京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉元日の北岳 富士山の初日の出

2022年12月30日(金)~2023年1月2日(月)

富士山の初日の出

【メンバー】CL HT、HE、NF

【行程】【1日目】30日晴れ 午前7時 京都駅 午後1時40分 奈良田林道入り口~午後4時50分 あるき沢 

【2日目】31日晴れ 午前5時50分 あるき沢~午前9時30分 池山小屋 午後1時10分 森林限界地点 幕営 

【3日目・元旦】1日晴れ 午前5時50分テント場 午前6時40分ボーコン沢の頭~8時05分 八本歯のコル~ 10時05分 山頂~午後0時30分テン場 ~午後1時30分 テン場撤収~午後3時10分池山小屋 幕営

【4日目】2日晴れ 午前5時池山小屋~6時45分あるき沢~10時25分奈良田林道入り口

木々の合間から見えた富士山

【記録】NF
1日目:京都駅に集合して、奈良田へ向かう。車中で装備を確認。ワカンに加え、八本歯のコルの通過のためにロープ、ハーネスを持っていったが、雪が少なそうなので車にデポすることにする。途中、ほうとうのような鍋焼きうどんで腹ごしらえをして、林道入り口へ。トンネルのゲートが閉まっているので、Tさんがフェンスを乗り越えて内側から開けてくれた。

林道は12㌔。アプローチシューズを履いて、延々と歩いて行く。あるき沢の直前の滝で水をくんで、あるき沢で幕営。沢の合流点のため、標高が低くてもかなり寒かった。

林道の入り口

2日目:今日は森林限界にはるテン場まで。樹林帯は最初から急騰。久しぶりのボッカで息があがる。倒木が多く、ずっと樹林帯のため、単調でがまんの登りが続く。5時間たってようやく木々の中から富士山が見えると、疲れも飛んだ。

森林限界近くになり、どこでテントを張ろうかと相談した。樹林帯から出た稜線で富士山の景色を堪能していると、そこにいた人がそこにも張れそうですよ、と、岩と岩の間の隙間を差してくれる。確かに、富士山目の前絶景テント場!風も全くない!とテンションが上がり、そこにはることに。

結果的に大変なことにはならなかったものの、夜中、強風が時折テントを打ち付け、やはり(当然だが)樹林帯に張る方が安全だ。

富士山が見えるテン場

3日目:5時過ぎには出ようと4時に起床したが、寒すぎてだらだらしてしまい、6時前になってしまう。寒い寒いと繰り返しながらテントの外に出ると、そこに待っていたのは富士山の朝焼けだった!群青色の空に茜が一筋差す。次第にオレンジの光に変わっていく。

群青色に茜色が映える

初日の出はもう少し高いところから見ようと、慌てて出発の準備をする。と、そこでトラブルが。わたしのアイゼンの前爪を支えるプラスチック部分が寒さのためか割れてしまったのだ。この冬はアイトレもしたし、立山にも行ったし、おかしいところを感じなかったのに…。これは諦めるしかないか、、と思ったが、皆と相談してチェーンスパイクで行けるところまでいくことにする。本来は諦めるべきだったかもしれないが、この雪の少なさから行けるのではと判断した。(結果的に大丈夫だったが、お勧めはしない)
気を取り直して登り出すと、ボーコン沢の頭直前で白い雷鳥2羽に会う。こんなに晴れているのに雷鳥に巡り会えるなんて、ことし1年はいい年になりそう、と3人ともテンションが一層あがる。

白い雷鳥

ちょうどボーコン沢ノ頭で太陽が登り始めた。小さなオレンジの点は、瞬く間に大きな光になり、世界を照らして一年の始まりを告げた。ずっと見ていたいほどの美しさ。

さてそろそろ進もう、と富士山バックに登り始める。雪が非常に少ないので夏山のような感覚で歩ける。八本歯のコルもフィックスロープが出ていて、安全に降りられる。ただ、雪があればやはり懸垂をした方が安全だろう。支点もあるし、ロープは40㍍あれば十分だ。

ほとんど風もなく、快適な登山。すれ違う人が稜線は風が強いので気をつけてとアドバイスをくれる。山頂への稜線直下のトラバースが、チェーンアイゼンで行けるか最も心配だったが、踏み跡がしっかりあり問題なかった。(何度もいうが本来ならしてはいけない)。雪があればここが核心部になるだろう。

山頂は思ったほど風がない。富士山はもちろん、北アルプス仙丈ヶ岳甲斐駒ケ岳八ヶ岳など360度の風景。私は晴れ女なので絶景を何度も見ているが、何度見ても美しい。いつもよりゆっくり堪能して下山。テン場まで戻ってテントを撤収して、池山小屋まで高度を下げる。池山小屋の周りはテント適地になっており、6パーティほどが張っていた。

染まる稜線

4日目:今日は下山するだけ。とはいえ、急斜面の下山は足に来る。あるき沢からも長い長い林道。消化試合のため、地味な歩きが地味にとっても疲れる。

ようやく最後のトンネルの出口が見えたときはほっとした。奈良田温泉の白根館でお風呂に入り(ぬるぬるの湯で気持ちよかった)、移住された夫婦が営むおそば屋さん「おすくに」でとってもおいしいそばを頂いて、帰京する。

八本歯のコル

【感想】NF
山の上から富士山の初日の出を見るのは長年の夢でした。天気は快晴。絵に描いたような富士山の朝焼けと真っ白な雷鳥に出会えて、新年の計は元旦にありといいますが、今年1年、どんな山に登ろうかと歩きながら真剣に考えてしまいました。雪が少ないのがやや残念でしたがこれもぜいたくすぎる感想なのだと思いました。ご一緒していただいたTさんとEさんに感謝です。今年はいい年になりそうです。

