京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉 白鬚岳・池小屋山・古ヶ丸山《近畿百名山シリーズNo.85・68Ⅱ・75Ⅱ》

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写真1(4/17): 西稜線より白鬚岳(1,378m)を望む

 

平成27417日(金)~18()

 

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1日目

 

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2日目

 

台高山脈は奈良・三重県境を南北に走る。それを東西に交差する稜線も山深く長い。その中でも最も長距離となる白鬚岳と古ヶ丸山を結ぶルートは難路であり、しかも交通の便が悪い。苦心の乗継と山中2泊の計画を立てたが、2日目かなり無理をして1日短縮して縦走した。

 

【メンバー】 山本浩史(単独)

1日目(4/17)

【行  程】 京都8:45-(近鉄特急)-10:21大和上市10:25(やまぶきバス)11:21柏木11:2611:57神之谷集落~14:01小白鬚~14:56白鬚岳15:0615:42大鯛山~16:07高尾山~16:59登尾山~17:06▲登尾山分岐

【登山データ】 晴れ 歩行10.7 5時間40 延登高1,559m延下降605m 5座登頂

 

金曜日からの3日ということで参加者は無く一人での山行となった。近鉄大和上市から国道169号線を走る奈良交通バスは大幅に便数を減らしやまぶきバスが補う体制となっている。ダイヤは非常に不便で登山口の柏木に行くには大和上市10:25の便しかない。三重県側に抜けるのでこのバスに乗るしかない。ラッシュを回避するため近鉄は特急列車を奮発した。橿原神宮で乗り換えた列車は吉野山の花見客でほぼ満員だった。

やまぶきバスはマイクロバスで大和上市から乗車したのは4人だけ、路線バスが廃止になる筈だ。運賃は均一300円で奈良交通の時代からするともの凄く割安になったのは有難い。朝方は怪しい天気だったがバスを下りる頃には完全に晴れた。柏木で下車し住宅の隙間を縫って国道に下りると直ぐに吊橋があり吉野川を渡る。対岸の細道のコンクリート階段を上がり金剛寺に到る。南朝の河野宮忠義王の隠れ住んだところで境内には宮内庁の管理する墓がある。墓の裏手から山を這い上がると林道に達する。横断して神之谷(こうのたに)集落の最も奥まった処に飛び出し登山道に入る。急な斜面が続き、汗が噴き出す。

標高800mを過ぎた辺りで南方向の展望個所があった。ショウジ山(984m)や台高と大峰を繋ぐ伯母ヶ峰(1,267m)が望めた。P866で急登が一旦終わり一息ついて先に進むとP1046の手前でロープの掛る急登斜面がまた現れた。60m程の標高差を這い上がると「P1046」と書かれたプレートが掲げられていた。稜線を400m程進むと東谷方面への分岐点に達する。その名の如く忠実に東谷を下るようだ。再び急登となり小白鬚(1,282m)に達する。山頂標識を見ると行政が作ったのであろう標識に「小白髭」と書かれていた。この「ひげ」の字は「くちひげ」の意味で正しくは「あごひげ」を意味する「鬚」の字だ。山頂からの展望が良く北の方に薊岳(1,406m)や木ノ実ヤ塚(1,374m)など台高山脈の西に飛び出した山が見える。そして東の方には凄いピラミダルな山、白鬚岳が木の間隠れに見えた。西から見ると円錐形の厳しい山に見えたが近づくと南北が薄く東西は比較的なだらかな稜線で山頂に達した。

白鬚岳(1,378m)山頂にはお墓のような山頂標識があり、側・裏面を見ると「今西錦司1500山目の山1997.11.3新宮山彦くらぶ」と彫られていた。その傍らには2等三角点「神之谷」がある。山頂からは大峰山脈が一望でき孔雀岳から仏生ヶ岳、八経ヶ岳(1,915m)そして右手前には大普賢岳(1,780m)、小普賢岳、日本岳と主要な山が見えた。山頂を後にすると直ぐ東側で中奥林道への道が北へと分岐して行った。離れて行くと縦走路の稜線よりもしっかりした尾根で直ぐ北にあるP1286が立派過ぎ、道を間違ったかと思った位だった。

