京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

[個人] 九州5座・阿蘇カルデラスーパーマラソン

初リタイアした富士五湖の汚名返上!鯖でいい走りをした仲間にも負けてられないしと、久々に気合十分。前半の暴風雨より後半の強烈な日射にやられ干からびる寸前にゴール。運営もよくスタッフも沿道の応援も温かい、胸はっておススメできる素敵な大会でした。

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由布岳へ真っ垂直

<個人>2009年6月4日(木)~7日(日)

九州5座・阿蘇カルデラスーパーマラソン

          48期 寒川 陽子

初リタイアした富士五湖の汚名返上!鯖でいい走りをした仲間にも負けてられないしと、久々に気合十分。前半の暴風雨より後半の強烈な日射にやられ干からびる寸前にゴール。運営もよくスタッフも沿道の応援も温かい、胸はっておススメできる素敵な大会でした。

【参加者】単独

【天候】6月4日(木)雨  

6月5日(金)雨のち曇り 

6月6日(土) 大雨のち快晴

    6月7日(日)晴れのち曇り

【行程】 

6月3日(水)

18:35大阪南港着・18:50出港(21:00船中泊)

6月4日(木)由布岳

6:40別府観光港着→07:50レンタカ-借⇒8:30東登山口

14:20東登山口出発→15:20東峰→15:45西峰→16:05マタエ→16:50合野越→17:45日向岳→18:05東登山口

東登山口18:10⇒22:00高住神社P(23:00就寝)

6月5日(金)英彦山脊振山

8:00起床・8:30出発→9:20中岳→9:30南岳→10:20高住神社P

10:20高住神社P⇒12:50脊振公園P

12:00脊振公園P→12:55脊振山→13:00脊振公園P

13:00脊振公園P⇒16:15内牧温泉P(20:15就寝)

6月6日(土)阿蘇カルデラスーパーマラソン

2:45起床・3:30送迎バス発⇒4:00南阿蘇村ウィナス着

5:00スタ-ト→9:12 50km地点→9:44 55km地点→10:08 60km地点→10:35 65km地点→11:01 70km地点→11:30 75km地点→11:56 80km地点→12:24 85km地点→12:50 90km地点→13:16 95km地点→13:42内牧温泉ゴ-ル 8時間42分03秒(100km総合14位、女子1位)

17:30打ち上げ・20:00内牧温泉P出発⇒21:00筋湯温泉P(23:00就寝)

6月7日(日) 涌蓋山・鶴見岳

5:45起床・6:20出発→6:40涌蓋山登山口→7:35湧蓋越→8:05涌蓋山15→8:35湧蓋越→8:55ミソコブシ→9:45一目山→10:20筋湯温泉P

10:20筋湯温泉P⇒11:40塚原温泉P

塚原温泉P11:55出発→12:25伽藍岳→13:35内山→13:50船底→14:15鞍ヶ戸→14:45鶴見岳50→15:30船底→15:45内山→16:25塚原温泉P

16:25塚原温泉P⇒17:15レンタカ-返却→18:50別府観光港出港(21:15就寝)

6月8日(月)

5:20起床・6:30大阪南港着

【感想】

 大雨の南港を出発し翌朝の別府観光港も雨。九州の山は笹原の大展自然がウリだというのにこれじゃどうしようもない。かといって無駄に九州で時間を潰すのは勿体ないのでとりあえず東登山口まで車を飛ばす。雨が強く叩きつける音が続く。すっかり意気消沈して小降りになるまで昼寝。未だなお降っているがようやく諦めて由布岳へと向かう。

