京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉《山紀行744》 知床連峰・斜里岳

知床は29年ぶりの想い出の地、青春の名残がありそうな岩尾別YH、世界遺産になった知床半島をほんの一部に足を踏み入れ自然に浸りこんだ。斜里岳、摩周岳にも足を伸ばす1週間の山行を行った。

20110821知床連峰12

 

写真12(8/22): 硫黄岳(第一前衛峰との鞍部より)

 

 

[個人山行]《山紀行744》 知床連峰・斜里岳 平成23年8月21日(日)~26日(金)

48期 山本浩史 (with畑中里子)

知床は29年ぶりの想い出の地、青春の名残がありそうな岩尾別YH、世界遺産になった知床半島をほんの一部に足を踏み入れ自然に浸りこんだ。斜里岳、摩周岳にも足を伸ばす1週間の山行を行った。

 

1日目(8:21): 知床縦走1日目

【行  程】 △羅臼温泉4:21~7:31泊場~10:34羅臼岳10:44~12:08三ッ峰~13:22サシルイ岳~14:27オッカバケ岳直下14:32~14:47▲二ッ池キャンプ場(テント)

【登山データ】  天候 霧雨のち晴れ 歩行 15.9㎞ 10時間26分 延登高 2,196m 延下降 936m 3座登頂

20110821知床連峰地図21

 

昨夜の雨は止んだが、山端に掛る雲は低く雨具が要りそうだ。宿から知床横断道路を熊の湯方向に歩き、湯の沢大橋を渡ると羅臼ビジターセンターがある。其の脇から羅臼間歇泉の表示に従って進むと小屋の傍に間歇泉の噴出口がある。昭和37年の群発地震以来噴出が始まり約1時間毎に数秒間噴出するというが過去に噴出しなくなった期間もあったようだ。見たかったが噴出するまで待ってられないので「この先は羅臼岳登山道」の表示が下がったロープを越えて進む。暫く行くと熊の湯から来た道と合流する。此処が羅臼登山口で登山届に記帳して進む。発電所川を遡り“木かげの滝”を見る。谷筋から稜線に乗りあがる所は一息峠だが分らないままに黙々と過ぎてしまった。

雲に突入するとすぐにポツポツと雨が落ちだして早くも雨具のお世話になる。登山道に初めて表示のあったのは里見台で天気が良いと羅臼の町が見えるのだろうか。暫くは暗い稜線を歩き標高が500m辺りに達すると植生が這松に変わり、森林限界かと思わせられたが、すぐに樹林帯となった。登山地図に“ハイ松原”と記された所だ。登山道は“登山川”の左岸を高巻くようになって来て、上の方は切立った絶壁なのだろう。登山地図に“第一の壁”と表示があるが樹林帯で其れらしいものは見えない。羅臼岳が眺望できると云うスズラン峠は、ガスの中で知らずに通過したようだ。

 

沢音が近づき清水沢の合流地点で登山川に下りる。赤茶けた川は硫黄の匂いが漂う。登山川はやがて真っ白になり異様だ。いや硫黄だ! これでは生物も棲めないだろう。岩が白いだけではなく最近沈んだような草の茎も真っ白になっている。暫くは白い川沿いに渡渉も交えて進み“泊場”に達する。此処はテント2張分の天場になっている。泊場を過ぎると登山川と分れ支流に入る。更に枝沢に入ると最早白くはない。

 

樹林帯を進み海豊川源流部に入って行く、水は涸れ傾斜が恐ろしく急になり羅臼岳の核心部に近づいたことが知れる。右手に立ちはだかる岸壁、これが屏風岩だ。霧の中でよく分らないが2.5万図では500mほど続いているようだ。そしてその上部が見えて来た。上空の雲が切れ青空が覗きだしていたが、此れは本物のようでやがて雲の上に飛び出した。標高は1,100m、半分諦めていた羅臼岳が目の前に姿を現し期待は高まる。そして海豊川源流域には雪渓が見える。雪渓を前にした岩場にはエゾコザクラが可憐に咲き誇っている。雪渓部分は高巻いて通過、もう完全に樹林帯は抜け這松と高山植物のお花畑の中を進む。羅臼平への道が右に分岐して行き直登ルートを進む。次の雪渓は縦に突っ切る。傾斜は緩くアイゼンを付けるほどではない。ベタ足ではすべるのでステップを切って100m弱の雪渓歩きを楽しむ。高原状態になってくると羅臼平からの道と合流する。そこは岩清水の直下、岩尾別からの登山者は多い。登る人、下りる人が行き交う。岩清水は岩の隙間に染み出した清水が上部から滴り落ちコッヘルで受け止め今夜の煮炊き用に4ℓ確保した。

