京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉 雷電山・羊蹄山 《山紀行775》

以前悪天候で断念したニセコ連峰雷電山への縦走とガスの中を辿った羊蹄山のリベンジを目指し北海道に渡った。気候温暖化の影響か7月の北海道の天候は変わってしまったようだ。毎年3連休に渡道していたがここ数年、毎回梅雨で天気が悪く今年も良くなかったようだ。思い切って下旬に変更したところ、天気が良すぎて大変な暑さで北海道らしくもない暑さとの戦いだった。

 

20120728雷電羊蹄3

 

写真3:(7/29 シャクナゲ沼とシャクナゲ岳(1,074m)

 

 

[個人山行] 雷電山・羊蹄山 《山紀行775》

   平成24年7月28日(土)~31日(火)

48期 山本浩史

以前悪天候で断念したニセコ連峰雷電山への縦走とガスの中を辿った羊蹄山のリベンジを目指し北海道に渡った。気候温暖化の影響か7月の北海道の天候は変わってしまったようだ。毎年3連休に渡道していたがここ数年、毎回梅雨で天気が悪く今年も良くなかったようだ。思い切って下旬に変更したところ、天気が良すぎて大変な暑さで北海道らしくもない暑さとの戦いだった。

 

【メンバー】 山本浩史L、畑中里子 計2名

 

1日目(7/28): 美笛の滝 晴れ

【行  程】 京都6:22-(はるか3号)-7:47関西AP 8:30→10:25新千歳AP 11:10=11:55モラップ12:31=12:41苔の洞門13:15=13:32美笛川13:35~13:46美笛の滝13:51~14:03美笛川14:05=15:10△ニセコアンヌプリYH

【登山データ】 天候:晴れ 歩行1.6㎞ 0時間28分 延登高 77m 延下降 77m 0座登頂

20120728雷電羊蹄地図1(728)

 

 1日目は特に登山は計画していなかったが、レンタカーを借りてニセコへの道中、支笏湖畔のモラップに立寄って恵庭岳を見た。キャンプ場は家族連れで賑わっていた。直ぐに深くなるカルデラ湖で遊泳は禁止されているが水着姿の子供が殆どだった。

 

次は苔の洞門、5月に樽前山の後に来たときは冬季閉鎖で見られなかったが今日は大丈夫。レストハウスに番人が居て協力金を徴収され、砂の遊歩道を15分ほど歩くと入口に達した。両側にそそり立つ岩壁に崩落の危険があり現在は入口に設置された展望台から窺うしかない。嘗ては苔の洞門を通り抜け樽前山への登山道もあったのだが何んとか開通できないものだろうか。

 

支笏湖の南岸を走る国道276号線の美笛トンネルを越えて暫く走ると右手に美笛の滝の表示があり入ってみることにした。予備知識がないので一体何処まで入るのか?その後どれだけ歩くのかも分らない。車の入れる終端に駐車場があり、案内板を見ると800mの歩行だ。行ってみようと云うことになり登山靴に履き替えて歩き出すと木橋での渡渉があったりして本格的な山道でプチ登山を楽しむことができだ。前方に現れた美笛の滝は2段に括れた落差約50mの雄大な滝で見る価値はありそうだ。親子づれ1組が先客で、沢登りをしてきた5人組が将に到着する所だった。

 

2日目(7/29): 雷電山 晴れ一時曇り

【行  程】 △ニセコアンヌプリYH3:40=4:04神仙沼レストハウス4:10~4:31長沼~5:22シャクナゲ岳~6:37白樺山~7:09新見峠~7:41前目国内山~8:47目国内山~9:32パンケ沼~11:08幌別岳~11:50雷電山~12:12前雷電~13:33中山~14:32朝日温泉~15:29雷電温泉16:30=17:05神仙沼レストハウス17:06=17:26△ニセコアンヌプリYH

【登山データ】 天候:晴れ一時曇り 歩行30.2㎞ 11時間19分 延登高 1,674m 延下降 2,409m 8座登頂

20120728雷電羊蹄地図2(729)

 

今日は長丁場、30㎞歩く。ニセコパノラマラインを走り神仙沼レストハウスの駐車場(標高755m)に到着、3年前縦走しようと思ってここで仮眠したが、濃霧で登山を断念した。今日は良く晴れ登山意欲を掻き立てられる。まずは遊歩道のような登山道に入り神仙沼に立寄ろうとしたが広がる湿原の素晴らしさに満足し引き返して長沼を目指し、すぐに北岸に達する。沼越しに見えるチセヌプリが朝焼けに輝き素晴らしい。長沼の西岸を南下しチセヌプリとシャクナゲ岳の鞍部ビーナスの丘に登り上げる。ここからシャクナゲ岳までは以前来た道、もう3年前になる。標高は885m、シャクナゲ岳へはまだ190m登る。上部は岩場で360°の展望がある。チセヌプリ(1,134m)が大きい。北側にはシャクナゲ沼があり畔にはヒオウギアヤメやエゾキスゲ、エゾカワラナデシコなど北海道らしい花が咲き揃い楽しませてくれる。