山頂に続く稜線

【感想】HE
11月の立山例会時にHTさんが年越しで北岳に行かれると聞き無理矢理同行させて頂きました。HTさん的には超初心者を連れていくのか。。。と途方に暮れられたと思いますが、そんな素振りもなくにこやかに了解頂き、今回初めての北岳にトライすることが出来ました。
北岳は標高もさることながら、無風好天が望めそうにないこと、アプローチが遠く、3泊分の荷を背負っての林道歩きが長いこと等、不安が多いにも関わらず昨今の「行動制限のない年末」ということで、酒量が爆発的に増えていることによる?体調不良を抱えたままの出発となりました。案の定、初日から体調が悪く、だるさと吐き気、頭痛を抱えての登山となり、HTさん、NFさんには多大な迷惑を掛けてしまいました。すいません。
が、4日間の行動すべてが快晴、森林限界以上での行動2日間は「北岳にしては」ほぼ無風/弱風という絶好のコンディションの中、2023年の初日の出をボーコン沢の頭で眺めることができたのは、いまだに噓のようです。どでかい富士山の後ろから昇る朝日、その陽に照らされる北岳間ノ岳のモルゲンロートは本当に素晴らしい絶景でした。
その後の登りでは、白い雷鳥も間近で見ることができ、「一富士、二鷹(雷鳥)」を押さえることができ、幸先の良い2023年のスタートとなりました。茄子入りの食材を持ち込んでいれば、「三なすび」まで行けたのですが、そこまで準備至らず。。残念。。
ビビっていた八本歯のコルも放っていかれる恐怖から(笑)何とかクリアし、体調を気遣って早朝発にしてゆっくり進んで頂いたおかげで、無事北岳山頂を踏むことができました。
登りは遅れに遅れ、体調から食べることもままならず、山頂にも行く気あるのかないのか という状態でも「さあ行こう」と励まし、また「無理ならいつでも降りれば良いから」と優しくフォロー頂いたことは忘れません。自分もそのように振る舞えるようよく覚えておきたいと思います。
ところで下山時に爪先を靴内で傷めてしまい、帰京後ちゃんと歩けない状態となっています(爪はもうダメになり、爪の付け根が腫れ、両足とも親指の太さが倍以上になってます)。靴も荷造りも持ち物も体調管理も反省の多い山行となりました。今後キチンと対策し、また冬山に挑みたいと思います。

つるつるの林道。チェンスパ必携

【感想】HT
年末年始の山行で天候が一番気がかりでしたが、晴女のNFさんのおかげか、連日ドピーカンの弱風(この時期の北岳では無風に近い状態か)で、最高の条件での山行になりました。
絵にかいたような初日の出と富士山を眺めながらの北岳登頂ができ、幸先のよい年明けを迎えさせていただきました。
また、各自不安や不調、不具合がある中でも励ましあってチームで登れ、山岳会の良さを改めて思いました。
4日間の濃い時間をご一緒いただきましたFさん、Eさんありがとうございました。

また一緒に行きましょう。

おいしいお蕎麦でした

No.3980 雪山入門 立山三山 ※テント泊ポイント

2022年11月26日(土)~27日(日)

浄土山山頂にて

【メンバー】CL HT、NF、DF、HE 計4名

【行 程】11月26日 晴のち風雪 立山駅9:00 =ケーブル・バスを乗り継ぎ 室堂10:00ごろ テント設営 11:20室堂~浄土山展望台~浄土山14:10~浄土山南峰14:20~室堂16:50(テント泊)

11月27日 晴 起床5:00~出発7:10~一の越8:40~雄山10:40~一の越12:00~室堂13:00~テント撤収、下山室堂14:00 = 立山駅15:000ごろ

テント場より雄山方面

【記 録】53期 HT

11月26日(土)

朝7:00過ぎに立山駅駐車場に着くも駅前駐車場は満車(有料化用ゲート設置工事中で駐車可能車両が制限されていた)。駅裏の無料駐車場に止めて装備を整え出発。出発時に当日午後の悪天候が分かっていたため登攀具は車にデポ。登攀しないことを決めた為かのんびり準備して駅に着くとすでに始発は満席。9:00の臨時便にぎりぎり間に合った。(駅裏駐車場は人が少なく、今日は空いていると思っていたが、多くの人は川沿い駐車場に止めていた模様)

室堂駅に到着、入山届を提出後、この時期ならではの室堂前の臨時テント場でテント設営。なかなかいい場所を確保できたが、積雪がやや少なく、雪を掘りすぎると這松や遊歩道のベンチが露出するため、ほどほどに雪ブロック作成してテントを設営(お隣のグルーブはベンチを掘り出し、宴会テーブルにされていた。ナイスアイデア

テント設営後は計画変更し、通常ルートで浄土山へ向かう。展望台から浄土山へ直登できるかと思っていたが、そこそこの傾斜の岩稜帯で、なおかつ積雪量が微妙で、踏み抜くとシュルンド的なハマり方をしそうなため夏道近くまで戻り浄土山へ向かう。

浄土山山頂までは表面は薄くクラスト+下は新雪でなかなか進まず、NFさんが頑張ってラッセルしてくれました。

山頂到着から浄土山南峰まではすぐ近く、富山大学の施設の陰で休憩していると天候悪化し始めたので龍王岳はパスしてテント場へ下山。

11月27日(日)

朝5:00起床、昨夜の積雪は10cmほど、テントの吹き溜まりには20cmほど雪がつき、5:00時点では降雪が続いていたのでゆっくり出発することにする。

曇り空の中、7:00過ぎに出発し一の越到着前には晴天に。天候回復と同時に風が強くなり、一の越から先はかなりの強風(体感で15~20m弱くらいか)