 

重いザックは此処にデポしカメラを持って羅臼岳(1,660m)山頂を目指す。此処からは29年前に歩いた道、あの時と同じ岩のゴツゴツした登山道は変わっていない。ただあの頃は日本百名山ブームもなく岩尾別からの往復で2パーティーほどに出会っただけの静かな登山だった・・・ 山頂には数人の先客があり青空の下三峰山、サシルイ岳までは見通せるが其の先は雲の中、そして半島付け根の方の羅臼湖、斜里岳などは全てガスに覆われていた。山頂には金属円盤の2等三角点「羅臼岳」がある。この山の標高は1,661mと記憶していたがどうしたことかと調べてみると平成16年度十勝沖など重なる地震の影響で山岳標高は1,660.4mとなり四捨五入で1m低くなったようだ。

 

岩清水で荷物をピックアップし羅臼平へと下り、大休止を取る。羅臼分岐点にはフードロッカー、岩尾別分岐点には木下弥三吉翁のレリーフがある。翁は昭和の初めに北大山岳部で活躍した人で羅臼岳の登山道を開いた人でもある。そして翁の名は岩尾別登山口にある木下小屋と岩尾別ルート途中にある弥三吉水に残り今に伝えている。

昼食が終わるといよいよ縦走路に踏み出す。入口に此処から先は危険が多く、十分な知識、装備のない者の立ち入り禁ずるみたいな事を書いた看板が立っている。気持を引き締めて看板を越え三ッ峰に登る。その名の如く3つのピークを持ち登山道の岩尾別側に2つ、羅臼側に主峰(1,509m)がある。縦走路から主峰へ明瞭な登路があり荷物をデポし山頂に立った。山頂からは羅臼岳が真正面に鎮座し素晴らしい。“北峰”にも登路はあるようだがパス、“東峰”には登路はないようだ。

 

サシルイ岳との鞍部(1,345m)に三ッ峰キャンプ指定地があり少し離れた所にフードロッカーも備え付けられている。キャンプ地を過ぎると人の声がする! 数人の大学生が休憩中でヘルメットに沢靴、どうやら盤ノ川を遡行してきたらしい。カラフトマス遡上の始まったこの時期、羆は出ないのだろうか? 凄い人たちがいるものだ。

220mの標高差のあるサシルイ岳への登り返しは辛い。疲れた体では一気に上がれず休憩を入れて登り着いたのはツインピークの真ん中、サシルイ岳(1,564m)山頂も縦走路から分岐している。畑中さんはパスし留守番、荷物をデポして微かな踏跡を辿る。しかし途中で見失なってしまい這松の上を強引に乗り越えてひいひい言いながら山頂に到った。山頂標識があり、三ッ峰越しに見る羅臼岳はまだまだ大きい。北の方に目をやるとオッカバケ岳、南岳、知円別岳を望むことができる。下りは踏み跡を見つけていとも呆気なく下りることができた。

 

長い下りは這松のトンネルで腰を屈めて通り抜ける。流石に歩き難い。鞍部まで下ると直角に左に向きを変え湿原帯へ入る。中心部にミクリ沼がありコバノイチヤクソウが咲いていた。オッカバケ岳への登り返しも急登で這松は煩い。オッカバケ岳も縦走路から外れているので登路を探すが這松に覆われ岩もゴツゴツし人を寄せ付けない。登頂は諦めて眼下に見える今日の宿泊地二ッ池へと下ることにした。南側“地の池”の畔の天場にテントを張り終わった頃、後を追って一人の女性が到着した。知床林道(カムイワッカ橋から先)が5年ぶりに通れるようになったので待ち焦がれて旭川から来たと言う。しっかり林道通行許可も取って来たという。そう林道が土砂崩壊で不通の間は徒歩でも通れなかったのでカムイワッカ橋で出ることが出来なかったのだ。今日の宿泊客は3人、食事が住むと早々にフードロッカーに預け、寝に付いた。

