京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3316 沢登り・南アルプスの沢 尾白川 黄蓮谷右俣

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甲斐駒ケ岳頂上にて

 

 

[No.3316] 沢登り・南アルプスの沢

      尾白川 黄蓮谷右俣

 

 2013年8月15日(木)前夜泊~8月18日(日)

【参加者】CL小松久剛 長野浩三 AT 小松麻衣  K 計5名

【天候】8月16日(金)晴れのち一時雨

8月17日(土)晴れ

8月18日(日)晴れ

【記録】

8/15 19:00京都駅八条口発→26:30駐車場着

8/16 6:00駐車場発=タクシー=6:20 林道の車止め~7:50 林道終点から降りて入渓~9:40 噴水滝~11:00 千丈の滝~11:50 五丈ノ沢対岸テン場~宴会~幕営

8/17 6:00 幕営地発~ 6:20 坊主ノ滝~ 6:40 坊主ノ滝巻き終わり~ 7:20 奥千丈の滝~ 10:20 20m・15m・10mの連瀑帯 右岸の悪いクライミング~13:20 甲斐駒ケ岳山頂

~15:00 七丈小屋テン場にて幕営

8/18 4:30 出発~黒戸尾根を下山~10:00竹宇駒ケ岳神社駐車場着

 

8/15 いつもどおりの京都駅を19時に出発。南アルプスという遠い山域で、かつ、本番の沢ということで早めに出発したものの、諏訪湖付近でまさかの大雨による高速道路通行止めがあり、長大な渋滞に巻き込まれてしまった。

結果、出発地となる竹宇駒ケ岳駐車場についたのは午前2時過ぎ。睡眠不足の幕開けとなった。

 

8/16 タクシーを6時に呼んでいるので、予定通り出発。当日は結局テン場に12時前についてしまったので、もっとゆっくり出発してもよかったかもしれない。タクシーで車止めの前まで進み、そこから歩き出す。今回は長野・小松(久)がフェルト靴、T、小松(麻)、Kがアクアステルス、という足回りだったが、結果としては花崗岩質、ドライクライミング要素の強いこの沢ではアクアステルスが圧倒的に優位で、フェルト組は非常に苦労することになった。

 

林道を一時間ほどあるき、トンネルを三つくぐると林道は終わり、わかりやすい入渓口になっている。ザレザレの急斜面をロープを頼りに市ながら下ると、いよいよ水面が見えた。

 

入渓早々、黄緑色の釜を持った大きな滝が現れる。簡単に右から越えた。

 

鞍掛沢を越えるとワイヤーの引っかかった滝があるが、簡単に直登できる。その後も美しい花崗岩のナメ滝が延々と続くが、要所要所にはロープやテープが設置されていて、ルートファインディングという意味では本流から黄蓮谷に入るまでは難しいところは一切なかった。

 

途中、噴水滝という滝があったが、右岸を巻けば越えること自体は非常に簡単であったが、真っ白な岩に少しだけ噴水が跳ね上がっていて、美しい。

 

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噴水滝にて

 

黄蓮谷に入ると、沢は急に小さくなる。

黄蓮谷最初の滝は10m程度あり、右岸から巻くが、悪いところにはロープもついていて非常に親切。

しばらく進むと千丈の滝が現れる。これも大きなナメ滝で美しいが、右岸から簡単に巻くことが出来る。Tは途中まで直登した。

 

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千丈の滝

 

千丈の滝を右岸から巻き終わると五丈ノ沢(水はない)が左から入っており、黄蓮谷には8mの滝がかかっている。この滝の巻き道の途中にテントを3~4張張れるテン場があるが、上流側には1分ほどに降りれるし、薪は豊富だし、ということでお昼前ではあるが、ここで幕営することにした。

 

そこからは長い長い宴会開始。

いったんは夕立のため中断したものの、21時頃まで焚き火を囲み、至福の時間を過ごした。

長野はテントに入らず、外で寝ていたが、川上からの風が冷たかったようだ。

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8/17 今回の沢の核心部の日。出発早々坊主ノ滝が現れ、南アルプスの沢の規模を見せ付けられる。

 

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坊主ノ滝

 

坊主ノ滝はよく左岸の巻きに失敗して黄蓮谷右俣を懸垂下降する記録を読むが、左岸ルンゼの途中に越えられそうなブッシュがあるので、そこを越えると坊主ノ滝の落ち口にすぐ出られた。ルンゼは落石が発生しやすく、注意が必要。

坊主ノ滝を越えるとすぐに現れる黄蓮谷右俣入り口の滝は、右岸を巻くが、落ち口付近がかなり悪く、お助け紐に助けられた。黄蓮谷右俣にはいると奥千丈の滝が始まる。通常はロープを出すようだが、マルチピッチクライミングの研鑽を積んでいるメンバーはまったく意に介さずにノーロープでどんどん進んで行く。私はといえば、日々の練習不足に加えてフェルト靴の乾いた花崗岩との相性が悪く、変な汗をかきながら必死でついていくことになった。