一の越の小屋裏で装備を整え雄山へ向かう。強風に耐えながら無事雄山へ登頂。超快晴の山頂と雄山神社で十分に景色を楽しんだ後、室堂まで下山。テント撤収し帰京しました。

一の越へ向けて

【感 想】64期 HE

2015年6月に富山出張に合わせてチャレンジしたものの、雪の中の暴風雨で敗退した雪の立山に行けそうということで、同行させて頂きました。

最近は六甲をほぼ空荷で歩くぐらいで、雪山装備を背負って雷鳥沢まで行くのもしんどいかなーと思っていましたが、この季節は室堂前にテントが張れるということで一安心。すっかり頭になかった携帯トイレも当日出発前にモンベルオンラインで宅配され、無事出発できました(笑)。

土曜は午後から天気が荒れそうということもあり、結局ロープやガチャは車に残し軽量化して9:00発のケーブルで出発。バスに乗り換えた後もなかなか雪が見えなかたのですが、弥陀ヶ原を超えるとカーブ毎に雪が深くなり、室堂到着時には銀世界でした。

早速テン場へ向かい、テン場整備です。HTさんがスノーソーでブロックを切り出せるようにしてくれるのですが、そんなことはお構いなしに掘って雪壁を作った結果、もともとの想定とは様子もサイズも違うテント設営場となり、皆さまにはご迷惑をお掛けしました。結局夕方にHTさんに大幅改修を実施頂き、悪天候にも耐えることができました。

土曜は一の越経由の夏道での龍王岳ではなく、最短距離ルートにチャレンジ(雪山らしくて良いですよね)した結果、踏み抜き、ズリ落ち、ハイマツまみれで登っていく雪山始めらしい楽しみが出来ました。

結局時間切れと天候悪化で龍王岳にはたどり着けませんでしたが、楽しい4.5時間でした。

その日の夕方からは暴風雪+雷になりましたが、NFさんの豪華な鍋を頂き、暖かく寝ることが出来ました。なぜかあまり食べられなかった(私の体調のせい)のが残念でした。

翌朝は曇っているものの、雪も風も凪いだ中、まずは朝食のギョーザ鍋!ですが、なぜか朝食も食べられません。

今日はスノーシュー(ワカン)で一の越へ向けて出発。いつも思いますが室堂から一の越って思った以上に遠いですよね。今回もハーハー言いながらなんとかたどり着き、強烈な風の中装備準備を行います。

この時手を抜いて、

バラクラバ/ヘルメット/ヤッケとフード等キチンと見直さなかった

・その割に素手でアイゼンを閉め、指先を濡らした

・エネルギー補給を行わなかった

という初歩的なミスを重ねた結果、

・登り途中に呼気でメガネが曇りまくり

・指先がヤバい

という事態になり、一人だけ一の越まで戻る羽目に…。

指を温め、装備をやり直して後から一人で登り返しましたが、空腹でぼーっとし始め、とんでもなくスローな登りとなり(京都雪稜会のまさかの稜線斜面での装備直し渋滞もあったとはいえ)、先行メンバーには本当に迷惑をお掛けしました。

ただ、山頂は雲一つない最高の天気で、待ってくれていたメンバーのおかげで良い記念写真が撮れたと思います。DFさんが撮られた写真や動画、すごいです!

時間的に大汝山までは行けないということで雄山神社でのピストンとし、昼にテン場へ到着して今回の山行は終了。

最高の天気で、メンバーにも恵まれつつ、個人的には反省の多い山行でした、これを糧にミスのない冬山山行ができるようにしたいと思います。

同行の皆さん、またよろしくお願いします。今回も本当にありがとうございました。

雄山神社から劔岳方面

【感 想】62期 DF

京都は紅葉の真っ盛りだが、一足早く冬山を楽しみたく、立山例会に参加させていただいた。

室堂のターミナルを出ると、真っ白な雪原が広がっていた。今冬は雪不足がつづいていたが、前々日にまとまった降雪があり、積雪深は60センチに増えたらしい。

到着後、すぐにテントを設営して、体力のあるNFさんを先頭に浄土山に向かった。途中で薬師岳方面への展望が拓けた。薬師岳につづく稜線はひときわ白く、たおやかに広がる五色ヶ原が初冬の日差しを受けてきらめいていた。

浄土山への急登は雪が重く、踏み抜いたりずり落ちたりと、登りきるのに思いのほか苦労した。14時半頃、ようやく山頂についた時には、辺りがガスに包まれていた。

それから軽い昼食をとり、すぐに室堂に戻って、みんなで宴の支度をした。外はいつのまにか吹雪になっていた。あられが激しくテントをたたく音が聞こえてくる。ときおり稲妻が光ると、テント内はカメラのフラッシュを焚いたように静かに瞬き、すぐまた元の闇に戻るのだった。

食材の準備と仕込みはNFさんがしてくれていた。献立は味噌鍋。たっぷりの味噌につけこんだ鶏肉を主役に、白菜、ネギ、HTさんの大好物の春菊を投入する。HEさんならぬキノコさんもいい味を出す。鍋蓋をとると、ぐつぐつと煮え立つ味噌鍋の香りがふわりと広がった。

熱々の鶏肉と野菜を器にとって、一口頬張る。やわらかい鶏肉に、早春を思わせる春菊の香りがからんで、寒風で冷えた身体が暖まっていくのを感じた。

ビールを少量いただき、みんなで山の話にふけって、楽しく鍋をつついた。はじめは多すぎると感じた食材だったが、一杯目の鍋はすぐに空になった。二杯目は豚肉が投入されたが、これもすぐに売り切れた。 

