初夏のような陽気の一日、1年ぶりに鈴鹿山地の縦走を行った。鈴鹿主稜線の西に存在感を持って聳える雨乞岳、その北部に連なる尾根縦走と合わせうららかな春山を楽しんだ。
写真1:ハルリンドウ(雨乞岳北尾根にて)
[個人] 鈴鹿・雨乞岳 《山紀行674》
48期 山本浩史
初夏のような陽気の一日、1年ぶりに鈴鹿山地の縦走を行った。鈴鹿主稜線の西に存在感を持って聳える雨乞岳、その北部に連なる尾根縦走と合わせうららかな春山を楽しんだ。
【日 程】 平成21年4月11日(土) 晴れ
【行 程】 桂3:55=甲津畑巡視路入口5:00-25~入道ヶ原6:42~カクレグラ8:29-43~タイジョウ9:53-10:01~杉峠10:53-57~雨乞岳11:26-52~清水頭12:17-19~イハイガ岳13:34-48~甲津畑巡視路入口15:22-25=永源寺温泉八風の湯15:43-16:45=桂18:12
【参 加 者】 単独
【登山データ】 歩行 22.9㎞ 10時間04分 延登高 1,802m延下降 1,802m 8座登頂
甲津畑集落から渋川沿いに奥へ入ると最後の人工施設「永源寺グリーンランド」は渓流釣りとバーベキューができるようだ。入道ヶ原への登山口はこのすぐ先にある送電巡視路入口。脇に車を置き、黄色い標識に導かれ河原へと下りる。次の標識どおりに川沿いに行こうとすると崩れてしまったのか道が途切れている。飛び石を選び渡渉し対岸に渡るとそれらしい踏み跡を発見、枝沢に沿って巡視路を登る。伊勢幹線の送電線が2本並列で通りまず西側の送電鉄塔に到るが、短絡しようと斜面を這い上がると1本目を通り越し直接東側の鉄塔へと出た。南方向には綿向山が遠くに聳えている。
少し登ると稜線に達しカクレグラ、タイジョウ、雨乞山へと続く尾根を行くのだが、まずは反対方向の入道ヶ原へ立ち寄る。再び送電線鉄塔を2つ越えると踏み跡が薄くなり、樹林帯の中で進路を確認しようとコンパスを探す。 ??無い?さっきまで使っていたのに!きっと最初の送電鉄塔で日焼け止めを塗ったときに忘れたようだ。折角登ってきたのに残念だが買えば高いし、それに何より今日のルートはコンパスなしでは歩けない。取りあえず入道ヶ原へは“感”で歩き分岐点に戻ってから探しに行こう。
746m標高点では樋ノ谷経由で永源寺ダム湖畔の佐目へ下りる道が分岐する。この先は稜線が複雑で踏み跡も途切れがちとなりコンパスが欲しいところだ。何度か間違えそうになりながらも高みを目指し歩くと樹林の中に入道ヶ原最高点(790m)の標識が現れた。別名「阿ノ瀬山」とも言うが現地標識は「入道ヶ原」のみ。2.5万図で見る限り三角点があるはず、それを探しに先に続く踏み跡を辿るがいっこうに現れない。10分ほど歩きたどり着いた小高い地点の先にピークは見えない。
三角点は諦め引き返し再び最高点を過ぎた所に右の方に分岐する道、どうも展望がありそうで踏み入れてみると果たしてありました3等三角点「和南」、標高は最高点より1m低い789m。少し手前から綿向山やカクレグラが望める。余分な所まで行ってしまったが三角点も発見でき目的は達成できた。帰りも道を間違え少々時間ロスをした。やはりコンパスなしでは問題だ。
分岐点に着くとザックをデポし送電鉄塔へコンパス回収。休憩地点に確かにあった。12分の道草をしていよいよ本題の縦走路に入る。747mの標高点まで下った後は、徐々に高度を上げ南から回り込むようにカクレグラ(990m)に達する。水谷山とも名があるが「カクレグラ」とは面白い。この地域にはスモトリコバ、タイジョウ、イブネ、クラシなどカタカナ山名、しかも“山”とか“岳”などが付かない独特な響きがある。
カクレグラには2等三角点「佐目村」があり、この先のタイジョウ、雨乞岳が見通せる。日が高くなるに連れ暑くなってきた。そして朝食が3時だったのでお腹も空いてきた。まだ8時半だが大休止を取り空腹を満たした。山頂の少し南に下ると展望地があり1本東の稜線にある銚子ヶ口、クラシ、イブネ、それに鈴鹿主脈の藤原岳、静ヶ岳、竜ヶ岳などを望むことができる。山頂付近にはイワウチワの葉が光沢を持って輝いている。花期はもうすぐだろう。
