愛する花はヒメサユリ、険しい道にそっと佇み迎えてくれる越後の山。蝉ヶ平からの御神楽岳、二王子神社からの二王子岳、魚留滝からの五頭山とピストン3連発の新潟山行。蒲原市のM子邸で東京時代の山仲間と語らいのひと時を過ごした。
[個人山行] 御神楽岳・二王子岳・五頭山 《山紀行679》 平成21年6月5日(金)~7日(日)
48期 山本浩史
愛する花はヒメサユリ、険しい道にそっと佇み迎えてくれる越後の山。蝉ヶ平からの御神楽岳、二王子神社からの二王子岳、魚留滝からの五頭山とピストン3連発の新潟山行。蒲原市のM子邸で東京時代の山仲間と語らいのひと時を過ごした。
1日目(6/5) 御神楽岳 1,386m 曇り
【行 程】 大阪23:27-(▲急行きたぐに)-新潟8:29-45=新潟亀田IC=(北陸・磐越道)=津川IC=蝉ヶ平登山口9:54-10:02~高頭12:20~湯沢の頭12:45-52~雨乞峰13:32-38~御神楽岳13:46-14:02~雨乞峰14:09~湯沢の頭14:41~高頭15:07-12~蝉ヶ平登山口16:45-17:00=御神楽温泉17:12-18:06=▲二王子神社20:21
【同行者】 なし
【登山データ】 歩行13.4㎞6時間43分 延登高 1,419m 延下降 1,419m 4座登頂
急行きたぐに号のA寝台車で優雅に夜を過ごし新潟駅に到着。レンタカーを借り新潟亀田ICから津川ICまでは高速道路で時間を稼ぎ山間部へと入って行く。広谷川沿いの林道終点は蝉ヶ平登山口、平日ということもあり車は1台もない。
登山カードに記入し早速歩き始める。湯沢出合までの2.7キロは広谷川に沿って巻く登山道を進む。登山口から800mほどの間は林道跡と思しき道でその終端は“鉱山跡”と表示があった。何の鉱山だったか調べてみたがよく分からなかった。倒れた指導標の傍らには昭和30~40年台の遭難碑が3基並びこの山の厳しさを予告するようだ。
広谷川左岸に続く登山道は基本的に緩やかな勾配だが、急峻な斜面から入り込む枝沢を越える部分はかなり際どい所もある。その最大の谷は覚道沢で一枚岩をナメるように水が流れ、深いお椀状に水が溜まりぬるぬるの岩盤をロープを伝って通過する。その時胸にぶら下げていたペットボトルがスポーンと抜けてしまいお椀の中に落下してしまった。回収はとても不可能だ。
湯沢出合に達すると広谷川と分れ栄太郎新道の本格的な登山道となる。傾斜は恐ろしく急で岩場が随所に出てくる。湯沢の対岸に見える湯沢の頭は一面岩の壁で凄まじいくらいだ。このような尾根が御神楽岳まで続く難関の山だ。そう言えば登山口に上級者向きと注意を促す看板があった。
頭(たかつむり)への道は遠い。最初顕著なピークを見上げると周りから独立した感じで先の主稜線にとながっているとは思えないほどだった。そんな険しい登山道ではあるが、癒されるのは道端に咲く可憐なヒメサユリの花、姫にかしずくようにチゴユリの花も咲いている。山麓で殆ど終わっていたイワカガミも高度が増すにつれ元気になってきた。真っ赤なヤマツツジやウラジロヨウラクも元気一杯だった。
鎖場の連続で高度を稼ぐが、距離は稼げない。頭(たかつむり)の山頂は標識もなく特定が難しい。2.5万図には目立ったピークでないところに表示があり、一番顕著なのは屹立した953mの標高点なのだが、もう一つ確信を持てなかったがここを頭山頂としておいた。頭からは湯沢の頭から派生する山伏尾根が鋭い角度で谷に下り岩壁の隙間には僅かになった雪渓が越後の山を語っていた。
蕎麦谷尾根を行き、湯沢の頭(1,184m)まで来ると漸く御神楽岳が遮るものなく真正面に半円を描くような尾根の先に見える。しかし上部は雲が覆いその姿を隠している。振り返ると蕎麦谷尾根も西側から雲が上がってきて稜線まで達している。
目指す御神楽岳へはまだ標高差200m以上、雲の中突入で気は重いが気合を入れて山頂を目指す。ヒメサユリ、タニウツギ、ツクバネウツギ、ヤマツツジなど初夏の花が登山道を彩り気持ちを和ませてくれる。まずは雨乞峰(1,350m)で2.5万図では東麓を巻いているが実際は頂上を通っていた。壊れた標識が室屋コースだけを案内し明瞭な道が分岐していた。
ここまで来ると山頂は近い、最後のひと踏ん張りで御神楽岳(1,386m)山頂に到着した。立派な山頂標識があり傍には2等三角点「御神楽岳」がある。相変わらずガスの中だったが徐々に薄れてきた。食事が終わる頃には、雨乞峰の稜線が見えてきた。これは行ける!