二日目の朝、室堂は降りつづく新雪に覆われ、前夜よりいっそう雪深くなっていた。

前日の鍋のスープに、NFさんおすすめのぷるぷる餃子と、豚肉を投入し、みんなで豪勢な朝食をとって出発の支度をした。

ようやく雪がやみ、真っ白なガスに覆われた室堂を発ったのは朝7時頃。一ノ越につく頃には青空がのぞき、雪煙のたなびく雄山の頂上がはっきりと見てとれた。

しかし、暴風が吹きあれる稜線は、山頂を容易には踏ませてくれなかった。ゴウゴウと風が鳴り、風雪はたえまなく顔を打ちつける。それでも飄々と登っていくNFさんの後ろを、突風に身体を揺らされ、よろめき、ときに岩にしがみついて息を入れながら、必死についていった。

11時前、雄山山頂到着。

やっとのことでたどりついた頂上には、すばらしい見ものが待っていた。アルプスの厳しい冬空はどこまでも澄みわたり、剱岳から槍ヶ岳薬師岳へとのびる北アルプスの全貌にくわえて、八ヶ岳南アルプス、富士山までもが玲瓏たる姿を見せていた。

銀雪をまとった薬師岳はことに美しく、時間が許すなら日が沈むまで眺めていたいと思うほどだった。

こんなに素晴らしいものを見せてくれたリーダーのHTさん、最高の食事を用意してくれたNFさん、そして得意のジョークで場を暖めてくれたHEさん、本当にありがとうございました。おかげで最高の冬山はじめになりました。やっぱり冬山が大好きです。また一緒に冬山にいきましょう!

雄山神社鳥居

【感 想】54期NF

初めての立山は雪の時に行きたいと数年前から思っていたため、念願かなう山行となった。

龍王岳のクライミングを楽しみにしていたが、天気が午後から崩れそうなのでやめて浄土山へ。彩雲が見られ、いいことありそう!とテンションがあがる。踏み跡のない急斜面を軽いハイキング気分で進んだが、膝上ラッセル、雪の下のハイマツに足を取られて思いもよらず苦労する。雪におぼれそうになりつつも、だんだん楽しくなり、一気に山頂へ。ついた時にはまだ視界があったが、数分で真っ白に。慌ててトレースがくっきりある一の越から戻る。途中、救助ヘリが旋回しているので心配して見つめていたが、どうやら訓練みたい。だれもけがしてなくてよかったとほっとした気分でテントに到着。コロナ中は個テント、個食だったので、4人テントでお鍋は本当に久しぶり。食当も久しぶりなので、味とか量とか大丈夫かなと心配していたが、みんなおいしそうに食べてくれた。HTリーダーがことのほか春菊に喜んでくれたのがうれしかった。吹雪の中、就寝する。3シーズンシュラフだったが、4人の間にいれてもらったのでぽかぽかだった。

翌日は新雪が積もり、スキーヤーが朝早く出発する。私たちは遅めの出発だったが、結果的に良いタイミングとなった。真っ白の中出発したが、天気予報は晴れ。そのうち晴れるだろうと思っていたら、一の越に着く直前に青空が!ただ、雲の動きが異常に早く、稜線の雪煙がすごい。案の定、稜線に出たら、風速20㍍もあるかもと思えるような暴風!こんな中登るのかな、、戻ってきているパーティもいるよ、、、と不安に思っていたが、経験豊富なHTリーダーは淡々と準備を進めている。やはり行くしかない。目出帽、帽子、手袋、など風が入らないように入念にチェック。氷粒も大いに舞っているが、実はこの冬のためにサングラス(三浦雄一郎も愛用のタレックス、オーバーグラス)を新調したので本当に氷粒が防げるか楽しみな気持ちもちょっとあった。歩き始めると体が持っていかれそうなほどの風。雲一つない青空で気温もそれほど低くないのでましだが、その風の強さは恐怖すら感じる。ただ、タレックス効果で目にまったく氷粒が入らないのでだんだん落ち着いてくると、槍穂高を背景に登山していることに気付き、テンションが上がる。山頂に着くと、360度のパノラマ!!日本アルプスから富士山、白山まで。これぞ、絶景!!景色を十分堪能して、下山。テントを撤収して帰路へ。

HTリーダー、HEさん、DFさん、本当にありがとうございました。最高の冬山始めになりました。また、ぜひ冬山に行きましょう。

雄山への登り

【感 想】53期HT

11月の最終週にだけ許される室堂前テント泊をしてみたい、という思い付きで雪山とレーニング例会を実施しました。
場所がいいので雪山初心者の方が参加していただけるかと思っていたのですが、結果的には見知ったメンバーでやや緊張感がなくなり、室堂まで行ってみると、トイレも水も室堂ターミナルが使用できるしで、ゆるい雪山テント泊になりました。
久しぶりの4人用テントに4人泊でうまく食事の用意ができたり寝たりができるかと心配もしましたがそちらも問題なく、久々に山岳会の雪山テント泊気分が味わえて楽しかったです。
肝心の山行は、リーダーが日和ったため初日の龍王岳のクライミングもなく、2日目もスタートを遅らせたため雄山までのピストンとなってしまいました。
一部の方には物足りない山行になったかと思いますが、抜群の雪山景色が見られましたのでご勘弁ください。
初日の浄土山への登りではルート取りによっては雪にはまって大変であることや、2日目の一の越から雄山までの登りでは強風地帯に入る前の服装・装備の用意の重要性(強風地帯での登攀中は服装の乱れや装備の修正・水分補給などができない)を改めて身をもって体験できたので、ゆるいなりにいい雪山トレーニング例会ができたかなと思いました。
ご参加いただいた皆様、今シーズンも冬山を楽しんでいきましょう!

