京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉旭山・十勝岳《山紀行810》

 平成25年7月27日(土)~29日(月)

東北や山陰で豪雨が続き不安定な気象条件の日本列島、道央旭川・美瑛地方だけは雨を免れ十勝岳に登った。9年前の大雪・十勝連峰縦走のときガスで何も見えなかった十勝山頂を満喫することができた。

 

20130727十勝岳3

写真3: グランド火口と十勝岳2,077m(スリバチ火口縁より) 1835

 

【メンバー】 山本浩史L、畑中里子

 

1日目(7/27): 旭山

【行  程】 ▲白金温泉7:20=7:30青い池7:53=8:15ぜるぶの丘8:25=8:54旭山動物園11:10~11:22旭山~11:34旭山動物園12:20=3:30不動の滝13:35=14:05望岳台14:17=14:23吹上温泉14:28=14:38▲白金温泉

【登山データ】 天候:曇り 歩行1.4㎞ 0時間24分 延登高75m 延下降75m 1座登頂

20130727十勝岳地図1

 

 

十勝岳登山を予定していたが、山は雲に包まれ一時雨の天気予報で登山は中止し、観光に切り替えた。まずは近くにある「青い池」を見る。火山の成分が混じるのか水が神秘的な青い色をしている。堰堤を作って水がたまった偶然の産物だが今や観光地となっている。国道237号線に出ると花壇の美しい“ぜるぶの丘”があり立ち寄る。赤や黄色、白、紫の花が高原のライン上に植えられ美瑛らしい風景を醸している。次は噂の旭山動物園、9時少し前に着いたが開園は9:30、西口駐車場で開園を待った。

 

旭山動物園は昭和42年(1967)開園したがその後エキノコックス症で動物が死に平成6年には入園者が年間26万人にまで落ち込んでしまった。是を救ったのが前園長の小菅正夫で行動展示を導入したことにより年間300万人を超えるまでに成長した。特にペンギン館やアザラシ館の人気は凄く、水の中から動物を見せてくれる。

 

手の甲に透明のスタンプを押して貰い東門から一時出場、スキー場の作業道を歩き旭山(295m)山頂を目指す。スキー場内は展望が利くが山頂は藪の中、なだらかにピークに達すると2等三角点「旭山」だけが待っていた。来た道を戻り東門で手の甲を差し出すと光を当てて確認され再入場した。白金温泉に戻り不動の滝に立ち寄り、明日登る十勝岳登山口の望岳台を 確認した。

 

2日目(6/15): 十勝岳

【行  程】 ▲白金温泉4:44~5:33望岳台~7:15スリバチ火口~8:07十勝岳8:29~8:41平ヶ岳8:43~8:50鋸岳~10:07美瑛岳~11:22△美瑛富士避難小屋

【登山データ】 天候:曇り後晴れ後霧 歩行16.2㎞ 6時間38分 延登高 1,823m 延下降 818m 4座登頂

20130727十勝岳地図2

 

北海道の火山の中でも常時噴煙を上げる活発な火山で、最近では昭和63年12月から翌年にかけて溶岩が流れる噴火があった。それ以前は大正15年、昭和37年に大噴火があった。当初三段山経由で計画したが平成21年8月の崩落で通行止めになったままであることが判明し望岳台コースを取ることにした。平成19年に大雪十勝を縦走したとき十勝岳は霧の中で通過したので今回は何としても見たい。一日待った甲斐があり山頂が見えており期待を持って望岳台歩道を歩き出した。最初は立派な車道だったが道幅が狭まり登山道然としてきたが以前はしっかりした道であったようだ。電柱や照明の跡がある。右手に現在の道道が近づき車の音が聞こえる。こんな時間に走っているのは十勝岳を目指す山屋に違いない。50分の歩行で望岳台に到着した。日帰り登山者は殆ど此処望岳台を登山口として登りだすので駐車場には既に沢山の車が置かれていた。

 

