京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉 若丹国境の八ヶ峰と綾部四方邸 《山紀行816》 関西百名山シリーズ

丹波の秋は黒枝豆が名物。綾部四方邸で毎年企画される収穫祭に乗っかって翌日、関西百名山シリーズは若丹国境尾根の八ヶ峰(800m)に登った。

20131027八ヶ峰3

 

 八ヶ峰800m (奥ヶ迫山への稜線より)

 

 

[個人山行] 若丹国境の八ヶ峰と綾部四方邸《山紀行816》 関西百名山シリーズNo.93

 平成25年10月27日(日)

 

丹波の秋は黒枝豆が名物。綾部四方邸で毎年企画される収穫祭に乗っかって翌日、関西百名山シリーズは若丹国境尾根の八ヶ峰(800m)に登った。

 

【メンバー】 山本浩史L(車)、加藤一子、高橋秀治(車)、横川陽子 計4名

【行  程】 △綾部・四方邸6:55=8:05八原8:17~9:10知井坂峠~9:30八ヶ峰9:50~10:42国境尾根分岐~11:28 P675~12:21奥ヶ迫山12:45~13:28送電鉄塔~13:50折返し点~14:14送電鉄塔~14:49知見谷川出合~15:02八原15:06=15:15美山自然文化村16:14=18:20京都

【歩行データ】 晴れ後曇り 歩行11.6㎞ 6時間45分 延登高915m 延下降915m 2座登頂

20131027八ヶ峰地図

 

前日は綾部市内の甲ヶ岳(こうがたけ・290m)と四尾山(よつおやま・287m)を横川さんと登る予定だったが台風27号の接近し前日段階で中止した。下山後の行程からは予定通りで綾部駅前の温泉に入り、14:40四方邸に到着した。本隊は畑での収穫を終えスーパーに買出し中で四方真知子さんと葛城さんが留守を守っていた。16時過ぎから宴会が始まりご近所の富永さんも交え楽しいひと時を過ごした。

 

八ヶ峰は加藤さんと高橋さんが飛び入り参加となった。6:55高橋車、山本車の2台で四方邸を出発し南丹市美山町知見の八原(やはら)集落の終端を目指した。「八ヶ峰ハイキングコース 山頂まで2.1㎞」の案内板があり、6~7台の車を止めることができる。高橋さんを先頭に歩き始めるが旧道なのか作業道なのかが何本もあり登山道がややこしい。迷いながら本道を見つけた。八原には嘗てスキー場がありその道の名残なのかもしれない。歴史を紐解くと若狭国名田庄村の人々が都に出るために盛んに歩かれた道で指導標には“西の鯖街道”と書かれていた。洗掘の進んだ旧道が並行したり交差したりして往時をしのばせるが、倒木が通行を阻み“新道”を行く。P685の西側で登山道が出っ張った処に大野ダムの雨量計があり若丹国境稜線が漸く木の間越しに見えてきた。

 

知井坂は元々“血坂”と云ったそうだ。源平時代に木曽義仲の武将和田義盛と朝比奈三郎が源頼朝方の北条軍と戦い血の坂道となったのが由来とか。そして峠の少し高みにはお地蔵さんがありその隣にある石塔は新田義貞所縁のものと伝わるそうだ。此処からは若丹国境を東に進む。ブナの林の稜線は紅葉にはまだ早いが少し色づき始めた葉もあるにはあった。送電線が上空を越え鉄塔まで来ると開かれて展望が利き送電線の向こう側にこの後行く奥ヶ迫山が見えた。

 

もうひと息登ると八ヶ峰(はちがみね・800m)山頂に達した。2等三角点「八ヶ峰」があり展望が良い。点標の傍らに木柱形の山頂標識があり集合写真を撮った。ここで関西百名山シリーズ恒例のミッション「青葉山(693m)を山座同定」をする。青葉山は直線距離で北西23㎞の彼方にある。朝は青空だったが冬型の気圧配置となり雲が多くなったが315°の方向にあの特徴的な双耳峰の青葉山を見出した。見ただけで分ってしまいそうな山容で簡単過ぎたので、ついでに百里ヶ岳の山座同定も行った。「百里四方が見渡せる」のが名の由来の山なので、百里彼方からも見える筈、コンパスを合わせ73°の方向に存在感のある山を同定した。直線距離で4里足らずなのでしっかり見えた。

 

冬型の気圧配置になると若狭湾の見える山頂は寒い。風が強く余り長居はできず20分で出発し国境尾根を南東へと進んだ。染ヶ谷分岐を越えた辺りで20名近い高齢者グループに遭遇した。五波峠(ごなみとうげ)からピストンだと云う。我々は五波峠の直前で南西に伸びる尾根に入り奥ヶ迫山を目指す。2.5万図にも登山地図にもルートは記されていない。ミッション2:「P675を特定する」は地形の変化を2.5万図で良く見ながら進まなければならない。枝尾根にさえ入らなければ問題ないが、先頭の高橋さんは要所要所で地図を確認しルートを見定め進んだ。分岐から1.6㎞、明確なピークを2つ越え木の間隠れに八ヶ峰が見えるがP675の直前に樹林の切れ目があり写真に収めることができた。鞍部から70m程登り返してしっかりしたピークを伴うP675の位置を特定することができた。