折角登ったのに270m余りも下り、登り返して大鯛山(1,146m)に到る。此処からは再び徐々に登りだし当初予定していた宿泊地、高尾山(1,232m)に到着した。次の登尾山は先の方に存在感のある山体を示している。時刻はまだ16時を過ぎたばかり、まだ行けると先に進んだ。10分程進むと東側が伐採地となり展望が広がる。登尾山から東に伸びる戸倉山や台高主稜線の赤嵓山(1,394m)、千里峰、池小屋山(1,396m)が見える。明日登る山だが遥か先にある。台高山脈を辿って行くと一際高い日出ヶ岳を主峰とする大台ヶ原も確認できた。

登尾山は縦走路から西に外れている。分岐点に達した処にザックをデポし登尾山(1,320m)をピストン。山頂には3等三角点「登尾」と古びた標識があるだけだった。登山地図には「登尾」と表示されているが現地では「登尾山」とされていた。分岐に戻ると17:06、今日の行動は此処まで、少し下った平坦な所に早速テントを張って潜り込んだ。この日の日没は18:34、夕食を終えて暗くなり出す頃にはシュラフに潜り込んだ。

 

2日目(4/18)

【行  程】 ▲登尾山分岐5:045:25戸倉山~5:49高塚山~7:12赤嵓山~7:32千里峰~7:43奥ノ平峰~7:50霧降山~8:18池木屋山~9:57水越谷水場10:1311:00野江股ノ頭11:1612:41白倉山~13:21八景山~13:57古ヶ丸山~15:01林道コース登山口~15:32犁谷公園16:0616:36三瀬谷16:5318:31亀山18:3820:27京都

【登山データ】 晴れ 歩行23.7 10時間28 延登高1,738m延下降2,881m 11座登頂

 

5時に出発しようと3:20に起きたが寛いでしまって4分遅れてしまった。今日の日の出は5:16、戸倉山まで行ってご来光を見たいが一寸間に合わないかと思いながらも急ぎ足で進んだ。東の空が焼け始め千里峰(1,400m’)に昇りそうだ。5:16は水平線の時刻なので標高差を考えると未だ時間はありそうだ。5:25に戸倉山(1,261m)山頂に達したが山頂標識もなく最高所で待つが未だ日は昇らない。待つこと8分、染まっていた千里峰の山頂から陽が昇った。次は反対側の登尾山が焼けるのを待つが、高塚山(1,255m)まで行っても大丈夫だろう。振り返りながら山頂に達するが赤くはならず登尾山と戸倉山が朝日を受けて輝いただけで終わった。高塚山山頂には壊れた山頂標識が転がっていた。登山地図には「高塚(トベット)」とあるが現地の表示は高塚山だった。

赤嵓山へはまだ長い、3.2㎞も先だ。その間にP1238P1275P1221の標高点がありこの他にも小さなピークが連続する。白鬚岳が綺麗な角度で見えその右に大普賢岳の特徴的な姿が威厳を持って控えている。赤嵓山(1,394m)へは急斜面を分けて登り着くと其処は台高主稜線、山頂付近は倒木が多く、倒れて門のようになった木が迎えてくれた。登山地図には「赤倉山(コクマタ山)」と書かれているが幾つもある現地の標識は全て「赤嵓山」、「嵓」の字には「山の岩石」や「切り立った崖」を意味があり台高には相応しい。「赤い倉庫」はありえないだろう。