 

2日目(8/22): 知床縦走2日目

【行  程】  ▲二ッ池キャンプ場4:40~5:22南岳5:26~6:20知円別岳直下6:32~8:52コケシ岩~7:32第2前衛峰~8:12硫黄山~11:43カムイワッカ橋12:13=12:40知五湖13:20=13:40宇登呂14:35=15:17羅臼温泉15:26=16:00△岩尾別YH

【登山データ】  天候 晴れ 歩行 11.0㎞ 8時間05分 延登高 536m 延下降 1,601m 4座登頂

20110821知床連峰地図22

 

羆の襲われることもなく夜は明けた。よく晴れて5℃位に冷え込んだようだ。寒い。テントの中で朝食準備をし、いざ出発とフードロッカーの先の踏跡に惑わされ進んで行ったが、だんだん道が不明瞭になり、此れは違うと元に戻ると正しい道は池の先の方だった。15分もロスをしてしまった。二ッ池のもう一方天の池は既に干上がり池底が露出、何れ植生が進入して只の草原となってしまいそうだ。南岳の西稜線に上がると二ッ池が見え天場の旭川の女性に「ヤッホー」、彼女も応えて手を振ってくれた。稜線の這松は煩く朝露を警戒して穿いてきた雨具が大井に役に立しまった。

 

南岳への登りは朝一で辛い。知床連山縦走路で山頂を通っているのは実は南岳のみで他は全て山頂を通らない。山頂からは最高の風景で知床連山の全てが見える。北の方には硫黄山の荒々しい風景が広がり硫黄平に屹立するP1329は南アルプス地蔵岳オベリスクのようだ。次に登る知円別岳の山容は結構険しそうだ。稜線をそのまま進まず羅臼側の知円別平を通って東から取り付く。チングルマがまだ頑張っているが、夏の花もそろそろ終わりに近く、シレトコスミレやメアカンフスマは時期外れだった。知円別岳東の肩に乗り上がり、山頂を見上げるとまだまだ高く屹立していて人を寄せ付けない。登路はなく急斜面を這松が覆っている。登頂は諦めて休憩、東岳に続く尾根が分岐し一寸した広場になっている。砂礫地でコマクサの葉を確認した。

 

いよいよ硫黄山の山域に入る。知円別岳の北東斜面のガレ場をトラバースする。何時落石があるとも知れない危うさで足元も浮石だらけ、注意しながら通過し終わると流石にホッとした。知円別岳の北側に出ると最早硫黄山の領域、硫黄の匂いが漂い一木一草もないガレた稜線を進む。黄色い硫黄の結晶が転がり地獄の様相だ。ニョキニョキと林立する岩の柱はコケシ岩(約1,500m)でとても登れそうにないと思っていたのに近づくと縦走路はその岩の隙間を登り詰め一番高い岩柱のすぐ3m程下を通る。ボロボロの岩だが普通に登れそうで、攀じ登って山頂を極めた。勿論畑中さんはパス、振り返ると今日歩いてきた南岳や知円別岳、更にサシルイ岳から羅臼岳も素晴らしい。

次に待ち構えているのは第2前衛峰(約1,540m)、険しいが這松に覆われた山で山頂に達すると目前に硫黄山と第1前衛峰の姿が立ちはだかる。第1前衛峰は登頂不可能だが、その鞍部で、キャンプ指定地の第1火口へ分岐する。火口は100m以上も下でコケシ岩からフードロッカーがあるのも確認できた。這松の煩い急な斜面を下ると広漠とした広場に下り立つ。硫黄山は此処から分岐し登路がある。正面を見る限りとても登れそうに見えないが裏側に回り込むように踏み跡が付いている。完全に岩登りの世界で畑中さんは恐れを為し途中敗退、両手足を使って山頂に立つと其れは其れは素晴らしい眺め、昨日から歩いて来たルートやルシャの低地を隔て知床半島の奥地、それに海を隔てて国後島爺爺岳(ちゃちゃだけ・1,822m)が雲から頭を出している。不法占拠とは言え日本の山から “外国”を見た。第2前衛峰を見ると二ッ池のテント仲間、旭川の女性が乗越に立っている。「オーイ」とコールすると気づいて手を振り返してきた。頑張れ!