No.3977 雪山シーズン始めのクランポントレーニング

2022年11月12日(土)

【メンバー】CL HT、NF、TW、DF 計4名

【行 程】11月12日 晴 駐車場9:00~白坂9:30~クランポンレーニング~岳観音堂跡の先のザレ場 12:20~昼食~白坂13:30~駐車場14:00

【記 録】53期 HT

リトル比良の白坂でシーズン始めのクランポンレーニング例会を実施。大炊神社の先が登山道入り口。獣害防止の柵を越え、調整池を経由して白坂に到着。まずはクランポン無しで滑りやすい花崗岩の白山を登下降・トラバースした後、クランポンを付けて登下降・トラバースを繰り返す。皆最初はシーズン始めでぎこちなかったが、しばらくすると感覚を取り戻し、急斜面をスタスタと登り降りできるようになった。

後半は前爪を使った登りと、バックステップでの下降を練習。

みんな経験者なので感を取り戻したところでトレーニングを切り上げ、見晴らしの良いところまで登り昼食。

天候もよく、まったりとしたクランポンレーニングになりました。

No.3971 三嶺~天狗塚~久保の稜線歩き

2022年10月28日夜(金)〜30日(日)

一日目の第一ピーク、目の前に三嶺頂上

【メンバー】CL DT、SL EH、KI、KK、TS、WT、HM、CK 会員8名

【行程】10月28日 天候:晴れ 20:00 ロッジ集合=23:30 道の駅「みまの里」

10月29日 天候:くもりのち晴れ 06:00 道の駅「みまの里」= 07:30名頃 08::30 ~ 三嶺 ~ 西熊山 ~ お亀石避難小屋

10月30日 天候:晴れ 06:00 お亀石避難小屋 ~ 地蔵の頭 ~ 久保分岐 ~ 天狗塚 ~ 牛の背 ~ 久保分岐 ~ 天狗塚登山口 ~ 久保

三嶺-剣山-次郎笈を一望

【記録・感想】64期 EH

昨年秋のDTさん例会(剣山~三嶺)の奥へ進む例会をSLとして開催させて頂きました。公言している通り、毎年少しずつ進み、石鎚まで歩き通す予定です。

残念ながら9月は台風直撃で中止となりましたが、紅葉を期待して10月最終週に実施しました。

三嶺の登りは予想よりも軽く(もっと急傾斜だった気がしますが)、また上へ行くにつれ晴れ間が広がり、稜線に出る頃には見事なピーカン!ですが、めちゃくちゃ冷たい強風のため、寒い寒い。。。耳当て、手袋での稜線歩きとなりました。

寒いとは言え、晴天のこの稜線はやはり最高です。ワイワイ言いながら歩くうちにすぐにお亀石避難小屋に到着。人が多いかもと心配して大きなツエルトを持参しましたが、他には誰も居らず。早速手分けして水汲み/宴会準備を進めます。水はちょろちょろでしたが、しっかり確保できました。

宴会開催に合わせ、歩荷してきた薪を薪ストーブに投入し、暖を取ります。噂では田中陽希が運んできた薪がある とのことでしたが、影も形もなし。もう燃やしちゃったのか??

宴が進むにつれ、小屋に到着する人が多くなり、最終的には19人?(ちゃんと数えてません)ぐらいに膨れ上がりました。

この小屋、設備も状態も良いのですが、この日は外れだったようです。毎週のように来てるというグループ1は室内で閉め切ったまま焼肉、香川の警察官OBグループはジンギスカン、こちらも頻繁に来るという個人(男性)は個人(女性)を追いかけ。。。

グループ1は皆が寝る時間になっても「わしらは宴会を楽しみに来てるから、遠慮せず続けたら良い」と大声で宣言し、そのまま話し続けるのに加え、夜中にも星を見たついでに話を始める始末。。。環境が良いだけに残念でした。。。

朝には昨夜の超冷たい暴風も収まり、風なし快晴の絶好の天気。

地蔵の頭~久保分岐と絶景散歩し、イザリ峠からは荷物をデポして天狗塚経由牛の背まで。瀬戸内も太平洋も石鎚山系も、さらには前回の剣山、次郎笈も見える大絶景の稜線歩きでした。

イザリ峠まで戻って、あとは下るだけ。紅葉のブナ林を抜け、奇岩の川沿いを歩いて山行終了。

と思ったら、アカン、忘れ物した。イザリ峠でザックが転げた時に荷物を一つ落としたままにしてたみたい。。。中身は、ヘッデン、テント用ライト、ココヘリ、大容量リチウム電池(高級品)、ファーストエイドキット、愛宕山の登山お守り、その他。。。はぁ~。。。

まあとりあえず石鎚へ向けて徐々に進みますんで、皆さままた宜しくお願い致します。

追)色々思うところがあり、11/5(土)に再度現地を訪問し、笹薮から忘れ物を回収したほか、綱附森近くまで次回ルート下見してきました(笑)。例会時を上回る青空とちょうどピークの紅葉を楽しむことが出来ました。

1994年改修済のきれいなお亀石避難小屋

【感想】 22期 KI

暑い暑い夏が過ぎ、幾つもの台風が過ぎ、やっとやって来た秋風の季節のとても心地良い山行でした。一週間前の「剣山に積雪」の情報を見て防寒着が増えてしまいましたが、お亀岩避難小屋の薪ストーブのお陰で暖かく過ごす事ができました。紅葉の林と丈の低い笹原の広々とした山々、四国の山ならではの景色です。夜の星空もとても綺麗でした。気持ち良く歩いて、小屋に着けば、それぞれのザックから出てくる大量のお酒とおつまみで乾杯。黒豆の枝豆とラタトゥィユも素敵でした。こんなに贅沢をして良いかしら。車のデポから薪の準備や食材の下処理まで皆さんの労力の結集に感嘆しました。とても感謝です。有り難うございました。

