京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.2976 冬山合宿:積雪期登山練習/ 蛇谷ヶ峰から霊仙山

積雪期比良全山縦走の完遂に立ち会えて、非常に良い経験となりました。

 日常的にクラブとして山行を継続&反復し、例会で会員同士の信頼を築き、日頃から山行管理をしっかりしておくことが、本番合宿の成功に結実したものと思われます。

1001hirazenzan0.jpg

 

 

No.2976 2010年1月9日(土)~11日(月祝)

冬山合宿:積雪期登山練習/蛇谷ヶ峰から霊仙山

     51期 T

【参加者】[本隊]CL上坂淳一(装備・食糧)、AT(記録) 計2名

[サポート隊]L 秋房伸一(記録)、米山佳秀(食糧) 計2名

【天候】晴/雪/晴

【記録】

1月9日(土)

07:30出町柳バス停~10:20蛇谷ヶ峰登山口~蛇谷ヶ峰山頂12:31~須川峠14:06~荒谷峠14:36~横谷峠14:56~地蔵峠16:26~釣瓶岳山頂19:58(幕営

1月10日(日)

06:00釣瓶岳~細川越06:51~武奈ヶ岳山頂8:55~八雲ヶ原10:27~堂満岳13:04~荒川峠14:17~烏谷山15:14~15:44摺鉢山東尾根~16:25烏谷山北西尾根(幕営

1月11日(月)

06:40幕営地~07:00烏谷山~比良岳08:01~木戸峠08:49~びわ湖バレイ9:15~蓬莱山山頂10:55~小女郎峠11:38~12:09ホッケ山~12:33権現山山頂~13:44霊仙山山頂~15:30栗原バス停

 

1月9日(土)

午前7時30分に出町柳駅に集合し、45分のバスに乗って桑野橋にて下車。

積雪はまずまずあるのでスノーシューを装着する。

しかし、蛇谷ヶ峰山頂の直下まで先行パーティーのトレースがあり、そこから山頂までのラッセルのみで、比較的容易に蛇谷まで到達することができた(12時半ころ)。

1001hirazenzan1.jpg

 

蛇谷ヶ峰の山頂からはトレースはないが、積雪も少なく(10センチほど)地蔵峠あたりまで比較的順調に進むが、長時間の行動による疲労で歩く速度は遅くなった。

地蔵峠を過ぎたあたりで日が沈んできたので、ヘッドライトを装着する。

イクワタ峠に着いたころには完全に日没をむかえたが、月明かりにより視界は鮮明であったため、ヘッドライトを点灯せずに稜線上を進む。

釣瓶岳にさしかかるにつれ積雪は増してゆき、ラッセルしながら登っていったが、途中からトレースが現れ、トレースに沿って(ときには外れながら)登る。

午後8時頃、釣瓶岳山頂に到着。

天候悪化と夜間で、細川越への下降路が不明瞭であったので、予定を変更して釣瓶岳山頂にて幕営することにした。

(夕食:アルファ米レトルトカレー

 

 

1月10日(日)

両名とも疲労が激しいので、予定より一時間遅く起床し朝食を採る(朝食:雑炊)

天候は雪。日が昇るまではヘッドライトを装着して歩く。

視界悪く、途中武奈ヶ岳への稜線を見誤りそうになったので、地形図とコンパスで確認しながら進んだ。

稜線の東側に雪庇が出ていたため、それを避けすこし西側のブッシュの中に進路を取る。

やがて、ブッシュが開けてきたあたりから武奈の山頂まで積雪が深く(1mほど?)、ラッセルをして武奈ヶ岳山頂に到着。

1001hirazenzan2.jpg

時刻も早いせいか、山頂にはどの稜線からもトレースがついていなかった。

山頂よりコヤマノ岳方向へ降りたところで雪上訓練中の大学生山岳部、3名のパーティーと出会う。

パーティーは八雲ヶ原からやってきたと言うことで、そこまでトレースがついていることと、天候により視界不良であるという理由から、コヤマノ岳ではなく八雲ヶ原から堂満岳への進路に変更。