 

山頂を後に畑中さんの待つ分岐に戻る。下山後監視員に聞いた話だが、この夏この分岐に荷物をデポして硫黄山に登った男性が降りて来ると羆がウロウロしていて1時間ほど下りられなかったそうだ。やはり此処は羆の生息地、幸い8月も下旬になるとカラフトマスが知床の川に遡上してくるので、其れを狙って羆は河口付近に集まると云う。至近距離ではご免被りたいが、遠くの姿は見てみたいものだった。

分岐からは硫黄山を北へ巻き込むように進みウプシノッタ川左岸に連なる尾根上で稜線は終わり。分岐して硫黄川の谷筋へと下り始める。急な涸れ沢で岩がゴツゴツ、水のないのが不思議な涸れた大滝を越える険しい道で標高差500mをひたすら下る。最初は広く眺めの良い涸れ沢だったが、徐々に狭まり樹木が谷に被さるようになり標高約945mで硫黄川の谷筋を離れ左岸の稜線に這い上がる。涸れ沢歩きを堪能した後は、また這松の煩さ、一筋縄では行かない。

 

標高差200mを這松を漕いで抜けると新噴火口の上部で開ける。此処までは観光客が稀に来ると見え、「これより上は十分な準備が必要です」との表示がある。チシマ笹の向うに噴気が見えるが、火口に近づく道は無いようだ。尾根筋を離れカムイワッカ川の谷との中腹を進みガレ場から再び樹林帯に入る。以前は硫黄鉱山があり、硫黄を採取していた名残のコンクリート基礎がある。左手下を流れるカムイワッカ川は最終的には海に直接流れ落ちるカムイワッカの滝で有名だがその上流域にも滝が点在する。温泉の湯が川に流れ込み滝壷が天然の浴槽となっている。秘境であったころは入浴できたが、観光客が押し寄せる昨今は、滝を登って見に行くだけのものに留まる。それに湯温も30℃程度と入浴には一寸低すぎる。登山道からは残念ながら険しすぎて直接カムイワッカ川に下りることは出来ないが展望できる所が1箇所だけある。ただし湯滝は見えない。

原生林の深い林に入ると知床林道は近い。突然ラテン系の外国人夫妻に出合った。登山者ではなく散策しているようだ。それにしてもこの山域に鈴も付けずに入ってくるとはなんと無茶な人達だろう。やがて林道が見え出すと知床連峰縦走は終わり。予め通行許可を取っていた林道を600m戻るとカムイワッカ橋、番小屋があり警備員が通行許可書を確認していた。

 

此処まではマイカー規制期間で頻繁に運行されるシャトルバスが連絡しているので観光客が湯滝巡りにやって来る。沢靴があると好都合だが靴を脱いで靴下一枚で登る人が多い。裸足では滑りそうで滝壷2つ見ただけで引き返し、シャトルバスに乗り知床五湖で途中下車した。1湖畔の展望台から知床連山を一望して2日間の戦いの跡を振り返った。世界遺産に登録されてから立派な高架木道が設置され、羆の心配なく1湖、2湖を巡ることができる。5湖全部を巡るには有料でレクチャーを受けた後出発する1時間半のコースがある。知床五湖は稜線から十分見たので地上でわざわざ見に行く必要も無く1湖を展望しただけで40分後のバスで宇登呂に向った。

 

新鮮ネタで有名な料理屋“一休屋”でホッケ焼き定食を食べ、14:35バスで知床峠を越えて羅臼に戻る。レンタカーをピックアップして今日の宿泊地岩尾別YHへと向った。29年前の想い出の地、ペアレントは25年前に替わったそうだが建物は其の時のままだった。宿泊者の年齢層も其のまま持ち上がったようで、YH世代の気さくな人達で10数人の同宿者ともすぐに打ち解けた。夜になるとシマフクロウの泣き声鑑賞ツアーが催された。絶滅危惧種とは云え岩尾別には居るものだ。耳を澄ますと雄が低音で「ブッブ ボー」と鳴くと雌が「ボー」と鳴き交わすのを聞くことが出来た。そして空を見上げるとものすごい星の数、天の川もクッキリと見え、流れ星も見つけ、おまけに人工衛星が回るのまでも肉眼で捉えることが出来た。