登山届に書き込んで登山道に入る。望岳台の標高は935m、過去に火砕流が通った斜面に木はなく十勝岳山頂までずっと展望が利く登山道だ。登山届によると10パーティー以上が先を行っている。先を行く人達に徐々に近づき一人二人と追い抜く。吹上温泉への道を右に分けると傾斜が増してきた。150m程標高が上がると左に雲ノ平・美瑛岳登山道を分岐する。健脚の登山者なら十勝岳から美瑛岳を縦走し望岳台に戻るコースを取ることもできる。そして雲ノ平のお花畑は素晴らしいらしい。少し進むと十勝岳避難小屋に達する。日差しが強くなってきたので日焼け止めを付ける。小屋は土間と板の間があり快適そうだ。昭和63年の噴火の際はこのすぐ上まで溶岩が来たらしい。

 

暫く登るとルートが90°曲り、谷を横断する。直進すると嘗ての前十勝ルートだが昭和63年の小噴火以来閉鎖され最早踏み跡も定かではない。傾斜の増した斜面を黙々と登り、乗り上がった処はスリバチ火口の縁で火口底には雪田が広がっていた。南側はグラウンド火口で北側が開けた大きな火口が広がる。その火口越しに十勝岳が見え、最も十勝岳の特徴が現れるアングルではないだろうか。しっかり写真に収めた。暫くはなだらかにスリバチ・グラウンドの両火口縁を歩き十勝岳直下に到る。下から見上げても登路の全く判別できない岩場を攀じ最後の稜線を目指す。此の岩場で早くも下山者とすれ違う、望岳台を5時までに出発したそうだ。稜線に乗り上がるとなだらかになり、上ホロカメットク避難小屋で止まったと云う二人組に出会った。同宿だった9人パーティーが今日美瑛富士避難小屋に泊ると云う。え~と云う感じ。岩場が険しくなると最後の登りで360°展望の十勝岳(2,077m)山頂に到着した。

 

風が強く寒い。先客数名、途中で追い越した小学校3年生の男の子を連れた夫婦が登頂し皆拍手で迎え和やかな雰囲気。南の方に目をやると上ホロカメットク山と避難小屋、富良野岳が懐かしい。北の方はこれから行く平ヶ岳、鋸山、美瑛岳を望むが美瑛岳に薄い雲が掛り始めた。20分ほど休憩し腹拵え。やがて大きなザックを背負った何処かの山岳会パーティーが到着、旭岳から縦走して来たと云う。9年前を思い出す。

 

山頂を後にする頃、ガスが掛り始めた。平ヶ岳(2,008m)は何処が山頂か判別し難い広さを持った山で、山頂を示す表示はない。鋸岳(1,980m)は縦走路を外れ砂地の登山道を真っ直ぐ行くと山頂に到る。西側がスパッと切れ端に近寄ると崖が崩れそうで危険を覚える。此処にも山頂を示すものはなし。そして山頂に着く頃はガスが辺り一面を覆い視界が奪われてしまった。

 

鋸岳東斜面は砂地で富士の大砂走りのようだ。以前の縦走時にこの斜面を一歩登っては半歩下がり、前に進まず苦労したことを思い出した。美瑛岳までは特に目標物もなくガスの中を単調に進むが、お花畑で写真を撮るのに忙しい。チシマギキョウ、イワヒゲ、エゾノツガザクラ、ミヤマリンドウ、チングルマゴゼンタチバナ、エゾウサギギク、エゾコザクラ、キバナシャクナゲウラジロナナカマド、イワブクロなど高山植物を満喫できた。チングルマは場所によっては髭爺さんになっているかと思えば満開の処もあり雪解けの進行で開花時期が違ったせいなのだろう。

 

美瑛岳はポンピ沢を回り込み縦走路から西にはみ出す。分岐点にザックが9つデポされており、十勝岳を下って来る人が言っていたグループのようだ。分岐を超えると直ぐに返って来る一行と出合った。女性中心で、後で分ったことだが東京のグループで男性2人は地元のガイドだった。美瑛岳(2,052m)山頂は2等三角点「帯経しけ」がある。山頂に立つと風が強く吹き飛ばされそうだ。休む気にもなれず三角点にタッチして直ぐに引き返した。この先を真っ直ぐ行くと雲ノ平で望岳台から周回路だ。

 

美瑛岳北稜線の下りで9人グループを追い越し美瑛富士との鞍部(1,716m)に到る。遠くから見るとテントのようだったが、近くまで来るとテントではなくザックがデポされているだけだった。美瑛富士は此処からピストンで登るしか道がなく、明日のお楽しみに今日は登らずに通過した。「富士」の名を冠するだけあり優雅な円錐形をしている。南東部に大きな雪田があり50m近くの雪上歩行となる。アイゼンを付けるまでもなくステップを切って慎重に通過、渡った処にはウコンウツギが咲いていた。

