2014年7月19日(土)前夜泊~7月21日(月)
山岳会のリーダーはガイドではなく、物好きが高じた素人です。行ったことのない場所で自分の力量を超えた自然環境に怯えつつ、なんとか道を切り開くしかない。でも、本来それが登山なのだと思うし、例会では少しでも多くの人に登山を感じてもらいたいと思っています。
私が沢を始めた当時、上坂さんの芦廼瀬川や白川又川例会から感じたのはそんなことだったので。(違ってたらご指摘ください。。。)
手前味噌で恐縮ですが、以上のような意味で、今回の例会は途中敗退はしたものの、多くを得ることが出来る、結構いい例会だったのではないかと思います。
中七ツ釜出口の滝に泳いでとりつく
【参加者】CL 52期小松久剛 52期秋房伸一
53期藤松奈美 56期小西幸一郎 計4名
中七ツ釜出口の滝に泳いでとりつく
【天候】7月20日(日)晴れのち雨 7月21日(月)晴れ時々雨
【記録】
7/19 21:00京都駅八条口発~24:30大台ケ原ドライブウェイ駐車場
7/20 6:30大台ケ原ドライブウェイ駐車場発~6:56 日出ヶ岳頂上~9:15 堂倉滝~11:40 入渓~13:00 斜瀑30m巻き終わり~14:00 中七ツ釜通過、ゴーロ帯へ~15:00 斜瀑10m右岸登攀完了~15:40 アザミ谷出合い着、幕営
7/21 6:45発~7:05 二段8m滝左岸巻き7:20 奥七ツ釜左岸巻き始め~8:20 奥七ツ釜巻き終わり~9:30 堰堤~9:50 堰堤右岸巻き終わり~10:20 林道横断点着、林道に上がり、撤退開始~13:35 日出ヶ岳頂上~14:16 駐車場=帰京
7/19 21時に京都駅を出て、いつもの309号線を南へ。黒石谷のときと同じ、深夜の大台ケ原ドライブウェイを登る。車から降り立つと満天の星空に天の川がかかる。翌日の好天を信じて就寝。
7/20 若干出発が遅れたが、天気は上々、日出ヶ岳までは一気に進む。リーダーの頭の中ではこの日中に林道横断点を越えないと正木が原に抜けるのは難しいと考えていたが、どうか。
堂倉滝までは若干下り道が長いが、消耗するほどでもない。堂倉滝前で休憩し、いよいよ入渓へ。
しかしここで痛恨のミス。入渓口を間違い、堂倉滝右岸の尾根を巻き始めてしまった。途中木の根を頼りにチムニーを攀じ登ったりする箇所もあり、非常に時間を食った。また、懸垂下降点についても架線場付近のガレ、というのを深く考えずに懸垂下降を開始し、途中ロープがスタックして、登り返したりしたため非常に時間をロスしてしまった。これが今回の敗退原因のひとつとなってしまう。
なんとか入渓するとそこは豪快なナメの真ん中。ナメはヌメっており、たわしでこすりつつ何とか進むと、豪快な幅広7mとその奥に30m斜瀑が見える。
入渓早々大滝に圧倒される
7m滝は右側が登れる。最初はロープ無しで取り付いたが、一部悪いところがあったので後続のためにロープを出した。
30m滝は左岸が巻ける。左岸に滝を見るためのテープがつけてあったため、ついつい登り過ぎてしまい、小尾根まで上がってしまったので、いったん降りて上流側にトラバースすると容易に巻くことが出来た。
30m滝の上流から中七ツ釜が始まる。小さな滝にとんでもなく深い釜がついている、という渓相が続き、美しい。釜を泳いで取り付いて、登る、という繰り返し。今回は全員ザックの底に穴を開けてきていたが、正解だった。
谷が左に折れ、大きなプールの奥に2段の滝があり、ここが中七ツ釜の終了点。ここも泳いで滝の右岸に取り付き、簡単なクライミングで抜けることが出来た。
中七ツ釜を抜けると谷が開け、巨岩のゴーロ帯が始まる。岩の一つ一つが大きく、岩の迷路のようだ。
このゴーロ帯を抜けると美しい斜瀑10mが現れる。通常のルート図では左岸を直登しているようだが、ぱっと見てどう見ても右岸のほうが登りやすそうだったので右岸を登ってみた。
