京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3216 HG(ハイグレード) 縦走 北アルプス西穂~奥穂 *合宿P

学生のころ、初めて奥穂高岳から、ジャンダルムの姿を見てあんな所に人が立てるんだろうか・・・いつか行けるものならあの上に立ってみたいと漠然と考えていました。

 

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[No.3216]  7/27(金) 夜~ 29(日) HG(ハイグレード) 縦走 北アルプス西穂~奥穂 *合宿P 

 

 

【メンバー】L・長野浩三・AT・秋房伸一・吉川彩・南部桂

【リーダー】長野浩三

【日時】2012年7月27日夜~29日

【天候】28日晴れ後一時雨,29日曇り後晴れ

【タイム】27日20時烏丸御池東入セブンイレブン前集合~24時30分上宝道の駅

28日9:00ロープウェイ山頂駅~9:52西穂山荘~12:41西穂高岳~14:22間の岳~15:19天狗岩~16:00天狗のコル(ビバーグ)

29日4:50天狗のコル~6:20ジャンダルム~7:50奥穂高岳~9:06穂高岳山荘9:30~15:00新穂高温泉,入浴~帰京

 

  ☆動画1 

 

  ☆動画2

 

【記録&感想】46期 長野浩三

 27日午後8時に烏丸御池に集合だったが,南部さんは間に合わないので,大津SAで待ち合わせた。上宝の道の駅で仮眠をとり,午前7時すぎに新穂高温泉へ。無料駐車場は既に一杯で,登山道のそばの有料駐車場に駐車した。ロープウェイは8時30分が定刻だったが,客が多いので少し前から運行したが,人数が多く結局歩き始めたのは9時だった。

 

 西穂山荘は大賑わいだった。アイスを食べて出発した。登山客がとても多かった。ただ,独標をすぎてだんだん人数は少なくなり,西穂から先は私たちだけとなった。西穂から少し先で滑落事故があったらしく,遭難救助隊の人が登山道で無線交信していた。我々に対して,どこまでいくのか,これからでは暗くなる,テントは持っているのか,無理はしないように,など声をかけていただいた。

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 間の岳,天狗岳と順調に進んだが,暑くてかなりバテた。天気はかなりよく,心配された雷雨もなかった。

 

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安全のため,天狗のコルでビバーグとした。天狗のコルには避難小屋跡があり,そこは飛騨側からの風が防げて快適だった。4人用テントだったので,秋房さんがツェルトを使った。食事は各自で酒も少し飲み,7時には就寝とした。

 

 翌日3時30分に起床し,食事をとり,5時前に出発した。天候はくもりでガスがかかっていた。高度感のあるところもあるが,技術的にはY懸尾根よりも少し簡単な感じだった。ただ,ずっと続くので緊張感を持続する必要があった。

 ジャンダルムを飛騨側から登ったが,展望は0だった。

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 ジャンダルムを巻いたところくらいからが一番難しいところかもしれない。馬の背は登りなので感想としては全然たいしたことはなかった。ホールドも足場もきちんとある。ただ高度感はあるのでびびると怖いかもしれない。

奥穂まで行くとたくさんの登山客がいた。記念撮影を行い,長野とTは足早に穂高岳山荘に向かった。

穂高岳山荘でカップラーメンやコーヒーなどを食し,予定どおり白出沢を下降した。白出沢には雪渓が残っていたが,雪渓の右側に雪渓をとおらずに済む踏み跡があり,結果的にバイルやアイゼンは使わなかった。

  

 岩切道を通過し,既にかかっていた重太郎橋を渡ったところで長野とTは後続を待つ30分くらい昼寝をしていた。後続とはかなり離れていたが,特定省電力トランシーバーで何とか会話ができた。縦走時に離れた際,無線がなくてもこれがあれば便利だ。

 

 あとは白出沢左岸の登山道を下り,林道を足早に下山した。穂高平の避難小屋で飲み物を飲んだ。吉川さんが以前ここに泊まったことがあるそうで,風呂が懐かしいというのでわれわれも風呂をみせてもらった。立派な檜をくりぬいた風呂だった。

 