そこから堂満岳までは明瞭なトレースがついており、夏道とほぼ同じスピードで移動することが出来た(ここでスノーシューを取り外す)が、幕営地の変更と、昨日からの疲労が色濃く、予定より1時間半ほど遅れて堂満岳山頂に到着。

休憩後、山頂から登山道を少し戻った藪の開けた部分から堂満岳南西面の沢筋を南比良峠方面へ下る。

登りに時間を要した堂満岳だったが、下りは通ったルートが良く、ものの十数分ほどで下りることが出来た。(長野さんのアドヴァイスによるルートとのこと)

その後、荒川峠方面から秋房さんのコールが聞こえ、コールを返す。

荒川峠手前の斜面を登り切った所で偵察に来ていた秋房さんと合流、荒川峠で米山さんと合流し、1時間遅れの午後2時ころ、無事にサポート隊との合流を果たした。

1001hirazenara.jpg

荒川峠で小休止のあと、烏谷山までは順調に進んでいたが、下降路を誤り摺鉢山のほうへ下山してしまっていることに途中で気がつく。

すでに日没が近づいていたので、烏谷山の少し手前まで登り返したところで幕営することになった。(午後4時半頃)

テントを設営して、その晩はサポート隊の荷揚げによる石狩鍋を食して就寝。

 

1月11日(月)

予定より30分ほど遅れた時間に起床。

朝食(石狩鍋残りで雑炊)をとり出発する。天気は快晴。

まだ薄暗い中、テントをたたみ烏谷山まで戻ってくると、琵琶湖のほうには雲海が出来ていた。

1001hirazenbuna.jpg

(写真 烏谷山山頂より武奈ヶ岳を望む)

 

午前8時ころ、比良岳到着。ここまでくるともうトレースも明瞭なものがついていて、これといって困難なところは無い。そのままびわ湖バレイまで順調に進む。

びわ湖バレイから、打見山はスキー場が営業中なのでとばして、蓬莱山へ向かう。

蓬莱山へのトレースは無く、スキー場を横目にラッセルをしながら蓬莱へ登った。

蓬莱までのラッセルは、積雪深く困難を極めたため、ここでスノーシューを装着したが、蓬莱山山頂の先はまた明瞭なトレースが先のほうまで見てとれたので、ふたたびスノーシューを外す。

1001hirazenzan3.jpg

蓬莱山から権現山、霊仙山までは夏道を歩く時間とまったく変わらぬ時間で歩行出来るほどの明瞭なトレースがあり、とくに苦労なく霊仙山に到着。ここで全山縦走が完了した。

1001hirazenzan5.jpg

(写真:霊仙山にて=積雪期全山縦走完遂)

 

霊仙山から栗原までの下降路は意外に危険で、急斜面に落ち葉、木の根と積雪のミックスになった路面のため、何度か転倒しながら下降していった。

予定より1時間ほど遅れた、午後3時30分ころ、栗原のバス停に到着。無事に帰京を果たした。

 

 

比良縦走感想 48期 上坂

 

 山登りの三要素といえば、体力、技術、装備といったところでしょうか?それに外的条件として、もちろん天候(今回はとても恵まれていました)もあります。

しかし、それらはどの登山者にとっても同じことです。

 僕がこの山行を終えてつくづく思うのは、結果よりもそれを生み出すプロセスや背景のほうです。少し以下にまとめてみました。

 

1 過去数年にわたり、長野リーダーが、さまざまな悪条件の中で実施してきた冬山合宿の蓄積から、事前に困難さや厳しさが予想できたこと。また、参加者のうち半数が昨年の同企画体験者であったことも心強かった。

2 秋房氏から「1月9日は仕事で参加できないので、後半のみ参加したい」との申し出があったとき、とっさに「じゃ集中で行きましょう。サポートしてください。」と言い放っていた。秋房氏も当然のように応じてくれた。これは、秋房氏が昨年の長野リーダーの縦走で難しさを体験していたことと、この一年間に沢登りや藪こぎで何度も同行したことがあったからで、見ず知らずの人であったなら、集中どころか参加すら躊躇しただろう。そして、一部集中としたことによって行動中の緊張感が高まったことが、成功に欠かせなかった。サポート参加の米山さんにも食担という地味な役回りを引き受けていただき、感謝しています。

