京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉金剛堂山・猿ヶ山

越中五箇山は合掌集落と深い谷、その奥に展望の素晴らしい金剛堂山がある。またブナオ峠で終わっている岐阜県石徹白からの縦走を先に延ばすべく秋真っ盛りの2日間富山県南砺市に入った。

20121020金剛堂・猿ヶ山2

 

写真2(10/20): 金剛堂山1,650m (前金剛南稜線より)

 

 

[個人山行]  金剛堂山・猿ヶ山      平成24年10月20日(土)~21日(日)

48期 山本浩史

越中五箇山は合掌集落と深い谷、その奥に展望の素晴らしい金剛堂山がある。またブナオ峠で終わっている岐阜県石徹白からの縦走を先に延ばすべく秋真っ盛りの2日間富山県南砺市に入った。

 

【メンバー】 山本浩史(単独)

 

1日目(10/20): 金剛堂山

【行  程】 京都3:00=(名神北陸道)=砺波IC=7:36東俣峠=7:59栃谷登山口8:10~9:48前金剛9:58~10:7金剛堂山10:19~10:31奥金剛~11:07林道終点~11:40東俣峠11:52=(自転車)=12:17栃谷登山口=12:40天竺温泉14:07=15:05菅沼合掌集落15:32=16:00ブナオ峠=17:08▲小原ダム

 

【山データ】

  天候 晴れ 歩行 11.1㎞ 3時間30分 自転車8.2㎞ 25分 延登高 1,143m 延下降 676m 3座登頂

20121020金剛堂・猿ヶ山地図1

 

砺波ICで高速を下り山中へと分け入る。利賀川(とががわ)を恐ろしく高巻きする国道471号線を進み金剛堂山栃谷登山口を目指す。縦走の便を考え登山口を通り過ぎ下山口となる東俣峠に自転車をデポしに非舗装となった林道を更に奥に入る。しかしこのダート道を下山後8.2㎞も折畳みの自転車で大丈夫だろうか。一寸心配しながらも峠に到着し自転車を看板の柱に鎖で繋いだ。峠には「東俣登山口」の表示と案内地図、それにトイレがあり、そこに車が1台止められていた。栃谷登山口に戻ると車が増えている。それでも広い駐車スペースはまだ余裕がある。トイレと避難施設もあり充実している。

 

百瀬川を簡易な鉄橋で渡り登山道に入る。栃谷から尾根に乗り上がり急登の斜面を登る。ブナの原生林が美しく標高が上がるに連れ紅葉が美しくなってきた。1,000mを越えると今が盛りの紅葉となり気持ちが良い。男性がしきりと写真を撮っている木はことさら見事なブナの大木だった。今日は荷物が小さくどんどん歩ける。次々に登山者を追い越した。古い地図にはP1021手前で利賀スキー場に下りる道が描かれているが廃道になったのか痕跡もなかった。P1346付近まで来ると所々展望が得られ期待が膨らむ。P1451を過ぎた辺りで追い抜いた人が最後だったようでもう前に人はいない。放射冷却で降り注いだ露をたっぷり蓄えた草が瑞々しい。

 

やがて前金剛(1,638m)山頂に到着、誰も居ない。快晴風あり景色は360°、東には北アルプス、西には白山。北アルプスは雲を纏い、剱、立山、槍、奥穂、乗鞍、御岳が頭を出しているのが西の白山は光線状態が良く雲一つない。山頂には1等三角点「金剛堂山」と祠、方向指示板があり、ご丁寧に「金剛堂山」の山頂標識まである。2.5万図には金剛堂山の表示があり此処を金剛堂山山頂としている文献も多い。しかし最高点はこの先にあり1,650mの標高がある。最高峰の中峰を望むと草原のなだらかな稜線が続き夢の楽園のようだ。写真を撮っていると最後に追い越した男性が登頂して来た。入れ替わりに出発し中峰へ向けて草紅葉の楽園を行く。

 

途中の小ピークから振り向くと前金剛が一段と青空に映え素晴らしい。10分ほどで本峰に到着するが此処には山頂を示すものは何もない。展望はいいのに残念なことだ。風が強いので立ち止まると寒い。笹原の陰に隠れて休憩、パンを食べてコーヒーを飲んで前金剛を振り返ると山頂であった男性が下り始めていた。縦走すると言っていたが東俣峠からはどうするのだろう? 更に南下して奥金剛(1,616m)を目指す。前方から男女2人が来た。東俣からのピストンのようだ。朝東俣峠にあった車の主だろうか?