御神楽岳の山名は、神楽を奏したことから名づけられたと言われている。しかし「クラ」とは岩稜のことで険しい山容から「御神楽」の文字が当てられ、後に神楽を奏したとの伝説が付け加えられたのではないかと言う説もある。
1キロ余り先の新潟・福島県境に本名御神楽(ほんなみかぐら・1,266m)があるので行くつもりをしていたが、登りだしが遅かったので時間的に厳しく、それに何よりペットボトルを失ったのが効いて水が足りなくなってきた。仕方がないので登山はここまでとして、もと来た道を戻る。湯沢の頭では来るとき完全に雲に隠れていた御神楽岳がその全貌を現し、写真に収めることができた。
それにしても御神楽岳の東斜面のスラブは凄まじいものがある。蝉ヶ平コースは難路続きで上級者向けとされているのが肯ける。雨乞峰から分岐する室屋コースはごく一般道で問題ないようだ。うんざりするほど急斜面の下りが続き湯沢出合に達するとほっとした。鉱山跡で立ち止まり登山時には意識的に目を避けていた遭難碑に「御神楽の 三川のもみじ もえるころ 君は帰らじ 云々」と刻まれた歌が目に入りガーンと打ちのめされたような気持ちになった。若くしてなくなった子を思う父母の心が切ないほど伝わってくる。
蝉ヶ平登山口に帰り着くと、出発の際にはなかった注連縄が登山道に張られている。2日後の山開きの準備なのだろう。立ち寄り湯は御神楽温泉みかぐら荘、500円の料金は17時を過ぎると300円になり益々お徳、湯船2つと露天風呂があった。入浴後は明日の登山口“二王子神社”に向かい車中で泊った。
2日目(6/6) 二王子岳 1,420m 曇り一時雨
【行 程】 ▲二王子神社5:10~定高山6:50-7:12~奥ノ院分岐8:35~二本木山8:54-58~二王子岳9:19-10:19~三光山10:44-50~二王子岳11:09-12:13~定高山13:16~二王子神社14:28-35=村杉温泉15:20-16:03=△M子邸16:16
【同行者】 4名
【登山データ】 歩行16.2㎞ 9時間18分 延登高 1,525m 延下降 1,525m 4座登頂
今日は東京時代の山仲間の同窓会。皆は7時半頃ここに到着する予定だが待っているのも芸が無く二本木山と三光山に足を伸ばすため独り先行し山頂で合流することにした。二王子神社は林道の終点にある神社で、無住ながら立派な規模と風格がある。大国主命、豊受姫大神などが祀られている。神社の前には廃屋となった小屋がありその脇が登山口となっている。
5時10分歩行開始よく整備された道を行く。樹林帯を進んでいると「一合目」と表示がある。まだ10分の1しか登っていないことにがっかりしてしまう。三合目は一王子神社、登山道から少し入った尾根の先端に石の祠がある。分岐点付近には一王子避難小屋も備わっている。
光度が増してきたので道端に咲く花の写真を撮り始める。行灯を吊り下げたような“ホウチャクソウ”、ピンクのラッパの“タニウツギ”、小さな花の“ズダヤクシュ”、そして何よりシラネアオイが女王様だった。今日は急ぐことはない、なるべく汗をかかないようにゆっくり歩いたがやはり暑い。
五合目は定高山(じょうこうさん・994m)、3等三角点「名引沢」が置かれているが展望はなく、標識も壊れて転がっていた。Docomoのアンテナが3本立ったので車で向かっているはずの皆にメール送信、そこうしていると雨がパラパラとしだした。大したことはないのでそのまま歩き出そうとすると、その途端強く降り始めた。観念して雨具を着ると皮肉なもので雨はすぐに止んでしまった。こうなると雨具は暑くて仕方がないので10分ほど歩いて脱いでしまった。
