京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3731 上高地スノーハイク リーダーポイント

2018年3月26日(月)〜3月27日(火)

[メンバー]

CL 59期 江村一範、SL 54期 鹿嶽眞理子、57期 TW

 

【行程】

3月26日 月曜日

7:45坂巻温泉駐車場〜8:30釜トンネル〜9:10大正池〜10:10田代池〜10:50田代橋〜11:10ウェストン碑〜11:30河童橋〜12:00小梨平デポ(お茶休憩)〜13:30明神館〜13:50明神池〜16:20小梨平幕営

 

3月27日 火曜日

5:50小梨平〜6:00河童橋〜7:00田代橋〜梓川左岸〜工事用道路〜8:30釜トンネル〜9:00坂巻温泉駐車場

  

【記録と感想】 59期 江村一範

◯プロローグ

6年ほど前、12月に上高地から横尾までスノーハイクに行った。最初は蝶ヶ岳に行こうとしていたのだが当時の先輩にまだ早いと止められて、梓川沿いを歩く事にした。一泊目は徳沢、2泊目は横尾に一人でテントを張った。年末じゃない事もあって人が殆どおらず、静かでとても快適だった。その静かな山行が良かったのでもう一度行けたらと思っていたのだが、今年2月のジビエBBQの席でTWさんが上高地に行ったことが無いというので、「冬の上高地は静かで良いですよ!」と力説し、鹿獄さんにSLになってもらいリーダーポイント山行を組むことになった。当初はゆっくり2泊で横尾まで行こうとしていたが、仕事の都合で日程が一泊二日となり、公式に上高地幕営が許可されてるのが小梨平だけなのでそこで幕営する事にした。

 

◯3月26日月曜 快晴

26日早朝、夜行バスで松本駅まで来た2人を私の車でピックアップし、釜トンネル手前の坂巻温泉で車を停めて釜トンネルまで歩いた。快晴の中、出発する。冬の釜トンネルは真っ暗だったはずだが一部で電灯はついていおり、凍結箇所も無く快適に歩けた。トンネルを出ると焼岳(?)のてっぺんがちらっと見えて、晴天の下に西穂高の山並みが見えてきた。一同は大いに興奮。車道歩きが暫く続くが凍結も少なく、アイゼンをつけずに歩ける。

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(1日目 写真1 田代池前の樹林帯)

 

 大正池の手前で雪崩の跡があるが、踏み跡がついており難なく渡れた。10時頃、大正池に到着。雪を冠って壮大な焼岳や西穂高大正池に鏡のように反射しているので、一同しばし見惚れて写真を撮りまくる。この付近には家族連れや大正池までの歩きの人達で2グループぐらい賑わっていた。写真を沢山撮ってから田代湿原へ進む。田代池周辺では雪解け水が静かに流れ込んでおり、透明度の高さに驚く。ここからは霞沢岳が綺麗に見えた。田代橋近くのトイレ前で休憩をしていると、工事関係者らしい男性が来た。挨拶して話をしてみると近くの上高地帝国ホテルで内装作業の仕事をしているとの事。冬の帝国ホテルは、家具などがすべて片付けられてがらんどうになっているらしい。

折角だからウェストン碑を見に行ってみようと田代橋を渡って左岸へ進む。一度気づかず通り過ぎてしまい戻ってウェストン碑を確認。

 ウォルター・ウェストンは明治から大正にかけて来日していた宣教師で日本アルプスを西洋人の視点から再発見した人。雑誌やガイド本で知ってはいたが、実際にレリーフを見ると結構大きく、ウェストンの表情は微笑して優しそうな印象。日本各地にウェストン祭がある事といい、彼を知る当時の日本人に愛されていたのだなと思う。

 冬季休業中のホテルの並びを過ぎて河童橋へ。無雪期ならば人で溢れかえっている河童橋も今は誰も居ない。奥には荘厳な奥穂高岳前穂高岳が見える。3人で独占してワイワイと写真を撮る。鹿獄さんのポージングが妙に上手く、モデル立ちを習う。