 

3日目(8/23): 羅臼湖・オロンコ岩

【行  程】  △岩尾別YH7:57=8:29知床峠=9:00羅臼湖入口BS9:00~10:21羅臼湖10:24~11:49知床峠11:59=12:31宇登呂12:59~13:04オロンコ岩13:10~13:25宇登呂13:27=16:36△清岳荘

【登山データ】  天候 曇りのち小雨 歩行 11.2㎞ 3時間15分 延登高 292m 延下降 239m 1座登頂

20110821知床連峰地図23

 

予備日的な位置付けにしていたので宇登呂周辺の滝や山を散策しようとしていたが、予定を変更し羅臼湖に行くことにした。YHで長靴をレンタル(\100)してくれ湿地を行くには好都合だ。以前は最後の秘境と言われ訪れる人も殆ど無く、知る人ぞ知るの世界だったが、近年は有名になりガイドブックにまで載ってしまったようだ。

知床横断道路(R334)の知床峠から羅臼側に3.4㎞下った所に羅臼湖入口がある。この日は峠までレンタカーで来て入口まで歩く心算だったが国道を歩いていると観光のご夫婦に拾って貰い羅臼湖入口のバス停まで便乗させてもらった。このバス停が曲者で下りと上りのバス停が1㎞ほど離れていて下りなどは“入口”を名乗るのさえ憚れる位置にある。

 

入口には入山届けのBOXとセンサーで入下山者数の自動カウンターがあった。岩尾別は晴れていたが知床峠に近づくに連れて霧雨となり今日は雨具がフル稼働となりそうだ。羅臼湖周辺は他に無数の沼が点在する高層湿原帯で登山道は一の沼から五の沼を数え少々のアップダウンを伴って奥へと分け入る。植生保護のため木道やロープが整備されているが笹の被さりは半端ではない。モウセンゴケも花期を終わったようで花の数は少なかった。三の沼ではガイドに導かれた小母さん達と出合い、羅臼湖では男性5人組、帰りの三の沼付近ではYHで同宿だったホステラー二人が宇登呂からのバスで来て登ってきた。湖畔から天気がよければ羅臼岳が一望できるのだが一切の展望はなく残念だった。

 

下山後はYHに長靴を返しに寄り、宇登呂で昨日食べられなかったウニ丼を求めたが数人前で売り切れ。ウニもそろそろシーズンオフのようだ。食後は海に突き出たオロンコ岩に登り知床連山を展望、三角岩登山も試みたがこちらは登路なく断念、宇登呂温泉街の夕陽台に行って宇登呂の街を一望し、2時の開店を待って夕陽台の湯で汗を流した。さっぱりして今日の宿泊地、斜里岳登山口にある清岳荘に向った。避難小屋だが立派な小屋で管理人が入り宿泊料2,000円を請求された。此処は駐車場で車中泊する場合でも500円取られる。同宿は様似在住の男性に案内された埼玉の女性2人、焼肉や具沢山の味噌汁をご馳走になり、山談議から自然談議、果ては政治談議で盛り上がった一夜だった。因みにこの男性Hさんはアポイ岳の自然保護員をしているそうだ。

 

4日目(8/24): 斜里岳

【行  程】  △清岳荘5:07~5:43下二股~(旧道)~6:45上二股~7:07稜線~7:21斜里岳7:24~7:33稜線~7:46上二股~(新道)~8:11熊見峠8:18~8:44下二股~9:11清岳荘9:52=10:53硫黄山=11:50和琴温泉12:41=13:13摩周湖=14:04△摩周湖YH

【登山データ】  天候 霧雨 歩行 8.7㎞ 4時間04分 延登高 1,048m 延下降 1,048m 1座登頂

20110821知床連峰地図24

 