 

北側の丘陵に登ると、シャクナゲ沼とシャクナゲ岳のマッチングが良い。シャクナゲ岳の北西に流れる尾根の先にはキノコのように突出した大岩が異様だ。丘陵を北側に下りペンケ目国内川支流の源頭を巻き込むように進み、なだらかに登り返して白樺山(959m)に達する。山頂からは360°の展望があり振り返る先程登ったシャクナゲ岳やチセヌプリ、その先には羊蹄山の優雅な姿も望むことが出来る。

 

白樺山を南西方向に下るとホイッスルを吹きながら登ってくる男性が一人、今日始めて人に出会った。新見峠に達すると一旦車道に出る。ニセコパノラマラインから分岐し新見温泉に到る道で駐車場には2台の車が止められていた。道路の両側が登山口で1台はさっきの男性の車で、もう1台は目国内岳を目指しているのだろう。735mまで下ってしまったのでまたまた500m程登らなければならない。目国内岳の前に前目国内岳がある。標高差は250m、歩き始めて3時間まだ7時を過ぎたばかりだが気温が上がって来た。北海道らしくない暑さだ。今日は長丁場でまだ1/3も歩いていない、大丈夫だろうか?

30分足らずで前目国内(980m)山頂に達した。何んとか行けそうだ。ここも360°の展望で歩いて来たシャクナゲ岳や

白樺山の後に羊蹄山が姿を現した。1,898mある大きな山体なので一際存在感がある。新見峠から合目表示があり山頂を過ぎたところに五合目の標識があった。一旦900mまで下りて目国内へと登り返す。シロバナニガナやエゾキスゲが咲き競っている。山頂部は岩場で縦走路を外れ攀じ登り目国内岳(めくんないだけ1,220m)に到着、一番高い岩の上に登ると360°の展望で岩内岳の向こうに積丹半島が見える。最高峰は余別岳(1,298m)何れ行ってみたい山だ。

 

西稜線を下り切るとパンケ目国内川の源頭の湿原パンケ沼に達する。2.5万図では湿原の表示だが現地では笹原に変わりつつありパンケ沼だけが頑張っているようだ。山深過ぎて木道整備などはされず湿原の中を登山道が縦断する。高山植物の宝庫でシナノキンバイワタスゲ、ミツガシワ、クルマユリ等が目を楽しませてくれる。

 

雷電山へは真西に進めばいいのだが登山道は湿原を通り岩内岳に向かって北上する。岩内岳手前800mの処で稜線に出て折り返すように分岐するが此処で漸く行程の半分、立ち寄ろうとしていた岩内岳だが近づくに連れて山容に厳しさを増してきたので恐れをなして立ち寄りはパスして幌別岳へと歩を進めた。向こうから女性が一人鈴を鳴らしてやって来た。この女性が新見峠からの登山者で雷電山へピストンしてきたと云う。幌別岳は分からなかったと言っていたがその筈、登山道は山頂を巻いている。分岐点に標識があり山頂を示しているがハイマツに覆われ道は怪しい。此れを見て畑中さんは動こうとせず一人で藪に突入したが辛うじて踏み跡はあるがハイマツの上を越えて行くところが多い。山頂を示すものは特になく「登りましたよ!」と云うだけ。

 

雷電山の方を見るとなだらかな高原状の山域が続いている。次のP1175ピークは北側を巻いて通過したところに五ッ沼があるが果たして5つあるのかどうかは笹藪の中で確認できない、沼の畔にはモウセンゴケが群生している。虫を取ってくれるなんて有難い。時折虻(あぶ)か蚋(ぶよ)が纏わりつき鬱陶しい。前方に近づいて来た雷電山(1,212m)の南斜面は随分切り立った岩壁を見せているが山頂域はテーブル状になんとも穏やかに続いている。山頂も平らで低い笹原の所為で案外見通しは悪い。大きな山頂標識があり然も1等三角点峰だ。点名は何故か「雷電岳」という。

 

此処まで来れば後は基本下り、まだ10㎞を残すが気持ち的には「もう行ける!」、するする歩いて前雷電(1,204m)は初めて展望のない山頂で笹原を僅かに切り開いただけ。3等三角点「雷電岳」があるはずだが探すのも忘れていた。