 

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奥千丈の滝を進む

 

奥千丈の滝上部からついに雪渓が現れ、滝の巻きが難しくなった。雪渓の間を縫って次々と出てくる巨大で急峻なナメ滝を巻き続ける。

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谷は滝により一気に高度を上げる。ふと振り返ると八ヶ岳が見え、南アルプスの沢であることを思い出させてくれる。

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連瀑のうち、烏帽子沢上部で最初左岸から巻き、バンドでいったん右岸に移って巻く20m・15m・10mの連瀑があるが、右岸に移ったあとの巻きが非常に悪く、ほぼスラブクライミングのような巻きであった。我々はTの突破力頼りに右岸を巻いたが、対岸を見れば立ち木も多く安全に巻けそうだったので、おそらく左岸を巻くのが正解だろう。京都雪稜クラブの記録でもこの巻きで右岸を選択して苦労していたようだ。

 

この連瀑帯を超えると谷の幅は狭まり、源流域の様相を見せ始める。

つめのルートは右に右にルートを採っていけば間違いないが、このあたりになると皆同じルートを通るようで、しっかりとした踏みあとがついていた。このあたりで私はバテテしまい、パーティーの足を引っ張ってしまった。

最後の急峻なのぼりをつめ上がると、一気に視界が開け、鋸岳から甲斐駒ケ岳にいたる稜線に飛び出す。甲斐駒ケ岳頂上まであと少し。Tがトップを譲ってくれ、一歩一歩ゆっくりと頂上に向かう。

そして、大勢の登山客がいる、山頂にたどり着いた。

山頂でようやく緊張感から解き放たれ、皆笑顔になる。

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そこからは七丈ノ小屋まで急峻な下り道となる。日が暮れるまでに七丈ノ小屋のテン場にたどり着き、夕日に映える鳳凰三山を見ながら、時間を過ごした。

 

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テン場からの鳳凰三山

 

8/18 午前3時頃、みな目覚めてしまい、やることもないのでさっさと山を下ることにする。最終日は黒戸尾根を下るだけなので、非常に気が楽。足の速い3人には先に下ってもらって、小松夫婦はあとからゆっくり下ることにした。下山路は最初はハシゴ、鎖が連続する急峻な道だが、徐々に穏やかな森の散策路に変わる。

10時頃無事全員竹宇駒ケ岳神社駐車場に下山、この夏の本番の沢を終えることが出来た。

 

55期 K

甲斐駒は好きな山の一つで、冬はアイスもできるという黄蓮谷に行ける!と思い参加表明させていただきました。

正直なところ沢登り自体には何だかピンと来ていなかったのですが、こんなに楽しいものだったのか!というのが感想です。また一つ新しい楽しみを知ってしまいました。

どの沢筋に進むとか滝を巻く巻かないとかどこで幕営するだとかの状況判断は、当たり前ながら経験が必要で、殆ど初心者の私が山頂に行けたのはリーダーもメンバーもベテラン揃いだったお陰でした。登れるだけではとても辿り着けません。

ご一緒くださった皆様に本当に感謝です。素敵な夏の思い出をありがとうございました。

 

【感想】46期 長野浩三

黄連谷は思った以上にフェルトが滑り怖かったです。次回行くならアクアステルスだなと思います。泊まりのたき火とテント場と宴会は最高でした。スケールの大きな沢で甲斐駒に飛び出したときは感激でした。また黒戸尾根も初めてで楽しかったです。

来年も小松さんがアルプスの沢を企画しているので是非参加したいです。

 

【感想】51期 AT

有名な黄蓮谷を遡行するということで、前後の沢登りには参加せずにこれだけ参加するのは申しわけなかったですが、ご一緒させていただきました。

とても開けた大きな明るい沢と空の青、皆の笑顔。

忘れられない夏の思い出になりました。

小松さん、皆さん、ご一緒していただいてどうもありがとうございました!

 

【感想】52期 小松 久剛

この沢の記録自体を書いたのは遡行して2ヶ月もたってからのことです。それにもかかわらず、緊張感や爽快感が昨日のことのようによみがえってきて、記録を書くことについての苦労は、書き出してしまえば全然ありませんでした。

黄蓮谷は一年前くらいからずっと行きたいという思いを持ち続けていた沢でした。

自分の実力を上回る、4級上というグレーディングがついていたので、直前はどれほど記録を見て、何度遡行図を読み返したかわかりません。

結果としてはマルチピッチクライミングをしているメンバーの突破力に頼りっぱなしの遡行になってしまいましたが、リーダーとしては皆が無事、抜けられたことを喜びたいと思います。

「山を登ることに意味はあるのか」

という問いがあります。

私としては

「文化以外の大きな意味はない」

が答えと思っています。

ただ、そんな議論とは関係なく、みんなと一緒に真っ青な空の下、美しくて大きな沢を登れたことは一生の思い出として今後の人生の糧にしていきたいと思います。

ご一緒いただいたみなさん、ありがとうございました。またみんなで大きな沢に行きましょう。