 あとは新穂高温泉の駐車場近くの中崎なんとかという日帰り温泉で温泉&食事をして帰路についた。

 以前このルートを通ったのは2005年5月だった。アイゼン,ピッケルで腐った雪の中を往生しながら進んだ記憶がある。それに比べて,今回は無雪期でもあり,案外あっさりと通過できた。ただ,高度感があるところがあり,特にクライムダウンができないといけないのでY懸尾根をクライムダウンする練習をしてから臨んだ方がいいだろう。あとは万一のときのために懸垂下降もできることが必要だろう。

 

 今回比較的入会間もない吉川さん,南部さんが参加してくれて充実したHG(ハイグレード)縦走となった。今回の合宿には参加したいと言っていた人もいたので,次回は是非今回参加した人がリーダーになってこのルートの縦走を企画していただきたい。

 

 

【感想】54期 南部 桂

 憧れのコースを歩きとおせて大満足です。

例会案内には「落ちたら死ぬ」というようなことが書いてあったので、どうしようかと思いましたが、思い切って参加しました。

 実際のところは、金毘羅例会を事前に組んでいただいたおかげで、恐怖を感じることはありませんでした(しっかりした足場ばかりでした)。ただ、私たちの少し前方で事故を起こした人がいて、雪の上に残った滑落跡と岩に当たって滑落コースが変わっているのを見て、やはり危ないと思いました。

 

 初日は、ロープウェイで一気に上がったせいか高度順応できずに苦しみ、西穂山荘につくまでにバテていました。本当に一日歩き通せるのか怪しい状況で、プラティパスからチューブで水を吸うたびに、息が上がってゼイゼイ呼吸を繰り返す有様でした。奥穂までいかずに、ビバークになって助かりました。

 

 2日目は調子が回復して気持ちよく歩け、馬ノ背など迫力あるコース歩きを楽しめました。ただ、ジャンの登りで落石してしまったのが不覚です。幸い、下に誰もいなかったので助かりましたが、凍りつきました。 帰宅してから、ヘルメットにつけたムービーカメラで撮った映像を見ると、やはり迫力あるコースだなと改めて思います。疲れのせいで、黙々と機械的に歩いた時間が長かったですが、もう少し味わいながら歩けばよかったと今頃思います。

吉川さんからガスがでてなければ馬ノ背からは下の町まで見下ろせると聞き、また来年にでも歩いてみたい気がします。企画頂いた長野Lはじめ、ご一緒に楽しい時間を過ごした皆様に感謝です。

 

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【感想】51期 AT

 以前にこのコースを歩いたのは10年くらい前のことだったと思いますが、じつのところ初めて北アルプスへ行って、初めて歩いたのがこのコースでした。

 情けない話ですが危険なコースとは知らず(後からよく見ると地図のルートが点線になっていたことに気が付いた)、単独でこのコースを辿ったところ、「北アルプスとはなんと危ないところだろうか。こういうところを登山口で見かけたような老人子供なども登るのであれば、毎年死者が出るというのも全く頷ける話だ。」と思ったものでした。

 元々よじ登ったりすることが得意なことからそのまま縦走して、命からがら奥穂高岳のテント場まで辿り着いたのでしたが、テントを張った時(テントもその時買ったばかりの物でした)、隣にテントを張ったシミズさんという60歳くらいの方が「どこから来られたんですか」と声をかけて下さり、この方が「君の歩いて来た道は危ないとこだ」と教えて下さって、初めて事態が飲み込めたのでした。

 

 このシミズさんという人は地元の山岳会員の方で、(お話から今にして思えば)屏風岩にも登ったというアルパインクライマーの方でした。

 この方が色々登山をしてきて、(年齢的に)自分の登山の最後として、まだ訪れていなかったこのコースを辿ろうということでやってきていたそうでした。

 自分も奥穂高側から西穂高へ縦走する予定だったが、天候不順で今回はあきらめるとのことで、(この時天候は雨だった。それを考えても無謀なことでした)僕のことを面白い奴だと思ったのか、一緒に上高地まで下山して下さいました。

 ちなみにシミズさんには、涸沢の読み方が解らず「僕は こさわ から下山します。」ということを言ったりしていたので、自分が素人だということは一発で見抜かれてしまいました。