恒例。今回は赤ワインスタート

【感想】53期 TS

昨年の例会で剣山から三嶺まで歩き、今回はその先の天狗塚まで歩いて来ました。しかし、さらにゴールは石鎚山まで歩くとの事ですが、私は四国一と言われる笹原の稜線歩きを堪能する事と薪ストーブで暖を取りお酒を飲む事を楽しみに参加しました。

名頃登山口をスタートして「ダケモミの丘」を過ぎ三嶺ヒュッテに到着。三嶺山頂からは360度展望が楽しめ、昨年歩いた稜線が青空の下に続いていました。

さらに西熊山までも笹原の中を散歩しているような稜線歩きが続き、本日のお宿「お亀岩避難小屋」(2021年5月末に改修工事が終了、また北欧ノルウェー製 の ヨツールF400という薪ストーブもあります)に到着。早速持参した薪をストーブに入れて着火式を済ませ、いつものように夕食にはだいぶ早いですが、乾杯がスタートしました。そして夕食はKMさん特製のラタトゥィユでした。いつも美味しい食事をありがとうございます。

また、翌日地蔵ノ頭から見た牛ノ背はまさに牛の背のようななだらかな山容の笹原で池塘もあり、いつまでも居たくなる場所でした。もちろん二つの楽しみを達成する事もできました。

最後に普段あまり行く機会のない四国の山域ですが、山岳会に席を置いているからこその機会が得られた事に感謝しつつ、前回に引き続き楽しいメンバーと過ごせた充実した山行きでした。「リーダーをはじめ皆さんありがとうございました」

2日目。朝日とともに小屋を出発

【感想】56期 DT
昨年、三嶺のピークに立った際はガスっていて何も見えなかったのでその西奥にはほとんど興味はなかった。EHさんより「西奥の稜線も素晴らしい景色で宿泊する予定のお亀岩避難小屋もきれいとの事でぜひ行きましょう」との誘いを受けたのは春先のことであった。

しかしお互いにスケジュールがかみ合わず、9月の計画になったが天候不良で延期、結果10月下旬になってしまった。

避難小屋には暖炉があるとの情報を尾上さんからいただき是非利用しようとTSさん提供の薪を皆でボッカ。初日の三嶺への登りは天気予報とは違い曇りで風もあり肌寒い。下山者に頂上の様子を聞くとガスっていて何も見えなかったとのこと。昨年と同じかとモチベーションが下がる。

しかし登るにつれ稜線のガスが取れだし、再度下山者に聞くとガスは無く素晴らしい景色が広がっていたとの事。一転しモチベーション急上昇!期待通り頂上に着くとガスは取れておりこれから目指す稜線がずっと先まで確認できる。なだらかな笹道で聞いてた通り気持ちの良い稜線である。どんどん進むも気持ちの良い稜線は更に先へ先へと続いている。やがて避難小屋が見えたがもっと先へと気持ちの良い稜線は続く。いつかはそっちへも行きたいと思いながら避難小屋へ下った。

小屋へ到着するが時間が早かったせいか誰もいない。昨年の白髪避難小屋のように我々の貸切になればと思ったがとんでもない、超満員になった。早速暖炉に火を入れる。暖かい。薪をボッカしたかいがある。人が多かった分色々不具合もあったが、いい小屋であった。
翌日、天狗塚を目指し出発。本日下山する分岐点の天狗峠まできて「いつかは行きたいと思った気持ちの良い稜線」はこれから向かう牛の背であることが分かった。快晴の中広くなだらかな丘の歩行は最高に気持ちいい。まさに巨大な牛の背中を歩いているようであった。気温もちょうどよく紅葉も始まっており素晴らしい山行であったが、やはりこのコースは新緑の中、薫風を受けながら歩くのが一番であると感じた。
素晴らしい企画をしていただいたEHさん、いつもながら工夫を凝らした食事を提供いただいたKMさん、山行を盛り上げていただいた皆さんありがとうございました。次の機会も宜しくお願いします。

しかし、EHさんは余程この場所が好きなんですね。翌週も行くのですから・・・

地蔵の頭のモルゲンロート

【感想】63期 OM

当初の予定では別用事で参加できなかったが、雨で順延になったおかげで追加参加させていただき感謝です。四国の本格登山は初めてで、昨年剣山から三嶺に行かれてよかったという話を聞いており、ずっと行きたいと思っていたが、今回実現することができた。また高知県に入るのは初めてのことだった。

車2台でうまく回っていただき効率よく帰ってこられた。登り中段ではちょうど紅葉が見事で、稜線ではすばらしい笹原の景観だった。瀬戸内海と太平洋の両側が見えたのも感動した。宿泊した避難小屋はきれいで水場も近く、みんなで運んだ薪を燃やした薪ストーブで暖が取れ癒された。食事も手の込んだ料理を作っていただき、吞兵衛達の酒宴も楽しく過ごし、酔っ払ってすぐ寝ることができた。

ちょうど良い日程を組んでいただき、思ったより寒かったが小屋で暖か取れ気持ちよく帰ることができた。次回も続いて石鎚山に向って行くという事の様でぜひまた参加させていただければと思う。

 

〈個人山行〉剱岳チンネ左稜線

2022年8月18日(木)夜~22日(月)

雨上がりのチンネ

チンネ左稜線のログ

【メンバー】54期NF、RH(他会)