 河童橋近くには日帰りと思わしき人たちが4グループほど昼食を取っていた。私達は今回の幕営地、小梨平へ進む。小梨平のちょうど雪が無くなっているところにテントを張って大休止。お茶を入れてダラダラする。このダラダラこそが上高地スノーハイクのいい所だと思う。普段なら槍穂へ向けて駆け足で通過するだけの上高地で一泊してゆっくりする贅沢。3月の平日なので辺りは誰も居らず、太陽がポカポカしており眠たくなる。たまにはこういう山行をするのも良い。

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(1日目 写真2 小梨平の昼食) 

 

 午後は荷物を小梨平でデポして明神池まで歩く予定。途中何箇所か雪崩の跡があった。明神橋を渡って明神池へ。背後の尖った明神岳がなんとも美しくいつか登りたいとTWさんが言う。明神岳はバリエーションルートでどこから登っても難しそうだがいつか自分も登ってみたいと思う。明神池にて暇つぶし撮影会。2人にポーズをつけて植田正治風に撮ろうとするがうまくいかず。明神池を出発すると嘉門次小屋の前のベンチで休憩している人たちがいる。小屋明けの準備をしているそうだ。

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(1日目 写真3 明神岳

 

 16時過ぎに小梨平へ戻って夕食。風も無いし外で食べようと、ベンチとテーブルで夕食の用意をする。今日の献立は鶏みそ鍋と〆のラーメン。風が無いとは言え、3月の上高地なので日没すると気温はぐんと下がる。冷えた体に温かい鍋の温度が染みわたり、鹿嶽さんの味付けは最高である。身体の中から温めようと、ビールと日本酒も進む。私の持参した上善如水の花見酒は飲みやすくて杯が進み”あかん水”と命名された。鍋に道中で採取したフキノトウを入れると苦くなくうまい。TWさんの持ってきた〆のサリ麺は麺が太く鍋向けの食材でこちらも美味。18時半時頃、残ったお酒を抱えてテントの中で二次会を行った。

 

◯3月27日火曜 快晴

4時半に起床して朝食。献立がアルファ米+鶏そぼろ+具だくさん味噌汁。河童橋で朝日を見ようと6時前に小梨平を出発。昨日に引き続いてこの日も快晴。6時頃、誰も居ない河童橋に到着。ディープブルーの奥穂高岳にゆっくり朝日が照らされ薄くピンク色を被る。「焼岳もすごい!」と言われて振り返ると焼岳が文字の如く焼けるように朱色に染まっていた。震えるくらいに美しかった。

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(2日目 写真1 焼ける焼岳)

 

 この日はもう帰るだけだが、二人の帰京するバスの昼便に間に合わせたいのでゆっくりもしていられない。朝日を見終えて元来た道を戻る。折角だから上高地帝国ホテルを見ていこうと立ち寄ってみる。レトロな外観と赤い三角屋根がメルヘンチックで美しい。いつか帝国ホテルに泊まる現地集合解散の「帝国例会」をやってみたいですねと言う。なんと鹿獄さんは昔に帝国ホテル内の喫茶店で茶をしばいた事があるそうである。お茶でもいいからいつか行きたい。

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(2日目 写真2 上高地帝国ホテル)

 

 田代橋から間違って左岸へ渡ってしまい、このままでは工事用道路歩きになるなと川ギリギリを歩いていたら、もうどうにも歩けなくなり雪に埋もれた湿地帯をトラバースして工事用道路に戻る。大正池も見られず工事車両が行き交う中をトボトボ歩く。釜トンネル出口に8時半に到着。車道歩きをして坂巻温泉に9時到着。坂巻温泉で温泉に入ろうとするも、ロビーで今は掃除中で使える浴槽には洗い場が無いと言われ、それは困ると周辺の温泉を必死に探す。白骨温泉が意外に近いよと、この時期に唯一営業していた白骨温泉「泡の湯」へ向かう。オープンの10時半まで待って開業と同時に入る。白骨温泉の泉質がとても良くて肌の通りが良い。この温泉は露天風呂はなんと男女混浴であるが、白く濁って底が深いのでなんとか隠しながら歩ける。外で浸かっていると鹿獄さんとTWさんがやってきた。まさか混浴する事になるとは。白骨温泉上高地から案外近いのでマイカーで帰りに寄るのは有りだなと思う。値段も800円で手頃だ。風呂から上がり、ここで昼飯を食べるぞと見定めていた蕎麦屋へ行くがなんと臨時休業! 仕方がないので向かいの道の駅で食べる。松本駅へ行く途中、亀田屋酒造店という酒蔵へ立ち寄りへ”あかん水”(日本酒)をお土産に買う。15時過ぎ松本駅前ロータリーに到着。バス出発1時間前に着けた。なんとここで2人から私に運転のお礼にと”あかん水”を頂く。とても嬉しかった。車で帰る私はここで別れ2日間の山行を終えた。

