京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.4002 府民新緑観察会―仁和寺から金閣寺まで、植生を観察しながら尾根を歩くー

2012年5月13日(日)

府民新緑観察会―仁和寺から金閣寺まで、植生を観察しながら尾根を歩くー

 

(記録・観察)22期 穐月哲

【天候】 晴れ

【参加者】 穐月哲、山本憲彦、亀島文子、(当会参加者3名)

【コース】 御室仁和寺山門(10:00)~境内~陽明文庫~御室88所3番・88番札所~80番~宇多天皇陵~大内山(竜安寺裏山)~衣笠赤阪町~金閣寺(14:00)~大文字山(左大文字)~金閣寺バス停(16:00)

【主催】 京都府山岳連盟

【主管】 自然保護委員会

【講師】尾松、中島(自然保護指導員)

 

【感想】 昨年の例会で、井上高雄Lの御室88所札所巡りに参加させていただきましたが、今回は仁和寺裏山から大文字山まで足を伸ばしました。京都盆地の北詰に位置する名刹仁和寺竜安寺金閣寺)を麓に抱く穏やかな峰の植生を観察しながら歩きました。先ず尾松委員から仁和寺の説明を聞いてからスタートしました。又、只今京都国立博物館で開催中の「近衛家の名宝展」の陽明文庫の所蔵庫前で幸運にも名和館長のお話を伺えました。さて本日の植生観察のポイントは古事記に出てくる植物です。中島委員からの配付資料を参考に観察しました。初夏の山は淡い緑が萌え、中でも際だって椎の白い新芽が萌えています。道中は淡いピンクの餅ツツジの花が清々しく綺麗でした。心も足取りも軽やかに大文字山に向い、左大文字の火床に到着すると、そこはまるで遺跡のように石が組まれていました。山本委員から「神聖な場所ですから足を踏み入れてはいけません」と、教えて頂き神妙な面持ちで火床をのぞき込みました。その先に広がる京都盆地の全景は絶景です。お盆の送り火には手を合わすこの山と私が一体になって京都盆地と解け合っているような不思議な充実感を味わいました。

 

【観察内容】

イオニア植物とは:大きな木が伐採され地面に日が差し込むようになるといち早く発芽し大急ぎで他より高く成長して他を圧倒する植物たちのこと。

土中で眠っている埋土種子が50度の地熱で発芽し光の獲得競争が行われると中島委員から説明があり、カシノナガキクイムシ被害のため伐採された地点で確認しました。

 

<感想>           44期 山本憲彦

 前回の「稲荷山地質観察会」に続いて、今回の「新緑観察会」も、会報掲載の「記録・感想」を穐月哲さんにお願いしました。お手数でした。

 今回は、私の家から徒歩10分程度の距離に当たる御室仁和寺の山門がスタート地点でした。今回のコースは、中島委員の推薦により、委員会で決まった観察会です。こうして、60名近い人たちと一緒に歩いてみると、また見慣れた風景がいつもと違って見えるのが不思議です。

 中島委員のお薦めの観察対象は、アオモジと穐月さんも指摘されているパイオニア植物でした。御室88ヶ所にあるアオモジが自生かどうかは不明ですが、中島説では、植木屋さんがいつの時期かに植えたのではないか?ということです。私は実は、以前から「お花」として投げ入れなどで、「あれは何という花なのだろう?」とずっと不思議に思っていて、あるとき88ヶ所を3月初め頃にふと上を見上げると、その花と巡りあったのでした。その花を望遠で撮って、かつての自然保護委員長の大杉さん(今年1月に逝去)にみせても、その正体は不明。それがアオモジであることが分かったのはそれからだいぶん経ってからでした。

 そのアオモジの花は、4月中旬まで少し残っていましたが、さすが5月にはもう花は散って葉が沢山着いている状態での観察になりました。

 「・・・もじ」は、宮中の女房言葉(平安時代)だそうで、女性心理に由来する隠語といっても、ピンと来ませんが、優雅で上品な言葉とされたようですね。

 例として、「お・・・」(丁寧)や「・・・もじ」(婉曲)が多いようです。要はストレートには表現しないのですね。今でも京都の古いしきたりを重んじる人たちは、物をストレートに言う人を避ける傾向があるようです。上の「・・・もじ」は「もじことば」といわれ、やがて「文字詞」という漢字があてがわれます。これは室町時代を経て、江戸時代まで続きます。

 「お・・・」はたくさんあります。「おかか」「おかき」「おかず」「おから」「おこわ」「おじや」「おすもじ」(寿司)「おつけ・おみおつけ」「おでん」「おなか」「おなら」「おにぎり」「おはぐろ」「おひや」「おまる」「おまん」(饅頭)

 「・・・もじ」も結構あります。「おくもじ」(奥さん)「おめもじ」「かもじ」「くろもじ」「しゃもじ」「ひもじい」「ひともじ」(ネギ)「ふたもじ」(ニラ)「ほのじ」(誰かが誰かに・・・?)「ゆもじ」(ゆかた)など。

 おそらく、この女房ことばのなかの「くろもじ」(クスノキ科の木で作ったつまようじ)が広がって、後に「シロモジ」「アオモジ」(いずれもクスノキ科―芳香あり)と命名されていったのではないかと思われます(山本説?)。

 パイオニア植物については、穐月さんのレポートをごらん下さい。

さて、前自然保護委員長の深見さんが、「このコースならせっかくやから陽明文庫にみなさんに寄ってもらおう!」と企画してくれました。それで同当主の名和さんが出迎えてくれたのでした。目下国立博物館で宝物を展示中で、お忙しい中を我々を出迎えてくれました。もう展示中でのお話は聞けないでしょう。良かったです。

岳連自然観察会史上最大の参加人数で、天気も良く、後半のオプショナル・コースの左大文字にも参加者は満足して帰りました。穐月さん、亀島さん、お疲れ様でした。また、よろしくお願いします。次回は、9月30日「きのこ観察会」です。ぜひ、当山岳会のみなさんも参加して下さい。