京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2838  槍ヶ岳北鎌尾根

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【日程】2007年8月2日(木)~4日(土)
【参加者】計2名
【天候】3日 雨のち曇り 夜強雨, 4日 雨 強風
【記録】
2日 20時 山科駅前, 24時 平湯駐車場
3日 4時50分 平湯駐車場, 5時30分 上高地BT
9時30分 槍沢ロッジ, 10時30分 大曲分岐, 11時20分 水俣乗越, 13時15分 間の沢出合(幕営地), 13時40分 北鎌沢出合偵察, 14時00分 幕営地着
4日 5時30分 幕営地発, 7時20分 水俣乗越, 10時05分 槍ヶ岳肩の小屋着, 10時30分 肩の小屋発, 13時05分 槍沢ロッジ, 14時20分 横尾, 15時15分 徳沢, 16時50分 上高地バスターミナル


【感想】
懸案の北鎌尾根を登るということで、この2ヶ月ばかり地図や記録を読み、イメージトレーニングをしてきたが、運悪く台風の襲来となった。
3日早朝には勢力の大きい台風4号は宮崎県にあり、槍ヶ岳周辺では小雨。風速も5m程度と穏やかだった。上高地から槍沢ロッジまでの歩きも傘で、カッパも下だけ。水俣乗越についたのが11時20分。台風は日本海に出て、一時的に雲も薄くなっていた。南風が10m程度。薄日が指す瞬間もあり、「素直に東鎌尾根へエスケープをするか、疑似晴天ではあるが天候がおだやかな内に、天上沢を下降して北鎌沢出合の取り付きを確認し、あわよくば予想外の天候回復に期待するか」を考える。退路をたたれないことを前提に天上沢のふみ跡をたどることにする。
天上沢への下降路はザレて悪いが、踏み跡明瞭で、そうひどくも無い。途中、沢の屈曲や段差もなく緩やかに下る。途中の雪渓は100メートル程度。水は涸れている。涸れ沢が左から一つ入ったあと、間の沢が左から合流する地点(標高1900m位)で初めて水流が出るが、幅5m深さ30cm程度。石飛で渡渉できる。夜の台風通過で増水すれば渡渉できなくなることが予想されるので、退却優先で合流点手前の右岸(左岸にはそこまでにも一箇所涸れ沢が入っていた。)の高台に幕営することにして、空身で偵察にでる。20分の下降で北鎌沢出合を確認し戻った。他に4人パーティーが同じルートを下って来た。明日北鎌を登るとのこと。
テントの入り口は水流の見える方に向けて設営。樹林帯の中が望ましいがブッシュで張れる場所がないので、河原の中の一番高い場所を探す。がけ崩れもいやなので、岸のブッシュの濃い場所を選んだ。
3日の早い夕食は穏やかに済み、N野さん持参の高級スコッチでしばしほっこりする。天上沢から見る槍の眺めは格別で、嵐の前の静けさそのものだった。
19時のラジオの予報では台風は金沢の北西240キロにあり、北陸地方は一晩で100から150ミリの降水とのこと。予報通り、一眠りしたころ雨音で目を覚ます。21時頃から強雨。その後1時間おきにテントから水流を観察した。間の沢からの水流は増水し、透明から真っ白に変わるが濁流ではない。
テントを張った沢にも0時頃から幅3mほどの透明な水流が出る。幕営地との高低さは2メートルくらい。降り始めから5時間、ほぼ100ミリ程度の降水量であろうか。(以前鳳凰三山で降られた350ミリの降水の比ではない。)
源頭から下降してくる途中観察した範囲では土砂崩れや倒木による堰堤状の場所は無く、大きな屈曲や段差もなく、雨を集める範囲も狭いことを確認しているので、鉄砲水の心配はないと考えたが、寝込みを襲われると抵抗できないので、2時にN野さんを起こす。カッパを着て靴を履き、あらかたの装備をザックにパッキングしてもらい、異常があればすぐにテントを出て樹林帯に逃げ込むようお願いする。
テント内に座ってお茶を入れて一服。雨脚が鈍ったのでそのまま明るくなるまで少し横になり仮眠をとった。
 朝食時は小雨。天気予報は一日雨だが、沢の増水も最悪の予想よりはかなり少なく、またまた誘い込むような天候である。一瞬北鎌の誘いに揺れたが天気予報を信じて朝5時、敗退を決定した。
 1900m地点から来た道を登り返し、水俣乗越へ。そのまま東鎌尾根を槍ヶ岳山荘まで登る。強風とガスで敗退して良かったと納得する。風速20mくらい(体重をかけて前傾しないと体を持っていかれる程度)の突風も吹くので、槍の穂先も次の機会として下山する。明日は晴れるが、もう行くところもないので一気に上高地まで下ることにした。(結果的に槍ヶ岳日帰りのような行程になってしまった。)下山中も雨は相変わらず強く、またしても敗退してよかったと痛感する。行っていれば風雨の中、行動不能ビバーク(下山遅れ?)を余儀なくされたかもしれない。
 結果的には単なる敗退だが、自分としてはこれも経験ということで満足している。 一日早い帰京のために日曜は久々に奥さん孝行で映画と食事に出かけた。今後の山行のための投資も大切である。
N野さん、雨の中いろいろありがとうございました。また来年のリベンジの際はご一緒しましょう。


【感想】K.N.
 懸案の北鎌だったが,台風で次回への宿題持ち越しとなった。が,4日の東鎌尾根,槍の肩の小屋,槍沢下降時の悪天候からは,撤退正解だっただろう。
 今回,北鎌沢出合近くの河原にテントを張ったが,雨と水量の増加の関係等実際に見ないとわからない点について実感できたのはよかった。M山Lは,以前に台風にやられた経験もあってか,テントの場所を天上沢の手前にしたり,水量と天気予報について,こまめに確認してもらった。この点も大変参考になった。3日の天上沢下降時の疑似晴天ともいえる天候にだまされそうになったが,最近の天気予報はほんとにあたるなあと思った。  今回は,台風がらみの天気予想と撤退判断,雨と水量の増加の具合,体力トレーニングが内容の山行になったが,楽しかった。帰りには右足のアキレス腱が痛くなったがこれも何とか最後まで歩けてよかった。
次回には是非北鎌尾根を行きたい。
次回も,M山L,ご一緒しましょう。