 3月末の上高地スノーハイクは雪も歩きやすく、人も少なくとても快適だった。2日ずっと晴れ渡っていて穂高連峰が本当に綺麗に拝めた。久しく北アルプスも歩いていないので縦走したくなった。この会に入って初のリーダーポイント例会で、段取りの悪い所も多々あったが、サポートしてくれた同行の先輩2人には感謝したい。 (了)

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(2日目写真3 白骨温泉泡の湯)

 

【感想】 54期 鹿嶽眞理子

 江村さんが、冬の上高地は素晴らしいです、是非行くべきです、案内しますと申し出てくださり、初上高地のTWさんと話がまとまり、私も一緒に行くことができまし

た。私自身は3度目の雪の上高地でした。一度目はふかふかのバージンスノー満喫のスノーシューハイクでした。二度目は冷たい風がびゅーびゅー吹き付け雪もちらつ

く日でした。そして今回は雪も少なく軽アイゼンすら不要な早春の上高地。風もほとんどなく、雲一つない晴天。おかげで今までで一番のんびりまったりと絶景を楽しむ

ことができました。なんといってもほとんど人がいないのが最高です。焼岳や穂高連峰は、大正池に鏡のように映るのも素敵でしたし、田代橋や河童橋からの風景も抜

群でした。明神岳も素敵でした。明神橋・明神池では、面白ポーズで写真を撮ったりして遊びました。小梨平のキャンプ場には私たちのテントがぽつんと一つ。心地よ

い静寂の中で、鶏みそ鍋とビールや美味しい水(上善如水)で盛り上がりました。途中で摘んだフキノトウを鍋に入れてみたら、なんとも美味でした。

 

カメラ操作を江村さんに教えてもらい、一つ技術を身に付けました。大収穫です。ハードな山もいいけれど、ゆるゆるも楽しいと言ってくださった江村さん、ありがと

うございました。リーダーポイント2個進呈したいくらいです。

 

【感想】57期 TW

 2月中旬、お酒の席で私が「上高地に行ったことがない」と話した事から始まった、この上高地企画。江村さん、鹿嶽さんという山のベテランから「それなら行こう!」とお声がけいただき大変ありがたい反面、周囲の方からは『接待山行』と言われ(私が接待される側)、何とも申し訳ないような、きまりの悪いような思いをしておりました。でも今は、接待していただいて本当に良かった!と思っています。上高地穂高連峰愛する人たちの気持ちが大変よく分かりました。

大正池に写る真っ白い焼岳、格好のよい姿の穂高連峰、ひときわ神々しい明神岳・・・スゴ腕カメラマンでもあるお二人が写真を撮る横で、梓川がそよそよ流れる音を聞きながら、ぼんやりと色々な姿の穂高連峰を見るのは楽しく、贅沢な時間に感じました。中でも、夕焼けの穂高連峰を見ながら、三人で囲んだ、味噌鍋と日本酒は格別でした。

北アルプスに対して興味のなかった私でしたが、穂高連峰に招かねているように感じた2日間でした。

鹿嶽さん、私に上高地への扉を開けてくださり、ありがとうございました。いつも背中を押してくださり感謝しています。

江村リーダーとは、2月末の企画立ち上げ当初から山行当日まで、メールでやりとりする事61通(!)。お忙しい中を色々とお心遣いいただき、本当にありがとうございました。山行後の白骨温泉含め、私は、江村さんのリーダーポイント100点満点だと思います。