京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3189  府民稲荷山自然観察会「地質と歴史」 稲荷山の自然と歴史を探る

伏見稲荷大社には何度か参拝していましたが、こんなにも幅広く贅沢に稲荷山全域を巡ったのは初めてでした。歴史的観点から古代から現代まで、地質や地形的観点からは数百万年前の京都を取り囲む山々の成り立ちを講師の先生に丁寧に説明していただき興味が尽きませんでした。

 

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[No.3189] 2012年3月25日(日)

府民稲荷山自然観察会「地質と歴史」

稲荷山の自然と歴史を探る

 

(記録・感想)22期 穐月 哲

【天候】 晴れ後曇時々雨

【行き先】稲荷山.深草丘陵

【参加者】穐月哲、穐月大介、山本憲彦自然保護委員(当会参加者3名)

【コース】伏見稲荷大社~艮社~四つ辻~一の峰~稲荷山三角点~末広の滝~鎭守池~斬池~伏見稲荷大社(約6km)

【主催】京都府山岳連盟

【主管】自然保護委員会

【講師】日本山岳協会自然保護指導員 杉村忠重(歴史)・山中博(地質)

【感想】

昨年秋、雨で延期になっていた観察会が今回やっと実現しました。伏見稲荷大社には何度か参拝していましたが、こんなにも幅広く贅沢に稲荷山全域を巡ったのは初めてでした。歴史的観点から古代から現代まで、地質や地形的観点からは数百万年前の京都を取り囲む山々の成り立ちを講師の先生に丁寧に説明していただき興味が尽きませんでした。

神社と言うと日本古来のもの、日本の神様と思いますが、まだ平安京ができる前から深草の地に居住していた新羅系の氏族秦氏が伊奈利山(稲荷山)の3つの峰に神様を祀った秦氏縁の神社なのです。(秦氏は地元の有力者で財力があり、織物、土木工事などで平安京建設の貢献者です。)また今も祭礼時の東寺神供が残っているなど仏教色もあります。今日も参拝者は外国人で一杯。八百万の神様も、参拝者も異国情緒に溢れています。

 

 

【地質観察】

(1)四つ辻手前の崖で何百万年もかけて堆積した丹波層群のチャート(石英)を観察。(2)荒神峰展望台から京都盆地の生い立ちを俯瞰。吉田山、船岡山、双岡は約30万年前から断層が動いて沈下したブロックの山頂とのこと。(3)稲荷山三角点(地形図の基準点)を確認。(4)稲荷山と深草丘陵の境界には稲荷山断層があり、急斜面で末広の滝・御剣の滝・白菊の滝がある。神社が祀られ修行の場となっている。(5)丹波層群の硬い岩石で形成された稲荷山と違い、竹藪に覆われた深草丘陵は大阪層群とよばれる柔らかい地層で、鎭守池のアズキ火山灰層を観察。(6)立命館高校東側の崖に陸上で堆積した土石流堆積物を観察。(7)地滑り地形は立木が真っ直ぐ立たず斜めに傾いているのが分かった。

(8)断層が山の尾根を横切る時くびれた地形ができることがある(断層地形)。ケルンコバ(低い部分)とケルンバット(高い部分)。

京都市街を取り囲む山々は比叡山から大文字山にかけて花崗岩が有る以外は、丹波層群と呼ばれる約2億年前の古い堆積岩と、山裾を取り巻く丘陵は数十万年前に湖や入り海に堆積した柔らかい地層でできています。その境目には断層が有り、以上の7つのポイントを今回観察しました。

 

 

(感想)44期 山本憲彦

 いつもですが、穐月夫妻の勉学意欲は、おそらく生涯学習という今大きな国民的な課題になっているテーマを、理想的な形で実現されているようにいつも感じています。そして、その持続力には感服しています。

 今回は、延期になっていた「地質観察会」。稲荷山でしたが、その南側の部分は私には実は初めてでした。大体、古代から言い伝えとして、土着信仰の偉人伝説では、あの山に紫の雲がかかったから行ってみるとやはりたいした山であったから、お堂を建てた、・・・などという事が多いですね。特に修験道を開山した山はそれと似たような言い伝えがあるようです。

  ところが今回は神社です。しかし、上に行くに従って、土着信仰の形態をとった社や石塔が表れます。神仏習合よりもっと古い形のように感じました。日本の神はとがった岩に降りますから、ここも、やはり頂上あたりのとがった岩に神が降臨したのかもしれません。平安時代になると、各地の神も帝が格を決めましたから、それぞれの神はその格上げを競うようになりました。つまり人間社会に巻き込まれていくのですね。

 最近は、岳連の自然観察会では、科学的な観察ばかりでなく、その地域のもつ歴史的な背景もいっしょに勉強していこうという形になっています。自然観察ですから、歴史を聞きに来た人は少ないでしょうが、それでも「知らないことが学べて良かった」と好評です。今回は地質の観察が中心でしたが、気温が低く、時々雨も降るコンディションのなか、40名以上の参加者が最後まで歩き通しました。

穐月ご夫妻にはお疲れ様でした。また今回は「記録」までお願いして快く哲さんが引き受けてくださって、ありがとうござました。これからもよろしくお願いします。

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