 

奥金剛の山頂には「利賀川水源地」の標識がありその側面に「金剛堂山(奥金剛)1,616m」と記されていた。なだらかな夢の稜線はまだ続き、金剛寺谷の枝谷の源頭から対岸に派生する顕著な尾根との間は深い谷となって行く。金剛堂山と富山・岐阜県境尾根を繋ぐ尾根は利賀村と八尾町の境界となっている。県境尾根の先には白木峰が鎮座している。P1527を過ぎると夢の稜線も終わり樹林帯へと入って行く。殆どいないかと思っていた東俣からの登山者は4組目を数え。何時から登り始めたと聞くと30分前からと云う。東俣峠はまだ随分先だがその先にも林道は続いていたので相当上まで上がって来たのだろう。小ピークを過ぎると突然林道に飛び出した。此れは早い筈だ。車が2台置かれていた。標高は1,500m、こんな所まで車で来てしまうと登山と言えるのだろうか? 軟弱め!

 

東俣峠まで2.4㎞は林道歩き、この間車は全く来なかったが3人組の登山者が登って来た。南方の山々が見え隠れするが木が邪魔して中々撮影ポイントはない。方角的には猿ヶ馬場山や、籾糠山などが見えるのだろうが同定は難しい。ほぼ稜線に沿って林道が付いているが下の方に来るとジグザグに下って行く。やがてデポした自転車が見え、1台だった車が3台になっていたがやはり静だ。傍らに「熊の目撃情報あり」との看板に「ふ~ん」と一瞥、昼食に勤しんだ。

 

登山はまだ終わらない。ここからはダート林道を自転車で8.2㎞走る。標高差は500m弱一貫した下りで楽だがスピードは出せない。小石を踏まないように慎重に下る。自動車のようにエンジンブレーキがないのでブレーキをキィキィ鳴らしながら走る。ブレーキを離せば直ぐにスピードが出る。単車が2台登ってきた。こんな山中の林道に登山の恰好で折畳み自転車、変なおっさんと思われたことだろう。栃谷登山口に戻って来ると、ここも車の数が増え10数台になっている。誰も居ない、ピストンの人はまだ山中のようだ。

 

登山口から2.8㎞先に天竺の湯がある。ガラガラで他に3人居ただけだった。ゆっくり過ごしても未だ14時、明日の袴腰山への葎島(むぐらじま)登山口の確認に行き、藪の覆われた登山口を確認し少し入ってみると丸太階段が続き歩けそうだった。越中五箇山といえば合掌造りの民家、菅沼の合掌集落が近くにある。集落の入口の駐車場で協力金\500を徴収され集落を巡った。現実の生活のある民家は夫々が土産物屋や食堂を営み観光で生計を立てているようだ。30分程観光し、今度は明日の下山口に自転車をデポしに行く。ブナオ峠は国道156号線西赤尾町から分岐する県道54号線の峠だが入口から標高差は600mある。登って行くと登山を終えた車が下って来て数台すれ違った。大門山から大笠山への登山口になっている。しかし明日は反対方向の縦走で今日行った人はいるだろうか。林道を下り道の駅ささら館で夕食を食べ、小原ダムの畔で車中泊をした。18時には眠りに着き、長かった一日が終わった。

 

2日目(10/21): 袴腰山・猿ヶ山

【行  程】 ▲小原ダム5:54~8:23小倉山~9:21小瀬峠~10:11袴腰山~10:15同展望台10:43~11:37三方山二峰~12:12三方山一峰~12:45猿ヶ山~14:00大獅子山~14:25ブナオ峠14:33=(自転車)=15:47小原ダム16:08=16:11くろば温泉17:38=五箇山IC=(東海北陸道名神)=21:52京都

 