天気予報どおり下界は曇り、山は雲の中で霧雨、畑中さんは膝を痛め今日はパス、一人で先頭切って入山した。斜里岳は旧道と新道コースがあり、旧道は沢登り、新道は尾根歩きだ。登りは旧道が面白い。小屋を出てすぐは登山道だが林道に飛び出し終点まで進む。登山道となりすぐに一の沢川に入る。右に左に渡渉を繰り返し下二股で旧道・新道が分かれる。霧雨でスリップの危険はあるものの下りに使うよりはいいだろう。

 

早速現れたのは羽衣の滝、霧に霞むが見事な滝だ。高巻いて通過すると、次は万丈の滝、見晴の滝と此れ等も高巻き通過、最後の七重の滝は真っ直ぐ上が見通せる。此れも高巻くものと思っていたが、なんと滑滝の中をそのまま登る。此れは面白い、本格的沢屋さんでも結構楽しめることだろう。この旧道歩き沢靴があればもっと楽しかったかも・・・流量は次第に減り上二股で新道と合流する。一の沢川もいよいよお仕舞、ガレ場となって稜線に達する。左に折れると斜里岳への最後の登りとなる。前衛峰に銀の祠の斜里岳神社がある。無事の登山を祈願し先に進む、急な道は変わらず斜里岳(1,547m)山頂に達する。少し下にある2等三角点「斜里岳」は1,536m、三井コースが北に続いている。

 

風が強くゆっくりしていられない。すぐに下山を始めた。稜線分岐から先に昔は根北峠への道が分岐していたが今は廃道となっている。その廃道に進入し南斜里岳へ藪を漕いで行こうと目論んでいたが、この天候ではルートファインディングも難しく断念し正規の下山路を取った。上二股からは新道に入る。竜神ノ池への分岐があるが立ち寄る気にもなれずパスした。ところが暫く行くと再び竜神ノ池分岐がありピストンしなくて良かったことが分りそれなら行ったのにと一寸残念な気分。新道は稜線に這い上がり、這松等の被さりで歩き辛い。P1250に這い上がりもう一つ登った所は熊見峠(1,230m)と立派な標識がある。小腹が空いたので小休止した。

 

熊見峠からの下りは急で、稜線を離れ下二股への下りに掛ると更に急斜面となり、木に掴まりながら下った。清岳荘からの登山者が登ってきた。道を譲り挨拶するが無言で通過して行った。なんちゅう奴っちゃ! 次に様似のHさん一行、危険を避け新道を選んだようだ。下二股からはまた沢歩きでこの間だけでも何回渡渉することだろう。更に数人の登山者と出合い流石は日本百名山悪天候に関わらず登る人が多い。

 

斜里岳をパスしたので登り出しから4時間少々で下山し畑中さんを余り待たせずに済んだ。どころかこれから散歩に行こうとしていたらしく早過ぎたようだ。まだ9時過ぎとあってはほぼ一日ある。あとは観光、下界に下りると晴れてきて川湯温泉、硫黄山屈斜路湖に回り古丹温泉の露天風呂に入ろうと思ったが、行ってみると何と湖畔に脱衣場はあるが男女別に気持だけ仕切られた湯船に囲いは無く丸見え。足湯だけで断念。ならば和琴温泉へと回ったがここも似たようなものでしかも堆積物、浮遊物が不快で足も浸けられない。北海道では和琴半島にだけに棲息するというニイニイゼミの鳴き声を聞き、三香館の露天風呂に漸く入浴することが出来た。その後、硫黄山駐車場の半券で摩周湖第一展望台駐車場がタダになるので行ってみた。幸い湖面も見え明日登る摩周岳も見ることができた。この日は摩周湖YHに宿泊

 

5日目(8/25): 摩周岳

【行  程】  △摩周湖YH 4:52=5:25西別小屋5:33~6:21リスケ山6:24~6:43西別岳6:45~6:54又牛別岳6:56~8:04摩周岳8:46~9:48又牛別山~9:56西別岳10:07~10:23リスケ山分岐~10:55西別小屋11:05=11:25裏摩周展望台=14:18養老牛温泉15:40=16:00△摩周湖YH