フリクションもよく効き、ホールドも多く、簡単。
時間が押してきたのでアザミ谷出合いで幕営することに決定。斜瀑の上部はいったん谷が狭まっており、小滝が連続している。左岸から小さく巻いて懸垂し、水べりをへつりぬけてなんとかアザミ谷出合いに到着した。
いつもの三角テントとツエルトを設営し、焚き火と食事の用意をしていると、猛烈な雨。
ハングした壁の下で藤松がおいしいカレー鍋を準備してくれたので、雨にぬれない壁沿いで食事。
雨は2時間程度続いたが、その1時間後、沢は恐ろしい水かさになって、轟々と音を立てていた。幕営地付近の中洲も流れの下になり、上流に見えていた滝は白くたぎっていた。
雨と増水は同時には来ず、少し時間差をあけてやってくることがよくわかった。恐ろしかった。
夜は快晴で、満点の星空の元、静かな焚き火を楽しむことが出来た。
7/21 若干寝坊した。5時20分頃起床。 6時45分出発。昨晩増水した沢も水量が落ち着いていて少し安心なする。 アザミ谷出合いすぐ上の滝は左岸を簡単に攀じ登ることが出来た。その先には2段8mの滝が轟々と落ちている。左岸の岩場を攀じ登る。
上流側にはトラロープもついていた。 トラロープにすがって降りると、奥七ツ釜が現れたが、ウェブで見るのと大違いで、右岸に高々とそびえる側壁を従え、陰惨な雰囲気が漂っている。いったん右岸に移らないと遡行出来ないのだが、渡渉点がさきほどの2段8m滝落ち口のすぐ上で、渡渉に失敗して滝に吸い込まれてしまった場合、どう考えても生き残れる可能性が低く、渡渉する踏ん切りがつかない。
奥七ツ釜直前の渡渉点
渡渉するとしたらある程度勢いをつけて飛び込んで、流芯に入らないようにしなければならないが、飛び込む踏ん切りがつかず、躊躇していると、秋房から「巻きましょう」という提案。奥七ツ釜というハイライトを見られないことに後ろ髪を引かれつつ、左岸に入る小沢に入って巻くことにした。
結果としてこの巻きは大正解で、10mほどの懸垂下降はあったものの、奥七ツ釜に続く斜瀑もまとめて巻くことが出来た。
奥七ツ釜から上流は大きな滝もなく、ところどころ泳ぎを伴う渡渉はあるものの、穏やかな渓相。 堰堤を右岸から小さく巻くと上流は広い河原。久々に普通の河原をゆっくり歩き、林道横断点にたどり着いた。この時点で10時を越えており、撤退を決定。
林道に上がり、ガチャ類をはずす。撤退といいつつも大台ケ原駐車場までは3時間以上の登りが待っている。高湿度の中あえぎながら登り、日出ヶ岳頂上に到着。
日出ヶ岳頂上
帰りは秘湯の小処温泉に立ち寄り、帰京した。
【感想】56期 小西幸一郎
今シーズンから初めて沢登りをすることになり、今回の例会の前に、白滝、奥深、元越谷と三週連続で小松リーダーのもと、道具の購入も含め手取り足取り指導いただきました。そして、四週目となる今回の堂倉谷ですが、経験の少ない中でもスケールの大きさは十分理解できたし、自然が作り出す造形美に感動の連続でした。
また、当然初めての沢泊であり、焚火、星空、沢の音、食事など全てが心地よく(雨の増水は心配でしたが…)、ここに来たものにしか味合わせてもらえない貴重な体験ができました。
今回は、水量の多さ等で難度も高く林道までで敗退となりました。沢で求められる判断力や技術力の高さに一瞬物怖じしてしまいそうになりますが、沢には努力すれば素晴らしいものが待っていると実感しましたので、自己研鑽に励み、堂倉谷も再挑戦してみたいと思います。
小松リーダーには、本当にお世話になりっぱなしですが、早く一人前になれるように頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。また、秋房さんも私の後ろでフォローしていただきありがとうございました。藤松さんには、いつも先輩として色々学ばせていただいて助かっています。