 ルートは良好、樹林帯の登りが続くが雨のおかげで冷気を感じながら登る。登るにつれ木々がなくなり足場は土から砂利・岩へと変わり、風が吹きつけるようになってきた。超急登の鎖場があるが、既に濃いガスに囲まれ真っ白。荒れ猛る風になぶられながらまずは東峰へ。稜線上は遮るものなく、晴れたらさぞかし楽しいだろうに。反時計周りで東峰から西峰へ行くことも可能だが道が少々悪い。耐風姿勢をとりつつ進んでいるこの状況では危険を伴う為、マタエから西峰を目指す。一か所岩場のトラバースがあるがステップが細く高度感があり落ちたらまず助からない。剱はカニの横ばいより危うく思えた。暴風でしっかり姿勢が保てないため慎重に通過。西峰の三角点を拝みマタエから合野越経由、日向岳に立ち寄り東登山口へ戻った。こんな天候でもメインルートである合野越~山頂間では数組のパーティーとすれ違った。鶴見岳も登る予定でいたが、好展望を期待し後日登ることとし英彦山の登山口である高住神社へ。

 朝寝坊をし目覚めたら、昨晩は貸し切りだった筈の駐車場に沢山の車が。ようやく雨は止みジメジメした曇天、昨日同様平日だというのにさっさか登っていく中高年登山者。私なんぞよりよっぽど健康且つ元気である。なんといっても活力が違う。ちょっと天気が悪いからといって士気が下がるようでは私もまだまだひよっこだなあ。登山口は立派な高住神社、山頂はこれまた立派な英彦山神社と宗教色の強い山だけあって、道中では信仰を思わせる石碑や遺跡が続く。何でも日本三大修験場の1つらしい(あとの2つは羽黒山山形県)と熊野大峰山奈良県))。更に英彦山日本三彦山弥彦山新潟県)・雪彦山兵庫県)の1つでもあるとか。樹林帯の濃いガスの中見上げると大岩の登りが続き時折鎖が出てくる。まさに修験道。霞かかった視界が幻想的で趣深く、嬉々として山頂へ。中岳には英彦山神社の巨大建造物。小さな公園位の敷地面積、資材の運搬・建造の労苦を思うと、その信仰心たるや凄まじいものだろう。三角点のある南岳まで立ち寄ったら来た道を戻り、高住神社の巫女さんから歴史を学ぶ。英彦山神社は、上人が彦山(元来は「日子山」、のちに「英」が冠せられる)で修行仏教を始め、後に神の信仰に仏教が習合され「英彦山権現」として栄えた。この頃から高住神社は豊前坊と呼ばれていたが神仏分離令により現在の高住神社の名となったらしい。豊前坊という呼び名の由来は、高住神社が豊前・豊後の開拓神だからとのこと。高住神社の御祭神は豊日別命、天照大神他3神。「だからこういった霧の英彦山こそが本来の姿でしょう」確かに神聖に思えるから不思議だ。

 脊振山は山頂直下まで車道続き。発電所やら自衛隊の基地やらが併設されていて違和感があるがこじんまりとした山頂に三角点を発見。九州自然歩道として椎原峠~脊振山~基山間コースタイムで12時間の縦走が楽しめるので今度は歩いてこよう。

 晴れたと思ったら突然のスコール。急変を繰り返していたが夕方は晴れて、内牧の温泉天国を満喫。公衆浴場が選び放題しかも100円からの破格の安さ。湯めぐりを堪能したいところだがここは我慢、明日に向け気を引き締め直す。

 泣きそうな空。晴れ予報のはずが、南阿蘇村まで来るとかなりの本降りに。暑いのは嫌だがこの勢いで1日中降り続けると、走っていてもさすがに体温を奪われ疲弊してしまうだろう…悩んだ挙句、いつもの精鋭メンバーで行くことにした。今までのレースを共に走ってきたウェアで。主人の荒しごきにも耐えてくれる素敵なやつだからね!雨は弱まるどころかバケツをひっくり返した豪雨となり舗装路は水びだし。大粒の雨が目に飛び込んできて視界がきかない。しかし雨が熱と周囲の音を奪ってくれるのでむしろ走りやすく黙々と前進。問題の高森峠までの九十九折の上り坂も適当に歩きつつ誤魔化して通過。森林に囲まれた気持ちいい舗装路に転じると晴れ間が差してきた。登り下りを繰り返しいくつもの小さな集落を抜け数え切れない程の川を渡り…行く先々でおばあちゃんや子供が選手を待ち構えて応援してくれる。角に差し掛かる度にスタッフが誘導してくれる。かろうじて路線バスが走るような山奥なのに。エイドでパンやらチョコやらぜんざいやらスイカやら出てくる。初めて阿蘇を訪れた時、この地域の主要交通機関であるJR豊肥本線のローカルぶりに絶句した。阿蘇は集落があっても小規模で山と平野があるだけ、今走ってみて改めて実感するけど、人の存在の大きさを感じるとでも表現したらいいのだろうか。一人の価値が重い。ラッシュアワーで見飽きる程の人と会っていながらモノさながらにしか見ていない普段の生活からは想像もできないことだ。50km手前で女性選手を抜くともれなく車が付いてきた。見ると「100km女子先導車」とある。てことはあと50kmもこの車とお付き合いするわけ?1人マイペースで走っていたい主義の私にとっては気になってしょうがない。先頭だなんてそんな大それたこと!…私より速いランナーなど思い浮かべるだけでごまんといるわけで、そう考えると委縮してしまう。これがレースにおける自分の弱点となっているのは以前から充々承知の上なんだけど。