【登山データ】  天候 霧一時曇り 歩行 15.7㎞ 5時間22分 延登高 1,024m 延下降 1,024m 4座登頂

20110821知床連峰地図25

 

今日は畑中さんも復活し摩周湖畔の摩周岳に登る。登山ルートとしては摩周湖第一展望台から湖周外輪山を通るルートと裏摩周の西別小屋からのルートがある。今回は山数の多い西別小屋からのルートを取る事にした。西別小屋は意外と立派な避難小屋で標茶山岳会が管理しているらしい清岳荘の如く料金は取らないしお勧めだ。登山口で登山届けを出すと今日はまだ入山した人はいないようだ。樹林帯の中、広い登山道を歩き“うぐいす谷”を過ぎると徐々に傾斜がきつくなり草原の中の道“がまん坂”となる。振り返ると根釧原野が180°の地平線で拡がっている。以前開陽台から見た地平線の風景は素晴らしかったがここも良い。

 

登山道は低く垂れこめた雲の中に突入し、周りは霧に覆われてしまった。再び樹林帯となり第一お花畑、第二お花畑と開けた所がある。今の時期はモイワシャジン、トウゲブキ、エゾトリカブト程度で花期は過ぎてしまった感が強い。登山道はしっかり整備され縦走路を分岐して少し登るとリスケ山(787m)に到る。晴れていれば摩周湖が見えるはずだが、山頂標識を撮っただけで引き返した。第三お花畑、ごくらく平をなだらかに過ぎ西別岳(800m)に登り返す。山頂には2等三角点「西別岳」が置かれ標茶山岳会の立派な山頂標識が立っていた。

 

高山植物を愛でここまで引き返す登山者も多いようだが、目指すは摩周岳。縦走路を先に踏み出すと登山道は整備の程が全然違う。たっぷり露を含んだ草が被り、ずぶ濡れになりそうなので雨具のズボンを穿いた。北北西に伸びる尾根の先端に“又牛別岳”を発見、標高712mとあるので2.5万図の標高点の位置だ。兎に角1山儲けた。又牛別岳を下り切ると第一展望台からの道との分岐点までは、ほぼ平坦路で草の被りも無く歩き易い。分岐点からは摩周岳の火口外輪山となり徐々に緩い上り坂となる。そして山頂に近づくに連れ傾斜が増し右側から巻き込むように進む。空に明るさを感じ見上げると雲の領域を脱したようだ。そして摩周岳(857m)に到着、火口の底まで見える。

 

摩周湖は昔富士山級の巨大火山で大爆発を起こし山頂が吹き飛んでしまった。この縁が今の摩周湖カルデラでその後摩周岳とカムイシュ島が爆発を起こし今の形となり山腹に植物が育ち、カルデラに水が溜り摩周湖が形成されたという。なお摩周岳火口の底(標高375m)は摩周湖の湖面(標高351m)より高く水はない。風も無く穏やかなので40分余りゆっくりしていると霧が薄れ摩周湖の湖面も姿を現した。歩いて来たリスケ山・西別岳、そして雌阿寒、雄

 

阿寒の姿らしきものも雲の隙間から見えた。

諦めていた展望が得られ大満足で来た道を引き返す。再び雲の領域に入り展望台分岐を過ぎた辺りで今日始めて西別小屋からの登山者に出会った。西別岳に登り返すとまた展望があると思っていたが天気の悪化は期待を裏切り二度と遠景を見せてくれなかった。西別岳に戻ると山頂に登山者多数、ひと組はガイドに引き連れられた人達で摩周岳を目指して行ったが、もうひと組は入山時小屋に居た人達で西別岳が目的だったらしく引き返して行った。10分ほど休憩し後を追ったがリスケ山に寄ったようで最後まで会うことはなかった。この後もどんどん登山者は入り、“がまん坂”が相当応えているようだ。帰りは幾ら下っても雲の領域から脱することは無く遂にポツポツしだした。曇りのち雨の予報どおりで、早く登りだして本当に良かった。

 