 

縦走路から分れ300mで美瑛富士避難小屋に到着、時刻は11時22分一番乗りだ。年季は入っているがまあまだ。但しトイレはない。下りようと思えば十分今日中に下りられる時間だが美瑛富士を残したし今日は泊ろう。小屋には今から下山すると云う女性が一人、小屋の写真を撮ろうと出発するのを待つが話をし出して中々動いてくれない。この後二人組の男性が休憩に立ち寄った。13人のパーティーオプタテシケ山を目指したが一人が足を痛め引き返して来たとの事だった。暫く休憩していたが他のメンバーへの伝言メモを私に頼み13時頃二人で先に下山して行った。残りの一行は14時頃だっただろうか立ち寄り伝言メモを見てそのまま下山して行った。この日の小屋は14名で満員、9名ものグループで避難小屋を使うのはどうなんだろう、常識外れではないだろうか。することがないので昼食の後は持参のウィスキーを飲んで夕食の時間を待ったが、こうなるとお腹も減らずチキンラーメンだけで夕食を終えてしまった。隣には名古屋から来たスキンヘッドの小父さん、小柄で丸顔、赤い涎掛をすればお地蔵さんそのもので仄々とする。吹上温泉から登って来たそうで明日は下山するだけらしい。18時に就寝。

 

3日目(7/29): 十勝岳

【行  程】 △美瑛富士避難小屋6:14~7:19天然庭園~8:30美瑛富士登山口~9:17白金温泉9:58=10:31フラヌイ温泉11:38=12:40千望峠展望台=13:26三段滝=14:01桂沢湖=14:42南大夕張駅跡=15:16△夕張

【登山データ】 天候:霧雨のち曇り 歩行10.0㎞ 3時間03分 延登高 35m 延下降 1,040m 0座登頂

20130727十勝岳地図3

 

例の9人グループが5時半頃オプタテシケ山を目指して出発した。小屋に戻って来るのでいらない荷物は置いて行った。嵐が去ったように静かになり、出発準備を整え、いざ出発。10分程で水無川の雪渓に到る。この時期小屋近くの水場は干上がり此の雪を取るか、更に下るかだが、昨日のガイドはもう少し下の沢まで行ったと思う。標高1,210m地点に「天然庭園」の標識が現れる。ハイマツ林が庭園のようだと名付けられたのだろうがさして感動する景色ではなかった。ただ雲の領域を脱し下界が見えるようになった。細かい雨は続き、折からの日差しで前方に虹が架かった。美瑛の丘陵に架かる虹、美しさに暫し見とれる。

 

登山地図に美瑛富士登山口と記された個所は林道跡が始まる処だが、踏み跡は人ひとり分だけになっている。やがて車道に飛び出すと此処が美瑛富士登山口で登山届のBOXもあった。この先3.9㎞は車道歩きで白金温泉に戻る。殆ど走る車はなく静かな道だ。硫黄橋から見上げると美瑛岳!雲が薄くなり晴れて来る勢いだ。橋を渡ると白金温泉到着、9時17分登山を終えた。この辺りのホテルは日帰り入浴を受け入れているが何処も11時からで温泉に入ることができず、上富良野町街中のフラヌイ温泉で汗を流した。

 

【登山データ計】 歩行27.6㎞ 10時間05分 延登高 1,933m 延下降 1,933m 5座登頂

 

20130727十勝岳1

写真1: 旭山山頂2等三角点「旭山」(295m)

 

20130727十勝岳2

写真2: スリバチ火口 1833

 

20130727十勝岳4

写真4: 上ホロカメットク山1,920m、富良野岳1,912m(十勝岳山頂より) 1846

 

20130727十勝岳5

写真5: 前十勝1,790m(十勝岳山頂より) 1847

 

20130727十勝岳6

写真6: 十勝岳2,077m(平ヶ岳山頂より) 1853

 

20130727十勝岳7

写真7: エゾノツガザクラ(美瑛富士巻道にて) 1883

 

20130727十勝岳8

写真8: 美瑛富士小屋 1892

 

20130727十勝岳9

写真9: 天然庭園の虹 1895