京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉鷹ノ巣山・高水三山 《山紀行829》

平成26年2月8日(土)~10日(月)

毎年冬になると行きたくなる奥多摩、通い始めて20年になるが今年は40年ぶりと云われる大雪に遭遇した。雪にめげず榧ノ木尾根を登り、鷹ノ巣山(1,737m)を目指したが避難小屋から先は進めず、縦走を諦め浅間尾根を下山した。下界も大雪で奥多摩湖を走るバスも、立川に帰る青梅線も終日運転休止で地元の人の人情で脱出することができた。

3日目はメンバーを替え、雪晴れの高水三山(惣岳山・岩茸石山・高水山)を巡った。

20140208鷹ノ巣・高水山4

写真4: 奥集落登山口、林道の除雪はされていない

 

48期 山本 浩史

毎年冬になると行きたくなる奥多摩、通い始めて20年になるが今年は40年ぶりと云われる大雪に遭遇した。雪にめげず榧ノ木尾根を登り、鷹ノ巣山(1,737m)を目指したが避難小屋から先は進めず、縦走を諦め浅間尾根を下山した。下界も大雪で奥多摩湖を走るバスも、立川に帰る青梅線も終日運転休止で地元の人の人情で脱出することができた。

3日目はメンバーを替え、雪晴れの高水三山(惣岳山・岩茸石山・高水山)を巡った。

 

1日目(2/8): 鷹ノ巣山

【メンバー】 山本浩史L、亀島文子、鹿嶽眞理子 計3名

【行  程】 京都22:40=(プレミアムドリーム304号)=6:39新宿7:07-9:06奥多摩9:30=9:47倉戸口9:52~11:58倉戸山12:19~14:38榧ノ木山~16:34石尾根巻道出合~19:12鷹ノ巣山避難小屋19:23~19:46出迎地点~20:08△鷹ノ巣山避難小屋

【山データ】 雪 歩行距離9.0㎞ 10時間16分 延登高 1,202m 延下降 182m 2座登頂

20140208鷹ノ巣・高水山地図1日目

 

週間予報では南岸低気圧が通り70%雨の降水確率だったが、寒気が入り太平洋岸は全て雪の予報に変わった。そして京都を出発する少し前から雪が降り出し、新宿までの高速バスは25分の遅れが出た。中央線も間引き運転で20分待たされ、奥多摩からは予定より1時間後のバスとなった。同じバスには七ッ石山から奥多摩小屋に行くと云う男性が二人乗っていた。倉戸口バス停から降り続く雪の中、集落への道を歩き温泉神社の奥から登山道へと入って行った。積雪は10㎝位だろうか、今日は一日中雪の予報だ。登りだすと積雪の量は徐々に増えてきた。ダム湖奥多摩湖から立ち上がる斜面は急で標高差600m余り登って倉戸山(1,169m)に達する。2等三角点「留浦村」がある筈だが雪の下で発見不可能。山頂からの展望はない。

 

急遽装備に追加して持ってきたワカンを装着し、進行方向を北に変え榧ノ木尾根を進む。雪は益々降り募り、50㎝程に達した。東の風が強烈に吹き付け稜線の雪を舞い上げる。20年の奥多摩通いでは、よく積もっても20㎝程度しか見たことがない。このまま降り続けるとどうなるのだろう。積雪量は確実に増している。ワカンが有効に働くが沈み込みが深くなってきた。倉戸山からは山本がづっとトップを続けラッセルに勤しむが、女性陣は遅れがち。展望は全く利かずホワイトアウトしてしまうのではと感じさせる場面もあった。留浦からノボリ尾根ルートが合流する筈だが分からないまま榧ノ木山(1,485m)に到着した。樹林帯で展望はなく、木に括りつけられた鉄板に山名が記されていた。倉戸山からの距離は2.4㎞でコースタイムは1時間半程度だがラッセルで2時間20分も掛った。

 

積雪は70㎝程になり、深いところでは1m以上吹き溜まっている。ラッセルは厳しく、進行速度は益々遅くなり石尾根縦走路の巻道に達したのは16:34だった。鹿嶽さんの疲労は濃く、亀島さんも膝に不安を感じ鷹ノ巣山登頂は諦め石尾根巻道を通り避難小屋へと向かう。距離は1.8㎞、暗くなる前に着きたいが雪の深さに阻まれ進行速度は益々遅くなった。雪と格闘しラッセルを進めるが振り返ると二人が付いて来ていない。もう残りはそれほどなくトレースを辿れば道を間違うこともないと思い、兎に角小屋までのトレースを付けるためそのまま先行した。胸まで潜り込む雪と戦い鷹ノ巣山山頂を通って来た稜線ルートと合流すると避難小屋は近い。

 

