京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3073 冬合宿:積雪期比良全山縦走(比良55-16)

2011年1月8日(土)~10日(祝)

丸一日以上、トレースのない雪道を自分たちで歩ける、これこそ積雪期比良全縦の魅力ではなかろうか。

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写真:トレースをつける小松、イクワタ峠北峰手前

 

【参加者】L秋房伸一、SL小松久剛、

本田勇樹、酒井敏行 会員4名

【天候】8日:晴、9日:晴のち雪、10日:雪

【記録】52期 秋房伸一

 8日:京都駅6:31=JR=7:26安曇川駅=(車)=:桑ノ橋8:25→林道終点11:00→マイクロウェーブ13:45→蛇谷ヶ峰14:20-45→須河峠16:40(幕)

9日:5:30起床、出発8:40→アラ谷峠9:05→ヨコタニ峠9:30→地蔵峠11:05→地蔵山11:10→ササ峠11:50→イクワタ峠北峰12:55→釣瓶岳14:10→武奈ヶ岳16:00→コヤマノ岳との鞍部16:20(幕)

10日:起床6:00、出発9:15→10:15スキー場跡→10:55八雲ヶ原→11:55神爾谷分岐→13:10大山口→13:25イン谷口→14:10比良駅

 

 今回の積雪期比良全縦に備えて、前年春先には核心部のひとつである地蔵山周辺のエスケープルート確認を兼ねた山行を複数回実施し、12月には全コースの下見もし、気持ちを高めてきた。メンバーにはラッセル力に優れた20代♂が2名。士気も高く、昨年よりも雪は多いが、スタート時間も例年の京都バス利用よりも1時間早め、昨年の成功に引き続き、なんとか今年も全縦走を果たそうと、桑ノ橋をスタートした。JR安曇川駅からは50期岩田さんのご厚意で自家用車で送っていただいた。

 林道に入り、しばらくしてスノーシューを装着。その後はスノーシューを外すということを考える余地はまったくない積雪量であった。今年は年末年始に相当の積雪があり、その後も降り続けたようで、スノーシューをはいても膝以上まで、もぐる。

 12月の下見では林道終点まで1時間のところを2時間半かかったが、特に遅いと意識することなく、自分たちとしてはサクサクと進んだつもりである。

 登山道に入って、休憩をしていると、大阪から来られたという単独のベテラン登山者の人に追いつかれた。この時期の奥比良で人に会うことは珍しいが、その方も今回で4年目だが初めて人に会ったと言っておられた。京都バスで来られたとのことなので、トレースがあれば1時間の時間差があっても追いつけるということ。休憩を終え、トレースを利用させてもらったが、しばらくして追いつき、当方が先行した。その後、単独行の方は我々のトレースを使わず、独自のトレースを引かれたが、マイクロウェーブで引き帰されたのか、蛇谷の頂上ではお会いしなかった。

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写真:蛇谷ヶ峰山頂にて

 

 蛇谷の頂上には20名くらいの団体さんがいた。朽木スキー場からのピストンのようだ。蛇谷ヶ峰から先はまったく人の気配はない。事前にチェックしていた左に曲がって谷を降りるところは、気をつけていたのについつい行き過ぎたが、小松SLの指摘で、事なきを得た。

 須川峠の手前でも、若干進路をロスしたが、日暮れ前に峠に着き、ドカ雪で大雪警報が出ていた一昨年と同じ場所で幕営。今年は、どんなに雪が多くてもヨコタニ峠までは行けるだろうと思っていたが、須川峠で精一杯であった。

 テントでは、今回、共同コッヘルにプリムスの製品を投入したが、持ち手がなく、その都度付属の「鍋つかみ」を用いるタイプで鍋つかみは1つしかないため、コンロは複数用意してきたが、テント内で使えるのはコッヘル1つだけとなり、著しく効率を欠いた。そのため、雪から湯を作って調理をするのにマルチタスクが出来ず、時間がかかった。翌朝、起床から出発まで異常に時間がかかったのは、そのせいでもある。

翌日の計画として、積雪の状態等から、全縦走は断念し、武奈ヶ岳登頂、コヤマノ岳との鞍部を幕地とすることにした。

 2日目は朝は天気も良く、雪は初日よりも締まり、歩きやすくなっていた。ゾンデ棒で須川峠の積雪量を量ると90cm。

 ヨコタニ峠まではスムーズに歩けたが、イクワタ峠北峰手前から釣瓶岳までが事前の予測どおり核心部であった。小松、本田が精力的にラッセルを受け持つが、さすがに体力を消耗するのが見てとれた。

 

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写真:先頭をラッセルする本田、踏み固める小松

 

 

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写真:蛇谷ヶ峰を背中に望む

 

 釣瓶岳あたりで雪が降り始め、風も強まった。朽木側から雪混じりの冷たい風が暗い空から吹き降りてくる。目出し帽を装着する。武奈ヶ岳北方稜線は風に打たれながらの厳しい登りで視界も狭まった。

 

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写真:武奈ヶ岳に到着

 

武奈ヶ岳ピークからはトレースがあるが、スノーシューではかえって歩き難く、トレースを外すと腰まで埋まる積雪量で、コヤマノ岳との鞍部に降りるのにけっこう苦労した。

 鞍部には先行者のテントが一張りあった。

 夜からどんどん雪が降り積もり、夜中に小松と本田はテントの雪かきを行った。テント側壁が雪で圧迫されて狭まり、寝ていても冷たさを感じるためである。

 翌朝起きると、トレースは全て積雪で消えており、テントシューズのツボ足ではヘソ以上まで沈みこむ状態で、身動きとれず。

 最短コースである八雲ヶ原からダケ道で下山することに決定。雪の状態をみるため、テントでゆっくりして9時過ぎに出発することにする。

 