もたもたしているうちに後ろの方に人影が見えてきた。逃れるように歩き出し油コボシ(七合目)の急坂に達すると見晴らしがよく、しかもお花がいっぱいあるので、ザックを下ろし写真を撮っていると先ほど見かけた人影が迫りあっさり追い抜いて行った。単独行ではあまり抜かされることのない私だが、今日は大分道草をしているようだ。しかしカタクリの群落やミツバオウレン、鮮やかなムラサキヤシオにサンカヨウの素晴らしさがあれば当然だろう。
昨日の御神楽岳は山容が険しく雪もすぐに落ちてしまうようだが、二王子岳はなだらかな分たっぷり雪を蓄えている。登山道も雪渓横断あり雪田歩きありで楽しい。雪は腐ってアイゼンの必要はなかった。三王子神社の小さな祠を過ぎピークの南端に乗ると二王子神社奥ノ院跡、真新しい基壇だけが残り上には白玉が置かれていた。
奥ノ院のすぐ北に明瞭な分岐がある。これが新発田市と胎内市境の尾根で飯豊連峰門内岳に繋がる尾根だが途中までしか道はないようだ。二王子岳山頂は後回しにしてこの尾根辿り二本木山に行って来る。大きな雪田を横断し南東に進む。坂を登りきったピークは偽ピークでもうひと登りで二本木山(1,424m)山頂に達する。3等三角点「靡沢」があり展望は良い。ここから見る飯豊連峰は真向かいに見え素晴らしいはずだが、2,000m級の山々は雲に包まれ1,500mくらいから上は見ることができない。
偽ピークの北斜面からは雲のない二王子岳が大きく横たわり素晴らしい。来た甲斐があった。定高山で一寸降られた雨がまた降り出した。木のない稜線なのでまともに受ける、雨具も面倒なのでそのまま歩き二王子避難小屋へと滑り込んだ。暫くすると単独行の男性が入ってきた。食事をしながら新潟の山の話しで盛り上がっていると天候が回復し青空も覗いてきた。
外に出て二王子岳(1,420m)山頂に行ってみるといつの間に来たのだろう休んでいた1時間の間に沢山の人が来ている。相変わらず飯豊は雲の中だが、二本木山から飯豊に続く尾根は素晴らしい。実は二百名山の二王子岳より二本木山のほうが4m標高は高かった。北の稜線を見るとすぐ先に三光山がある。皆が来るまでにまだ1時間はありそうなので北稜線に足を伸ばすことにする。刈払いがされていない悪路なので雨具のズボンを履いて出発。ヤブ漕ぎと雪田歩きでなだらかな山頂の三光山(約1,340m)に達する。山頂標識もなく一番高そうな所を山頂としておいた。ここから見る二王子岳もまた格別だ。
帰りは1,304mの最低鞍部からの登り返しが辛い。山頂であらぬ方向から登ってきた私に奇異の目が注がれる中、山頂の一角に座布団マットを引いて皆を待つ。時間の読みは的中し、それから10分余りで皆は到着した。F澤さんとは3月以来、M子さんは昨年7月ペテガリ山荘ですれ違ったがS原さんとI藤さんは平成18年1月の千葉愛宕山以来の再会だ。そして同窓会は始まった。
12時13分山頂を後にし下山に掛かった。この一行によると8合目までの間でミズバショウの咲いている所があったそうで、楽しみにしていたが知らずに通り過ぎてしまったようだ。定高山の手前でまた雨が降り出したが雨具を付ける人、着けない人まちまちで歩き続けた。
