京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2894 槍ヶ岳北鎌尾根

 

     
【日程】2008年8月7日(金夜)~8月10日(日)
【参加者】2名
【天候】8日快晴, 9日晴れ後雷雨, 10日晴れ
【記録】7日(木)20時30分 JR山科駅
8日(金) 0時30分平湯駐車場着
3時30起床, 5時30分上高地BT, 11時15分水股乗越, 13時北鎌沢出合 幕営
9日(土) 3時起床, 3時50分出発, 6時15分北鎌のコル, 9時00分独立標高点, 11時15分北鎌平, 13時00分槍が岳山頂, 13時20分槍ヶ岳テント場着
10日(日) 3時30分起床, 4時30分出発, 8時55分新穂高温泉バス停着, 9時40分平湯バスターミナル 入浴 昼食, 15時帰京


【リーダー所感】43期 H.M.
昨年、取り付きまで偵察したものの、台風直撃で断念したコースだが、今年のアプローチは対照的に快晴無風のカンカン照り。寝不足の体に暑さがこたえた。
初日は寝不足もあり、稜線に出ると水も取れないので、無理せず北鎌沢出合いで幕営。沢には我々を含めて2組6名しかおらず、どこよりも静かで落ち着いたテント場で快適な昼寝。北鎌沢でよい水がたっぷり汲めた。N野さん持参の高級シングルモルトでいっぱいやって就寝、翌日の行程に備える。
2日目はいよいよ、メインの北鎌尾根、天気予報では午後天候が不安定ということで、早めに抜けようと、満天の星空のもとヘッドランプで出発。北鎌沢下部は快適だが、詰めの草つきは長いザレでいやらしい。バイルを持ってきて正解だった。北鎌沢のコルからは展望も良く、裏銀座の山並みを眺めながら、天狗の腰掛を越えて、独標取り付きへ。何通りかある直登ルートを少しのぞいてみたが、Ⅲ級からⅣ級程度のピッチが出てきそう。ロープを出すと序盤に時間がかかりすぎるので、おとなしくトラバースルートへ。N野さんのルートファインディングが的確でピンポイントで独標に飛び出した。
標高2899mの独立標高点から見る槍ヶ岳は絶景。北アルプス北部の展望台としても最高だった。この時点ですでに常念岳方向に積乱雲が発生。西へ雲が流れている。疲れてきたが、雲と競争で先を急ぐ。
独立標高点から先ではP12手前の白い地層の岩がもろく、登下降のザレが悪いが、N野さんが果敢に偵察して突破した。
北鎌平手前のP14・P15の巻きにかかったあたりで水晶岳方向で雷鳴が響き始め、だんだん近づいてくる。北鎌平を過ぎたところでとうとう大粒の雨も降り始めた。
雨粒で不安定なガレが自然に落石を始め、濡れた岩がすべっていやらしい。雷鳴はさらに近づき、轟音の中、雨にはヒョウも混ざってヘルメットをたたいている。カッパを着てしばし退避するが、岩に触れると側撃の危険があるので、岩から少し離れて地面に触れないように濡れて立っていると、だんだん体も冷えてくる。前回の台風に続き、今回もやはりあっさりとは登らしてもらえないようだ。
雲が少し薄れ、雨が小止みになったところでようやく大槍にとりつく。せっかく担いできたロープとギアが勿体ないが、急いでいるので、フリーでさっさっと登り、あっけなく山頂に到着。
まだ遠雷の聞こえる中、無人の山頂で写真を一枚だけとって、滞在わずか1分ではしごを降りた。
テント場で夕食後また激しい雷が続く。途中で抜いた2人を加え、後ろにいた6人が、無事に抜けられることを祈りつつ就寝。
3日目はまた快晴。ばら色に輝く東の空を眺めながらテントをたたみ、夜明けとともに下山する。N野さんのペースで歩いたら、4時間30分で新穂高についてしまった。平湯に移動し、温泉に入り、早めの帰京となった。
北鎌尾根は有名すぎて情報も多く、イメージが先行しすぎていた感があるが、今回実際に歩いてみて実像がよくわかった。一部いやらしいザレはあるが、多様なルートファインディングが楽しめ、展望も最高で、良いルートだと思う。
ただ、途中エスケープができないので、体力と天候が最大のポイントだろう。
今回、パートナーのN野さんにはルートファインディングに加え、終始速めのペースで引っ張ってもらったので、ある程度のタイム(9時間ちょっと)で抜けられた。心から感謝の意を表したい。


【感想】46期 K.N.
「去年敗退した北鎌のリベンジを果たせた。北鎌沢出合までは去年の偵察もあり,すいすい。天気がよくて携帯の電波も入らず,昼寝が最高に気持ちよかった。
翌日の北鎌沢は「最後は右に」とのネット情報に引きずられて,間違った踏み跡へ突っ込みかけたがM山Lの助言で早期に引き返せたのは幸いだった。北鎌沢の最後の草付はちょっと危ないのでバイルが有効だった。北鎌尾根についてはあまり書きすぎると後から行くのがつまらないと思うが,ルートファインディング力と体力が試される尾根だ。独標はまくのもあるらしいが,我々は独標頂上に立った。頂上の岩の上にはなぜか冬靴が1つだけあって不気味だった。
あとは基本的には尾根つたいに行けばよいと思うが,後半は疲れてくるのでいくつかのピークはまいた。が,まいた方が疲れるところもあったのではないかと思う。とにかくザレとガレが悪かった。後ろから丸山Lがうまく落石をかわしてくれていた。
槍の基部で雨とともに雷が鳴り出し,雹まで降ってきた。雨はともかく雷は恐かった。しばらく待機していたが,寒さに耐えきれず,小雨交じりを登り始めた。槍自体は「あれ,もう終わり?」ってなくらいあっけなく終わった。難しいルートもあるのだろうが,右の方のやさしいルートから行けばなんということはなかった。
今回もM山Lのルートファインディング力に多々助けられたと思う。ありがとうございました。」