大江山の植生はやはり思った通りの豊富さ。蛇紋岩という特殊な土壌のせいかこころなしかみな丈が低いし苦しそうに育っている。
【日程】2008年9月27日(土)~28日(日)
【参加者】会員9名、非会員3名
【天候】9/27:晴れ 9/28:曇り一時小雨
【記録】50期 J.O.
9/27(土) JR京都駅7:48 -(JR山陰本線)-9:58福知山10:20-(北近畿タンゴ鉄道)-10:51大江山口内宮-(タクシー)-11:20登山口11:23-12:45大江山頂(832.5m)13:25-14:15鳩ヶ峰(746m)-14:55バイオトイレ-15:30鍋塚山頂(763m)15:40-17:30大江山の家(バンガロー泊)
9/28(日) 山の家7:45-(バス)-7:55大江山口内宮8:29-(北近畿タンゴ鉄道)-8:50宮津9:17-(タクシー)-日置9:38-(バス)-9:58上世屋10:05-11:15大フケ湿原11:27-12:06昼食12:33-12:54ブナ林自然観察道・散策13:40-14:06上世屋14:43-(バス)-15:03日置-(バス)-15:45天橋立駅(知恵の湯温泉)-天橋立駅17:57-(丹後ディスカバリー)-20:06京都
京都からのJR山陰本線は大阪からの福知山線と福知山駅で出合う。お蔭で朝寝坊の記録係も追いつけた。(すみません!) 全員揃って一両編成のワンマン電車に乗り込む。大江山口内宮駅で予約のタクシーに分乗し、本日の宿・大江山の家へ向かう。道の両脇でひょうきんな赤鬼・青鬼達が出迎えてくれる。ここは鬼伝説「酒呑童子の里」だ。管理センターにザックをデポし、再びタクシーで登山口へ。鬼嶽稲荷神社で記念撮影をして出発だ。近畿自然歩道・鬼の山コース。約1kmのなだらかな道だ。柴栗のイガがバラバラと落ちている。実はとても小さいが趣のある味だとか。
今日はさわやかな秋晴れだが、数日前はたっぷり降ったらしい。きのこがたくさん顔を出している。チチタケ・足細ノボリリュウタケ・赤ビョウタケ・キツネタケ・毒ツルタケ・紫アブラシメジモドキ・カラカサタケ・ハラタケ・フウセンタケ・ベニタケ・テングタケ・マメザヤタケ・モミジウロコタケ・花ウロコタケ・ツヤウチワダケ・ニガクリタケ・花オチバタケ・ヒメ紅天狗タケ・カブラ天狗タケ・白オニタケ・オリーブサカヅキタケ・緑青クサレキン。次々見つけては解説するN田SL。またの名を「きのこ博士」だ。
花はアキチョウジ・ヤマジノホトトギス・ツルリンドウ。ツルアリドオシの赤い実には角が2つ並んでいる。双子の花の跡だ。樹木はトチノキ・シラキ・リョウブ。そして、ブナの木の上方にモシャモシャの・・・絶滅危惧種のヤドリギを確認した。
花を愛で、きのこを愛で、のんびりと歩いて大江山頂に到着。広々として見晴らしが良い。景色を楽しみながらお弁当を食べる。鳩ヶ峰を目指して尾根伝いに下る。ここも栗街道。
マルバマンサクに体長8cmほど青虫を発見。透明感のある黄緑色。スズメガの幼虫か。ツリガネニンジン・リンドウ・スミレ・シュロソウ・オミナエシ・ヤマハッカ。オオイワカガミの葉は大人の手の平の大きさだ。サルトリイバラの赤い実。チゴユリの紺色の実。ナナカマドの紅葉が始まっている。鳩ヶ峰に到着。アキギリ。オトギリソウ。この辺りから蛇紋岩の道に変わり、栗は無くなる。大江山の蛇紋岩は深緑色だ。指で引っかくとポロリとはがれる。鍋塚山頂に到着。ここからはハイキングコースを離れ、T野さんのルートファインディングで下る。赤松・バアソブ・イワショウブ・ヒヨドリバナ・アケボノソウ。実ザンショウが良い香り。酒呑童子の里のグランドが見えて来た。暗紫色のミツバアケビの実がはじけている。
2日目の朝。曇り空だ。今日は、知る人ぞ知る「大フケ湿原」へ向かう。この名前。地図にも標識にも現れない。地元の方もご存知ない様子。う~む。素晴らしい自然を守る為、厳重に秘されているに違いない。膨らむ期待を胸に上世屋へ。