下山後は五頭温泉郷の村杉温泉に立寄るが狭い駐車場は満車、ラジウムの共同浴場は諦め角屋旅館の風呂に入った。湯は熱く脱衣場に扇風機もなく上がってから大汗をかいてしまった。M子邸は村杉温泉から10数分、オーナーの手際よい仕度で早速乾杯となり久闊を叙しあった。
3日目(6/7) 五頭山 912m 曇り一時雨
【行 程】 △M子邸4:12=魚止滝4:30-44~赤安山5:46-50~五ノ峰6:33-48~四ノ峰6:53~三ノ峰6:58-7:00~二ノ峰7:06-07~一ノ峰7:16~前一ノ峰7:18~五頭山7:28-35~前一ノ峰7:42~一ノ峰7:45~三ノ峰8:54-9:11~五ノ峰8:18~赤安山8:48-51~魚止滝9:31-44=出湯温泉9:50-10:48=新潟11:32-13:02-高岡16:15-27-京都19:08-桂川19:22
【同行者】 1名
【登山データ】 歩行9.8㎞ 4時間47分 延登高 1,095m 延下降 1,095m 8座登頂
まだ暗い3時半この家のオーナーは起きて弁当の準備を始め、五頭山に行く私とF澤さんを送り出してくれた。五頭温泉郷の北の外れから山に入り、魚止滝の駐車場に車を止めた。周回登山のためまずは車道を戻り五頭山登山口から登りだした。標高900m余りの山なので簡単に登れるとなめて掛かっていたが結構きつい、それに二日酔いなのか体も重い。新潟からの列車の時刻(13:02)は変更できないので温泉に入って帰るには10:30には下山しなければならない。少しでも時間短縮しなければならないので時間に制約のないF澤さんより先行した。少し標高が上がると雲の中に突入、雨となり赤安山(582m)に着くとザックカバーを付け、水分不足で異常に消費した水を補充しているとF澤さんが追いついてきた。
追い出されるように歩き出すがやはりスピードは上がらない。五ノ峰(850m)で道を間違え10分余りの時間ロスをしてしまった。再びF澤さんに追いつかれてしまいガックリ。この時点で周回登山は諦めた。直後本格的な雨になり諦めたのは正解だと自分を納得させた。後はのんびり登山に切り替えてF澤さんの後について山頂を目指した。
五頭山(ごずさん)は本峰の他に6つの峰があり下から五ノ峰、四ノ峰と続き一ノ峰の次に前一ノ峰があり200m未満の間隔で続く。どの山頂にも展望があり楽しめそうなのだが、今日はどうしようもない。三ノ峰には小さいが小奇麗な避難小屋があり村杉温泉に下る道が分岐している。
三叉路で阿賀野市と阿賀町の境の尾根に乗ると五頭山は近い。当初の予定ではこの尾根を北東に縦走し松平山、山葵山を経由して魚止滝に戻る周回を考えていたがコースはまだ2/3残っている。五頭山(912m)山頂には3等三角点「小倉」があり期待していたが山頂はショボかった。雨の中休むこともできず三ノ峰避難小屋まで戻ることにした。村杉温泉から来た男性が一人休んでいた。初めて人に遭遇した。人気の山だがこんな日に登ってくる人はいないだろうと思っていたのに物好きはいるものだ。二ノ峰、四ノ峰、五ノ峰は登山道から外れるので立ち寄らないつもりだったが、五ノ峰の巻き道を見落とし結局経由してしまった。標高500mをきった頃だろうか雲の下に抜け雨は上がった。駐車場まで帰ると時刻は9:31ゆっくり温泉に浸かれそうだ。
出湯温泉の公衆浴場は入浴料200円ただし石鹸・シャンプーなし。一路新潟家を目指すと眠くて仕方がない。必死になって運転し新潟駅にたどり着くとS原さんとI藤さんが待っていた。4人で駅前の富寿司で打ち上げをして解散、北越号に乗り込み帰京の途に着いた。