3 集中で最も困難なのは、ランデブーすることよりも「合流できなかった場合の混乱をどうやって回避するか」という問題です。この点は日帰り例会も含めて常時留守本部がしっかりと山行管理をしていてくれていたので、計画書に「合流できないときは、各隊は本部の指示を仰ぐこと」という、わずか一行で済ませることができた。各隊は自隊の前進行動にのみ専念すればよかったので、集中形式を採用したことによる精神的な負担はほとんどなかった。

 

 要約すれば、日常的にクラブとして山行を継続&反復し、例会で会員同士の信頼を築き、日頃から山行管理をしっかりしておくことが、本番合宿の成功に結実したものと思われます。

 山岳会の古典的な組織運営にはいろいろと御意見もあるでしょうが、この山行は「個人の力量では成し得なかったもの」といって間違いないと思います。

 最後になりましたが、岳連司令部付からKHMCの前線に復帰して一年足らずで、このような仕事を与えてくれた会員の皆様に改めてお礼を申し上げます。

1001hirazenzan4.jpg

 

 

冬期合宿 「サポート隊」 報告

52期 秋房

1月10日(日)~11日(月) 天候 曇時々雪

参加者 秋房伸一 米山佳秀  会員2名

【行程】

10日 7:25京都駅=8:06-12志賀駅~9:14登山道~11:00広葉樹林スノーシュー)~11:42稜線~12:06荒川峠 14:00本隊と合流

11日 (本隊の記録参照)

【記録】

 湖西線の車内で食材担ぎ分担を済ませ、駅に到着次第すぐ出発できるように心がけた。荒川峠への林道には雪は無い。登山道に入ってしばらくすると雪化粧となるが、歩行にはさほど影響を与えない。植林帯から広葉樹林になるあたりで一挙に積雪量が増し、スノーシューを装着。楽になるかと思ったが、雪が重く、脚への負担が大きい。

合流予定時刻のほぼ1時間前に到着できたので安堵する。サポート隊が本隊を待たすわけにはいかない。荒川峠へは先行トレースは無かったが、縦走路には踏み跡。

 峠は雪が深く、体の冷えを防ぐため、緊急用に持参したテントを設営。テント内で行動食をとり、合流予定時刻前に片付ける。

 荷物を峠にデポし、空身で本隊到着方向に偵察に行く。比良山コールをしていると、すぐ近くから返事が聞こえた。女性の話声のようなものもする。声が明瞭に聞こえた割には本隊がなかなか現れないので、女性と一緒に行動食でもとっているのかと思ってしばらく待つが、会えない。積雪期なので夏道外のルートで先回りして荒川峠に到着しているかもしれないと思って峠に戻ったが、まだ。再度偵察に行き、しばらく待っていると、雪の急坂からTさんが現れ、後ろに上坂さん。積雪の中、長距離を歩いてきた迫力がにじみ出た姿だった。

 後に聞いたところでは、堂満岳から下る途中で比良山コールを返したとのこと。地形や風向きの関係で、かなり離れていても明瞭に聞こえたということだろう。

 

【感想】 52期 秋房伸一

 積雪期比良全山縦走の完遂に立ち会えて、非常に良い経験となりました。体力的に限界までもっと追い込むスポーツ(※登山がスポーツであるかどうかはここでは問わない)は他にもあるでしょうが、管理された空間においては相当な追い込みをかけても大丈夫であっても、管理されていない雪山という自然条件下にあっては無闇に限界に近づいてはいけないわけで、体力と気力を見定めながら行動を決定していく好例を学ばせてもらいました。

 参加メンバーの役割が明確に指示され、それを楽しくこなせたというのも良い経験です。以前、沢例会の感想で竹田さんが「団体競技的な楽しさ」と書いておられたのを思い出しました。雪もそのとおりです。雪や沢には自然そのものの魅力に加えて、チームで完遂するという喜びがあります。

 基本的には単独行を好むタイプだと思っている私ですが、団体競技は面白いです。

 権現山で全縦は完登かと思いきや、霊仙山頂も踏み、完璧な比良全縦となりました。サポート隊ではありましたが、「歴史的」瞬間を共有できて、うれしかったです。ありがとうございました。