アスファルトの道を歩く。萱葺きの民家。棚田。段々に高く干された藁(わら)。黄金色の粟(あわ)の穂が重そうに垂れている。濃紅色のツリフネソウはあちこちで大群落を作っている。アザミも群生。ゲンノショウコ・カワラナデシコ・サクラタデ・ミゾソバ・ヤマジノホトトギス。ツノハシバミの実は長い角付きだ。「世屋高原」のバス停を左折。ヨメナ・アカツメクサ・アカマンマ。白花のヤマアジサイ・ノリウツギ。地図上の湿原手前の池が見当たらない。湿原は林道右(東)側に広がっているはずだが、それらしい場所は? 林へ入る。大きな蜘蛛が巣を張っている。足元の笹を払いつつ進むこと数分。先頭のT野さんから「Uターン」の声。道は違う方向へふっているとのこと。湿原の調査は中止。だが、植生は豊富だ。アケボノソウ・カラマツソウ・ヤマハッカ・シモバシラ。ヤマボウシの赤い実は天に向かっている。そろそろ腹時計が鳴り始める頃。田んぼの隣で昼ご飯だ。リリリリリ・・・虫の声が響いている。
世屋高原口へ戻る。木に巻きつく山芋の蔓にむかごが豊作だ。スズメバチの巣。おしゃべりを止めてそっと通り過ぎる。クロバナヒキオコシ・フウロソウ・ヤマボクチ・ミズヒキ。ブナ林自然観察道へと向かうが、標識から入口までが1.3kmもある。途中までの散策とし上世屋のバス停へと戻る。ここで意外なものを発見。稲穂に小さな枯れ草のかたまり。準絶滅危惧種のカヤネズミの巣だ。草の上(空中)に巣を作るネズミは日本ではカヤネズミだけらしい。日本で一番小さなネズミだ。カヤ原でなく水田で営巣とは。
バス停横にNPO法人里山ネットワーク上世屋の施設がある。トイレを拝借し、大フケ湿原について伺う。5年ほど前までは豊かな湿原だったが年々乾燥が進んでいる。原因は温暖化や道路による分断等が考えられるが、打つ手が無いとのことだった。
京都府レッドリストでは大フケ湿原は「要注意」(消滅・消滅危惧・要注意・要継続保護の4段階)に入っている。道路の建設や民家からの排水等流入による環境悪化、ヨシ・ススキ・ササ類の侵入による生態系への影響が心配されるとある。が、担当者の話では、最新の調査が平成11年以前であり、現状把握は出来ておらず、対策もとっていないとのことだ。絶滅危惧と言えば生物を思い浮かべるが、自然環境もまた消滅の危機にあることを実感。そして、深まる秋の彩りと実りを感じたRDBの会だった。
【例会見学】 M.K.
今回の山行に参加させていただきありがとうございました。久しぶりに大人数での山行でした。大フケ湿原はちょっとがっかりでしたが、山村の風景を楽しみながらののんびりした時間もたまには良いものだと思いました。来週の連休は、紅葉山行に出かける予定です。
【感想】 M.K.
初日の大江山登山、心配した天気も上々で歩きはじめから初秋の山のキノコの多様な種類に感嘆です。食べられるもの毒のあるもの、色や形状の多様な種類にびっくりです。N田さんの博識、丁寧な説明にいちいち驚いてました。山道をずっと下を向いたままのキノコ探し、栗拾い、木の実・草の実そしてリンドウ・スミレ・ギンリョウソウ、シュロソウ、ハギ、ツリガネニンジン等々花との出会い、まるで子供に戻ったようなはしゃぎぶりでした。千丈ヶ獄頂上からの展望は、ぐるり見渡す限り何層にも緑と青が重なった連峰と日本海.高く蒼い空、身体の中まで新鮮な空気が染み渡りました。幸せな時間でした。
2日目は、大フケ湿原の自然観察を楽しみに出発。移動の途中で大フケ湿原の事を、観光所の人も、タクシーの運転手さんも、、地元の人もよく知らないらしい・・その事に気がついてから???で歩き始めました。広く舗装された真っ直ぐな道路、整理された山道、そして多くの山笹の葉の間に咲く花、湿原の姿が現れません。上世屋集落・収穫の後の山里の佇まいは懐かしく、美しさに見とれました。でも何か変だ・と・・.その答えは最後の帰りのバス停に辿り着いて解けました。
集会所のトイレをお借りしたとき、そこの奥さんとK西さんとの会話の中に謎解きがありました。
○立派な道路が出来て、交通の便は良くなったがこの付近の様子が変わったこと.そして水の流れが変わったこと。
◯ここ数年雨が降らなくなったこと。
◯過疎が進んでいること。
等々の話の中から、地球温暖化と人為的な開発で、湿原の環境が激変し、生態系が消えかかっているのだと.山道を歩いて感じた違和感が納得出来ました。
バス停から緑豊かな山並みを見上げ複雑な気持ちでした。RDB植生調査の例会で山里の現実を見られたことは、大きな成果だったと思います。
それから、ユニークで個性豊かな仲間との時間が、何よりも元気の素でした。皆さんの笑顔は、最高です。有り難うございました.
