7:55~大室山9:06~前大室9:55~加入道山10:10~白石峠10:54~水晶沢ノ頭11:18~シャガクチ丸11:38~バン木ノ頭11:42~モロクボ沢ノ頭11:57~大界木山12:19~モロクボ沢ノ頭12:43~畦ヶ丸13:00~権現山14:11~西丹沢BS 15:15=中川温泉15:31-16:32=茅ヶ崎18:20-21:23-△河辺23:05

【登山データ】歩行 22.2? 9時間00分 延登高 1,756m延下降 2,761m 15座登頂

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宴会疲れで宿泊者はまだ誰も起きない。ほのぼのと白みだした6:15独り小屋を出発した。丹沢山の方角から日が昇る。檜洞丸山頂では東方向の展望が利かないのでご来光を求めて先に進む。富士山方向は比較的開けているが東側は全くダメ。熊笹ノ峰(1,523m)にも展望がなく日の出の時間(6:42)が迫り焦ってくるがどうしようもない。大笄(おおこうげ・1,520m)手前で神ノ川ヒュッテへの下山路が分岐している。そこにザックが置かれているが主はなし。不審に思いながら大笄に登ると、ここにも展望はなく西の斜面を下りだしたところで荷物の主が三脚を立てていた。日の出の時刻となったので東側の展望は諦め、このカメラマンと並んで朝日に染まる富士山を待つことにした。

雲ひとつない快晴、写真写りには適度な雲が欲しいところだが贅沢はいえない。20分ばかり粘り刻々明るくなる富士を撮り、東京三鷹に帰るというカメラマンと分かれ先に進んだ。300m近く下り少し登り返すと小笄(ここうげ・1,288m)、山頂は少しだけ展望が利く。1,060mまで下り切ったところは犬越路(いぬこえじ)の峠、小綺麗な小屋があり中に入ると昨夜ここで忘年会をしたという6名のグループが朝食中、もう8時だと言うのに地上の生活そのままのようだ。6年前にここを通ったときはこんなに綺麗な小屋はなかった。このグループに聞くと3年ほど前に建ったそうだ。

風は強くじっとしていると寒い。しかしここからは大室山への500mの登り返し、シャツ1枚になって出発! 10分ほど登ると3等三角点「イノコイシ峠」が傍らにあり見送ってくれる。中腹に達する頃、あれだけ晴れていたのにガスが出て視界が閉ざされてしまった。

峠から1時間で大室山の稜線に乗り山頂に向けて歩くとテントが2張、丹沢山域は全面的にテント禁止なのだが・・・こんなのは無視して大室山(1,588m)山頂に向かう。樹林帯で展望はないが山梨百名山の標識が立っていた。2等三角点の点名は「大群山」、なぜこんな点名になるのだろうか?

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再び不法テントを横目に見て分岐に戻り加入道山への縦走路を行く。1,543mピークを過ぎた頃、ガスの下に出て再び青空が顔を出した。破風口(1,345m)の鞍部から登り返して前大室(約1,420m)に到る。右に道志へ下る道が分岐しているが、道志からのバス便はこのところ特に悪くなったようで帰るのに苦労しそうだ。

加入道山(1,418m)山頂には3等三角点「加入道」があり、2人の登山者が憩っていた。西丹沢から登ってきたそうだ。この後南に600mほど行ったところにある白石峠で西丹沢から登ってくる東京のF澤さん(4月賤ヶ岳例会に参加した)と横浜のN川さんがJOINする予定だが、8:30に出発しコースタイムで来ると11時になるはずだ。登山地図のコースタイムは辛目で短縮することはできないだろう。先ほどの2人は7:30に登りはじめたそうだ。時刻は10:10、山頂に避難小屋があり時間調整をして峠に下りよう。

10:54に白石峠に着くと二人は10分ほど前に着きコーヒーを飲んで待っていた。一寸見込みが違った。少し休憩してF澤さんを先頭に歩き始めた。1,307mピークを越し水晶沢ノ頭(1,278m)、シャガクチ丸(1,191m)と続くが山頂標識もなくF澤さんは顧ることもなく通過して行く。もっとも2.5万図を見ながら歩いていないと山頂だとは分からないことだが・・・

