京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

「RDBの会」 第14回植生観察「八ヶ峰・芦生」

五波峠から若丹国境尾根を西へ向かう。北側は杉の植林。幹に熊除けのテープが巻かれている。南側の自然林の多くは葉を落とし、しなやかに伸びた枝の向こうに青空が見える。白・グレー・肌色の三色迷彩の樹皮はナツツバキ。縦じま模様はクマシデか、イヌシデか。落葉した樹の同定はむずかしい。

09.11.21八ヶ峰007

「RDBの会」 第14回植生観察「八ヶ峰・芦生」

【日 時】平成21年11月21(土)-22日(日)

【参加者】CL山本憲彦、SL西田和美、小西春代、安井一枝、葛城美知子、井上純子、奥野淳子、向昌弘(会員8名)、谷由美子(非会員1名)計9名

【天 候】11/21晴れ一時雨 11/22薄曇り

【記 録】                      50期 奥野 淳子

11/21(土)JR京都駅前8:30=(車)=10:50五波峠11:07-12:35八ヶ峰13:00-13:24染ヶ谷分岐-14:18五波峠=14:50美山集落15:20=15:45みやま荘

11/22(日)みやま荘7:30=7:50芦生公民館駐車場8:10-8:42櫃倉谷分岐-10:37けやき峠10:50-11:24ブナノキ峠11:50-12:28けやき峠-13:35櫃倉谷分岐-14:03駐車場

五波峠から若丹国境尾根を西へ向かう。北側は杉の植林。幹に熊除けのテープが巻かれている。南側の自然林の多くは葉を落とし、しなやかに伸びた枝の向こうに青空が見える。白・グレー・肌色の三色迷彩の樹皮はナツツバキ。縦じま模様はクマシデか、イヌシデか。落葉した樹の同定はむずかしい。葉や実が落ちていないか根元を捜す。こげ茶色のキノコはミイノモミウラモドキ。鐘形の傘の裾が波打っている。

山頂直前で雨が降り始めた。「晴れたら360度の展望」の頂上も今日は山並みがうっすら浮かぶだけだ。下りで鮮やかな黄色のコガネキクラゲを見つけた。下山後、美山集落へ向かう。萱葺(かやぶき)の民家が並んでいる。屋根は緑に苔むして、小さな植物達が芽を出していた。

翌日は芦生山の家のそばから林道を歩き始める。京都大学芦生研究林の入口で登山届けを出す。メタセコイヤの並木は穏やかに紅葉している。垂れ下がり地面に着いた枝から根を張るアシウスギ。保存木のユクノキ・メグスリノキ・ミズメ。返り咲きのトクワカソウは両日で見かけた唯一の花だ。紅い実のツルリンドウとツルアリドオシ。紫の実のムラサキシキブ。黒い実のヒサカキ

けやき峠で大きなさえずりが聞こえてきた。双眼鏡をのぞくと、枯れた木のてっぺんにイカルが一羽。この先200mあたりでようやく林道を離れ、尾根伝いにブナノキ峠へ向かう。腐葉土を踏むような柔らかな道。ミズナラの大木に巻かれたラップはカシノナガキクイムシ対策だ。ブナノキ峠は樹林の中で展望は無い。林道沿いの斜面にはツチグリがたくさん顔を出していた。栗そっくりの堅い幼菌は土に埋まっていて、熟すと殻皮を星型に開いて土の中から現れる。

さて、今回の特記。落葉高木の上方にモシャモシャの・・・絶滅危惧種ヤドリギを数え切れないほど見つけた。常緑のヤドリギは、この季節、葉を落とした宿主をつつましく飾っている。

(感想)

向 昌宏(第52期)

いつもは車で通ってしまう林道を今回はゆっくり歩きました。車窓からでは見落としてしいますが、法面にはたくさんの植物がついてるので、これからは林道歩きもしてみようと思います。特に印象に残った植物はなかったのですが、八ケ峰の道中にイヌシデの優占しているところがありました。ナツツバキ(?)も樹皮がきれいでしたが、確証がないので葉のある時期に見に行きます。芦生研究林の林道歩き、ある意味新鮮で楽しかったです。ありがとうございました。

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八ヶ峰・歩いた軌跡(作成 向 昌宏)

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ブナノキ峠・歩いた軌跡(作成 向 昌宏)

48期 井上 純子

 1日目の八が峰はあいにくの曇り空で,展望は開けませんでしたが,冬間近の尾根道を歩くながら,季節の移ろいを感じるのはなかなかおつなものだと一人悦に入っていました。

 2日目の芦生原生林歩きは紅葉のピークが少し越えているようでしたが,木々の赤や黄色が大変美しく,まさに目の保養でした。新緑の森林もいいですが,紅葉の森林歩きも本当に気持ちいいですね。