【感想】 S.I.
[秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種草の花]
[萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなえし また藤袴 朝顔の花]
(奈良時代には朝顔の花は一般的でなく桔梗の花と言われている)
今回の[大江山]・世屋高原の幻の[大フケ湿原]では多くの秋の花の野の花に出会い、秋の七草の内の五種は目にしたが、絶滅危惧になっている藤袴と桔梗にはやはりお目にかかれなかった。桔梗には少し遅い季節ではあるけれど、野ではもう見ることはないのであろうか、残念に思う。
大江山の峰々からは青空の下、遠くに日本海を望み、蛇紋岩の特殊な土壌の為か丈の低いススキが風にそよぎ、足元にひっそり咲く小さなリンドウやセンブリの花が、長閑な秋のハイキングを満喫させてくれた。
地元の人でさえ知る人が少ない[大フケ湿原]。探し求めて歩き着いた湿原は道路が以前の湿原を分断し、灌木、笹が生い茂る原野となってしまっていた。一つの開発が自然を壊す典型かもしれない。小雨の中を歩く道筋にはジイソブ、ツリフネソウ、オトコエシ、可憐なナデシコ、ツリガネニンジン、アケボノソウが多く観られ、時にはアケビ、むかご、柴栗等の秋の味覚も。今回生まれて初めてアケビを口にした人もあった。のどかな山里を大きなリックを背負った集団(12名)が歩く姿に、地元のお年寄りにはどのように見えたであろうか。私たちは結構、楽しんでいたのだが。
【感想】 T.S.
今例会に参加した、一番の目的は、思い出のある、大江山に登る事です。
新卒で福知山勤務になり、初めての一人暮らしをしていた、2年間に大江山は、4回登っています。3回目に天座と、言う所から登り同じ道を下ろうとして、迷ってしまい、ビバークしました。6月でしたが、半袖しか持たず食料は菓子パン一個しかなく凄く不安な夜を過ごしました。次の日会社には迷惑を掛けてしまい、大変な思いをしたのが、昨日のことのようです。翌年3月にはスキーを担ぎ上げ残雪の頂上で、気持ちよく居眠りをした、思い出もあります。
登山道は整備されており、立派な看板・標識や鬼のモニュメントがあり、28年前とは隔世の感があります。
当時千丈ケ嶽しか登っておらず、鳩が峰、鍋塚となだらかな熊笹の峰を縦走できたのと頂上から丹後半島の山越しに広がる日本海や青葉山が見られ満足な一日でした。大フケ湿原は、期待はずれだったけれど、ツリフネソウの群落やツリガネニンジンの可憐な花も見られ、温泉と日本海の幸を堪能できいい一日でした。
【感想】 36期 Y.T.
事前に大フケ湿原をインターネットで調べたが、良いデータは得られなかった。ところが例会後に改めて調べたら色んなデータが見つかった。場所を明記した京都府のデータもあった。京都府レッドデータブックによると【分類】気候地形【細分】高層湿原【京都府のカテゴリー】要注意(京都府内の学術上高い価値を有する地形のうち、現時点で軽度の破壊を受けており、 今後も破壊が続けば消滅が危惧される地形)となっている。
地すべりの影響で出来た湿原とされているが、良く分からなかった。樹木やササが侵入してきていて、湿原が失われているようだ。道路や生活排水などの影響も考えられるが、積雪の減少もあるのだろう。湿原の北側を途中まで歩いた。この道は湿原コースとして整備されていたようだが、今はあまり歩かれていない。
上世屋はのどかな山村だった。はさ掛けの稲を見るのは久しぶりだ。私の子どもの頃のは6段位だったが、ここのは9段だった。この地域も人口の減少に悩んでいて、今は17世帯28人、内小学生1人だそうだ。色んな対策が採られているのだろうが、過疎対策は難しいと思う。植生調査と関係ない感想になりました。
【大江山、大フケ湿原感想】 H.K.