【山データ】

  天候 晴れ 歩行 18.9㎞ 8時間31分 自転車15.3㎞ 74分 延登高 1,937m 延下降 1,257m 6座登頂

20121020金剛堂・猿ヶ山地図2

 

今日も良く晴れている。さぞや露に濡れるだろうと雨具上下を着て出発した。昨日確認しておいた葎島(むぐらじま)登山口までは関西電力関連会社のエリア内の車道を歩く。登山口にも車を置くことはできるが、下山後自転車で戻って来て坂道を登るのはキツイ。昨日見たとおり登山口は草が被っているが「登山道小倉線葎島入口」という折れた標識が転がり、丸太階段も整備されているので大丈夫だろう! と高を括り入って行った。ところが殆ど歩かれている形跡はない。蜘蛛の巣が酷く、ストックは蜘蛛の巣払いに大活躍、油断をすると顔にべったり。藪もだんだん酷くなり草だけではなく枝も覆っている。蜘蛛の巣を張る余地もない位の藪となり15分ほど藪を漕ぐと三角点が現れた。4等三角点「葎島(むぐらじま)」(489m)で金属製の点標が打たれていた。心配した露も大したことがなく雨具を脱いだ。

 

三角点を過ぎると藪は益々酷くなり道とは言える状態ではなくなった。展望もなく足元の微かな踏み跡だけを外さないように只管進むしかない。その踏み跡もあやふやで標高差600mもこの状態が続く。ひどい藪の中に突然丸太階段が現れ100m位進むと明瞭な道に出た。これは菅沼合掌集落の対岸の小瀬からの登山道で古道「道宗道」と云う。2時間の藪との激闘の末、やっと藪漕ぎから解放された。疲れた! 朝一に相当体力を消耗してしまった。

「道宗道」は浄土真宗の念仏行者道宗が砺波にいた蓮如上人の教えを受けるために五箇山から通った道で平成21年に地元で“道宗道の会”が結成され復興したそうだ。小倉山(約1,020m)山頂には「道宗道 小倉山」と書かれた真新しい山頂標識あるが展望はない。明瞭な道を進み1,028m標高点に到ると「猪子越分岐」の標識があり道宗道は東の尾根を下って行った。縦走路は再び藪の中に突入するが葎島の登りをAランクとすると今度はCランクの下程度の草だけでさして問題はなく進むことができた。ただ此処へ来て露がたっぷり付いていてズボンを濡らすが、もう雨具を着る気はしない。

 

送電鉄塔が現れると薄の原っぱで展望が利く。これから行く袴腰山、三方山、猿ヶ山を一望することがきる。送電鉄塔の先に見座三角点峰があるが藪漕ぎで時間を食ってしまったのでピストンは諦め送電線沿いに南南西に尾根を下る。谷鞍谷からの登山道が合流し巻道となる筈だが、合流する道が分からないまま巻道に入ってしまった。

巻き道には見座三角点峰から流れ出る沢に水場が点在する。鞍部に到り北側に小屋のような建物がある。そこから来る道と三角点峰の斜面にも踏み後がありピークから直接下れたのかもしれない。道がなければ急傾斜と藪で相当苦労させられそうだ。分岐点の直ぐ先が小瀬峠で五箇山の小瀬からの道が城端の方へ越えている。明瞭な稜線を進み林道に飛び出すと袴腰山が目の前に聳える。紅葉が青空に映え素晴らしい。50mほど林道を歩き“峰越登山口”と表示があった。林道には赤い車が止まっていた。五箇山側にはゲートがあり。通り抜けは出来ないようだ。

 

登山口から10分足らずの歩行で高台に到る。袴腰山小屋が設置されている。小さな避難小屋だが宿泊も出来そうだ。展望もよく袴腰山や小倉山、見座三角点峰も良く見える。明瞭な道を30分ほど登ると袴腰山に到る。山頂域には案内標があるが今一要領を得ない。池ノ平登山口への道を南に分け右に90度曲がり少し進むと最高所(1,163m)と思しき所に到るが何の表示もない。展望もなくそのまま通過し100mほど行くと展望台があり5m位の櫓が立っている。梯子で上に登ると砺波平野から医王山、縦走路の先にある三方山、猿ヶ山その先には笈ヶ岳、大笠山を望むことができた。櫓の下で大休止を取り藪漕ぎの疲れを癒した。

