京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

雨乞岳・日向山《山紀行658》

両白山地の北部への縦走を予定していたが北陸地方の天候が思わしくなく前々日に急遽変更した。山梨県は安定した好天が見込め南アルプス北端の雨乞岳と日向山を目的地とした。そして先月の山岳会例会で立寄った温泉でGETした6段変速の折畳自転車のデビュー山行でもあった。

甲斐駒ヶ岳(鞍掛山展望台より)

[個人] 雨乞岳・日向山《山紀行658》

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両白山地の北部への縦走を予定していたが北陸地方の天候が思わしくなく前々日に急遽変更した。山梨県は安定した好天が見込め南アルプス北端の雨乞岳と日向山を目的地とした。そして先月の山岳会例会で立寄った温泉でGETした6段変速の折畳自転車のデビュー山行でもあった。

【日程】2008年11月1日(土)-3日(月)

【参加者】48期 H.Y.

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【1日目】雨乞山 H20.11.1 晴れ

【行程】京都3:00=京都南IC=(名神・中央)=小淵沢IC=ヴィレッジ白州7:26-32=石尊神社7:48-57~石尊神社三角点8:19-22~ホクギノ平9:44-55~黒沢ノ頭10:30-32~雨乞岳11:29-55~笹ノ平12:10-12~ヴィレッジ白州13:13-22~(自転車)~石尊神社13:44-54=つたの湯14:07-17:05=▲矢立岩17:50

【登山データ】歩行 12.8㎞ 7時間51分 輪行7.2㎞ 22分 延登高 1,492m延下降 1,107m 4座登頂

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深夜の名神高速を走り滋賀県に入ると雨が降り出し一時激しくなった。恵那山トンネルを抜け長野県に入る頃にはすっかり止んだ。小淵沢ICから今日下山予定地のヴィレッジ白州までは17キロほど。雨乞尾白川林道を走り、登山道の入口の木に自転車をロックする。登山口は石尊神社で7.2キロ下ったところだ。机上計画どおりの時間に到着でき早速登山準備。他に車はなく静かな登山となりそうだ。

神社の石段の少し南に登山口(標高765m)がある。深く抉れた登山道で相当昔から歩かれているようだ。急斜面だが大きくジグザグに登っているので勾配はかなり緩和されている。適当に短絡して登っていく。まずは神社裏の三角点ピークに立寄る。登山道を外れると踏み跡も怪しくヤブが濃い。4等三角点で点名は「石尊神社」そのままだ。少しだけ展望があり鳳凰三山と日向山の尾根が見える。

三角点から稜線通しに進むと来るときより踏み後はしっかりしていて鞍部で登山道に合流する。西に続く尾根を3.2キロ、樹林帯の中歩きひたすら歩きやっと平らなところに達すると「←三角点」の標識がある。50mほど踏み跡を辿ると地上から5センチほど頭を出した3等三角点「鳳來」がある。標識はないがここがホクギノ平(1,600m)の最高所だ。この辺りは落葉針葉樹であるカラマツが多く山全体が黄色く色づいている。

1,690mピークを越え黒沢ノ頭(1,797m)に近づくと登山道は南側を巻きだす。ササ原に付いた微かな踏み跡を辿りピークを踏む。山頂を示すものは何もない。まばらな樹林越しに雨乞岳の姿が僅かに望まれる。雨乞岳は北西方向になるが、展望地の水晶ナギに立寄るため南尾根に進む。0.6キロで水晶ナギに達す。風化した花崗岩のザレ地で南方向に素晴らしい展望が広がる。明日登る大岩山やその北西尾根にある鬼ノ窓のキレット、その向うの鋸岳など甲斐駒ヶ岳から流れる荒々しい山容を目の前に堪能できる。

黒沢ノ頭の西分岐に戻り、雨乞岳(2,037m)への最後の登りにかかる。急登で結構きつい。山頂域はササ原で樹木がまばらになっている。このため展望は良く甲斐駒や鳳凰三山、日向山とそのずっと先の富士山まで見通すことができる。山名の由来はその昔雨乞の祈りが行われた山であることからきているそうだ。先客が3人、自転車を置いたヴィレッジ白州から登ってきた地元長坂町の人達だった。

下りは北東尾根を行く、何箇所か展望の利くところがあったが山頂展望と同じ方向で変わり映えがしない。少し登り返すと笹ノ平(1,906m)、特に何もない。北に続く尾根の方がメインに見えるが登山道は西の細尾根へと続く。1,613mと1,605mの標高点ピークは北側を巻いているがそれぞれピークを踏んで行く。