鬼伝説で有名な大江山。そんなそぶりはどこにも。穏やかな、たおやかな山だ。山頂からは日本海がはるかに見えた。若狭湾まで見ることができ感激。歩き始めからキノコ、キノコ、キノコ。一度の山行きでこんなにたくさんキノコを見たのは初めてのことだ。
N田さんの解説付きで食べれないキノコが多いことを教えてもらいこれが食べられるキノコだったらと残念。
大フケ湿原は地元の人に聞いてもわからない、知らない????????。
地図を頼りに舗装された道路を進む。やっと地元のふきとりをしていたおばあちゃんがこのまままっすぐいったらええよと言ってくださりホットする。ところが????????。壊れそうな傾いた案内板が一つ。湿原らしきものは無し。踏み跡を探し舗装道路から外れ山にはいっていったが湿原らしきものはない。残念。上世屋のバス停まで戻る。トイレを借りたコミニテセンターの職員の方から話を聞くことができた。
何が原因かわからない。湿原の真ん中に道路ができた。温暖化の影響も。湿原の場所 的なことも(峠の上のようなところ)。
大フケ湿原の消滅。大切な場所がいろいろな条件が重なり消えていきました。これは 人間様のしわざでは。
【大江山・大フケ湿原行ハプニング】3期 T.I.
1. 集合場所を間違ったのか、円町から福知山までの切符で京都まで戻ると、円町から京都までの料金を請求されるのではと心配があったのか定かではないが、亀岡で待っていた人がいます。確かなことは分かりませんが、太秦から福知山の切符で京都まで戻り乗車した人がいます。
2. 河内長野の彼女は6:30起床のため、京都駅の集合に間に合いそうに無く、欠席かとあきらめかけたが、大阪から福知山へ行けば間に合うため、福知山にて無事集合。
3. 京都駅では最後尾の車両に乗車、亀岡から乗車する人の座席も確保し、全員座れてホッとし列車は発車。それも束の間、「前2両が福知山行、後の四両は園部止まりです」との車内放送があり、エッ?そんなの発車前のホームで言ってよ。今さら遅い、と怒り心頭の人もあり、園部駅で車掌に苦言を一言言っておいたとのことでした。
4. 第3セクターのタンゴ鉄道。車掌は、こんな大勢の乗客は珍しいと興奮気味で「今日の日当分の収入が出来た」と大喜び、車内で切符を切らなければならないと車掌室のカバンにいれたままの券売器?を取り出す。いつもは通学列車のため、切符を切ることはないのでしょう。始発駅から乗車して整理券ももっているのに切符の必要があるのだろうか。でも車掌は嬉しそうに切符を切り始める。が、切符の端に赤い線が出てくる、用紙が少なくなってきた信号である。一度にこんなにたくさん切る事はないのであろう、心配そうである。
5. 大江山内宮からはタクシー3台で鬼嶽稲荷神社まで行ったのだが、1台だけ料金が500円程高い事が分かったが、タクシーが戻って行ってしまってからで、原因不明、後の祭りである。
6. 山の家からの定期バスは小さなマイクロバスで補助席を使っても座れない人がいる。運転手は途中、乗降客は無いので大丈夫と言います。ところが、途中で1人乗客があり、座席を空けなければならない。すし詰めである。
7. 大江山内宮駅で30分ほどの待ち時間の間、宮津方面行の快速列車が入ってきて止まる。大勢の乗客がホームにいるので親切に乗せてくれるのかと思い、期待したがドアは開かず車掌室を覗き込むと「残念ですが、行き違い列車の待ち合わせのため乗車はできません」と車掌が出てきました。昨日は今日の日当分が出たとニコニコだったのに、空気を運ばず人を運べば多少でも収入になるのに商売気の無い第3セクターやー。
8. 宮津―日置―上世屋までバスを乗り継ぎの予定でしたが、宮津で予定のバスは登校日のみで休校日は運休(今日は日曜日)次のバスは9:27、乗り換えの日置発は9:37、宮津―日置間はタクシーでも20分以上はかかる。にも係わらず大きな看板の時刻表には9:27(上世屋に連絡)とある。これはおかしいと思い、観光案内に行き確認する。案内の人も9:27発のバスは日置には10:03着であり、9:37発には乗車できませんと言われました。看板には連絡と書かれていると詰め寄ると外の看板を見に来てから調べますと言って事務所へ。
日置発9:37のバスは無いなどと要領を得ない。調査に時間をかけていられない、早く決めないとタクシーでも間に合わなくなってなりそうで、タクシーの料金を聞くと4000円程度と言う。バスの料金は一人710円で一人300円程度の差であれば仕方ないのでタクシーにした。(実際のタクシー料金は4860円)
タクシーも無線で調査してくれましたが、9:37のバスは無いのではないかと言っていましたが、バスを手配したような話しになり、とりあえず日置まで。日置でタクシーを降りるとバスが来ました。観光案内所の人が時刻表のことで責任を感じ、特別にバスの手配をして下さった様に思います。
ありがとうございます。
ハプニング続きの大江山山行でした。
【感想】40期 K.N. 消えた大フケ湿原
観察会二日目。バス、鉄道、タクシー、そして観光協会にむりやり出してもらったバスを乗り継ぎ、やっと辿り着いた上世屋地区大フケ湿原…何で???あらへんやん!!背丈ほどもある樹木やササが一面にはびこり、周囲より少し低くなった地形が、ここがかつて湿原であったことを僅かに物語っている…そんな姿に変貌していたのでした。ああ…無情と言うも悲しい限り。
でも、上世屋地区に残る古い民家や田園風景を眺めながら歩く道端には、白いツリフネソウやピンクのカワラナデシコが可愛らしく咲いており、十分私たちの目を楽しませてくれました。
大江山もきのこの種類が豊富で、近年には珍しく、大型のきのこがたくさん出ていました。ここを拠点に、冬虫夏草の観察を続けている菌類の研究者がいるくらいです。春のブナの芽吹きの頃にもう一度訪れてみたいです。
【感想】44期 N.Y.