最後に,西田リーダー,山本リーダーには毎度のことながら手配等でお世話になり,感謝しています。また,同行の皆様にも大変お世話になりました。どうもありがとうございました。

【感想】   48期 葛城美知子

八ヶ峰・ブナノキ峠は初めてなので楽しみにしておりました。樹木は葉を落とし幹だけでは分からず質問ばかり、イヌシデ・ナツツバキの見分け方を教わりました。縦に白い網目状のすじが目立つ幹はイヌシデ、落ちている葉や胞子を探したりで面白いです。川沿いに大きな葉の若木が多く、オオバアサガラと教えてもらいました。私の知っているのは、花が房のように付いている大きな木なので吃驚です。落葉の道はキノコが多く写真を撮っただけでも13種類ありました。1番多かったのは変わった形のツチグリ、可愛いと思ったのは白く透きとおったシロトマヤタケ、絵本に出てくるようなキノコはスギエダタケと教わりました。いつもは花を探して歩いているのに、今回はキノコ探しに夢中になりました。楽しい2日間でした。

【感想】   14期 安井一枝

紅葉を期待しましたが頭巾山と同じく落ち葉になっていました。 昨年の秋はJALの特典航空券のおかげで、能取湖(サンゴ草)、大雪高原沼、大雪山黒岳、赤岳、緑岳 、旭岳と、北海道の紅葉をたんのう(特に緑岳山頂からのながめは最高 ! )できたのに今年は残念です。また、ギンザンマシコや冬の準備におおわらわのシマリス(計10匹近く)、ナキウサギと出会えたのとは違って動物の気配も少なく、見かけたのは鹿の糞とイカルの姿と杉に巻かれた熊よけのビニールテープでした。ただ、一人で行動するのと仲間と行動するのと・・・山仲間と自然を観察しながら語らいながら歩き、同じ時と場所と思い出を共有するのはホント、楽しくていいですネエ。おなじみになったツチグリは、西田さんのレクチャーやインターネットによるとなかなか興味深いきのこで、晴れた日に移動することから「晴天の旅行者」、湿度により開閉することから英名 は「星形の湿度計」とのこと。芦生の林道も春のトクワカソウやオオイワカガミの花の時期が大変楽しみな道でした。

【感想】

 40期 西田和美

ツチグリ ツチグリ科ツチグリ属 Astraeus hygrometricus

ケヤキ坂への片道約7kmの林道わきの切り通しに、たくさんのツチグリを見つけました。

ツチグリの幼菌はややいびつな球形で、半分土に埋もれていますが、成熟するに伴って外皮が星の形に開いていきます。6~10片に開いた外皮は、湿度に応じて開いたり、閉じたりします(乾燥:閉じる、湿潤:開く)。外皮の内層は銀白色で、メロンのネットの様なひび割れ模様があります。内皮の頭頂部にあいた穴から茶色の胞子を飛ばします。

 今、まさに地中から顔を出そうとしているものや、落ち葉の上に転がり落ちて、星のように(英名:earth star)輝いているものなど、様々な状態のツチグリを観察することができました。

 10年ほど前、高槻の神峰山で直径5cmもある大型の幼菌を採集したことがあります。まるで丹波栗のようでした。大事に持ち帰り標本にしました。乾燥して少し小さくなりましたが、今でも自宅の標本箱に大切に保管してあります。

※お詫び…当初、芦生研究林ゲートまで徒歩3分の芦生山の家に宿泊予定だったのですが、私の怠慢が原因で、車で30分もかかる民宿に泊まることになり、参加者のみなさんには大変ご迷惑をおかけしてしまいました。次回は、必ず山の家をゲットしますので、お許し下さい。

「感想」               44期 山本憲彦

 10回ほどの「花めぐり」例会を経て、本会50周年に合わせて、「RDBの会」として、何年かかけて、京都府の植生の様子を調べてみようとはじめた。

「RDBの会」の第1回目は、大杉前岳連自然保護委員長や松本同自然保護委員などの参加をいただいて京都府最南部域=木津川の河原で始まった。当例会の第1回で、植生の観察をすると同時に、穐月さんに歴史の講話をお願いして、RDBの会の定番にしたが、このパターンはいつのまにか、岳連の「自然観察会」でも採用されている。