【行程・1日目】19日晴れ 室堂から熊の岩 午前7時室堂~午前11時40分剱沢キャンプ場 午後1時20分長次郎沢出合い 4時半熊の岩 

【2日目】20日豪雨 偵察と停滞 午前4時40分 長次郎沢右俣~5時40分池の谷 6時20分三の窓 7時50分熊の岩 

【3日目】21日霧 午前4時40分 長次郎沢右俣~6時50分 チンネ取り付き~午後1時 チンネの頭~3時熊の岩~7時 剱沢キャンプ場

【4日目】22日晴れ 午前7時半剱沢キャンプ場 11時20分室堂

快晴の釼岳。逆さ剱が美しい

【記録】NF

1日目:室堂は快晴。立山の天然水を補給し、みくりが池や雷鳥沢の明るさに心が高鳴る。20㌔近くのザックはずっしりと肩にかかり、ゆっくりと歩む。剱沢キャンプ場に着くと、青空の下、迫力ある釼岳が迎えてくれた。富山県警が危険カ所などを記してくれているボードで情報収集する。今年は雪渓の崩壊が早いと聞き、準備の段階から通れるか不安だったが、なんとか大丈夫そうだ。

剱沢雪渓に到着し、アイゼンを付ける。中国製の軽量アルミアイゼン。アプローチシューズとの相性が悪く、着けるのに苦労する。同行者はミドルカットの登山靴でしっかり固定されていた。このルートは雪渓やザレ場が多く、アプローチシューズだと雪や砂利が入るため、ミドルカットのほうがいいかもしれない。

雪渓は真ん中も端も、崩壊が進むのが早いので歩いてはいけない。端から少し真ん中よりを選んで進む。アイゼンはずれるものの、雪にはよく効いている。長次郎雪渓はクラックが走っている箇所があり右岸を巻く。アルミアイゼンは岩場には強度不足で滑りやすい。冬用のアイゼンの感覚で岩場を歩くと痛むし、滑るので小まめな着脱をしたほうがよさそう。

長次郎雪渓の取り付き

急斜面の雪渓を延々登る。熊の岩は見えてから遠いと同行者は言っていたがまさにその通り。苦しい中歩き続け、到着するとほっとした。鹿島槍が正面に見える絶好のビバーク場。いつか行ってみたいと思っていた、遠い遠い場所。テントを張って同行者がソーセージを焼いてくれてお酒を飲みながら作戦会議するあしたは雨が降りそう。どうなることやら。

2日目:起きた時はまだ晴れていた。前日までの天気予報だと午後から崩れる予報だ。チンネ取り付きまで偵察を兼ねて行き、あわよくば登ってしまおうかという計画で出発する。長次郎谷右俣の崩壊がいっそうひどいと聞いていたので、事前に富山県警に問い合わせしていた。すると「八峰の基部の弱点をついてください。クライマーなら登れます」と言われ、ひよっこですが大丈夫でしょうか、とは聞き返せなかった。緊張しながら右俣にさしかかると、弱点をつくという意味がよく分かった。雪渓の端がとけて八ツ峰の基部の岩稜帯がむき出しになっていた。なるほどこれなら岩場に慣れていれば十分通れる。私はクライマーではないものの、通れてほっとした。池の谷ガリーはガレガレ、ザレザレで気を遣いつつ歩く。後部を歩く人は落石を落とす危険性があるため、先行の人と、ある程度の距離を取ったり、落石をしても避けられる動線を考えたりする必要がある。

八峰の基部を登る。弱点をつくってこういうことか

三ノ窓に着くとテントがあり、私たちの気配に気付いて顔をのぞかせてくれた。9時頃から雨が降るため、停滞するとのこと。ここは電波がはいりますよと言われ、雨雲レーダーを確認すると、午後に真っ赤な線状降水帯がくる予報。雨もまもなく降り出しそう。あわよくば登る、どころの状況ではないと、慌ててテントまで戻る。

池の谷ガリーを下る

同行者が、テントの周囲にしっかり水路を作ってくれた。予報通り9時すぎに雨が降り出す。同行者は戻って来た直後にビールを飲み、その後すやすやと眠り続けている。雨はだんだん強くなり、たたきつけるような勢い。電子書籍で「穂高を生きる」を読みながら私は不安を募らせたが、エスパースのテントがしっかり守ってくれた。大雨の時は、グラウンドシートを敷き、フライシートをできるだけぴんと張ってペグダウンし、水路を作ればしのげるということを実感した。大雨は午後8時すぎにようやくやんだ。とりあえず、明日雨は降らなさそう。無事にチンネには登れるのだろうか。

熊の岩でビバーク

3日目:起床すると、想像より天気がよく期待に胸が膨らむ。もしかして、絶景の中のクライミングとなるのか。準備を急ぎ、再び右俣へ。二度目となると、クライマー道(勝手に名付けた)も慣れたもの。三ノ窓に着くと青空の下、チンネが神々しくそびえていた。とうとう来た。三ノ窓からは雪渓のトラバースで取り付きへ。落ちたら終わりみたいなトラバースだったが、アルミアイゼンはしっかりきいてくれて怖くはない。取り付きで、クラインミングの準備をする。

と、その瞬間、同行者に異変が。なんと、クライミングシューズを片方ずつ違うものを持って来て、しかもどちらも左足。あきらめて戻るか、それとも私がリードしてフォローで登山靴で登ってもらおうか、そんなことできるんだろうか、と悩んでいた。すると、片方の靴がレースアップのシューズだったため、左足でも右足になんとか合わせて履ける、と同行者から喜びの声が。それで、チンネの核心部、「鼻」とよばれるピッチをリードするらしい。一瞬落ち込んで、すぐに切り替える前向きさと明るさ。クライミング向きの性格をされているのだろう。