第3回RDBの会・植生調査が「尾瀬」であったため、私自身は期待はしていても、今回の調査はずいぶん前回と差がでるだろうな!と思って始まった。が、大江山の植生はやはり思った通りの豊富さ。蛇紋岩という特殊な土壌のせいかこころなしかみな丈が低いし苦しそうに育っている。が、キノコ類だけは元気だ。N田SLはあちらからも、こちらからも次々と出現するキノコの名前を聞かれて(久しぶりの)大忙しだ!みなさんのリクエストにお応えして、来春の植生調査が楽しみだ!(今度は本館に泊まって、時間的余裕を増やして調査域を広げたい。)
さて、問題の「大フケ湿原」。実は、専門家の調査による近畿地方のレッドデータの概要書が存在する。ただし、10年程前のデータだ。今回はそのデータに基づいて企画した。抱いていた数パーセントの不安が、現地で「えっ、それどこや?」という地元の人達の受け答えで99%にまで膨張!そして、現場を探し歩いて、やっと朽ちかけた「注意書きの湿原の看板」を見つけて完全に打ちのめされた!それは、こうしてバス乗り継ぎ騒動を乗り越えてやっとこさの思いでたどり着いた私たちだからこそ抱かざるを得なかった「ショック」だったと思う。
生活の便利さと保全すべき環境の調和の問題や特に絶滅危惧種の保護や保存の問題は、予期する以上のスピードで、私たちの生活の中に潜在的にある保存意識を遙かにしのぐ勢いでその決着を迫ってくる。しかもそれらは、その問題解決を考え、その知恵を出すいとまさえないほどに速い。
10年前に専門家が調査し、ここを保護対象にしなければ危ないと言っていたのにその10年後には完全に?消滅だ。古来からあるものを大切に保護し、保存していくという姿勢は生態学などという難しいことよりも、長い間かかって生きてきたものを我々の文明の作用だけで殺していっていいのだろうか?何とか調和して互いに生きていくことはできないだろうか?その湿原の「なれのはて」を観てその思いを強くした。
時も時、私たちがこの調査をした後で、下記のような講演会や観察会がおこなわれるそうで、そういう意味では植生調査のタイミングは外してはいなかったのでは。この講演会・言質観察会の情報を提供してくれた、岳連自然保護委員のN島さんにお礼申し上げます。また、大フケ湿原観察当日、同行するとのお申し出をいただいた同自然保護委員のM本さんにもお礼申し上げます。お二人にはこのショックは共有して頂かなくて良かった!と今思っています。
それと、例の宮津駅でのバスの時刻表のハプニング。うちのうるさ方を怒らせるとどんなに怖いかわかったか!!と思いながら、大先輩の活躍で事がうまく運んでいった連携プレーは見事。感謝です。うちのメンバー、怒らしたら怖いけど懐も深いわ!!
それはそれとしての、ふかーい話し。都会から地方の街で時刻表でさえも都会並みの正確さを求める私たちのせっかちさこそが今回の一番の主役だったかもしれないと帰ってからじわーっと感じてしまった。というのは、そのせっかちさこそが湿原を消滅させた一大遠因であったかもと思ったから。反省しきり。が、私たちの湿原を求めての旅も結局は自分たちに戻ってくるのだという思いを共有できたのもすばらしい仲間の貴重な気づきだったと言えないだろうか。