京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3130 夏合宿「剱岳 アルパインクライミング」

2011turugi3.jpg

(一瞬の晴れ間にリード向が撮影)

 

 

[№3130] 夏合宿「剱岳 アルパインライミング」 2011年8月4日~7日 

 

【参加者】CL丸山弘 長野浩三 向昌宏 本田勇樹 計4名 

【天候】5日 晴れ 夕方から雨

    6日 朝のうち晴れ のち雨

    7日 晴れ

【行程】

8月4日(木)

20時 山科駅前集合

 

8月5日(金)

1時 立山駅着 仮眠

4時 起床

7時 ケーブル乗車 

8時15分 室堂着

9時00分 雷鳥

10時30分 剱御前小屋

11時00分 剣沢小屋

     標高約2550m

12時30分 真砂沢小屋テント場

         標高1750m 

夕食 就寝

    (初日行動500up・1200down)

 

8月6日(土)

2時 起床 朝食 撤収

3時00分 真砂沢出発

6時00分 八つ峰Ⅵ峰 Cフェース取りつき(標高約2650m)

6時30分 1組目登攀開始

10時00分 2組目登攀終了 Ⅵ峰Cフェースの頭(標高約2800m) 

12時00分 Ⅴ・Ⅵのコル(標高約2650m)

13時15分 長次郎谷出合(標高約1900m)

15時30分 剱沢テント場

     夕食 就寝

  (2日目行動 1700up・900down)

8月7日(日)

5時 起床 朝食 撤収

6時 出発

6時40分 剱御前小屋

7時30分 雷鳥

8時45分 室堂着

10時20分 立山駐車場 入浴 昼食

15時30分 京都着

  (3日目行動 400up・500 down)

2011turugi1.jpg

(長次郎谷雪渓を登る)

 

【CL所感】 43期 丸山 弘

 一昨年剱岳源次郎尾根を計画したものの三日間雨つづきで登れなかったので、昨年の前穂北尾根をはさんで仕切り直しの剱岳バリエーションを企画しました。事前の天気予報はまずまずで、楽観していたのですが、遠い台風の影響か、アタック当日は朝8時頃から降り出した雨が夕方まで降り続くあいにくの天候となりました。

 初日は好天の中、快適に歩いて真砂沢テント場へ。小屋の主人が比良山岳会の名前を覚えておられたのには驚きましたが、数年前の上坂さんの印象がよほど強かったのでしょう。テント場には大学生を中心に10張近く張られて賑やかでした。

 夕方から雷が鳴り、夜中に強い雨がありましたが、明け方には星が出て、6日の天気予報も「晴れ一時雨」、少なくとも午前中は崩れないだろうと予想して出発しました。ヘッドランプで歩きだして、予定より少し早く6時には一番のりで取りつきに到着。後ろに2パーティーが続いているのが見えたので、ギアをつけて早速スタート。

2011turugi2.jpg

(Ⅵ峰Cフェース取りつき)

 

前回の記憶とトポを思い出しながらリードしますが、思ったより時間がかかった原因は以下のようなものでしょうか。

①易しいルートでどこでも登れるだけに、残置ハーケンがあちこちにあって、かえってラインが不明瞭。終了点らしきものも多く、結局必要以上にピッチを切ってしまった。(下部2ピッチを3ピッチ半にしてしまった)

②錆びたハーケン主体の支点や終了点が信用できない(テストしたら一本はあっさり抜けた。ルート全体で比較的新しいハーケンは1本だけ、新しいボルトは1箇所のみ)ために、支点作成に迷う(カムの使えるクラックはほとんどなく、ハーケンも持参したが打ち足すのも時間がかかる)

③壁が立っていないので、凹角をくの字に斜上したり、スラブや、カンテやリッジを越える部分でロープと岩の摩擦が大きく、引き上げに手こずった。左右の屈曲はダブルロープ・長ヌンチャクを使えば多少緩和されるが、岩との摩擦は避けられないか。

④3ピッチ目の出だしで、前回右上してRCCルートに入ってしまったのに懲りて、左に取り過ぎてⅢ級のピッチをⅣ級+くらいにしてしまった。後続の長野組にはルートを右にとってもらって事なきを得たが、落ちたらシャレにならない。

良かった点は、メンバー全員がロープ・ギアの扱いがスムーズで、雨が降り出しても動揺せず落ち着いて登れたこと、大方つるべで登れ、ロープの受け渡しのロスは少なかったことでしょう。向さんや本田さんには名物の高度感のある4ピッチ目のリッジをリードしてもらえました。

 

Ⅵ峰Cフェースの頭でロープを外してカッパを着、2組目の到着を待つ間に空模様をうかがいました。いつものガスや霧雨程度なら大丈夫ですが、雲も厚くだんだん雨粒が大きくなり本降りに。視界も隣のAフェースの頭が見えない程度に悪化してきました。

八つ峰上半部は池ノ谷乗越まで2~3時間、Ⅷ峰へのⅢ級-程度の登りと2・3回の懸垂があります。一方、Ⅴ・Ⅵのコルへの下降も上坂さんから「悪い」と聞いており、雨によるスリップと視界不良、20キロ前後の重荷を考えると、どちらも一長一短あるところですが、今後のために一度下りておきたかったこともあって、Ⅴ・Ⅵのコルへの下降としました。(後続の熊本パーティーも迷っていたようですが、私たちの後からⅤ・Ⅵのコルへ下りて来られました。)