縦走路を南南東方向に進む。結構アップダウンがあり、馬ノ背の稜線を作る両側の谷は深く、大きくガレた縁を歩く。2.5万図に標高点が記された地点が2箇所あり、もしや山名があるかと期待したがただの標高点だった。所々で視界が開けるとカクレグラや黒尾山が望める。標高が880mくらいまで下がるとタイジョウへの登り返しだ。最初はどうってことはないが直下に至ると岩場の急斜面何処から登るのかと見上げるほどだ。真っ直ぐおいでと、手招くようにテープが付いている。大変な斜面だ、滑ると止まらないだろう。1,000mを超えた辺りの谷間に白いものが見える。残雪だ。漸く這い上がったタイジョウ(1,060m)山頂は展望もなく一寸悲しい。山頂標識には「大丈」と漢字が添えられていた。
この先の縦走路に展望はなくアップダウンを繰り返し1,084m標高点に到る。山名はないが「P1084」という標識が掲げられていた。さらになだらかに高度を上げると「佐目峠→」の分岐に達する。イブネ、クラシから銚子ヶ口へと続く縦走路だ。分岐を過ぎるとすぐに1,121mピーク、山頂には「杉峠ノ頭1,121m」の標識があった。展望はなく杉峠へと下る。南の斜面になだらかで庭園のような展望地があり眼前に雨乞岳の雄姿左には国見山、御在所岳、右には綿向山と素晴らしい展望が得られる。
杉峠は千草街道が越える雨乞岳と杉峠ノ頭の間にある標高1,042mの峠だ。旅人が目印にしたという大きな杉がある。下りてくると3人の男性が休憩中、甲津畑から林道を歩きフジキリ谷を登って来たそうだ。雨乞岳へは200mの登り返し、その斜面には残雪が見える。急斜面の登山道は雪渓を跨ぎジグザグに進む。振り返ると疎林の中に杉峠で憩うさっきのおじさん達、いつの間にか5人に増えている。
雨乞岳の北稜線の端に乗ると露岩があり素晴らしい展望が得られる。足元にはハルリンドウを見つけた。ここからはササ藪がうるさい。冬の間雪に押さえつけられていた笹は登山道を覆い漕ぐのがとても重い。漸くたどり着いた雨乞岳(1,238m)山頂は3等三角点「雨乞岳」がありササ越し展望がある。昼食を取っていると入れ替わり立ち代り登山者が訪れては去っていく。ササに囲まれた山頂はゆっくり休む所がないからで、東雨乞岳まで行って休憩と言う人が多いようだ。
鈴鹿最高峰の御在所岳、鋭鋒見事な鎌ヶ岳、少し離れて仙ヶ岳、南鈴鹿の山脈へと続く。南雨乞岳(約1,210m)まではまたもやササ薮が続く。振り返ると一面ササ原の雨乞岳が美しい。ササが低くなると軽快な草原歩きで清水頭(しょうずのかしら・1,095m)に到る。ササ原で360°の展望かある。
今日の行程はツルベ谷を下り千草街道で甲津畑に戻る。以前綿向山に登ったとき足を伸ばしイハイガ岳に登っている。今日も反対側からイハイガ岳(964m)に足を伸ばすと縦走路が繋がる。しかしイハイガ岳は遠く険しい。シャクナゲやアセビの木が被り歩きづらい。最低鞍部の大峠は790m、標高差170mの急登を詰める。イハイの東面は大きくガレて荒々しい。ツルベ谷への分岐を気にしながら歩いて来たが分らずじまいでイハイガ岳直下になった。急斜面にはイワウチワが群落を成し可憐に咲いている。ガレの縁を迂回して山頂に登り着くと結構疲れた。一休みして見渡すと綿向山がますます近づいた。
縦走路が繋がり満足して来た道を引き返す。ガレの縁が切れる所で左側の谷を見下ろすと比較的なだらかにササの斜面が続いている。正規の分岐を通らなくてもここからは入れば問題なさそうだ。ササの斜面を下りツルベ谷へと入って行った。右手の斜面から下りて来る道を発見しよう注意していたが結局これも見つからなかった。本当に道はあるのだろうか?そしてこの谷がツルベ谷でないとしたら・・・・お~怖い~。でも読図に間違いはない。自信を持って下り続けるといつの間にか踏み跡らしきものが現れひと安心。
下るにつれ流量が増し、踏み跡有とは言えども渡渉を繰り返すことに変わりはない。数えていた渡渉回数も数え切れなくなり放棄、最後の渡渉を終えて高巻きだすと右手から千草街道(登山道)が合流、「古屋敷跡」の案内板がある。旧塩津々集落跡で屋敷の石組群だけが残っていた。あとは街道を歩き甲津畑に戻るだけ。いつしか岩ヶ谷林道となり地元の人が軽トラで入ってきて作業をされていた。桜地蔵、善住坊の隠れ岩を過ぎ2本の送電線を潜ると送電巡視路入口、わが愛車が待っていた。
立ち寄り湯は永源寺温泉八風の湯、来るとき看板で知り決めていたが、行ってびっくり、週末の入浴料が1,500円もした!
写真2:ショウジョウバカマ(雨乞岳南尾根にて)
写真3:雨乞岳(清水頭より)
写真4:イハイガ岳(大峠の東より)
写真5:イワウチワ(イハイガ岳にて)