京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2947 「RDBの会」第11回  植生観察(絶滅危惧種の保護)―コマクサの観察(燕岳・北燕岳)―

つばくらめ。昔、ツバメはそう呼ばれていた。つばくらめ、つばくら、つばくろ。雪形がツバメに似ているというこの山を最初に「つばくろ」と呼んだのは誰だろう。

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槍を背景に

 

 

[No.2947]2009年8月6日(木夜)~8日(土)

「RDBの会」第11回 

植生観察(絶滅危惧種の保護)―コマクサの観察(燕岳・北燕岳)―

 

【参加者】L山本憲彦、SL西田和美、四方真知子、田辺久美子、奥野淳子

【天 候】7日(金) 曇り時々雨

     8日(土) 雨のち晴れ

【記 録】

8/6(木) JR京都駅22:30 =(さわやか信州号高速バス)=4:30穂高

8/7(金) 4:35=(タクシー)=5:25中房温泉登山口1462m 5:53-6:42第1ベンチ

-7:20第2ベンチ-8:05第3ベンチ-8:24富士見ベンチ-9:36合戦小屋

-11:30燕山荘12:43-13:17燕岳山頂2763m-13:45燕山荘-19:00就寝

8/8(土) 4:00起床-燕山荘6:11-7:32富士見ベンチ-8:16第三ベンチ-9:12第1ベンチ-9:45登山口-中房温泉入浴10:50=(タクシー)=11:30穂高碌山美術館-15:45=(さわやか信州号高速バス)=21:40 JR京都

 

<記録>50期 奥野 淳子

 つばくらめ。昔、ツバメはそう呼ばれていた。つばくらめ、つばくら、つばくろ。雪形がツバメに似ているというこの山を最初に「つばくろ」と呼んだのは誰だろう。

 今夏の安曇野は梅雨明け宣言後も雨ばかりという。今朝も空は白い。キノコがたくさん顔を出している。夏の花に混じって秋の花も咲き始めている。合戦小屋で小雨がパラつく。小屋の標高は2363m。この辺りから高山植物が目につき始める。道沿いにチングルマの群落。ガスの向こうに薄っすらと濃黄のニッコウキスゲハクサンイチゲミヤマキンポウゲのお花畑。ホシガラスが一羽、枯れた針葉樹のてっぺんに止まっている。花崗岩のザラザラした坂を登ると燕山荘に到着だ。昼食後、燕岳山頂を目指す。稜線に雷鳥の親子。「雷鳥は雷を呼ぶんやで」とリーダーの予言? ガスの中に連立する花崗岩の巨石。その一つをRDBのメンバーは「ガブリエル」と呼んだ。幾重にも折り重なった羽。大天使の翼だ。広がる砂礫地にコマクサが点在している。他には何も育たない雲の上の砂漠に、この小さな植物は細く深く根を張っている。

 山頂の標識を囲み記念撮影する。次は北燕岳へ。かすかなゴロゴロという音。「雷雨になる。戻ろう」今回の目的は燕岳-北燕岳のコマクサ調査であり、まったく残念だが雷様には勝てない。雨脚の強まる中を転がるように下り、山荘へ駆け込む。まもなくバケツをひっくり返したように降り始めた。乾燥室へびしょ濡れの雨具や手袋を干す。部屋は別館・静かな奥の間。夕食までのひとときを図鑑で花調べをして過ごす。「RDBの会」の真骨頂だ。それから食べたり飲んだり眠ったり。夕食後「山が見える!」とあちこちから声が上がる。干していた上着をひっつかみ、靴紐を結ぶのももどかしく外へ飛び出す。見えた。今日初めてのアルプスの雄姿。燕が見える。槍が見える。富士が見える。息を止めてシャッターを押す。雲海の彼方に虹が架かり始める・・・

 翌朝、さぁ出発というその時、メンバーの靴が1足足らない。ボンヤリの記録係のミスで他の人が履いて行ってしまったのだ。小屋のレンタル靴で下ることになった。(すみません) 誰一人ボンクラをとがめず、普段通りに小屋を出る。白いヤマハハコ、紅紫のテガタチドリ、クロトウヒレンの黒いつぼみが花束のように広がっている。樹林の途切れから富士山が見える。息を切らして登ってくる人達に「この先で富士が見えますよ。雲がかかり始めてますよ。(急げ!)」とエールを送りつつ、中房温泉へと下る。

〔おまけ〕貸し切りの温泉で汗を流し、タクシーの運転手さんお薦めの一休庵で蕎麦を食す。東洋のロダン碌山美術館はレンガの洋館。新緑のツタが絡まる。とんがり屋根のてっぺんに不死鳥が翼を広げる。

 

<感想>44期 田辺久美子

久しぶりの夏山でした。天候が心配でしたが思ったほどでもなく、新しい雨具をいい感じに着ることもできました。久しぶりに水をはじけてうれしかったです。図書館で高山植物の本を借りていって、小屋でまじめに見た花を調べたりしましたが、もうすっかり忘れてしまいました。でも立ち止まっていろんな花をゆっくり見ることができ、ちょっとお嬢様気分でした。(見かけはちがいますが…)お花好きのみなさん、またよろしくお願いします。色々教えていただいたりお世話になりありがとうございました。

 

<コマクサの観察(燕岳) 感想> 

40期 西田和美

 アルプス三大急登と言われる合戦尾根(残りの二つはどこですか?)もどこら辺が三大急登なの?と思う間もなく、合戦小屋に到着しました。ここから燕山荘へと続く白い花崗岩の道は良く整備されており、空はどんより曇っていても気持ち良く、快適に歩けました。

