京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3071 槍が岳冬合宿(悪天候により蝶が岳に変更)

クリスマス寒波で槍穂稜線は3日連続の暴風雪となり、1m程度の新雪がのったという情報を事前に現地警察から聞く。・・・夜明けの空は星が輝き晴れているが、晴れた方が気温が上昇して雪崩の危険は高いと予想し、未練を残しつつ雪崩の危険の少ない蝶が岳への変更を決定する。

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[№3071]「槍が岳冬合宿」(悪天候により蝶が岳に変更)

 

【参加者】 CL丸山弘 AT 小松久隆 本田勇樹 計4名

【天候】 28日 晴れのち吹雪  29日 雪  30日 雪 

【行程】 

12月27日(月)

20時 山科駅集合 

  12月28日(火)

1時30分 新穂高温泉駐車場

5時00分 起床 

6時30分 ルート変更決定

7時30分 平湯温泉

8時15分 釜トンネル入り口

10時30分 河童橋

12時15分 徳沢

15時 長塀尾根上

 標高約1800m地点で幕営

  12月29日(水)4時起床 朝食

           テント撤収

     6時30分 テント場発

    12時15分 長塀山山頂着

標高2564m

 

    15時頃   徳沢園  幕営

12月30日(木)

   4時 起床 朝食 撤収

   6時15分 徳沢出発

8時15分 河童橋

9時20分 大正池ホテル

    10時10分 釜トンネル出口

    11時 平湯温泉 入浴 昼食

    17時 京都着 解散

 

【CL所感】 43期 丸山 弘

 クリスマス寒波で槍穂稜線は3日連続の暴風雪となり、1m程度の新雪がのったという情報を事前に現地警察から聞く。28日は一旦寒気がゆるみ、低気圧の通過直前に半日程度の晴天となり、気温が上昇、夕方から荒れ模様という予報のもと、蝶が岳へのルート変更を横目に見ながらの登山口着となった。

 新穂高温泉バスターミナル前の広大な駐車場には平日と悪天候が重なって、駐車車両はわずか4台。とりあえず夜明けに状況を見るため仮眠をとる。駐車場の積雪は20センチほどだが、右俣林道のトレースは期待できそうにない。見上げる岩壁や急峻なルンゼにはべったり雪がついている。夜明けの空は星が輝き晴れているが、晴れた方が気温が上昇して雪崩の危険は高いと予想し、未練を残しつつ雪崩の危険の少ない蝶が岳への変更を決定する。

この時点で飛騨地方には警報・注意報が出ていなかったので、考えすぎかとも思ったが、結果的にはこの日の夕方、大雪・なだれ注意報が発令され入山期間中ずっと出ていたことを帰京してから知った。

 平湯に回って車をとめ、タイミング良く声をかけてくれたタクシーで釜トンネルへ。

途中、横尾尾根から敗退してきた人や長野県警トロールに出会う(天候変化を入山者に警告して回っているようだったが、我々の計画を話して了解してもらう。)

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ほぼ無人上高地を楽しんで徳沢園に到着した。当初、計画書では余裕をみて徳沢園幕営としていたが、少しでもテントを上げておこうということで、長塀尾根の途中まで登り、午後3時をめどに適地を探してテントを設営する。今夜通過するはずの寒冷前線に備えて、防風壁をしっかり作った。   

悪条件下でのテント設営の方法は19日のミーティングで丸山宅で練習した成果か、メンバーが手順と役割をある程度分かっていたので多少のミスはあるもののまずまず順調にいった。

 テント設営直前あたりから雪が舞い始め、風も強まる。テントに入って16時の気象通報を聞いている間にもどんどん風雪は強くなり、予報どおり深夜まで強風がうなりを立てていた。樹林帯と防風壁のおかげで、音は凄いがテントはさほど影響を受けなかった。

 夜半、風の音が静かになってからは降雪が急速に多くなり見る見る積っていく。テント外のスコップやピッケルが埋もれて隠れないように途中で掘り出し、雪に押されてテントが狭くなってきたので、2時頃小松さんにテント回りの除雪をお願いする。

 翌朝、昨夜のトレースはかなり埋まっているが痕跡をたどれるので、今日中に蝶が岳のピークを踏もうと元気に出発。天候を考えて全装備を担いで登る。途中、昨日同じように登ってきて途中で幕営した2人組を追い越す。上から下りてくる先行者に2.3度すれ違うが、皆、新雪に頂上を諦めて敗退してきたとのこと。我々はぜひピークを踏むべく頑張っていると、途中でトレースは完全に無くなり、ラッセルとルートファインディングが大変になってきた。

急なルート変更で事前の読図が甘かったせいもあるが、吹雪で木々の幹に真っ白に雪が着き、本来豊富にある赤ペンキマークがほぼ消えた状態では、広くなだらかな樹林帯の登りはどこでも登れるだけにかえっていやらしい。最初に追い越したベテラン2人組が追いついてきた。しばらく我々のトレースを追ってきたが、トレースの無い状態で何度か登った経験があるとのことで、我々がルートファインディングに迷ってい

ると、空身で偵察を申し出て頂き、しばらくの偵察ののち、復帰ルートを発見していただいた。感謝して、またトップに復帰、ようやく長塀山頂上に到着する。

 80年代装備の二人組は、穏やかにさりげなく我々のルートミスをフォローして下さって、長塀山頂上で分かれた。常念まで行くつもりで2日の予備日をみてきたが、今回は条件が悪いので蝶までで引き返すとのこと。クリスマス以降30日までの蝶が岳登頂者はこの2名だけということだ。我々もこの二人に多少協力出来た点はうれしい気がする。