 先は長い。90km手前の最後の登りまでが序盤戦。腹を据えて先導車くんとの2人旅を楽しむこととする。75km付近までは緩いアップダウンの繰り返し。疲れてはいるのだが小さな小川の流れる静かな山あいの村を縫っていくコースの良さに助けられて、さくさく進む。曲がる度に見えてくる道の勾配や景色が面白い。何の変哲もない村落なのにそう思えるのが九州の不思議なところである。じわじわと登り上げていくと待ちに待ったダイジェスト、阿蘇の草原に突入。阿蘇北方にはミルクロードと呼ばれる道路があり、その名の通り大草原いっぱいに牧場が広がっている。遥か視界の奥に見える象ヶ鼻のピーク。あーやっと九州に来た~!嬉しくて声に出したいところだが、あんまり余力がない。樹林帯から草原へと転じたことで、ひたすらじりじり照りつける日射に耐えなければいけない。山を走れる身、道の悪さは全く気にならないが涼がないのが辛い。歩くのは勿体ない程の緩い登り坂、ここぞ本領の発揮どころと意地になって走り抜き、象ヶ鼻からは切り立った崖の合間を九十九折に続く急坂を下る。最初こそ気持ちよく下っていたが、高度が下がるにつれ暑いわ息があがるわ足がもつれるわで必死に走る。立ち止まりたいが、止まっても暑さも喉の渇きも変わらないのでとにかくゴールを目指す。日除けのない田園地帯の直線10km。一歩一歩が辛いけどあと1時間。ゴールまで帰ってくると割れんばかりの声援に迎えられ、歪んでた顔もすっかり笑顔に戻り万歳。

 8時間42分という記録は今大会である第20回目までの女子歴代5位らしい。歴代記録と25分差というから、終盤の粘りと各エイドの時間短縮を図れば不可能ではなさそうだけど。そんな事よりも、完走後に振る舞われた缶ビール2本ととん汁、おにぎり2個、ぜんざい、だんご汁、メロンにすっかり満足し地元熊本の管弦楽の生演奏に感激。スタッフの進行もスムーズでコース上の誘導、エイド、荷物管理、応援、どれをとっても合格。選手ものほほんとコースを楽しむランナーが多く、沿道の応援の熱さは言わずもがな。また出てみたいな。完走後心肺グロッキーで数時間余り金魚の如くパクパクしていたが、身体はいたって健康なため、筋湯温泉へと車を走らせる。九重も捨てがたいが、明日は山開きなんだよね。

 4日目にして初めて清々しい朝を迎え意気揚揚と出発。樹林帯を少し上がると見渡す限りの草原!玖珠川の向こうには雲海を携えた九重連山。北を見やれば由布岳鶴見岳がちょこんと頭だけ覗かせている。ミヤマキリシマ咲き乱れる中ルンルンと涌蓋山へ。近場に九重があることで遠方からの登山者は少ないが、たった1500mにして360度の展望。空と草原とどこまでも続く道。先鋭的な山も素敵だが、穏やかに受け入れてくれる山はただそこにいるだけで幸せを感じられる。ミソコブシを抜け一目山へ向かうはずが…あれ?リードもあるしトレースもあるんだけど…と藪をガサゴソ。コースタイムで10分だし突っ切っちゃえとピーク目指して突進。突然飛び出したものだから、ちゃんと登山道を辿ってきたおっちゃんに大層驚かれた。よしっ、九州でもしっかり藪漕ぎしちゃったぞ~(どこからともなくため息が聞こえるよーな)。