 小屋で受付を済ませ、ガス(マイナスイオン満載でお肌に良いらしい)が立ち込める中、コマクサの観察に出かけました。ちょっとでも油断をすれば流されてしまいそうな砂礫地に、コマクサは平気な顔をしてちょこんと座っているように見えました。

 流れてくる霧を全身で受け止め、命をつなぐ一滴にかえようとしている姿は何ともけな気で、愛おしく思えました。何万と落とした種子の中からようやく芽生えた1cmにも満たない幼いコマクサ。花をつけるのは何年先になるのでしょうか。栽培試験地のある北燕まで足を延ばす予定でしたが、雷鳥の親子が『雷が来るよ。早よ帰り。』と言うので、降り出した雨に追い立てられるように小屋に戻りました。

 夕方になって雨が上がり、晴れ渡った槍の上空に真っ直ぐな虹がたちました。この次ここを訪れたとき、あの幼いコマクサはどれくらい大きくなっているのでしょうか。可愛らしく成長したあの娘に会うのが楽しみです。

 

<感想>42期 四方真知子

観察した花の名前を述べますが、名前のミステイクはご勘弁ください。

その前に、一言の感想を。

私にはたいへんな上り下りでしたが、グループのフォーローで、何とか無事に終えて皆様に感謝感謝でした。

最高の天気とは言えませんでしたが、霧雨のような中でも花観察は、雨は気になりませんでした。むしろお肌の乾燥を抑えるミストのようなもの。

夕食後の少しの晴れ間にすばらしい360度の景観、富士山・槍ヶ岳も見ることが出来ました。次の日下山時にも富士山が見えたり、雲海の多様な変化のすばらしいシーンも見れて最高でした。

そして、3点の注意することを覚えましたので、皆様にも報告いたします。

① 西田さんが山小屋の受付をしている間に混雑していたので彼女のステッキが行方不明になりました。幸いにも後から出てきたのでよかった、よかったですが、自分の物は手元から手放さないことでした。

② 私が下山中に休憩時斜面に向かってザックを下ろし水を出そうとした時にザックが斜面を2,3メートル転げ落ちました、素早く山本さんが拾い上げてくれましたからよかったです。ザックは斜面の方向いて置くな!でした。

③ これは一番のトラブルでした。田辺さんの靴が主人を置いてきぼりにしてしま

った、他人が間違えて履いてしまったのです。小屋で新品のレンタル靴を借りて彼女は無事下山しました。小屋泊まりは大勢いるのでこんな間違いがよくあるそうですから、自分の靴や持ち物には必ず名前を書いておきましょうということでした。

田辺さんの靴が帰宅するかどうかは不明で、がっかりした彼女でしたが、下山途中で神様からのちょっぴりのプレゼント(秘密?)があったのでまあ、このトラブルも良しにしておきましょうと、言うことにしました。

では花の名前を。

コマクサ・一薬草・四葉塩竈・深山穂躑躅・鳥足升麻・つくばね草・蛍袋・蔓竜胆(つるリンドウ)・蟹蝙蝠(かにこうもり)・深山秋の麒麟草・

蝦夷塩竃(えぞしおがま)・破れ傘・白山風露・伊吹トラの尾・唐松草・

手形千鳥・白山千鳥・零余子虎の尾(むかごとらのお)・深山ばいけいそう

岩桔梗・信濃金梅・日光黄菅(ニッコウキスゲ)・深山弟切草・しゃくなげ

青の栂桜(あおのつがさくら)・はんしょうつる・山母子(やまははこ)

小岩かがみ・めたからこう・いたどり・深山こごめぐさ・瓢箪木・車ユリ

深山きんぽうげ・ごぜん橘・黒とうひれん・せんとう草・白玉の木・

 

<感想>44期 山本憲彦

山を始めて早々に登ったのが燕岳でした。その何年か前に、安曇野碌山美術館も訪ねました。

今回はそのそれぞれ2回目になりましたが、実は前回のことはすっかり忘却の彼方に追いやられっぱなしでした。それが今回よみがえりました。

けれど、今回は4人の美女といっしょに登れるというのです!こんなに幸せなことはあるのでしょうか?「ラッキー!」ということで、バス、タクシーを乗り継いで、中房温泉に乗り込みました。

どうも雨模様です。その翌日は甲斐駒例会のメンバーが北沢峠に来るはずです。晴れて欲しい。何しろリベンジで鋸に登るメンバーもいるのです。

やはり途中で雨。合戦小屋では雨のためにスイカはあまりはけていないようです。そこから燕山荘まではお花を楽しむことが出来ました。

花の種類は四方真知子さんの感想にまかせます。

その後今回のメインイベントのコマクサの観察に行きましたが、雷雨のため早々に引き上げ。しかし、夕方にはすばらしい360度の展望を得ることができました。北は白馬岳、南は南アルプスから富士山、東は妙高、西はおそらく笠までが見えていたと思います。ただしすべて雲海の上に。

2日目も夜中のきつい雨は弱まりましたが、やはり雨です。ただ、合戦小屋あたりから晴れ間が覗き、日も指して来ました。富士山がデンと座って我々の下山を見守ってくれます。

中房温泉につかり、あとはバスの時間までにおいしい蕎麦をいただくことです。そして、堪能してバスの客となりました。

コマクサは、雷雨の中で、雷鳥の足下で、風に全身をふるわせながら身の数倍もの大きさの花をつけながら小さなコロニーを作って群生していました。日本では女性の人気ナンバー・ワンの花です。うちの4人の美女はいったい何を思いこの花を眺めたのでしょうか?

私の勝手で、当初の「餓鬼岳―燕岳ルート」が短縮されてしまったことをお詫びするとともに、次回は植生観察の例会として、餓鬼岳ルートは行います。ぜひそのときは参加してください。

みなさん、お疲れ様でした。

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コマクサ