 登山口に近づくと真北に向かい整備された階段の両側の樹林の隙間に八ヶ岳が見える。初めて八ヶ岳の写真が撮れるポイントだ。木の間越しに林道が見え出すとヴィレッジ白州の登山口に達した。山頂で出会った地元の人の車と木にくくりつけた自転車が無事に待っていた。

平久保池の池畔にあるヴィレッジ白州は土曜日だというのに誰もいない季節外れなのか?林道は下り坂でペダルをこぐことなく流川橋に達した。見上げると雨乞岳が上流に見えるので自転車を止めてカメラを向ける。ここからは少し登りとなるが6段変速の威力が発揮されるときだ。ペダルは軽く乗ったままでも何とか進むことができる。前の自転車よりタイヤが一回り大きく安定性もいい。

石尊神社に戻ると登山者らしき車がもう1台置かれていた。時間は13時を少し過ぎたところ、国道20号線に出て少し北にある道の駅“鶯宿(おうしゅく)”併設の温泉“つたの湯”に立寄る。ゆっくり休憩室で休み、16時過ぎからは傍を流れる釜無川の河原で夕食を食べ、暗くなりかける頃、明日の日向山登山口である矢立岩に向かった。(車中泊

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【2日目】日向山 H20.11.2 晴れ

【行程】▲矢立岩6:00~日向山6:54-7:15~雁ヶ原7:19~駒岩8:18-20~鞍掛山8:37-39~展望台8:45-50~鞍掛山8:54-56~駒岩9:16-18~駒薙ノ頭10:00-17~大岩山10:38-44~駒薙ノ頭11:02-09~駒岩11:37~雁ヶ原12:19-21~錦滝12:38-43~矢立岩13:12-45=甲斐駒ヶ岳温泉尾白の湯14:03-17:42=小淵沢IC=(中央道)=恵那峡SA19:51-22:15=▲(中央・名神)=京都南IC=京都0:48

【登山データ】歩行 16.0㎞ 7時間12分 延登高 1,903m延下降 1,903m 5座登頂

朝6時、広くもない矢立岩駐車場にはすでに10台近い車が来ている。室内灯を点けた1台以外にまだ動きは無くトップを切って歩き出した。矢立岩登山口の標高は既に1,120mある。日向山の東尾根を一本調子に登ること50分、早くも山頂域に達する。「三角点→」の表示を辿り10mほど入ると3等三角点「日向山」(1,660m)がある。しかし“山頂”はもう少し先にある。樹林帯を抜け北側に飛び出すと、風化した花崗岩の砂場が広がる。その中に崩れずに残っている岩が屹立し独特の景観をなしている。

展望は抜群で歩き回ればほぼ360度の展望が得られる。北には八ヶ岳、真っ青な空に秋の雲がたなびき素晴らしい。左回りにレンズを向けると昨日登った雨乞岳、白岩岳・釜無山の尾根、今日行く大岩山・鞍掛山越に鋸岳、甲斐駒ヶ岳、黒戸尾根の向うには鳳凰三山、そしてその左後方には富士山の雄姿、御坂山地や奥秩父の山々も見える。

山頂独占で秋の山々を堪能した後は山頂の支峰にある「大明神」の石碑を見て雁ヶ原へと下る。砂地が続き富士山の砂走りを思わせられる。帰りに使う錦滝への道を左に分岐すると本格的登山道となる。ここまでの登山道はよく整備され、指導標にも「日向山ハイキングコース」とあり錦滝を周回するお手軽ハイキングコースなのだ。この先、鞍掛山、大岩山まで行く人は稀で静かな登山が楽しめる。

出だしの1,622mピークの前後はヤセ尾根で一寸した難所が続く。次の鞍部からは一本調子に登る。大岩山に達するこの尾根は日向八丁尾根と呼ばれている。最初は急登で半ば位からなだらかになり駒岩(2,029m)に到る。小さな山頂標識があるが展望はない。日向八丁尾根の南に飛び出した所に鞍掛山が屹立している。寄らない手はなく赤テープの踏跡を辿り急斜面を100mほど下る。鞍部に達すると両側が鋭く切れ落ち深い谷となる。東側が開けその先には小川山、金峰山国師岳の奥秩父主稜線の山々が見え意外なことに甲武信岳の隣にある三宝山が小川山と金峰山の間に顔を覗かせている。