暫し休憩を終えザックを背負うと千石山の方から男女4人組が到着した。高見山から台高を縦走すると云う。先行して台高縦走路に踏み出した。展望のない千里峰(1,400m’)を山頂標識だけ写真に撮って通過し奥ノ平峰(1,355m’)に達すると見晴らしがよい。この後行く白倉山やその先の迷岳(1,309m)が素晴らしい。しかし白倉山はまだ遥か先だ。昨日頑張り、今日の行程も捗っているので、うまく行けば今日中に下りられるかと考えだすが、あの距離はやはり無理か・・・

 写真を撮っていると先程の4人組が山頂で立ち止まりもせず追い越して行った。山中で泊った割にはザックが小さい。此方の70ℓとは大違いだった。少し進むと霧降山(1,360m)2年前に宮ノ谷から池小屋山を周回した時に下った尾根が東に分岐する。この山も展望が良くまた撮影に忙しい。池小屋山東尾根の野江股ノ頭を見るとかなり大きな括れがあり待ち構えているのが分かる。南へ縦走路を辿り池小屋山に近づくと直下に小さな池がある。山名の由来の池で「小屋池」という。見上げると池小屋山があり名前がひっくり返っている。標高差50m程で池小屋山(1,396m)に達するとあの4人組が休憩していた。

池小屋山からは主稜線を離れて東尾根に入る。宮ヶ谷を登って来るルートは北東に伸びる尾根を下るので「ここは東尾根 宮ヶ谷は戻れ」の標識が立てられていた。宮ヶ谷は奥香肌湖の奥へと下る谷筋の登山道があり2年前に歩いた。10分程下ると南に派生する尾根、焼山ノ尾への分岐がある。大和谷に下るが結構険しい道のようだ。稜線は立ち枯れの木が多く、白骨樹が倒れて登山道を塞ぎ歩き辛い。比較的展望は良く昨年登った仙千代ヶ峰も近づいて来た。

登山地図にはこの尾根上に水場が2箇所記されている。今日もう1泊となると水を取りに行く必要があり最後の決断を迫られる。一つ目はP1332P1223の間の南側にあり微かに水音が聞こえているようだ。此処は通り越し縦走路を飛び出すP1245の西端から野江股ノ頭との大きな括れ水越峠へと下る。水越峠から西に始まる風折谷に二つ目の水場がある。峠に行ってから考えようと思っていたが尾根を忠実に下り過ぎて縦走路を外してしまった。標高約980mまで下ると丁度水流現れる所だった。此れが風折谷の水源で清らかな水が湧き出していた。

此処で早めの昼食を取り思案。まだ今日中の下山は諦めていないが体力はかなり消耗しているのは確かで、途中テン泊とならざるを得ない場合に備えて水を2ℓ補給した。ここから野江股ノ頭までは300mの標高差がある。先ずは風折谷を登り水越峠に到った。登山地図には「水越」とだけ書かれていたが、木に巻かれたテープには「水越峠」とある。野江股ノ頭に向けて登りだすとミツバツツジが咲きだしていた。急登斜面が落ち着いたのも束の間稜線直下に近づくと極端に等高線の詰ったエリアの実態は、遠くから見たとおり岩が切立っていた。ヘロヘロになり稜線に達するが山頂は稜線を東北東に500m余り進んだ所にある。もう一仕事頑張り辿り着くとへたばり込んだ。

野江股ノ頭(1,270m)山頂は3等三角点「大戸屋」があるが展望は利かない。2.5万図には「江股ノ頭」とあるが、山頂標識は全て「野江股ノ頭」となっており登山地図もその表示だった。2.5万図の単純な誤植だろう。今日最大の登り返しを終えゆっくり休憩、時刻はまだ11時だが歩き始めて既に6時間、疲労が甚だしいが幾分楽になった。気息を整え東尾根を更に進んだ。目立ったピークはP1226P1205の標高点の打たれた処で、2.5万図からは読み取れないがP1226の下りに険しい岩場がある。

