京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉 越後三山縦走

 2013年8月11日(日)~13日(火) 

2009年に買い、幾度と眺めたままだったエアリア「越後三山」を使う日がとうとうやってきた。今まで行けなかったのは、単純に遠いからである。混雑した山を避けるつもりで日程を設定し出発

 

130811-13etigo9 中央、なんとか向こう側が見える

 ↑中央、なんとか向こう側が見える

 

 

[個人山行

 

【メンバー】単独

 

【天候】11日:晴れのち曇り 12日:晴れのち曇り 13日:晴れ

 

【行程】

・8月11日(日)

自宅7:00⇒9:45徳光PA10:15⇒13:15大倉駐車場

大倉駐車場13:30→1410水場→15:30三合目→16:50四合半→17:30六合目女人堂・19:30就寝

・8月12日(月)

4:30起床・女人堂5:30→6:15薬師岳→6:25千本檜小屋30→7:00八ッ峰分岐10→7:50九ヶ岳(入道岳)8:10→8:25五竜岳35→9:35荒山50→10:35オカメノゾキ45→12:30出雲先→12:40休憩13:05→14:10御月山→14:30祓川50→16:00中ノ岳避難小屋10→161:5中ノ岳45→16:50中ノ岳避難小屋・18:00就寝

・8月13日(火)

4:30起床・中ノ岳避難小屋5:40→6:50檜廊下7:00→7:55天狗平→8:05休憩15→8:50グシガハナ分岐55→9:10越後駒ヶ岳25→9:40中ノ岳分岐45→11:15人松25→11:35力水→12:40 600m地点50→12:55十二平登山口→14:40大倉駐車場

大倉駐車場15:00⇒小出IC⇒16:00米山SA20⇒19:30南条SA⇒21:30多賀SA23:20⇒0:10京都市

 

【記録】

2009年に買い、幾度と眺めたままだったエアリア「越後三山」を使う日がとうとうやってきた。今まで行けなかったのは、単純に遠いからである。混雑した山を避けるつもりで日程を設定し出発。

 

 大倉駐車場は標高250m、真夏の炎天下はとにかく暑い。そして車から出るだけで虫が寄ってくる。運動不足、体力低下、睡眠不足、長時間運転、重いザック、猛暑、急登と、熱中症にならずしてどうする、という位にステキな程条件が揃った登り出し。鎖場だのと危険がられているが、個人的には今山行の最大の山場は初日昼間からの登りだと踏んでいたので休み休み登ることとする(記載のタイムの合間に3~5分程の小休止を幾度もとっている)。二合目の水場は枯れかけていた。そして立ち止ると虫にたかられた。歩くと汗をかき頭が朦朧としてくる。そして立ち止まると(以後エンドレスのため省略)。

 

1人、下山してきた人とすれ違う。三合目には風穴があるがちっとも涼しくない。期待していたのでがっかり。四合半からの稜線で2人組と遭遇、こんな遅い時間にと思ったがロープウェイから降りるらしい。

 

女人堂に着いた、と立ち止まるとまたしても虫がたかって刺してくるのでさっさと中に避難。八海山方面にしばし登ったところには、稜線だというのに川が流れているという、奇跡のような水場があった。水量の細さを心配していたが祓川の名の通り、立派な流れである。

 

 女人堂には中央に神棚がしつらえてあり、ゴザが敷いてあるきれいな小屋。ここのバイオトイレは、なんとトイレの中に自転車が鎮座しているのだ。使用後にペダルを漕いで排泄物やトイレットペーパーを撹拌する仕組みらしい。上着が汗で濡れて寒いので、着替えの服代わりにツエルトにくるまって床につく。

 明日以降も暑さと体力不足が懸念されるが、本日熱中症で動けないといったレベルには至らなかったので、暑さに関してはなんとかなるだろう。神棚に手を合わせて旅の無事を祈った。

 

半端に余った水を捨て、3.5Lの水を背負って出発。薬師岳まで朝っぱらからなかなかの登り。千本檜小屋と八海山避難小屋は隣り合わせで建っている。休憩2000円とあるが、人気がしない。八ッ峰に心惹かれるが、登りで疲れてきているしまだ先が長いので迂回路を使用。今から思えば登っておくべきだった。