いい泊まりの沢をありがとうございました。
【感想】53期 藤松奈美
3姉妹で育ったため、ドラゴンクエストをしたことがない。ただ、子どものころ、男子が教室で夢中で話題にしているのを聞いて、その名前は知っていた。敵を倒しながら進んでいく冒険もののゲームなんだろうな、という程度の認識でした。
「なぜ沢登りが好きなの?」堂倉谷の夜、たき火の前で小松さんに尋ねた返事は、「ドラクエが現実にできるから」でした。さらに理由について「ただ冒険として進むだけでなく、それぞれ特技を持った仲間と一緒に突破していくのも同じ。まさにドラクエ」と答えてくれた。それは、とても腑に落ちるものであり、私にとってはいたたまれなくなる言葉でもありました。
山はもちろん、沢は危険ゆえ、総合力が特にものを言うと教わってきた。実際に、同行者の長所がよく分かり、自分の短所が目に付く、といつも感じている。
小松さんやみなさんにお世話になり、これまで何度も足りない力を助けてもらって、すばらしい景色を見せてもらってきました。私の特技や役割は何だろう?小松さんの言葉に、つくづく、力を磨きたいものだと痛感します。
特に、今回の堂倉谷は、これまで見た沢の中で一番心に残るものだっただけに、突破できなかったことがくやしく申し訳なく思います。透明な水、大きく起伏に富む岩の姿、毅然とした雄大な滝。でも人間を遊ばせてくれる懐の深さ。絶対に、また挑戦したいです。
2日目、話を聞いてから先頭を行く小松さんが勇者に見えたけど、わたしはスーパーマリオしか知らないので、心の中はマリオの音楽でした。リベンジまでにドラクエソングをマスターしておきますね。
みなさま、本当にありがとうございました。
【感想】52期 秋房伸一
沢例会の参加前数日前から、例会を意識して日々を過ごします。沢では一瞬の不注意も重大な結果を招くことにもなりかねず、いろいろと心配してしまうからです。
メンバー参加でもそうなのに、リーダーとして企画を立ち上げ、実行し、滝や難所では先頭を進む、その重圧と達成感は、後ろを行く者の想像を超えたものではないかと思います。小松リーダー、ありがとうございました。今後とも、よろしくお願いします。
【感想】52期 小松久剛
例会という山行形態はなかなか難しいといつも感じています。 最低限の技術を持っていることを条件に広く参加者を受け入れ、かつ、出来れば少しは背伸びした場所に行く、という一見相反する山登りをするのが例会なのです。
実力ギリギリのメンバーを連れて行く以上、当然、一度行ったことのある山域、コースを選ぶのが一番安全ですが、コースを知り尽くしたリーダーの尻を追っていくだけの山行でリーダーを含めて参加者が多くを得ることが出来るか、と問われれば答えは否だと思います。
山岳会のリーダーはガイドではなく、物好きが高じた素人です。行ったことのない場所で自分の力量を超えた自然環境に怯えつつ、なんとか道を切り開くしかない。でも、本来それが登山なのだと思うし、例会では少しでも多くの人に登山を感じてもらいたいと思っています。 私が沢を始めた当時、上坂さんの芦廼瀬川や白川又川例会から感じたのはそんなことだったので。(違ってたらご指摘ください。。。)
手前味噌で恐縮ですが、以上のような意味で、今回の例会は途中敗退はしたものの、多くを得ることが出来る、結構いい例会だったのではないかと思います。
ところどころリーダーの力量不足でもたつき、結局時間切れで途中敗退しましたが、今持ちうる知恵や技術、体力は出し尽くしたと思います。
今後も例会で大きな沢に行き、大きな自然を感じたいと思います。そのときは、是非ご参加ください。
最後になりましたが、運転を初めとしてサポートしてくださった秋房さん、食当でおいしい鍋を作ってくださった藤松さん、無理くりのお誘いに参加してくださった小西さん、ありがとうございました。
堂倉滝前にて