とっぷり日は落ちたが雪明りで歩くことができる。仄かに小屋のシルエットが見えて来るが広い稜線の吹き溜まりが凄く近づくのに苦労した。巻道に達してから2時間30分を要した。兎に角二人を迎えに行かねばならない。荷物を置いてヘッドライトを出し引き返すが電池がへたってすぐに照度が落ちてしまった。電池が消耗し取り換えなければいけないが雪の中で面倒でそのまま進んだ。小屋を出て23分亀島さんと鹿嶽さんに巡り会え、亀島さんの荷物を引き受け小屋へと導いた。到着は20:08とんでもない時間になってしまった。

疲労で余り食欲はないが遅い夕食を取り、標高1,565mの避難小屋で寒い一夜を過ごした。

 

2日目(2/9) : 鷹ノ巣山

【行  程】 △鷹ノ巣山避難小屋6:47~7:54浅間尾根出合~10:03浅間神社10:06~10:29奥集落登山口~12:09奥林道出合12:23~12:40峰谷BS~13:34峰谷橋14:30=16:00青梅16:03-16:33△立川

【山データ】 晴れ 歩行距離9.1㎞ 6時間47分 延登高 52m 延下降 1,087m 0座登頂

20140208鷹ノ巣・高水山地図2日目

 

激しく降り続いた雪も未明には止んだようで、夜が白む頃には星が覗き出した。昨日は大雪の中予定通りの宿泊地まで来ることができたが、この先石尾根の縦走を続けるのは難しい。予定では日陰名栗山、高丸山を通り千本ツツジから赤指尾根の下山を目指していたが、避難小屋からダイレクトに浅間尾根を下ることにした。下りだす前に鷹ノ巣山に空身でピストンするかと提案してみたが二人にはその気力もなく即座に却下された。山頂からの展望は素晴らしいだろうが・・・

 

浅間尾根への道は小屋の直ぐ脇から分岐し石尾根巻道の下を更に巻いて始まる。今日も深い積雪と戦い激しいラッセルで進む。谷の源頭部の斜面は樹木もなく余りにも急なので通過は危険で高巻くことにした。急斜面を這い上がり上部の木のある処を横断して危険地帯を迂回した。小屋から鷹ノ巣山までの距離の3/1位の処から始まる浅間尾根に達っするのに1時間も要してしまった。此処からは尾根上の歩行となり一寸気が休まる。後から考えると昨日歩いた石尾根巻道を進み尾根の始まりから下降した方が楽だったようだ。もう危険地帯はないだろう。周りを見ると行く予定だった日陰名栗山、奥

 

多摩湖対岸の三頭山、そして南アルプス、富士山も見えるが樹林が邪魔して写真を取ることは出来ず残念だ。

雪晴れの気持ち良い天候だが下りのラッセルもやはり疲れる。2時間余り歩行すると荒れたお堂のような建物があり中には神様が祀られているようだ。少し下ると更に社があり此れが尾根の名前にある浅間神社のようだ。此処からは思いもしなかったトレースが現れどうやら昨日此処まで来た人がいるようだ。トレースに従い鳥居を潜ると尾根道が終わり、奥集落への巻道となる。埋もれかけたトレースは中途半端で歩き辛い。晴れて気温が上がった所為かワカンに雪が纏わり付き足が重い。巻道の先に集落が見えて来た。その名も奥集落で峰谷川沿い最奥の集落だ。林道に降り立つが奥林道のこの先に民家があるが空き屋なのか除雪はされていない。林道ラッセルで進むと次の民家から下は除雪されラッセルから解放された。暫く行くと大きく迂回する林道と離れ再び登山道となる。これがまた曲者で地図上ではほんの少しの短絡道のようだったがそれに続く林道も殆ど登山道で1㎞余り厳しい道を歩かされた。遠くとも除雪された奥林道を歩き続けた方が楽で早かったようだ。

 

三沢集落から奥林道に復帰、もう苦しむこともなくワカンを脱いで1㎞余りの林道歩きで峰谷バス停に到着した。時刻表を見ると45分後にバスがある。これに乗って帰ろうとホッとしているとバス停の傍のお家から少年が現れ「今日はバスが全部運休している」と教えてくれた。親切は有難いが、ショックの方が大きい。仕方がないので国道411号線の青梅街道まで歩くことにした。そう云えば除雪された道は普通車が辛うじて通れる程度でバスが通れる程は確保されていない。2.9㎞余分に歩き奥多摩湖に掛る峰谷橋に達した。今日は猪瀬知事辞任に伴う東京都知事選挙の日で交差点角の投票所の担当者が今日奥多摩を走る西東京バスは全面運休で待っても来ないと云う。

 