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冬合宿の日程は31日まで取ってあるので、29日に上でテントを張っても31日に帰京することは可能だが、降雪でトレースが消え、視界を失って下りが難しくなるリスクに加えて、31日に次の寒波が来ると予想していたので、帰京の交通の混乱も含めて、30日中の下山が安全と判断し、この日ピークを踏むことよりも徳沢への下山を優先して、午後12時を折り返しのリミットに設定してスタートした。

新雪とRFに時間をロスし、長塀山で12時を回ってしまう。あと一時間ほどで蝶が岳のピークを踏めそうだが、樹林帯を出た吹雪の中では帰路のルートミスの可能性もあり、日没前の徳沢下山は無理と判断して、蝶が岳山頂にこだわらず計画にしたがって下山を開始した。

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 テント内でゆっくり夕食をとったあとも雪がテントに当たる音が続いた。30日も朝から雪、ときおり強く降る。

 効率のよいテント撤収をもう一度練習して上高地に向かった。頑張って歩いて、4時間で釜トンネルを抜け、大正池ホテルで呼んでおいたタクシーで平湯に戻り、車の除雪・入浴・昼食を済ませて順調に京都に戻った。

【反省点】

 槍が岳へ行けば結果は敗退でも、槍平までの行程や、中崎尾根への登りでの経験値のアップが望めただろうし、蝶が岳にしても樹林帯を抜けてから学ぶべきことも多かったのに残念だった。「冬山初めてと2年目」のメンバー3人を悪条件下で支えるほどの力量は自分には無いと考え、「無理せず下山遅れや遭難を避ける」ことを優先した点は、現在の私としてはやむをえないところかとも思う。事前の計画書作成と天候判断についても。またご意見を頂けると幸いである。

 樹林帯の登りでは、前述の悪条件に加え、夏道につられたり、先行者の間違ったトレースに導かれてしまった面がある。RFの難しいところはもう少し慎重に地図読みをすべきだったろう。後ろに下がっている時はRFが後手に回ってしまった。

 毎日4時起きで連日25キロ程度のザックをかつぐ体力と、風雪下での幕営技術、ラッセルとルートファインディングの練習という面ではよいトレーニングになったと思う。

 食糧担当の小松さん、白みそ仕立てのおいしい豚汁を有難うございました。Tさんには毎回とはいいながら、重いカメラを持参いただきありがとうございました。本田さんも黙々とラッセル御苦労さまでした。また懲りずに北アルプスに挑戦しましょう。お疲れ様でした。

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【感想】 52期 小松 久剛

 2010年はそれなりの頻度で山行を重ねてきたので、その集大成と勢い込んで臨んだ冬山でしたが、私の経験の浅さをあざ笑うかのような厳しい状況に全く対応できないままに山行が終わってしまいました。

 気象の読み、ルートファインディング、食糧、テント設営、パッキング、その他の生活技術など何もかもが冬山に行くには程遠いほど未熟であることがよく分かりました。特に今のレベルでの反省点としては ①ルートファインディングを先行者のトレースに頼りすぎ②テント設営の際のロープワークが全く分かっていない③行動食の計画ができていない・・・その他にもいろいろありました。厳しい山行であればあるほど、自分の至らなさが見えて、非常にためになります。

今はまだまだですが、10年後、20年後には冬の北アルプスを駆け巡れる程になれるよう、地道にスキルアップを図ろうと思います。

 今回何から何までお世話になり、ご指導いただいた丸山さんを始め、毎度綺麗な写真を提供してくださるT先輩、ラッセルを黙々とこなしてくださった本田さんありがとうございました。

 なお、今回撮った動画のURLを貼り付けさせていただきます。内容は長塀尾根でラッセルする模様です。 http://www.youtube.com/watch?v=hWM8ZrpkwRU

【感想】 51期 AT

初心ではありますが、丸山さんが槍ヶ岳へ行くと言うのを聞いて、ぜひ冬の槍ヶ岳の姿を見てみたい、との思いから無理を承知で参加させてもらいました。

結果的に天候不順で行き先が蝶ヶ岳へと変更になったことは残念ではありましたが、悪条件下の山行は得る物が多く、同時に自分の至らぬところも多く知らされることになりました。

もしも好天で槍ヶ岳にあっさり到達することが出来たとして、それはそれで素晴らしかったでしょうが、やはりまだ自分のような初心の者が踏むような山では無いというような、そんな気がしました。

もっと運と実力があるとき、もしもチャンスがあるならまたトライして穂先に立ってみたいものです。

ご一緒いただいた皆様、ありがとうございました。

特に初心の我々を安全に導き指導くださった丸山さんには大変感謝いたします。

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【感想】53期 本田 勇樹

冬山登山は山岳会での目標のひとつでした。入会して間もないのに冬の槍が岳に挑戦できる機会に恵まれ、とても楽しみにしておりました。悪天候で変更になり、残念でしたが、今回、まずは北アルプスの冬はどんななのかを知ることできて初心者には十分実りある山行でした。

冬山での生活技術、頭では分かっていても、水分をテントに入れないと言った細やかな配慮は苦手とするところであり、ちょっと普段からの生活態度を改めてみようと思っているところです。

 なぜだか雪の上を歩くのは楽しく、疲れにくく、生活技術さえ身に着けば、夏よりずっと心地よいだろうと思い、さらに魅力に引き込まれているところです。

 ご指導いただいた丸山様、皆様ありがとうございました。