Aフェースの頭付近までの下降路は3箇所ほど、御在所前壁ルンゼより少し難しい部分があり、慎重に下りました。

2011turugi4.jpg

(Ⅵ峰Cフェース終了点)

 

Aフェースの頭付近で懸垂下降支点を探したところ、長野さんが一番コルに近いあたりにちょうど良さそうな残置支点を発見。  

比較的新しいリングボルト2本とハイマツのバックアップに数本の残置スリングがあり、我々もさらに捨て縄を一本加えることにして、長野さんに手際よく支点をセットしてもらいました。

50mいっぱいの懸垂で10m程の幅で凹角とカンテをトラバースしながら斜めに下降する懸垂なので、雨と岩角でやたらにからむロープをさばきながらの少し厄介な懸垂下降でした。

 

2011turugi5.jpg

(Ⅴ・Ⅵのコルへの懸垂下降)

 

Ⅴ・Ⅵのコルからはザレ・ガレを下って雪渓に戻り、あとは剱沢テント場までひたすら歩き。稜線コースに比べて天気や滑落の心配はありませんが、750下りて、550登り返すので結構疲れました。

 最終日は朝から晴れ、気分よく撤収して予定より早めの下山。雷鳥バレイスキー場のサンピアで入浴し、尼御前SAで豪華な昼食をとって余裕の帰京となりました。

 

 今回は目標の全部はもとより、「八つ峰上半部から長次郎右俣下降」もできなかったので採点すれば40点という所です。とりわけ長次郎谷は、右俣・左股とも雪渓がうまくつながっていたのに残念でした。

 リーダーとしては実施4週間前に捻挫した上、体力トレの不足も実感されて反省しております。(他のメンバーが体力有りすぎるような気もしますが)

メンバーの3名は、全装備担いで千mを超える登高+雨中のクライミング+クライムダウン+懸垂という内容をメンタル面も強く、余裕でこなされたので、今後のクライミングのトレーニングにはなったのではないかと思います。

メンバーの皆さんお疲れ様でした。特に本田さんと長野さんには雨で重いロープを担いでいただきありがとうございました。

 

【感想】46期 長野浩三

 6峰Cフェースを登った感想としては,技術的には難しくないと思われるが(一部あれっというところがありましたが),ルートファインディングが難しく,また,高さはあるので,思ったよりも緊張感がありました。加えて,雪渓を登下降する体力,技術,天候が崩れたときの判断等,まさに登山の総合力が試されると思います。今回は途中から雨が本降りになり,八峰上半部縦走をやめ,56のコルへ50mの懸垂下降となりましたが,これもなかなか疲れる懸垂下降でした。いろいろと経験値の上がる山行でした。丸山リーダー,ご同行のみなさん,ありがとうございました。

2011turugi6.jpg

  (懸垂下降ポイントの長野)

 

【感想】52期 向 昌宏

初めての剱岳に八ツ峰から登れると期待して挑んだが天候に恵まれず6峰Cフェースのみの初戦となりました。それでも本降りの中でのクライミングと50m懸垂下降はすごく良い経験になりました。

6峰Cフェースはハーケンがたくさんありルートはややこしいがクライミング的には容易でした。4ピッチ目のナイフリッジは高度感がありながらもしっかり登れてとても快適でした。狭い終了点でのセカンドビレイではこれまで御在所でトレーニングしてきた成果が発揮できました。

2011turugi7.jpg

(2ピッチ目の向)

 

今後の最大の課題は体力です。丸山CLが捻挫回復中のためぎりぎりついて行けたものの本来のペースであればおいて行かれたと思います。もし天気が良くて本峰を越えてテン場まで安全に行けたかと自問すると不安が残ります。15kg担いで安定して岩場を10時間以上歩けるよう足腰・体力の強化に努めます。

2011turugi8.jpg

(最終ピッチをフォローする向)

 

ご一緒いただいた皆様ありがとうございました。今回はパワフルな長野さんと本田さんに甘えてしまいましたが、次回はロープを担げるように鍛えておきます。

 

【感想】 53期 本田

 去年に個人で剱岳に登って、テントを張った剣沢も剱岳も大好きな場所で今回の山行を楽しみにしていました。

 長い雪渓の登りを終えての神経を使うクライミングは不安でしたが案外雪渓の登りは慣れてきたのか体力の消耗が少なく万全で望めたように思います。

 Cフェースの難易度は御在所の前尾根を登った時とあまり変わらないと感じました。3ピッチから最終ピッチまでリードさせていただきました。あまりリード経験なかったのですが、ロープの流れ踏まえたコース取り、セカンドビレイなどのセッティングがだいぶ慣れてきたので良かったです。

 本峰まで行けなかったのは残念ですが、雨の中、Cフェースだけでも登れてよかったです。剣沢に帰ると夕方にはちゃんと雲が晴れて剱岳が現れて、いい気分でした。

皆様ありがとうございました。

2011turugi9.jpg

 (3ピッチ目をリードする本田)