京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

[個人]武奈ヶ岳北東斜面

雪の武奈ヶ岳で期せずして登山道ではない北東斜面を登ってきましたので、報告します。

武奈ヶ岳北東斜面

 

 

例会外山行 武奈ヶ岳北東斜面

52期 A房

【日程】2009年3月15日(日)

【メンバー】単独

【行程】7:55坊村発~9:58御殿山~10:50-11:20武奈ヶ岳~11:59細川越~12:47-57釣瓶岳~13:17細川越~13:31スゲハラ小屋付近~(武奈ヶ岳北東斜面)~14:37-47武奈ヶ岳~15:16御殿山~16:15坊村着

 

 雪の武奈ヶ岳で期せずして登山道ではない北東斜面を登ってきましたので、報告します。

 

 前日の土曜日、京都市内は冷たい雨だったので「比良ではきっと雪だろう。今シーズン最後の新雪を楽しめるチャンスを最大限生かそう」と考え、スノーシュー、アイゼン、Wストック、ピッケルをザックの中に全て納め、どんな雪の状態でも楽しめる体制で出発しました。

 

 坊村には雪はまったくなく、御殿山に向かう植林地の急斜面で数センチ。植林帯を抜けたあたりから雪上歩行といえる状況になりました。足跡からみるのに先行者は1名のみ。新雪を気持ちよく歩けます。夏道(ユリ道)と冬道(尾根道)分岐地点からは先行者のトレースに沿って尾根をゆくことにしました。積雪量も増え、まがうことなく雪山登山です。先行トレースがあるのは雪景色としては減点要素ですが、踏み跡のない雪山を自分でルートファインディングするのも心細いので、先行1名分なら「ちょうどいいか」といったところ。

 

 痩せ尾根になり、左側の葛川方向の谷は深く切れ落ちていて、登山者が迷い込まないように、進入禁止のロープが尾根沿いにずっと張ってあります。雪が柔らかいため、アイゼンは必要なく、つぼ足とピッケルで進みます。急斜面でちょっとしたアイスバーン状になっているところは、ピッケルでステップを切りました(本当は別にそんなことをしなくても登れるはずですが、練習と雪山気分を盛り上げるため)。

 

 先行者のトレースとは別れ、自分で歩きやすいところを探しながら進み、積雪のためか、なかなか御殿山に着かないなあと不安に思い始めた直後に御殿山に着きました。ワサビ峠を眼下に正面には新雪に覆われた武奈ヶ岳がドカンと構え、右手のコヤマノ岳も雪化粧。新雪と青空のコントラストが見事でした。武奈ヶ岳頂上には先行者が1名のみ。昼食をとっていると、続々と登山者が到着しました。

 

 釣瓶岳を目指して北稜を歩き始めると、さっき頂上で一緒だった人が引き返してきます。「登山道はあるのでしょうか?この先は切れ込んでいて、ちょっと無理です。ルートが違うのでしょうか?」と話しかけてきます。私も北稜は初めてなので「ルートはあるはずですけどね。私はとりあえず行けるところまで行ってみます」と答え、しばらく進むと、確かに急斜面でトレースもなく、まったくはじめてだとちょっと勇気がいるかも。

 

 スノーシューに履き替えることにして準備していると、横を、さっき頂上で私よりも少し後に到着した人がつぼ足のまま、ずんずんと急斜面を降りていきました。色あせたRIPENのザックに、時代物のオレンジのヤッケ姿で、年齢は私と同じくらいですが、すごくベテラン風の人。先を超されたのはちょっと残念ですが、先行者がいるのは心強い。

 

 先行者のつぼ足跡は、かなり深く沈んでいますが、スノーシューだと沈むことなく楽々歩けます。急斜面でもスノーシューのグリップは良く、問題ありません。先行の足跡は、細川越えから広谷に向かい、釣瓶岳へはトレースがありません。冬の比良山を縦走する人はいないのでしょうか。気持ちを引き締め、釣瓶岳を目指します。登山道が右に曲がり、釣瓶岳を正面に見上げる急斜面のところになって積雪量が減少し、スノーシューを外しました。しばらくして山頂。山頂手前からはスゲ原方面からのスキー跡が合流しました。

 

 釣瓶岳山頂で小休止し、細川越えまで戻り、広谷を降ります。広谷から望武小屋を確認して、再度武奈ヶ岳に登るのが当初の予定。広くて気持ちの良い、名前のとおりの広谷をハイペースで降りると、立派な小屋があります。昭文社の登山地図には「広谷小屋」が載っているので、「広谷小屋」に着いたのだと思いました。地図では「広谷小屋」の先1つ目の谷を登るとイブルキノコバなので、それらしい分岐点を探しましたがなかなか見つかりません。

 

 一生懸命探すと、川の向かいにリボンがあります。渡渉しないといけませんし、踏み跡もないので変だとは思いましたが、「広谷小屋」との位置関係ではそう行くしかないので、ピッケルでバランスをとって渡渉し、鹿の足跡しかない雪の急斜面を登り始めました。あるはずの望武小屋はまったく見えないし、変だなと思いましたが、とにかく登って尾根に出ればなんとかなると思い、登り続けました。

しばらく登ると踏み跡があり、しかもその踏み跡は斜面を登っているので、ほっとして後を追います。

 

 地形図を詳細に見ると広谷小屋の西の緩斜面ピークに向かって歩いているのではないかとわかり、緩斜面のピークまで登ると、正面に武奈ヶ岳が見え、2人組が斜面にとりついているのを発見しました。ホッと安堵。地図で確認して武奈ヶ岳の北東斜面だと解りました。

ピッケルを斜面に突き刺しながら快調に進むと2人組に追いつきました。お二人は雪の比良の登山道でないところを中心に歩き回っている方で、比良から見える御岳や鈴鹿には行ったこともなく、ひたすら比良を歩いているとのこと。先週木曜日に今日と同じ斜面を歩いたら雪面が凍っており、アイゼンが良く効いて面白かったと嬉しそうに話してくれました。推定60歳代の方でアイゼンとWストック。私は雪が柔らかいのでアイゼンの必要を感じず、つぼ足とピッケル。無事、山頂にとりつき、ちょっとしたバリエーション体験みたいで面白かったのですが、意図してそうしたわけではないので、大いに反省すべ

きことです。

 

 帰宅してから調べると、私が「広谷小屋」だと思いこんだ小屋は、同志社高校山岳部OB会が2000年に再建した「スゲハラ小屋」でした。細川越えから広谷までの距離を考えると「広谷小屋」の到着時間が、あまりにも早すぎると疑問に思うべきでしたし、「広谷」には道標があるはずで、いくらなんでも地図にある分岐の目印がリボン1つというはずがありません。経験者の方には考えられない間違いでしょうが、スゲハラ小屋を広谷小屋だと思い込んだことから間違いに間違いが重なったわけで、大変良い経験になりました。