10:55登山終了、この後は裏摩周展望台に立寄るが予想通り何も見えない。30年前に来たときは湖面まで下りられたのだが今は不可能。その後畑中さんの希望で神の子池に行くと此れが美しい池で感激。摩周湖の伏流水が湧き出した池で澄み切った水が神秘の趣、オショロコマがゆったり泳ぐ姿が又何とも優雅だった。嘗て透明度41.6mと世界一だった摩周湖だが昨今は水質が悪化し透明度は20mを切ってしまったらしく残念だ。

昼食を求めて札弦まで行くと何んと斜里岳が全容を見せてくれた。立ち寄り湯は養老牛温泉で畑中さんの調査で“だいいち”が良いと云うことで行ってみると何んとも風情のある宿で露天風呂が幾つもあった。最後の一つは混浴露天風呂だが中々入ってくる勇気のある女性はいなかった。今日も摩周湖YHに宿泊、今日は岩尾別YHで同宿だった親子連れも泊まり合わせ結構賑やかだ。

 

6日目(8/26): 岩保木山

【行  程】  △摩周湖YH 5:45=6:51トリトウシ7:22~7:28岩保木山7:35~7:41トリトウシ=7:57細岡展望台=8:26岩保木水門9:01=10:32釧路11:29-15:38札幌

【登山データ】  天候 霧 歩行 1.0㎞ 0時間19分 延登高 43m 延下降 43m 1座登頂

 

最終日は釧路湿原、湿原の傍にある岩保木山(119m)に立寄ることにした。登山と言えるようなものではないが一番てこずった山だった。指導標は全く無く、林道の駐車地点が不明で道が分らなくなってしまった。車に置いてきたGPSを取りに戻り帰り現在地を割り出すと。何と随分奥まで車で入っていることが知れ、歩いたルートは間違っていないようだが山頂は途中の小高い所を示している。此れはおかしいと思いながら地図とにらめっこしていると。藪に入った畑中さんが三角点を示す木柱を発見した。しかし本体が何処にもない。紛失しているのかと諦めかけたとき地面に埋もれていた2等三角点「鳥道」(119m)を発見漸く山頂を極めた。

林道をそのまま進むと細岡展望台に到るので立寄った。釧路湿原が一望でき阿寒、摩周の山々も見える筈だが今日は全く無理、諦めて岩保木水門を見に行くことにした。昭和6年釧路川の洪水防止を目的に設置された水門で今はもうその役目を新しい水門に譲っているが木造の建物で湿原の風情に相応しい。此処からは湿原の展望も少しありお勧めのポイントだ。

 

【登山データ計】 歩行 30.6㎞ 11時間30分 延登高 2,058m 延下降2,058m 3座登頂

 

20110821知床連峰01

写真01(8/21): 登山川の白い川床

 

20110821知床連峰02

写真02(8/21): エゾコザクラと雪渓(羅臼登山道にて)

 

20110821知床連峰03

写真03(8/21): 羅臼岳山頂

 

20110821知床連峰04

写真04(8/21): 三ッ峰、後ろはサシルイ岳(羅臼岳より)

 

20110821知床連峰05

写真05(8/21): 羅臼岳羅臼平より)

 

20110821知床連峰06

写真06(8/21): オッカバケ岳と知床連峰(サシルイ岳付近より)

 

20110821知床連峰07

写真07(8/21): サシルイ岳(オッカバケ岳付近より)

 

20110821知床連峰08

写真08(8/21): 二ッ池(オッカバケ岳付近より)

 

20110821知床連峰09

写真09(8/21): 二ッ池キャンプ地のフードロッカー

 

20110821知床連峰10

写真10(8/22): サシルイ岳とオッカバケ岳(南岳山頂より)

 

20110821知床連峰11

写真11(8/22): コケシ岩(縦走路より)

 

20110821知床連峰13

写真13(8/22): ルシャの低地越しに知床半島先端部(硫黄山山頂より)

 

20110821知床連峰14

写真14(8/23): オロンコ岩(宇登呂港にて)

 

20110821知床連峰15

写真15(8/24): 七重の滝(滝の中を登る)

 

20110821知床連峰16

写真16(8/24): 斜里岳山頂

 

20110821知床連峰17

写真17(8/25): 摩周岳と外輪山

 

20110821知床連峰18

写真18(8/26): 2等三角点「鳥道」(岩保木山山頂)