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写真:テントを撤収

 

 先行者テントのグループのトレースはあったが、我々は自分たちで読図して自分たちでトレースをつけることにして、コヤマノ岳ピーク手前からスキー場跡を経て八雲ヶ原へ出ることにした。

 スキー場跡に読図どおりドンピシャリで出てホッとしたが、さすがにスキー場になっていただけあって、積雪量がすごい。

 

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写真:スキー場跡を進む

 

無雪期なら意識しない距離を懸命にラッセルし(小松・本田)、八雲ヶ原に出かかったところで「ホイ ホイ ホーイ」の比良山コール。なんと、Tさんが迎えに来てくれていたのと、ジャストのタイミングで出会えたのだ。Tさんは魔法瓶にスジ大根をつめて、紙皿や割り箸まで用意して我々に施してくださった。そのときだけ晴れ間がのぞいたのも今考えると不思議である。八雲ヶ原へはイン谷口からトレースがあり、スノーシューは不要とのこと。とはいえトレースを外すとスノーシューを付けてないTさんだけ胸まで雪に沈んだ。

 

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写真:ツボ足だと胸まで沈む

 

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写真:差し入れの「スジ大根」で一息

 

 八雲ヶ原からはスノーシューを外し、イン谷口へはトレースに沿って、下山した。

比良駅へは国道の歩道に踏み跡がなく、プチラッセルをしながら歩いた。

 今回は積雪量が多く、トレースがあったのは蛇谷ヶ峰への登りで単独行の方のを数百メートル使わせていただいたのと武奈ヶ岳頂上付近のわずかの区間と八雲ヶ原からの下山路だけで、残りの全ては、まったく踏み跡がないバージンスノーをルートファインディングしながら歩くという誠にエキサイティングな山行であった。丸一日以上、トレースのない雪道を自分たちで歩ける、これこそ積雪期比良全縦の魅力ではなかろうか。

 

【感想】53期 酒井敏行

これまで本の中での憧れに過ぎなかったはじめての冬の山は、何から何まではじめての経験で、想像以上に厳しく、しんどいものでしたが、それにも増して美しく、楽しいものでもありました。快晴の蛇谷ヶ峰での眺望、吹雪の武奈ヶ岳での達成感、テントでの楽しい夕食のひとときなど、忘れられない思い出です。今回は、ラッセルでもルートファインディングでもテント生活の面でもまったく貢献できず、パーティのメンバーに「おんぶに抱っこ」の山行となってしまいました。ペースも遅れがちでパーティには負担をかけてしまったことと思います。自分でもふがいない思いでいっぱいで、もっともっと体力、経験、技術を身につけていかねばと思いました。行動食を持っていき過ぎ、マップケースを持っていなかったため地図を出しづらい、パッキングの不備から必要なものをすぐに取り出せないなど、装備面での反省も多々ありました。それにしても最後、イン谷口から駅までの道のりのつらかったこと! もう当分雪は見たくないとしみじみ思いましたが、こうして山行を振り返っていると、また雪の山に行きたいという強い気持ちになるから不思議です。

 

【感想】 52期 小松久

比良全山縦走は予想通り、非常に厳しい山行となりました。

特に、武奈ヶ岳の北西稜の登りでは吹雪の藪漕ぎ急登となり、息が切れましたが、

それでも無事武奈ヶ岳頂上にたどり着いた達成感は非常に大きなものでした。

今回初めてサブリーダーをやらせていただき、気負い込んで参加したものの、

途中からは体力の無さから自分のことで手一杯になってしまい、リーダーのサポートがおろそかになってしまった点は反省すべき点として残します。

今回の例会で、やっと自分の目指すべきものが分かった気がします。

それは山の美しさ、偉大さを、少しでも多く感じることができるような余裕を自分がもつこと。そして、パーティー全員がそう感じられるようにサポートすること。それが今後私が目指すものです。

そのために、体力、技量、知識、経験を少しずつ積み重ねていきたいと思います。

実りの多い例会を企画してくださった秋房さん、ラッセルで驚異的な威力を発揮された本田さん、ほぼ初心者であるのにもかかわらず、最後まで頑張られた酒井さん

そして行きと帰りで心強いサポートをしてくださった岩田さん、Tさん、ありがとうございました。

最後に動画を貼り付けましたので、ご覧下さい。

1. 蛇谷ヶ峰山頂

http://www.youtube.com/watch?v=p4iqVewhVP8

2.地蔵峠直前

http://www.youtube.com/watch?v=b40e7EcFDd0

3.武奈ヶ岳頂上

http://www.youtube.com/watch?v=2tHAxEAFDyU

4.Tさんと合流してからの下山道http://www.youtube.com/watch?v=TGhYXh--g8I

 

 

【感想】53期 本田勇樹

3日間ありがとうございました。

奥比良の山々がとてもきれいで感動しました。

ラッセルもしんどかったですが楽しめました。

健闘及ばず残念です。皆様、お疲れさまでした。

 

【感想】52期 秋房伸一

 今年の積雪量を経験して、どれくらいの行動ができるのかの良い経験になりました。

 積雪量が今年ほど多くなかったとはいえ、昨年度の上坂・Tパーティーでの完全縦走達成というのがいかに大変なことであったかということを改めて理解しました。

本年は積雪量こそ多かったのですが、前半は天候に恵まれ視界も良く、ルートファインディングには苦労しませんでした。

その年々によって、積雪期比良全縦走は、その都度新たな楽しみと課題を与えてくれるでしょう。来年も、また、行きましょう!