平成19年1月に歩いた鳥ノ胸山から山中湖への尾根に縦走路をつなぐためモロクボ沢ノ頭から先にある大界木山へのピストンを目論んでいた私はバン木ノ頭(1,180m)の手前で2人から先行した。モロクボ沢ノ頭(約1,190m)の縁台のようなベンチにザックを置き、空身で縦走路を西へと進む。2人組を追越し急ぎ足で進む。忘路峠(約1,120m)からは120mの標高差の登りで結構きつい。

大界木山(1,246m)は昨年、道志の唐沢から秋葉山、鳥ノ胸山、平指山を通り東海自然歩道の稜線にあがり、縦走路を飛び出して山頂に立った山で今回も同じようなやり方でこの山に来て、縦走路をつなぐことができた。展望のない山で長居は無用。すぐに折返しモロクボ沢ノ頭に戻る。さっきの2人組みとは大界木山と忘路峠の間のピークでであった。

モロクボ沢ノ頭でザックを背負うとヤケに重く感じる。当然2人は先に行っている、畦ヶ丸避難小屋で待っているはずだ。ピッチは緩めるわけに行かない。畦ヶ丸山頂稜線に達し避難小屋の扉を開けるがひと気なし。さては畦ヶ丸(あぜがまる・1,293m)山頂だな。果たして2人は山頂で待っていた。20分ほど前に着いたそうだ。コースタイムで往復1時間の大界木山なのでお待たせは許容範囲だっただろう。

3等三角点「アゼガ丸」に挨拶し、今日のハイライトコースに入る。登山地図にない権現山尾根を下る。通常畦ヶ丸からは善六ノタワを通り西沢へと下りるが、畦ヶ丸の南西尾根の先に権現山があり、2.5万図でも大して急な感じもなく、もしやルートがあるのではとネットで検索するとそれほど苦労せずに歩いているようだ。それでは権現山に行かない手はないだろう。

地図読みが必要になるとF澤さんはトップに立とうとせず、私がコンパスを合わせ先頭に立った。微かな踏み跡があるが所々不明瞭になる。赤テープも要所にあり、まずは問題ない。尾根の屈曲点で権現山が見通せるところに出て写真を撮る。馬ノ背の尾根もあり慎重に進む。やがて西沢からの一般道が合流すると権現山までは600m。ザックをデポし権現山にアタック、標高差は110m途中小ピークもあり結構登り応えがある。今朝から違和感を覚えていた左膝に痛みが増し、登りがきつい。下りはさして痛まない。

山頂からは谷峨駅の北にある大野山が良く見える。横浜のN川さんによると山頂は牧場になっているそうだ。分岐に引き返し西沢へと下る。2.5万図では凄い等高線の詰まり方で難路を予想したが樹林帯のなかジグザグに道が付き問題なく西沢に達し畦ヶ丸への正規登山道と合流した。道の真ん中に看板があり振り返ってみると「この先行き止まり登山道でない」と書かれている。登山地図には登山道として記されているのにどういうことだ?

登山道は西沢沿いに渡渉を繰り返し(といっても立派な丸木橋で)、1.4キロ歩き、河内川の長い吊橋を渡ると西丹沢自然教室のバス停だ。逗子のS野さん(今年、子ノ泊山・烏帽子岳例会に参加)が待っていた。彼女もF澤さんたちと一緒に登るつもりだったがギックリ腰で大事を取りお迎えに来てくれた。しかし転んでも唯では起きないS野さん、権現山にピストンしてきたと言う。人に道を聞くと「登山禁止」だと言われたが「はいはい」と言って登ったそうだ。

車があるとありがたい4.5キロ南の中川温泉に立ち寄り汗を流した(\700)。この後は反省会?忘年会?何でもいいからビールを飲みたい。お酒1滴も呑まないS野さんに甘え国道沿いにお店を探すが何故か反対車線にばかり見つかる。途中渋滞もあり2時間近く走り相模川を渡り茅ヶ崎市へと入ったとき反対車線に居酒屋風のお店を見つけた。2時間余り飲んで食って、茅ヶ崎駅で皆と別れ今夜の宿である河辺に向かった。

後日談、22日は奥多摩天祖山に登る予定だったが膝痛みが抜けず大事を取って中止した。午前中は晴れていたのに・・・

 

【登山データ計】 歩行 42.2? 18時間50分 延登高 4,552m 延下降 4,322m 33座登頂