京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No. 3154 高竜寺ヶ岳

今回で連続3週目となる小雨の中の登山。植林の伐採地につけられた明るい林道脇に、白い蕾をつけた低木があちこちあることに気が付きました。「ミツマタ」とのこと。

 

高竜寺毛岳山頂201111

 

 

[No. 3154] 2011年11月6日(日)  高竜寺ヶ岳

 

【実施日】平成23年11月6日(日曜日)

【天 気】雨

【参加者】山本憲彦L、岩坂弘、亀島文子、西田和美SL

【行 程】たんたんトンネル登山口P10:30~休み石~尉ヶ畑峠~山頂11:45~12:15~たんたん温泉13:05

 

(感想) 40期 西田和美

 

 今回で連続3週目となる小雨の中の登山。植林の伐採地につけられた明るい林道脇に、白い蕾をつけた低木があちこちあることに気が付きました。「ミツマタ」とのこと。ミツマタと言えば早春の頃、葉っぱの出る前の枝に舞子の花かんざしのような可愛らしい花をつけます。私はこの花の香りが大好き。秋のこんな時期に蕾をつけることは知りませんでした。まだ青々とした葉っぱの中に、今にも開花しそうに成長した蕾をたくさんつけていました。「狂い咲き」との説でしたが、季節がもっとすすんで落葉し、雪が積もったらこの蕾たちはどうなるのでしょう…。来春、ミツマタの花が一斉に咲きほころぶ様子は観られるのでしょうか。冬を前に、雪深い山に生きているミツマタの身の上を案じずにはいられませんでした。

 

 

<感想>            53期 亀島 文子

 カッパを着てからの雨山行。カッパの中は汗で濡れたが、風が無いので寒さは感じなかった。頂上迄2時間弱の山道には、蛙、キノコなど観察するもの多く、楽しく山本CLの説明を聞きながら・・・(すぐに忘れてしまいますが)頂上でお昼飯。

下山後はタンタン温泉で(登山イベントの豚汁と500のペットボトルをご馳走に成りました)車の運転者に気を使いながら?・・・ビールが旨い。

高竜ケ岳は登山道が整備され、ごみも無く展望の良い広々とした頂上でした。    

   

 

<感想と植生観察>           44期 山本憲彦

 たんたんトンネル南口(兵庫県側)に「たんたん温泉」がありました。そこに寄ると、その日は高竜寺ヶ岳登山大会がある予定だったが、雨で中止とのことでした。すでに炊き出しの用意をした後の中止決定らしく、大鍋のキノコ汁を2杯も「どうぞ、ぜひ!」の連発に誘われて、ごちそうになってしましました。

 我々は、北口の登山道から登るので、帰りにここに立ち寄って温泉につかると約束してトンネルを抜けます。抜けると京都府側になります。一応今は我々は「京都府の植生観察」と銘打っているので、京都府側から登ります。出口の東側に20台くらいは置ける駐車場が出来ていました。登山道はその国道を渡って反対側から取り付くのです。しばらく林道が続きます。雨は降り続いています。

 

 ところどころに樹木の幹に木の名前を書いた札がぶら下がっているので、地元では森林観察もしているようです。登山道は幅が2mくらいの歩きやすい道に整備されています。植生も日本海側の様相を呈しているようですが、いままでの京都府北部の山々とあまり変わらないようです。切りどうしの斜面のところどころに草紅葉したイワカガミの葉が群生しています。しばらく勾配のきつい山道を登りきると、幅が5m程の林道に出会います。ここまで歩き出して30分。その林道を歩いて20分。すると今度は右手に「高竜寺ヶ岳頂上」と書いた矢印の入った標識がありました。数人のハイカーがいました。彼らは今日のたんたん温泉から登る登山大会に参加する予定の人たちでした。うちの女性達の力強い誘いの声に乗って、われわれのグループに参加。頂上まで全員たどり着きました。勾配はきついものの、山道は整備され、歩きやすく、30分ほどで頂上の東屋に着きました。頂上には360度パノラマというのがキャッチフレーズだけあって、鉄柱に周りの見える山々の名前が書かれた板が、それぞれの方向に向けて付けられています。10山以上の札が取り付けられています。

 

 晴れていれば、最高の見晴らしでさぞかし感動したものを…。しかし、そのうち雨も止んで、山麓の姿も見えてきましたが、遠くはまだガスの中。

 ここの植生のメインは頂上付近のブナ林。かなり大きめのブナも残っていますが、今年は我々は京都府北部の山々の残されたブナ林をかなり見てきたので、目が肥えています。ここのブナ林は「よくぞ残してくれた!」と思いますが、本当はもっと広大なブナ林があったものを伐採して植林にしてしまったというのが実情でしょう。残念な思いでブナ林の中を上り下りしました。

 最近は、自然保護・生態系の保全などの考え方が普及して、ブナ林というと自然の代表のように言われ、虐げられてきたブナはさぞかしほくそ笑んでいることでしょう。

 ブナ科は、10ちょっとの属、種は600以上。日本では、ブナ科ブナ属に、ブナ・イヌブナ、同科コナラ属にミズナラ・コナラ・カシワ・ナラカシワ・クヌギ・アベマキ・ウバメガシ・イチイガシ・ツクバネガシ・アカガシ・シラガシ・ウラジロガシ・アラカシなど。同科シイノキ属には、ツブラジイ・スダジイなど。同科クリ属には、クリが。同科マテバシイ属には、シリブトガシ・マテバシイなどが。

 まだ全国には大きなブナ林が残っています。有名なところでは、もちろん、白神山地。白山の山塊に植生するブナ林も広大ですね。

 

 実は、まだブナ林に興味を持ち始めた当時、ブナ林は寒い地方にしか生えないと思いこんでいたのですね。ところが日本では、北海道の寿都町以南・鹿児島県高隈山以北まで分布していることを知り、驚きました。

 ブナは、材としては、切って乾燥した後も曲がるらしく、扱いにくいものとされてきたそうですが、家具の曲げの部分やスキー板には使われているようですね。食器にも使われるようです。20年程前に、芭蕉の足跡の一部を…と思い、山形県立石寺(りゅうしゃくじ)を訪ねたときに、根元中堂のところに来て、一瞬足が止まってしまったのです。なんと、この建物はすべてがブナ材で造られていたのでした。14世紀に建立ですから、芭蕉もこれを見たのですね。日本で作られた木偏に無と書いてブナと読ませる字が出来たのは、材としていまいちだからですか?このお堂を見ても分かりますが、曲がらずに現在もちゃんと建っています。東北では山に毛のように生えているので山毛欅と書くそうです。比良山塊のコヤマノ岳にはかなりのブナ林があり、早春にはブナ林が白いハケの毛のようなすばらしい風景を見せてくれます。

 牧野博士は、ブナの実が5-10年周期で豊作と凶作を繰り返し、豊作の翌年はネズミの異常繁殖で農業従事者はブナを恨んだと書いています。

 今年のRDBの会の例会はあと、12月の君尾山だけとなりました。来年は、主に京都府東部の山々にて植生観察をします。ブナ林の樹林下(コナラ属との混生林)には、スプリング・エフェメラルが潜んでいて、一時の春の日差しを待っています。その植物たちに会うのが、来春の最初の植生観察になるでしょう。それまで、RDBの会のフィール・ドワークは冬眠して、しばらく、冬の間はインドア研修に励みたいと思います。ぜひ参加して下さい。