雷電山にあった1等三角点の点名も「雷電岳」僅か1㎞しか離れていないのに全くの同名とはどう云うことだろう?点名とはどうでも良い記号なのか・・・12時を過ぎ昼食場所を探していたがいい所がない。P1154の直下に来て展望の良い所があり12:30になってやっと昼食とした。とはいっても朝が早かったのでもう何度も食べているのだが・・

 

日本海に雲が出だした。やがて山に掛りガスが辺りを覆いだし夕立ちを心配したが直ぐに取れてまた快晴、南西方向に長方形の湖、「コックリ湖」が見えて来る。羅臼湖が最後の秘境と言われながらガイドブックに載って俗化してしまった今、真の最後の秘境かもしれない。蘭越町御成から登山道があり長い下りの後登り返して最後の山、中山(841m)に達する。此れだけ標高を下げても360°の展望があり満足。もう登りはないはず、雷電峠へと進み稜線を離れて朝日温泉へと下る。ユーナイ川に掛った丸太橋を渡ると温泉に到る。湯内川と漢字が当てられてるが温泉なのに「湯ナイ」とは之如何に? 朝日温泉はH22年7月29日集中豪雨で内風呂や河原の露天風呂などが被害を受けて長期休業中、国道へ通じる町道も一時不通になっていたそうだ。水上勉の小説「飢餓海峡」はこの温泉が舞台になったそうだ。再開が待たれる。

 

もう登りはないはずだったが町道への取り付けまでは30mほど登らなければならない。凸凹の車道4㎞を歩き雷電温泉に到着した。嘗ては9件の宿があったそうだが今は寂れて目に着いたホテル雷電に日帰り入浴に立ち寄った。鉄筋5階建ての外観は朽ちて営業しているのかどうか怪しそうな感じで、中に入っても浴槽、床もカビだらけで最悪、日本海に面した景色だけが素晴らしかった。海岸沿いの国道を走る路線バスは2時間後までなく、どうせ乗っても岩内までしか行かないのでタクシーを呼んで神仙沼レストハウスまで30㎞連れて行ってもらった。(料金7,580円)

 

3日目(7/30): 羊蹄山 晴れ

【行  程】 △ニセコアンヌプリYH4:05=4:33京極ふきだし公園4:40~5:15京極登山口5:30~6:44五合目6:52~7:45七合目7:55~8:51京極下山口9:10~9:39小屋跡~10:22羊蹄山10:35~12:22 730m地点~13:13喜茂別登山口=14:27京極ふきだし公園=14:38京極温泉15:45=16:20△ニセコアンヌプリYH

【登山データ】 天候:晴れのち曇り 歩行21.1㎞ 8時間40分 延登高 1,058m 延下降 1,058m 2座登頂

20120728雷電羊蹄地図3(729)

 

羊蹄山には3年前に比羅夫~真狩コースで登った。2日前にあのトムラウシでツアー登山客8人が死亡する事故が起きた。あの悪天候で日高に行く予定を急遽ニセコ、羊蹄に変えたものだった。前日のニセコアンヌプリは好天に恵まれたが羊蹄山はガスの中を登り下山は雨だった。従って1周した山頂も全く風景が見えずただ登っただけだった。今日は快晴京極ふきだし公園の駐車場に車を止め歩き出した。京極は羊蹄山の湧水が噴き出す処で1日8万トン6.5℃の水は名水とされている。

 

ここからの車道歩き3㎞は余分なのだが喜茂別からの周回を考えると止むを得ない。京極登山口には駐車場もあり普通はここから登りだす。駐車場には車が1台あった。ジャガイモ畑で切り開かれ羊蹄山の全景が一望でき期待は高まる。いざと出発したが登山届を書いたときにストックを忘れて来たことに気が付いて取りに戻り15分のロス。畑中さんは先に行ってしまい何時まで経っても追い付かない。今日も暑い余り飛ばすと体力が持たないのでセーブしながら歩き三合目(770m)で漸く追い付いた。

 

京極コースは合目表示がきっちりとしているので自分の現在位置が分かりやすい。しかし標高差1,480mを登るのでその間隔は標高差200m近くあり、かえって距離を感じさせる。四合目表示だけは見落としたのか見つからなかった。五合目からはきつくて合目ごとに休憩を取り水分を補給した。七合目(1,500m)辺りまで来ると森林限界を越え直射日光が背を炙り暑い! 八合目あたりで登山道にエゾヤチネズミを見つけた。岩の隅に屈まる様に身を隠していたが子供のようで小さい。九合目あたりからガレ場に出て砂地で歩き難い。やっとの思いで外輪山に達すると初めて見る火口の眺めに疲れも吹っ飛んだ。休んでいると喜茂別コースを登ってきたという男性が追い越して行った。羊蹄山頂はすぐそこだが外輪山を1周してから登頂するので10m先にある1等三角点「真狩岳」は通らない。挨拶をしに立ち寄ってから周回に入った。