 

袴腰山北西稜線は等高線が詰まった急斜面で、長いロープが張られているが掴まらなくても下るのに問題はない程度だ。P1068の前後500mほどは草原で気持ち良い。袴腰山や三方山の展望が広がる。3人組の若い男女に出合った。

 

峰越登山口から袴腰山~猿ヶ山をピストンして来たそうだ。と云うことは林道にあった赤い車の主。それにしてもあの女性は絵に描いたような山ガールで可愛かった。樹林帯に入り3等三角点「奥山(おんぞう)」(1,104m)が登山道途中に現れ、その先の送電鉄塔袴腰山の展望が得られた。展望も此処が最後でこの後は全て樹林帯の歩行となる。登山道の途中に三方山二峰(1,142m)の石碑があった。山頂はこの裏手にある。旧福光町と旧上平村の境界に沿ってピークに立つ。2.5万図にある三方山はこの位置だ。三方山一峰(1,348m)は1.5㎞南にあり此処も同じような石碑タイプの山頂標識がある。この間で白いモスクの尖塔のようなキノコを見つけた。西田さんに写真鑑定を依頼したところホコリタケの幼菌ということだった。他にテングタケクサハツの仲間のキノコを見た。

 

一峰を過ぎると余り人は歩いてないようで藪は濃い、ただ一度は刈り払いされたような跡があり葎島尾根と比べると屁でもない。時間短縮を目指してピッチを上げて、今日の最高峰猿ヶ山(1,448m)に到る。山頂には2等三角点「猿ヶ馬場」があり暫し休憩し2度目の昼食を摂った。当初計画ではコースタイム11時間35分でブナオ峠到着は17:35だったがこの時点で1時間20分時間短縮して明るいうちの下山が可能になった。猿ヶ山からは下り一方で藪は被っていても殆ど支障なく歩ける。大獅子山の直下まで来た。登山道は山頂の西側を巻いているので登路を探すと微かな踏み跡を発見し辿って行った。山頂部で不明瞭になり一番高そうな所へと藪の中に突入して行くとビニール紐がルートを示すように付いているので辿ってみるが山頂にある筈の3等三角点「真谷」には行き着くことはできなかった。諦めて下山に掛るが元来た道に出るのも遠回りになるのでコンパスの示す矢印に従って真西に進む。踏み跡は全くなく激しい藪を漕いで何んとか登山道に復した。急がば回れだったかも・・・

 

この後1.4㎞の歩きでブナオ峠に飛び出すと大門山に登った人たちが沢山帰り支度をしていた。県道の通行止めのゲートの前に括り付けておいた自転車に乗って12.8㎞峠道を下り小原ダムに戻る。どう云う訳か自転車の空気が抜けてタイヤはペコペコになってしまった。幸エンジンブレーキのように下り坂でスピードが出ないのが怪我の功名だった。国道に出てから五箇山ICを越えて菅沼に到る上り坂は登れなかった。自転車を押して歩き1時間14分掛り小原ダムに戻り今日の登山を終えた。

小原ダム湖を望むくろば温泉で汗を流し疲れを癒し東海北陸道に入って帰路に付いた。 《山紀行783》

 

【山データ計】

  歩行 30.0㎞ 12時間01分 自転車23.8㎞ 99分 延登高 3,080m 延下降 1,933m 9座登頂

 

20121020金剛堂・猿ヶ山1

写真1(10/20): 白山2,702m(前金剛山頂より)

 

20121020金剛堂・猿ヶ山3

写真3(10/21): 激藪の葎島(むぐらじま)登山道

 

20121020金剛堂・猿ヶ山4

写真4(10/21): 袴腰山1,163m (峰越登山口より)

 

20121020金剛堂・猿ヶ山5

写真5(10/21): 猿ヶ山1,448m、三方山一峰(袴腰山展望台より)

 

20121020金剛堂・猿ヶ山6

写真6(10/21): 三方山一峰1,348m (猿ヶ山北稜線より)