鞍部からの登り返しは恐ろしく急で岩交じりの道を登り詰める。鞍掛山(2,037m)山頂は登路とは打って変わって穏やかな樹林帯。展望はないが200mほど南東方向に行くと薙ぎの展望地がある。昨日の水晶ナギのような風化花崗岩の地形で素晴らしい展望が得られる。甲斐駒と鋸岳の1峰である烏帽子岳から流れる八丁尾根や鋸岳はますます近く南ア北端部の荒々しさが感じられる。

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駒岩への帰りも結構きつい。山頂に戻ると中年夫婦の登山者が休憩中、鞍掛山へ行くそうだ。「大岩山は?」と問うと「今回は無理、次回は大岩山だけに行く」という。「気をつけて!」と言い合って分れた。日向八丁尾根の千段刈と呼ばれる比較的穏やかな尾根なので比較的楽に歩ける。標高が2,100m位になるといつ降ったものだろうか雪が現れだした。前日東京で木枯し1号が吹いた。稜線の風は冷たい。冬はもうすぐそこまで来ている。樹林帯の中は風が防げて助かる。

歩くこと45分で駒薙ノ頭(約2,230m)に到る。南西方向に僅かに展望が開け、そこから大岩山と烏帽子岳に繋がる八丁尾根への結節点の大きな括れが見える。これが噂の30m懸垂下降の壁で、大岩山から先、八丁尾根を通り烏帽子岳、三ツ頭を通り甲斐駒ヶ岳に到る岩やさんのマニアック縦走路の最大の難所がある。

大休止を取っていると寒くなってきた。腹ごしらえを済まして早々に歩き出す。2,180mの鞍部まで下り140mの登り返しは少々急登、積雪の密度が濃くなり登山道の日陰の部分は真っ白になっている。雪を踏みしめて歩くとやがて大岩山(2,319m)山頂に到る。3等三角点「前後大岩」が置かれているが、残念ながら樹林に囲まれ展望はない。今山行の最高峰だったのに残念だ。この先の八丁尾根へのルートは踏み跡も定かでなく大変な道のようだ。

山頂標識だけを撮影して元来た道を引き返す。駒薙ノ頭、駒岩を越え急斜面の下りに掛かると下りて行く二人連れを発見鞍掛山に行った二人のようだ。大岩山の様子を伝えると「次は絶対に行く」と言っていた。1,622mピークのヤセ尾根を登り返し日向山との鞍部、雁ヶ原に達する。

日向山は朝の静けさと様変わりし大勢の人の姿が見える。皆本当にハイキングしかしないのか!大岩山に言ったのは私一人、鞍掛山まではあの夫婦だけ。後の全ての人は日向山だけのハイキングのようだ。錦滝に向かって下りだすと傾斜はかなりの急勾配、ロープや梯子もある。もたもたと行く運動靴の人達をどんどん追い抜き下りて行くと、水音が聞こえ始め錦滝に達する。

落差は20m位だろうか滝壺から少し離れた所に東屋があり数人が憩っていた。皆殆ど挨拶もしない。もうどうでも良い。ここからは林道となる。この先もまだ続いているが土砂崩壊のため橋を渡った所にゲートがあり通行止めとなっている。日向山の南麓を巻くように付けられた林道からは対岸の黒戸尾根の紅葉が時々姿を見せる。2.4キロの林道歩きで矢立岩登山口に帰り着く。林道にはゲートがあり錦滝まで車は入れない。そして駐車場には車があふれている。止めきれなかった車は林道の遥か下に僅かな駐車スペースを求めて止められていた。一体何人登っているのだろう?殆どの人が日向山周回ハイキングとは情けない。でも朝一番に出発してよかった。

駐車場で午後のコーヒーを飲み寛いだ後、温泉を目指して出発。林道を下り国道20号線に出るまでに駒ヶ岳温泉尾白の湯なる大きな施設を見つけた。これが昨日雨乞岳の山頂で地元の人が行っていた所のようだ。尾白名水の森公園(べるが)内に平成18年にできた施設だ。露天風呂も2種類あり、施設全体が広くゆったりとしている。(入浴料\700)

帰りの高速道路代節約を目指し、この温泉で3時間半を過ごし帰路に着いた。まだ早いので恵那峡SAで2時間余り仮眠し3日0:48帰宅した。

【登山データ計】歩行 28.8㎞ 12時間28分 延登高 3,395m 延下降 3,010m 9座登頂