 計画段階では多良岳雲仙岳、国見岳の登頂も考えていたが、最後の半日は鶴見岳に投資することにした。東登山口から登っては面白くないので伽藍岳からの縦走ピストンを決行。伽藍岳は別称「硫黄山」。今でも掘削が続いており、「火口探検1回100円」なんていうちゃっかりした看板まで。午後には天気は保たず塚原越以降はガスの樹林帯へ。ルートにはなっているがヌタ土の急斜が多く、踏んでも踏んでも滑ってしまう。ロープに食い下がってもずるり。ここを帰りも通るのかと思うと、エスケープが頭をよぎる。でも危険な訳じゃなくて悪路理由のエスケープって…山歩きが未熟って証明するようなものじゃん。それが許せなくて土に向き直って粘りのいる登りを繰り返し、トレースを隠す下草と木の根と泥土と戦いつつ進む。さすがにレース疲れが効いてきて、しっかり意識しないと集中力を維持できなくなってきた。レンタカーの返却時間との逆算で割と急ぐ行程である事もあって油断していたところ、真正面の太い木の枝が顔面にクリティカルヒット。額を打つ事はよくあるのだが、今回当たり所が目だったので傷を確かめる。手に付いてきた血液に顔面蒼白。目から血出てる!?慌てる一方でまずは現状把握。眼球は痛くない。コンタクトも外れてない。視界も良好。再び目を押さえると血が垂れる位に付着してくる。ようやく鏡を出して見ると左眼下瞼を切った様子。とりあえず即エスケープは免れたとホッとする。しばらく止まりそうにないがなんせ下瞼、絆創膏の貼り所に困る。少し考え視界を狭めないよう瞼の下に絆創膏を貼り血を受けながら前進。想像以上のアップダウンに体もよれてきた。左目がズキズキと気になるが鶴見岳まで執念で到着。向こうからはロープウェイでのんびりと登ってくる観光客がたくさん。北鎌を登ったらこういう感覚なんだろうか、この山を楽しんだ優越感に似たような感覚。なんてほっこりしてる暇はない。行動食をがっつきながら帰路を急ぐ。コースを知っているため、ペースに気を配りつつたまに走りつつさっさと下山。

 最後に立ち寄った「みなと温泉」は別府観光港のすぐそば、国道に面した風呂。ラーメン屋の奥の木造の母屋らしきものを改造して作られており、男湯・女湯共に揺れるカーテンの奥に浴槽が見える。中の脱衣所はしっかりしているが、洗い場はなんとカーテンの前、こんな風の強い日だったら外から見えるっちゅーの!風呂に浸かっている間もカーテンが揺れたら丸見えなわけで。こんなに堂々とした構えの風呂は初めてである意味面白かった。

090604kyusyu2カニの横ばいよりスゴイ

カニの横ばいよりスゴイ

090605kyusyu3英彦山三角点のある南岳

英彦山三角点のある南岳

090606kyusyu4どしゃぶりもいいところ

どしゃぶりもいいところ

090606kyusyu5阿蘇大草原

阿蘇大草原

090606kyusyu6ウルトラの完走は喜びひとしお

ウルトラの完走は喜びひとしお

090606kyusyu7なんと生演奏!

んと生演奏!

090607kyusyu8海原の彼方に由布の双耳峰

海原の彼方に由布の双耳峰

090607kyusyu9涌蓋山頂より九重

涌蓋山頂より九重

090607kyusyu10ミソコブシまで大草原

ミソコブシまで大草原

090607kyusyu11執念で縦走達成!

執念で縦走達成!

090607kyusyu12街のど真ん中に入浴料300円

街のど真ん中に入浴料300円