 

ここから岩場続きになるが、地図上で危険マークのある場所は、ガレザレがひどかったりスタンスの乏しい大岩の急下りだったりして、クサリを使わずにはいられない。ただ、よく踏まれているルートなので迷う心配はない。尻セードで慎重に下る。ガスで前方の山が見えない。左手を振り返ると眼下の沢には大量の雪渓が残っている。西不動滝にもかなりの雪渓。右手に見えてきた左滝上沢もまだ真っ白。ほんとに8月の夏真っ盛りなのか?これだけ残っていたら、雪渓は万年雪になるのだろう。豪雪地帯っぷりを実感した。

 

 段々ガスが晴れ、時折日差しが照りつけるようになった。標高1778mの九ヶ岳から下りに下ってオカメノゾキが1230m程度。目指す中ノ岳避難小屋が2060m程度。エアリアでは同じような着色だからすっかりだまされていたが、500m下って800m登る(しかも激坂・岩盤登り)という、ドMなコースなのだ。御月山を越えるまでは水場がないため、重い荷物でじわじわと進むしかない。

 

130811-13etigo1八海山~中ノ岳の稜線より水無川源流

↑八海山~中ノ岳の稜線より水無川源流

 

 左右に広がる眼下の沢がとにかく大きい。黒部源流を思わせるスケール感。沢にはまだ雪が大量に残っていて、下から吹き上げる冷風に癒やされつつまた進む。ガスの切れ目から越後駒ヶ岳側の景色も見えてきたが、沢源頭にまで雪が残っている。夏でも水量豊か、なるほど下流の魚沼ではおいしい米ができるワケだ。右手には日向山山頂か、建造物がくっきり見える。しばし登ると暑さで頭がオーバーヒートしそうになる。帽子とタオルに水を垂らすがすぐに蒸発。相変わらず寄ってくる虫くん達。短い夏の間に一斉に生い茂った草で景色どころか足元が見えないところもある。人なんて誰とも会う訳もなく。混雑していてでも北アルプスの方が快適だったろうな…と独り言。

 

そんな苦しい思いも御月山を越えると一気に晴れる。遠すぎてガスで見えなかった中ノ岳がすぐ目の前に。手前のコルには雪渓とキラキラひかる水の流れが。右手には十字峡の源頭となる沢が…あまりに切り立っていて底が見えない。標高約1740m、中ノ岳のルンゼにある雪渓から生まれた川の流れに、大いに癒やされた。ここまでに1.7L消費、中ノ岳避難小屋のポリタンクの水とやらよりもここで給水した方がいい。5.5Lの水を背負ってノタノタと登る。細かなルンゼがあるせいか、中ノ岳上部の山腹は草原のお花畑になっていてとても美しかった。

 

130811-13etigo2 明日下る尾根は花畑と谷の向こう

  ↑明日下る尾根は花畑と谷の向こう

 

130811-13etigo3 中ノ岳直下

↑中ノ岳直下

 

 中ノ岳避難小屋は2階建て、窓が多く明るい小屋。トイレもあり申し分なく広くてきれいだ。荷物を置き中ノ岳まで散歩に行くと、丹後山からの単独者が登ってきた。相当疲れたのか、数度言葉を交わすと小屋へと去っていった。誰もいない山頂に座り込んで、薄日を背にしてボケーッと雲の流れを追いかけた。結局今日は2人での泊なのだが、先程の登山者が2階に上がっていったようなので、広々と1フロアを占拠。夕食を作るが、昨日に引き続き食欲がない。行動中もパンが喉を通らない。暑さか疲れのせいか、至って元気なのだが内蔵はだいぶやられているようだ。なんとかカレー1食を平らげ、残したご飯は朝にラーメンと共に食べることにする。

 

祓川の水の流れ、中ノ岳の雲の流れは本当に見ていて飽きないから不思議だ。

 

130811-13etigo4 中ノ岳の夏空

  ↑中ノ岳2085.2mの夏空

 