 

P675は奥ヶ迫山までの中間点でこの先も明確な道は無い。ミッション3:「奥ヶ迫山への道をルートファインディング」は益々重要で枝尾根が微妙に絡み偵察も行って慎重に進む。最後は急登となり登り詰て奥ヶ迫山(おくがさこやま・702m)に到る。3等三角点「知見」があるが木立で展望は無い。風が寒いので東側斜面に隠れるようにして昼食休憩を取った。

 

此処まで来れば後は八原に下るだけ14時には下りられるだろうと楽観的に再び歩き始めたが試練はこれからだった。北東尾根の分岐点が怪しく偵察を行い、これしかないと下り始めた。二重稜線のように谷を抱き込む尾根の右側は主尾根のようだが送電線の通過する処は左側の方が高く送電鉄塔がありそうだと思い下り始めた。順調に下ったが送電線が直ぐ先に見えた時断崖のような急斜面となり下りることができなくなってしまった。然も送電鉄塔は隣の右尾根の鞍部近くに建っている。見込み違いだった。仕方がないので谷を横断し右尾根に取り付き送電鉄塔に到った。

 

この送電線は八ヶ峰の西肩を越えていたもので本谷を越えて奥ヶ迫山の西肩を掠める。P566に乗り上がり先に進むと何んとも複雑な地形となり2.5万図の精度では現地の地形が表現できていない。GPSカンニングをして現在地を確かめ予定していた尾根を下りだすが密林に突入して最早歩ける状態では無くなった。石楠花かと思っていたが高橋さんにエゾユズリハであると教えられた。鹿が下草を食べ尽くし何処でも歩けると思っていたのにこの密林にはお手上げ。標高差はあと180m、独りなら無理に突っ込み下り続けたかもしれないが、皆を激藪漕ぎに巻き込むことはできない。メンバーの引き返そうとの声無き声に押され山本が先頭になり鉄塔まで戻ることにした。

 

高い所を目指すだけでよい登りは簡単で、原点に戻った。送電鉄塔のある処必ず巡視路がある筈。さっき鉄塔の処で上に続く道を見ていたので巡視路だろうと目星を付けて入って行くと果たして右尾根に巡視路らしきものが続いていた。少し登ってトラバース道となり獣道程度に荒れてはいるが暫く行くと本谷に向かう明瞭な尾根に乗っかった。樹林が開けると下の送電鉄塔で更に巡視路は続く。もう大丈夫、下れる。谷が近づき瀬音を聴く。左手の谷も勢いよく本谷に合流する。橋は見えず渡渉かと思ったが対岸に道はなくやがて本谷が見えるが此方は渡渉できるような水量ではなく心配がよぎるか木陰に隠れた鉄橋を発見した。対岸には林道があり、0.7㎞の林道歩きで八原の駐車地点に帰着することができた。

 

最近の北山は下草がなく何処でも下りられるだろう安易に考えていたが行く手を阻む藪もあることをまざまざと思い知らされた今回の関西百名山だった。

 

【感 想】 53期 高橋秀治

八ヶ峰は以前に五波峠までをピストンした事があったが、きっと山本リーダーの事だからバリエーションルートを歩けると期待を込めて、参加しました。知見八原登山口で靴を履き替え歩き出すと、2週間程前に抜鈎手術した足首の傷痕に靴があたり痛みを感じながらの山行きになりました。しかし、地図と地形を確認しながらの山行がアドレナリンを出し、その内に痛みより楽しさが勝る山行になりました。

奥ヶ追山からのルートファインディングではエゾユズリハの藪漕ぎで予定のルートを断念し、巡視路を下るコースを取りましたが、山座同定等盛り沢山の山行でした。最後に、やはり読図しながらの山行は山本リーダーならではの不安を感じさせない楽しい山行と確認できました。

 

【感 想】 55期 横川陽子

今回初めて道なき道をゆく、という体験をしました。無事に下山できたからよかったものの、地図と地形を読むことの大切さを実感しました。最後のあたりは、自分が今どこにいるのかがわからなくなり、ついていくだけになってしまいました。歩いてきた道と地図を見比べて、自分がいる位置くらいはわからなければ、と反省しました。

どこにたどり着くかわからないまま歩き続け、下りで膝が痛くなり、踏み外したら戻って来れないんじゃないかと思うような細い斜面を歩きながら泣きそうでした。でも最後に、川にかかる橋とその先に林道が見えたときは不安から解放され本当にホッとしました。

反省点は多々 ありますが、雨に降られることもなく、山を楽しめました。色の違う杉の落ち葉がふかふかしていたのが気持ちよかったです。山本さんをはじめ、ご一緒された高橋さん、加藤さんお世話になりました。ありがとうございました。一緒に登っていて安心できて心強かったです。また機会があればよろしくお願いします。

 

20131027八ヶ峰1

写真1: 奥ヶ迫山702m (八ヶ峰西送電鉄塔より)

 

20131027八ヶ峰2

写真2: 八ヶ峰山頂にて