いまでは京都比良山岳会の「RDBの会」の先鞭性を大いに自負している次第。松本同委員からは「続けてくださいよ」という暖かいお言葉をいただいている。

 その「RDBの会 植生観察」が今回でいよいよ14回目になる。最初は京都東山連峰に沿った、東経135度48分にそって北上した。そして、次は京都府最北部域の丹後半島で唯一巨大なブナが、そして、京都府で一番大きなブナの巨木が残っている地域を踏査した。今注目されている、過疎の世屋集落や、放置された大フケ湿原を大きく取り上げたのも本会が先駆けだった、と信じている。ここは2回行っている。2回目では、大フケ湿原が再現を目的にNPO等の人達の努力で地域の人達が整備されているのに、メンバーは驚きの声を上げた。

 京都府最北部域の自然はいわゆる「里山」から過疎化の波とともに、自然に戻る前の状態であった。NPOなどの活動が続き、せめてこの今の自然の状態が守られることを祈るばかりだ。

 そればかりではなく、穐月講師のお話しで、京都府北部地域は、古代には一大王国を形成していたことを学んだ。古墳の保存状態の良さやまだ発掘されていないことを考えると、この地域はまだまだ面白いことが分かるだろうと期待している。

 次には、どうしても尾根を続けて歩いて踏査したかった(私には)念願の「若丹国境尾根」の踏査である。西は由良から東は三国峠まで。まだすべての尾根を通しての登山道は出来ていない。他団体が水域の踏査に入っているらしい。ここを連続して今度はわがRDBは、植生の踏査を通しでしたいものだ。

 先ずは今回は、頭巾山。私は美山側から入りたかったのだ。しかし、ここからの登山道は荒れていた。本会で紹介した地域は、後で何らかの機関で取り上げられているので、この山域もあとで何らかの形で取り上げられるだろうと思われる。穐月講師によると古代は栄えたらしいし、その遺跡もまだ発掘されていないようなので、また何らかの機関が取り上げるのを大いに期待したい。

 地図を見ると、若丹国境尾根を大きな実線だと仮定すると、その左(西)よりに「頭巾山」、そして「堀越峠」、さらに真ん中にデンと「八ヶ峰」。その右(東)に、芦生研究林(現在は「演習林」と呼ばないらしい)がある。八ヶ峰から目を右にズラしていくと芦生の中にその「実線」の続きがある。ブナノ木峠―八宙山の尾根である。これは由良川の本流を北側によけて三国峠に連なる。いつかこの「三国峠」も植生観察として踏査しなければならない。

 現在は、京大研究林が地蔵峠側からの入山を禁止しているために、私たちは美山側から入らなければならない。ここまで日帰りで往復するのは非常に困難で、ましてや踏査となると時間の関係で今回も無理だった。ところが今回は、我々は芦生研究林にかかわりがある向さんをRDBの会に迎えることができた。強い味方だ。これで100人力だ。芦生内の植生観察は彼に頼ることとしよう。

 今年も植生観察として実際に京都府の山中を歩いたのだが、その総体的な印象としては、

1 シカの食害が目立つ

2 カシノナガキクイムシの被害もこの1年だけでも広がっている

3 ブナ林は心配していたが、予想以上に(保存エリアも含んで)残っている

4 野草、キノコなどの自生種も一旦山の中に入れば、かなり自生種が残っている

5 いわゆる「里山」としての集落近辺の山は荒れている

6 いわゆる準絶滅危惧種などが2,3種見つかった(が、その場所は伏せる)

などが挙げられる。

 なんといっても、我々は山岳会のメンバーで構成されているので、まずは「歩きたい」「登りたい」が優先されてあたりまえだが、それに「花も見たい」「キノコや山菜も見たい(食べたい)」…となると、なかなか落ち着いて植生を観察することは難しい。けれどもその限られた中で、よく各メンバーは、がんばって植生に目や鼻や口を効かせて観察したと思う。

 今年は京都府内の東側・北側の山域の植生観察が一応済んだので、来年は、その間を細かく区切りながら気を長く持って踏査していきたい。また、来年1-3月の間は、RDBの会は博物館研修としてインドアポイントを設定された例会を予定している。この新しい試みに取り組む西田リーダーに期待したい。

そして、4月から、他の地域の絶滅危惧種の観察も積極的に観察しに行きたい。各地の自生種も、気候変動などが原因で絶滅の危機に瀕している種もある。来年の「RDBの会」はそれらの観察を主にして1年を過ごしたいと思う。それは当然各アルプスやその他の高山や東北・信越・関東の山岳域になるだろう。    

メンバーのみなさん、体調を整えてまた来年1年間、山での踏査に参加してください。

091121八ヶ峰集合写真

091121トクワカソウ返り咲き

トクワカソウ返り咲き