 危険から開放されたことと、初めて見下ろしたザイテングラートの美しさから興奮状態になった僕はマシンガンのように話しながら帰りましたが、シミズさんは僕が迂闊にも危険なルートを辿ったことについて、説教をしたりとか注意をしたりすることなく「僕が最後まで取っておいたコースを初めてやってきた奴に登られちゃあやってられないなぁ」と冗談を言って聞いて下さいました。

 

 それまで自分は北海道の山や白山など、ジーパンにスニーカーで登って登山者に説教をされたことがあり「登山者とは説教臭いものだ。山岳会などはその最たるものであろう」と思い込んでいたのですが(まあ説教されても仕方ないですが)、このシミズさんとの出会いで山岳会に対するイメージがすっかり変わり、山岳会に入会する間接的なきっかけとなったのでした。(それから入会までは七年かかってしまいましたが。)

 

 そんなわけで、よく憧れのコースと言われるこのコースの印象は、僕の中では少し違うものなのです。

シミズさん、お元気だろうか。10年経って今度は山岳会の仲間達とまたこのコースを歩けました!

 

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【感想】 52期 秋房伸一

 私は毎日、阪急電車で京都から大阪まで通っていますが、ホームで電車を待っている時、四半世紀以上も、そのホームに立ちながら、絶対に自分はそこには行けない場所、すなわちホームから下の二本のレールの間の場所、を意識することがあります。

こんなに身近に、物理的距離としてはほんの1mなのに、絶対にそこには立ち入れない場所、そこに入るということはそれまでの自分の得てきた生活を全て失うということ、そんな場所が日常の生活のすぐ側にある。人生は、ほんのちょっとしたはずみで全てを失うのは簡単だということ、リスクや欲望をコントロールすることによって日々の生活が成り立っている、といったことです。

 今回の縦走も、ある意味同じといいますか、ホームの端を歩くのはそう難しいことではないけれど、ちょっとふらついたりバランスを崩したら大変なことになる、といったところで共通性のある空間だと思いました。

 普通に沢登りとかをしている人なら、なんということのない技術的レベルのコースではありますが、やはり緊張しないといけない場所です。

 今回も同じコースを歩いていて落ちた20代男性が、亡くなったことを下山後に報道で知りました。

 とか書きましたが、実に楽しい山行で、ありがとうございました。出発前の連日の宴会で不摂生な生活もあってか、全体を通じてバテてしまい、チームのブレーキになりましたが、深刻なバテには至らず、よかったです。

 天狗のコルでのツェルトビバークも快適で良かったです。ファイントラックのツェルトは結露も少なく、実に快適でした。

 一人ではなかなか出来ないことも、山岳会の仲間と一緒だから行けると感じました。

 

【感想】53期吉川彩

学生のころ、初めて奥穂高岳から、ジャンダルムの姿を見てあんな所に人が立てるんだろうか・・・いつか行けるものならあの上に立ってみたいと漠然と考えていました。去年とりあえずジャンダルムには立ったものの、目標は今回のジャンダルムを含む西穂高岳から奥穂高岳の縦走でした。

 このルートを金曜夜に出て土日で踏破するという企画に、いつものんびり小屋泊まりスタイルの私がついていけるか、ギリギリまで参加を悩みました。長野リーダーに参加を快諾していただいたものの、出発当日までかなり緊張していました。15キロの歩荷訓練でも体力的にきつかったので、今回はとにかく軽量化に徹し、共同装備も免除して頂き、最終的に13.6㎏の荷物でした。

 

 長野リーダーのスピードに無理についていこうとするとバテますよ、と秋房さんが気遣ってゆっくりめに行って下さり、おかげでバテずに行く事ができました。また、鎖場の滑りおちそうな岩の上をよつんばいになって恐々進んでいると、横でTさんが普通に2足歩行でひょうひょうと歩いてられました。その姿に何だか拍子ぬけして必要以上に怖がらず、平常心で岩場の続くところを進むことができました。

 天狗のコルでのビバークもとても良い経験でした。ここではヌカカ(?)というらしい小さな羽虫に沢山刺されてしまい、標高3000mといえども虫除け対策は必須と思い知りました。ジャンダルム、そして奥穂高岳に着いたときは達成感で一杯でした。今回、企画してくださった長野さん、御一緒してくださった皆さん、本当にありがとうございま した。おかげで長年の夢が叶いました。