同行者はわたしより登攀能力がかなり高いので、山行前から基本は同行者にリードしてもらおうと考えていた。(ハプニングはあったが、そんな靴でも自信がありそうだった)。1ピッチ目、岩がぬれていて、靴のハンデもあり、慎重に登っておられる。スタンスが少し細かく、雨で滑りやすいので、フォローでも緊張した。2ピッチ目も同行者、3ピッチ目は歩き。4ピッチ目にさしかかったところで、リードしませんかと背中を押される。この頃には、ガスが濃くなってきて、高度感がなかったが、リードはやはり怖い。でもやってみるととても楽しくテンションが上がる。そんな私を見て、同行者もわが意を得たりと笑い、「この先はつるべでいきましょう」と言ってくれた。

白い霧の中、クライミング

鼻のピッチが5級だが、ほかのピッチは3~4級なので、グレード的には難しくなく、確かに私でもリードできるレベル。ただ、やはり本番のリードの緊張感は大きく、いい刺激になった。濃い霧は音も吸収するのか、あたりは静けさに包まれ、私たちのコールの声だけが響く。世界に2人しかいないような、不思議な感覚に陥った。眺望が全くなくて景色を楽しむこともできなかったので休憩もせず、登り続けたら、あっという間にチンネの頭に。晴れていたら目立つのかもしれないが、濃い霧の中では地味すぎて、気付かず通り過ぎてしまいそうだった。

核心の鼻をリードする同行者

頭からコルまで歩いて降りて、懸垂下降を2ピッチ。2ピッチ目はガレ場なので石を落としてしまわないよう慎重に。池の谷ガリーまで降り、テント場に戻りながら、今日中に剱沢まで行くか相談する。同行者はビールが飲みたいといい、なんとか明るいうちに到着できそうな時間でもあるので、強行ではあるが剱沢まで戻ることに。急いでテントを片付けて、長次郎谷を下山する。昨日の大雨のせいで、雪渓の崩壊が進んでいる。行きより右岸を大きく巻くなどして慎重にルートを選び、剱沢雪渓へ。剱沢雪渓も、行きにはない大きなクラックが中央部分にできており、ルートを選びながら歩いた。雪渓は延々と続き、疲労感が増してくる。

長次郎谷を下る。行きより雪渓の崩壊が進んでいた

ようやく剱沢小屋についた時にはほっとした。小屋の売店は閉まっていたが、小屋前で休憩していたガイドの方がかけあってくれて、売店を開けてもらえた。ビールと剱沢記念の靴下を買う。キャンプ場までのんびりと歩き(のんびりとしか歩けない)、周囲にはすでに就寝している登山者も多いため、静かにテントを張る。長い一日の成功を祝って、静かに乾杯した。眺望はなかったものの、嵐を耐え、登り終えた充実感は大きかった。

4日目:起きると満点の星空。快晴の一日の始まりだった。行きと帰りだけ晴れ。なんとも複雑な気持ちではあるが、天気を恨んでも仕方がない。のんびりと朝ご飯を食べた後、絶景の釼岳を前に、この3日間を振り返りながら登攀具の整理をする。

快晴の釼岳を前に、下山の準備

快晴に後ろ髪を引かれながら下山。途中、剱御前小屋で同行者がテントを干している間、剱御前岳に登る。誰もいない山頂で、チンネがある辺りをゆっくりと眺める。今日登っている人は、きっと絶景だろうな。富山湾まできれいに見渡しながら、開放感に浸った。

みくりが池でソフトクリームを食べて室堂へ。長いようであっという間の、とても充実した4日間だった。

 

おまけ

間違ってどちらも左足のクライミングシューズを持って来た同行者の足

【主な登攀装備】パーティ:カム一式(3番まで) ヌンチャク4本 アルパインヌンチャク8本(長4短4)7.1㍉ダブルロープ2本 ビレイ器 

個人:中国製12本爪アルミアイゼン バイル

*カムは1番と2番しか使わず(それも補助的に使ったのみ。カムは一式いらないかもしれない)

*バイルも使わず、ストックのみ(ただバイルかピッケルは必携)

*アイゼンは中国製アルミでもなんとか行けるが、底の柔らかい靴ではとてもずれやすい。強度もないので固い岩場では脱いだ方が無難。(ただ、軽量化のために冬用を持って行く選択肢は私にはなかった)

*ローカットのアプローチシューズで行ったが、雪渓の雪や、ザレ場の砂が入って非常に歩きにくかった。行けなくはないが、ミドルカットのほうがよいと思う。

*軽量化をしたとしても20㌔近くを背負って長時間歩かなければならないので、クライミングよりも核心はアプローチだろう。

チンネ左稜線取り付きで、準備をする同行者

【感想】NF

「試練と憧れ」と言われる釼岳。真夏の大冒険は、試練と憧れ、そのものだった。

チンネ【Zinne】は、ドイツ語で、大きな岩壁をもつ尖峰、という意味らしい。昨年7月、北方稜線に行った時、遠く岩峰からクライミングする人たちのコールが聞こえた。当時、私は外岩にほとんど触れたことがなく、憧れを持って、見えぬクライマーの姿を想像していた。

ひょんなことから同行者と巡り会い、彼の地を訪れることができた。体力も不安、クライミング力はもっと不安な、私を選んでくれた勇気に感謝しかない。

経験不足の私は、雪渓やガレ場の通過はもちろん、クライミングや体力などなどそもそもの不安要素が多かった。さらに天候不順が発生した山行中は、どう行動するかシビアな見極めも必要だった。多くの困難を無事に切り抜けられたのはひとえに同行者のおかげというしかない。

何度も話し合い、一緒に判断を重ねて試練を乗り越えた。真っ白い霧の中でチンネを登りながら、本当はどんな景色なのだろうと憧れを募らせた。忘れられない山旅になった。