 

羊蹄山には2百数十種の高山植物が咲き乱れるそうだ。今日もウメバチソウ、ハイオトギリ、イワギキョウ、ハクサンチドリなど咲き誇り素晴らしい。半月湖からの比羅夫コースを登る人が一番多いようで反対方向からはどんどん人が来る。彼らが通る北山(1,844m)を避けて小噴火口の南を通り小屋跡へ出る。小屋跡の手前のお花畑は色とりどりで最高に素晴らしい。

 

真狩下山口まで来ると羊蹄山避難小屋が見えた。標高1,670m位の処にありご来光を見るには此処に泊るといいだろう。夏場は管理人が居て有料らしい。西の方向にはニセコ連峰が横たわるが雲が多く判然としない。他の山も良く見えないのに羊蹄山だけこんなに晴れているのが不思議なくらいだ。外輪山の南側は岩峰が続き最高点に到る。さっきの喜茂別コースの男性が休憩していたので追い越して先に進んだ。帰りも同じコースらしい。日本百名山羊蹄山(1,898m)はやはり登山者が多い、内地の山ほどではないにしろ百名山人気は大したものだ。

 

喜茂別下山口は山頂直下にあり、最後の山頂風景を焼き付け下山に掛った。山頂部にもガレ場はなく草つきの登山道となる。女性3人組が登ってきた。喜茂別コースには合目表示がなく果てしなく下る感じがする。歩いても歩いても下界が近づかない。登山靴の中で指が悲鳴を上げている。足が痛くなりうんざりしてきた。いつもなら余り休憩を取らないが今日は頻繁に休憩を取りゆっくり下った。下り始めて2時間漸く林道に到った。しかし標高545mでまだ200m下る。砂防ダム建設時の作業道でヘアピンカーブを繰り返して道が付いているが登山道は沢の横を直線的に下って行く。林道を2度横断すると道が広くなりやがてゲートに達する。ここが喜茂別登山口で登山ポストも設置されていた。車が2台、この2台の主とは皆出合った。

 

此処で登山が終わればいいのだが京極ふきだし公園まで6.7㎞の車道歩きが待っている。道道97号線を北上するが直線道路と云うのは風景が変わらず車なら単調でスピードがでやすいが歩行者には辛いだけ。右手に顕著な山容が見えて来た。尻別岳(1,107m)だ。ルスツリゾートの橇負山(そりおいやま)と続いている。炎天下歩くこと1時間14分漸くふきだし公園に戻ってきた。遅れている畑中さんを途中で拾い京極温泉へと直行した。

 

4日目(7/31): 観光 曇り時々晴れ

【行  程】 △ニセコアンヌプリYH8:24=9:16洞爺湖13:02=15:05新千歳AP 16:55→19:05関西空港19:46-21:02京都

20120728雷電羊蹄地図4(730)

 

最終日は昆布岳を予定していたが、2日間で52㎞歩いたのが堪えて二人とも足の裏にマメを作ってしまった。もう歩けないと山行はあっさり止めて洞爺湖観光に切り替えた。平成12年噴火の金毘羅火口の災害遺跡、“やすらぎの家”と桜ヶ丘団地を見る。泥流が流れ込み1階はほぼ埋まり賑ったであろう町営温泉施設と団地の1棟だけが保存されている。移動して昭和52年噴火の遺跡は三恵病院跡で入院患者全員を無事避難させたその直後泥流と地殻変動で崩れてしまったそうだ。平成12年噴火のことは良く覚えている。室蘭本線が暫く不通になり開通後乗ったら列車から未だ噴煙が見えていた。被災したお菓子工場や幼稚園は何度もTVで見たものだ。

 

20120728雷電羊蹄1

写真1:(7/28) 苔の洞門

 

20120728雷電羊蹄2

写真2:(7/28) 美笛の滝

 

20120728雷電羊蹄4

写真4:(7/29) パンケ沼湿原と目国内岳(1,220m)

 

20120728雷電羊蹄5

写真5:(7/29) 雷電岬の刀掛岩

 

20120728雷電羊蹄6

写真6:(7/30) 羊蹄山(1,898m) 京極登山口より

 

20120728雷電羊蹄7

写真7:(7/30) 羊蹄山外輪山と火口原

 

20120728雷電羊蹄8

写真8:(7/30) 羊蹄山山頂のお花畑

 

20120728雷電羊蹄9

写真9:(7/30) 羊蹄山(1,898m) 外輪山より