途方暮れる思いだったが、交渉上手の亀島さんが偶に走る車を片っ端から止めて交渉すると地元小河内建設のバンの男性が奥さんを呼んで奥多摩まで送ってやると云う。ただその後の情報で青梅線の青梅~奥多摩間も走っていないとのことで、青梅まで行ってくれないかと交渉すると快く乗せて貰え本当に助かった。青梅駅では直ぐに立川行があり予定時刻までに立川に到着することができた。鹿嶽さんはそのまま新幹線で帰京し亀島さんの友人を交え駅前居酒屋で宴会をした。

 

3日目(2/10) : 高水三山

【メンバー】 山本浩史L、吉田典子(非会員) 計2名

【行  程】 △立川5:26-6:29御嶽6:32~9:06惣岳山9:20~10:42岩茸石山10:55~11:43高水山11:55~12:47林道終点12:50~13:20軍川13:30-15:05東京

【山データ】 晴れ 歩行距離9.7㎞ 6時間48分 延登高 813m 延下降 813m 3座登頂

20140208鷹ノ巣・高水山地図3日目

 

朝起きると立川市内はまだ積雪が残り凍りついている。立川駅で今日の青梅線奥多摩まで走ると確認でき、予定通り高水三山に行くことにした。今日も天気は快晴だが積雪の多さから全行程はとても無理なので高水三山だけの縦走に短縮した。昨日一緒だった亀島さんの他、亀島友人の姫路さん、横浜の吉田さんがJoinし、4人での山行となる予定だったが御嶽駅に到着すると亀島さんと姫路さんは、いきなり「山には行かない」と電車から降りず、変な別れ方でパーティーは吉田さんとの二人になってしまった。

 

御嶽駅に降り立つと階段はツルツルで滑りそうになり、こんなところで遭難していられないと慎重に下りて登山を開始した。青梅線の踏切を渡った処にある慈恩寺の前でワカンを履き、お寺の左手から“関東ふれあいの道”登山道に入った。誰も歩いた形跡はなく今日も新雪を踏める。このところ山から遠ざかっていた吉田さんも奥多摩に初めて見る量の雪に驚きながらも爽快に登りだした。

 

送電鉄塔を越え尾根に乗り上がると南西尾根の登山道と合流する。再び送電線を潜り沢井からの道と交差する峠を越える。しっかりと雪があり50㎝程ありそうだ。三度送電線を潜ると傾斜が増してくる。前面に凄い斜面が近づいてくると左に巻道があり折り返すように登る。折返し点では展望が開け惣岳山南西尾根越に城山(760m)、六ッ石山(1,479m)が望めた。急斜面を迂回し尾根に戻ると「しめつりの御神木」の札が掲げられた大木があり、登山道には注連縄が張られ清渭神社(あおいじんじゃ)の神域に入った。樹林帯にせり出した岩がゴツゴツしだすと山頂は近く右に巻道を分岐する。小さな祠があり覗いてみると井戸のようで此れが清渭神社の霊泉“真名井”だ。“青渭の井”とも呼ばれている。

 

急斜面を這い上がり、平になると惣岳山(そうがくさん756m)山頂、鉄網で囲われた清渭神社の奥宮が鎮座している。社伝によると崇神天皇7年(BC91)の創建とされているが如何なものか。現在の社殿は弘化2年(1845)の再建と伝わる。明治の初めに沢井集落の奥に遙拝殿が建立された後は、山頂の神社は奥宮と呼ばれるようになった。樹林帯で山頂展望はなく少し休憩して先に進んだ。下りも急で先が断崖絶壁になりそうで脇に道を探すがなく、やはり断崖を下って行く。ワカンと露出した岩は相性悪く、おっかなびっくりで下って巻道と合流した。

 

鞍部からは馬仏山(723m)への登り返しとなるが、今日は山頂をパスして巻道を行く。この辺りからは雪が深く山本がずっと先頭でラッセルに勤しむ。「此処は本当に奥多摩の標高700mの山か?」と疑いたくなるような雪庇が発達している。吹き溜まって歩くところを探すのに苦労した。岩茸石山(いわたけいしやま793m)への登りも急で巻道が分岐してからの100mの歩行が厳しい。山頂に達すると展望が開け本仁田山や川苔山、その奥には雲取山(2,017m)が、岩茸石山から北東尾根に続く尾根上には棒ノ折山(969m)などを望むことができた。また東の方を見ると高水山で頂の上の方にスカイツリーが霞の中に浮かんでいた。3等三角点「岩岳」がある筈だが発見は雪の下で不可能。誰にも踏まれていない山頂には風が通る所為か風紋が美しく芸術的な輝きを見せてくれた。

 