その単独登山者は、今日は十字峡に下るという。朝ご飯を作っていると、既に出発の出で立ちで会話を交わした。越後駒ヶ岳に向かうというと、笹祓いがなければ4時間程かかるかもしれないとのこと。アルプスではなくこの山域へ、しかもお盆を避けて登ってきたのだから、静かな山登りが好きなのだろう。しゃべりたくない訳ではないようだから、私と似た者同士なんだろうなと感じた。

 

 危惧して頂いた藪だが、昨日同様、夏場に一斉に生い茂ろうと草木が凄まじい。トレースだけはやたらしっかりしているから、これでも笹祓いが行われた後なのだろう。越後地方の虫や植物の生命力は半端ない。

 

130811-13etigo5 短い夏に咲いた癒し系

   ↑短い夏に咲いた癒し系

 

振り返ると、中ノ岳と御月山がやたら立派に見える。そして、八海山から中ノ岳への尾根が大きく下って登り返していたことも。八海山や中ノ岳と比べるとオカメノゾキがはるか下に見える。それで思わず独り言…こんな尾根通ろうと思う奴はきっとバカに違いない。

 

130811-13etigo6 御月山~五竜岳の稜線

    ↑御月山~五竜岳の稜線

 

 右手に北ノ又川の豊富な雪渓を見ながら進む。少し奥に銀山平の集落と大きな荒沢岳。南東に折り重なっているのは尾瀬の山々だろうか。左手の水無川は、切り立ちすぎていて何も見えない。昨日を思えばなんてことない登りだが、日焼けが痛い。腕を庇いながらグシガハナ付近まで登ると、駒ノ小屋から何人か山頂を目指しているのが見えた。ようやくまともに人を見たような気がする。

 

130811-13etigo7 駒ヶ岳から中ノ岳と水無川源流

  ↑駒ヶ岳から中ノ岳と水無川源流

 

越後駒ヶ岳から背後を振り返ると、今まで登ってきた山々が見渡せた。八海山のゴツゴツした稜線、八ッ峰がカッコイイ!そこから落ち込んで登り返した先の中ノ岳の穏やかさと切り立った谷の深さがまたカッコイイ!!越後駒ヶ岳山頂からは、長岡市街と日本海が霞んで見えた。海から50km足らず、東面を流れる北ノ又川は只見川へと名前を変えて福島県へと流れ、西の水無川信濃川から日本海へ。山頂には社と鐘が建っているが、西側からだと3kmで標高1800m登り上げる山の険しさ故に、今日まで霊峰と祀られてきたのかもしれない。

 

130811-13etigo8 日本百名山 越後駒ヶ岳

日本百名山 越後駒ヶ岳(2002.7m)

 

 さて、その3kmで標高1800mを下山に使用。日射に苦しみながらグシガハナまで着くと草木の茂る激下りとなる。木々の合間から見える八海山が凛々しい。高度計を見つつ進むとやがて両側から沢音が聞こえ、水無川沿いの十二平登山口へ降り立つ。

そしてしばらく草木の生い茂った林道を行くと、今山行最大の危険箇所に遭遇。林道・川をまるごと覆う形で谷一面に雪渓が残っている。そして一部根元が腐ってアーチ状となり水がひっきりなしに滴っていた。

 

130811-13etigo9 中央、なんとか向こう側が見える

 ↑中央、なんとか向こう側が見える

 

今にも崩れそうで、登るも潜るも怖い。衝撃を与えないように四つん這いで全力ダッシュ。非常に格好悪いが無事に通過できてひと安心。残念なことに、エアリア上の「ボックスカルバート」は崩壊しているので使い物にならない。そして再び虫との戦いである。そこらじゅうを縦横無尽に飛び回り、一歩歩けばあちこちに体当たりしてくる。それも目や耳の穴といった黒色を目掛けて。視界を横切る何かの跳んだ軌跡、羽音、バチバチとぶつかってくる感覚。枝沢を見つけてタオルを湿らせようと少し立ち止まった途端に何匹もの飛虫に襲われた。もう恐すぎる。とにかく早く虫とおさらばしたくて、炎天下を必死に歩き通した。ここを歩くにはライダースーツとフルフェイスヘルメット装備が必要だ…。

 

 暑さと虫がとにかく印象的だったが、壮大な山域だった。ただ雪渓も虫も大量に存在するため、快適に登るなら秋がよさそうである。