白倉山に近づくと岩稜があり左側から回り込んで登る。そんな険しい稜線の足元にはスミレが咲き心を和ませてくれた。白倉山(1,236m)に乗り上がると昨年11月に歩いた稜線、古ヶ丸山までの険しい稜線の始りだ。縦走も此処まで来れば体力を出し切って今日中に下りるしかない。この快晴も今日までで明日は曇りか雨になってしまうようだ。白倉山山頂標識の下には何故か赤い郵便受がある。山頂からの眺めは素晴らしく、この先の八景山や古ヶ丸山の稜線や昨年の縦走で到った迷岳が大熊谷を隔てた向こう側に見え、歩いて来た池小屋山は遥か遠くになった。

白倉山の下りは垂直の岩があり固定ロープ2本が垂れるが途中から足掛かりがなくなり完全に体重を預け懸垂下降しなければならない。数回引っ張ってみるが強度は大丈夫なようだ。最大の危険個所を通過しホッとするが眼前には八景山のピラミダルな山容が待構えている。横から見るとどってりした山体だったが、瘦せ尾根の稜線上では尖がっている。山頂域に這い上がると比較的なだらかで南端にピークがある。山頂標識もなく一寸寂しい。険しい稜線が続き古ヶ丸山(1,211m)に達すると3等三角点「古ヶ丸」が迎えてくれた。台高山脈を一望し最後の展望を楽しんだ。時刻は13:51、此処まで来ると今日中の下山は問題なく、バスの時刻だけが気になるが待ち時間は長そうだ。

前回は犁谷(からすきだに)公園から稜線コースを歩いたので今日は犁谷ルートを下ろうと思うが、直ぐにある筈の分岐が何時まで行ってもない。更に登山地図にある奥芋口付近にも分岐は無くP1056に到り漸く林道コース分岐の標識を見た。標高800m位まで尾根を下りトラバース道となるが谷の横断など結構危険な個所がある。特にP1056に源を発する深い谷の横断は危険。2.5万図の道とはどうも違ってきたようだ。ナカゴス谷の括れに入って行こうとする直前で真っ直ぐ進む巻道と下に下りる道が何の表示もなく分岐している。巻道を直進してみたが暗い谷に入って行くようで道も怪しい。GPSで確認してみると直ぐ下に林道があるようだ。下り道を選択しジグザグに下りて行くと断崖のようなところで犁谷林道に下り立った。

林道を歩いて直ぐにあるナカゴス谷には落差の大きな滝があるが、2.5万図にも登山地図にも滝記号はなく名前も分らず寂しい。ヘアピンカーブを4回繰り返し犁谷まで高度を下げた。林道歩きを続け懐かしの犁谷公園に達した。大台町営バスの停留所を探すがない。事前に調べていたバスの時刻までにはまだ2時間もある。こうなるとヒッチハイクしかないだろう。更衣室付のトイレがあるので汗で濡れた服を着替え、通る車を待つが大杉谷のシーズンがまだ始らない今日は車が通らない20分余り待ってようやくRV車が走って来た。手を挙げると止まってくれた。伊勢市に住む60代の男性でヒカゲツツジを見に行って来たと云う山屋だった。三瀬谷駅までの便乗を快く引き受けてくれ30分で到着した。

多気行の普通列車が直ぐにあり多気、亀山、柘植、草津で乗換え3時間半を掛けて京都に帰り着いた。

 

【登山データ計】 歩行34.4 16時間08 延登高3,297m延下降,3486m 16座登頂

 

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写真2(4/17): 登尾山南稜線より明日歩く台高主稜線に池小屋山(中央)を見る

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写真3(4/17): 登尾山(1,320m)、右端の分岐で幕営した

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写真4(4/18): 千里峰(1,400m')に陽が昇る 戸倉山山頂より

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写真5(4/18): 池小屋山(1,396m)と小屋池

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写真6(4/18): ピラミダルな八景山(1,240m')後方に古ヶ丸山(1,211m) 白倉山直下より