高水三山は惣岳山、岩茸石山そしてこれから行く高水山(759m)を云う。狭い山域に集中しているが今日の雪では十分1日がかりだ。高水山までは1.1㎞でコースタイム35分だが1時間はかかるだろう。以前来た時は途中のピークも稜線を歩いたが、今回は北側の巻道を行く。そして高水山の最後の登りに掛った頃、下りて来る人と遭遇、今山行初めての人との出会いだ。ワカンを履いた単独行の男性で軍畑から登って来たと云う。この先はトレースを辿れるので行程が捗るだろう。この人も我々のトレースで楽してもらえそうだ。

 

高水山(759m)山頂には祠があり東側が少し開けている。ベンチがあり暫し休憩した。東に下ると直ぐの処は真言宗常福院不動堂の寺域でトイレの表示もあった。北側の谷、成木から林道で来られるが今日は除雪していないだろう。若い男女が登って来た。ワカンはおろかまともな登山装備をしていない!

 

トレースを辿り谷道に入って行き振り返ると落差2m程だが“清浄ノ滝”と名のある滝が雪に埋もれ細々と流れていた。堰堤の右岸を下りると二俣尾五丁目の集落だが行政による除雪の手は届いていない。住民の自主除雪で人の歩く幅だけ除雪されていた。ワカンを外し軍畑駅へと道を辿る。高源寺まで来ると除雪車による除雪が行われ車も走れる幅が確保されていた。青梅線の鉄橋が見えて来ると何かおかしい。駅でもない鉄橋の上に電車が止まっている。坂を登り駅西側の踏切に達すると警報機が鳴りっぱなし。その5m先に電車が止まっている“青梅行”だ。除雪に勤しむ駅前のお店の御主人に聞くと「信号確認で止まっている」との事だったが暫くすると動き出し、それほど問題なく帰路に着くことができた。

 

【山データ計】 歩行距離27.8㎞ 23時間51分 延登高 2,067m 延下降 2,082m 5座登頂

 

【感 想】 54期 鹿嶽 眞理子

風邪の病み上がりだったが、アイゼンで行ける山なら大丈夫だろうと思っていた。ところが突然の大雪予報。荷物にワカンを付け加える。雪のため、登山口に着いたのは1時間遅れ。まず亀島さんがツボ足ラッセル。続いてわたしが30分ほどラッセルしたのだが、なんとこれで体力を使い果たした。そのあとは必死で後ろをついていくのみ。12時ごろに倉戸山に着き、ここからはワカンを装着。先頭でラッセルをしてくださる山本さんが一番大変なはずなのに追いつけない。必死で足を前に進める。雪はちらちらと舞い続け、稜線では冷たい風がほほをたたきつける。雪は深いところでは1mを越える。頭の中にあるのは、歩き続けることのみ。歩みがのろいので、時間ばかりがどんどん立っていく。徐々に夕暮れて、ついに暗くなる。遠いなあ、まだかなあ、必死で足を動かし、やっとの思いで避難小屋に到着。なんと8時だった。

翌日は最短距離で下山することになった。最初のうちは山本さんについて行けたが、すぐにスタミナ切れ。またもや亀の歩みに。頑張って歩き続け、やっと集落が見えたが、そこからバス停まで30分という近道はまたもや深雪で、しかも湿って重い。雪が団子になってワカンにまといき、振り払いつつもたもたと進む。なんと1時間20分もかかった。ところが、バスは雪で運休。10キロ先まで歩いたら、またもやバスが運休。しかも電車も奥多摩は不通だという。タクシーもつかめない。亀島さんが懸命にヒッチハイクして、青梅まで送ってくださる方をゲットしてくださった。奇特な方にただただ感謝!

想定外のどか雪だったとはいえ、体力不足、その一語に尽きる山だった。リーダーの山本さんにはほとんど全部ラッセルをしていただき、亀島さんにはのろのろしか歩けない私を励ましていただいた。本当にお世話になりました。無事に戻れたのはお二人のおかげです。

 

20140208鷹ノ巣・高水山1

2/8 写真1: 石尾根巻道に合流

 

20140208鷹ノ巣・高水山2

2/9 写真2: 鷹ノ巣山避難小屋にて

 

20140208鷹ノ巣・高水山3

〃 写真3: 浅間神社、この下の鳥居から巻道となる

 

20140208鷹ノ巣・高水山5

〃 写真5: 榧ノ木山1,485m (奥集落登山口より)

 

20140208鷹ノ巣・高水山6

2/10 写真6: 惣岳山(756m)山頂の清渭神社

 

20140208鷹ノ巣・高水山7

〃 写真7: 僅か700mの尾根に発達した雪庇

 

20140208鷹ノ巣・高水山8

〃 写真8: 岩茸石山(793m)山頂は風紋が美しい

 

20140208鷹ノ巣・高水山9

〃 写真9: 本仁田山1,225mと雲取山2,017m (岩茸石山山頂より)