京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉 金勝アルプス

金勝アルプスは滋賀県栗東市草津市に跨る金勝山を最高峰とする山域である。低山ながら花崗岩の大岩がにょきにょきと生え、将に“アルプス”を思わせる光景が広がる。琵琶湖一面を雲海が覆う珍しい現象の中、今を盛りと色付いた木々に深まり行く秋感じた一日だった。

20101121金勝山1

写真1: 雲海に浮かぶ三上山(北峰縦走線より)

 

 

〔個人山行〕 金勝アルプス   平成22年11月21日(日)

48期 山本浩史

金勝アルプスは滋賀県栗東市草津市に跨る金勝山を最高峰とする山域である。低山ながら花崗岩の大岩がにょきにょきと生え、将に“アルプス”を思わせる光景が広がる。琵琶湖一面を雲海が覆う珍しい現象の中、今を盛りと色付いた木々に深まり行く秋感じた一日だった。

 

【メンバー】 葛城美知子、山本浩史  計2名

【行  程】 京都6:55-草津7:30=7:56上桐生7:58~8:58鶏冠山~10:01天狗岩10:07~10:24耳岩10:47~10:56白石峰~11:16竜王山~11:50金勝山~13:20白石峰~13:46狛坂磨崖仏~14:49上桐生

【登山データ】 天候:曇りのち晴れ 歩行14.5㎞ 6時間53分 延登高 886m 延下降 886m 6座登頂

20101121金勝山地図

 

 

 金曜日の夜、同行者を求めて山岳会の皆さんにメールを出すと、葛城さんが来てくれた。JR琵琶湖線で東山トンネルを抜け山科盆地に入るとどうもガスっぽい。逢坂山トンネルを抜けると濃霧だった。視界は100mに満たないひどさとなった。上桐生行きのバスに乗り継ぎ、終点で降りてもやはり霧、京都は快晴だったのに・・・

 有料駐車場の外れから北谷林道に入り、まずは鶏冠山を目指す。林道を離れ登山道へと入る。暫くすると右手に奥池を見るが霧で池面は定かでない。谷筋の道は渡渉も交えて花崗岩の川床とウラジロの下草が茂り、独特の雰囲気がある。園地を周遊する“たまみずきの道”なる遊歩道と交差し更に登ると北谷林道の果ての登山道と合流し張り出した尾根に取り付く。この辺りまで来ると雲の上部に抜けてしまい下界は一面の雲海で琵琶湖がすっぽり埋まっている。 “北峰縦走線”に乗り上がった処は近江富士(三上山)を望むポイントとなっており雲海に浮かぶ姿は幻想的だった。

 

 ニセピークを越えるとそこは鶏冠山(491m)、3等三角点「荒張」が置かれているが展望は木の間越しに見える程度。先客は男性が二人、同じ方向へ行くようだ。二人組みの後を追うように歩き始めるといよいよ“アルプス”らしくなり巨岩が現れだした。岩の上に乗ると視界が広がり前方の天狗岩の荒々しい岩峰が素晴らしい。曲がりくねった北峰縦走線を進み天狗岩基部に達すると「天狗岩」の標識があり、大岩を右回りに回り込んで山頂部に到る。最ピークの岩へは登れないが2.5万図には509mの標高点が記されている。岩の上は十分の高度感があり360°の展望がある。此処まで来ると人が増えて来た。登山者と云うより軽装の人が多い。ほんのハイキング気分の山のようだ。

耳岩に至ると10数人の団体が記念撮影中。入れ替わるように同方向に出発して行ったので、時間調整のためにここで早めの昼食を摂った。耳岩の隙間は狭くザックを背負ったままでは登れない。太った人も無理だ。耳岩の上は狭くボーイスカウトの子供たちが順番に登ってはポーズを取っていたので“登頂”は諦めた。

白石峰に到ると、さっきの団体が昼食中で狭い登山道の真ん中にまでシートを広げて・・・全く傍若無人!展望もないので通過して竜王山へと向かう。縦走路では所々南側の展望が開け、目的地の金勝山が見えてきた。馬頭観音のピークとの間に阿星山(693m)が顔を覗かせている。ここも金勝アルプスの一部らしいが尾根は続いていない。大岩の隙間を抜けるように進むと茶沸観音と云う小さな観音様が岩に彫られている。縦走路が90°折れ曲がり竜王山に近づくと、その基部に栗東市にある大野神社境外社・天之水分神社の祠と金勝寺八大竜王の祠が並んで鎮座している。竜王山(605m)山頂は此処から分岐し50mほど入った所にある。展望は一部だけだが4等三角点「竜王山」が置かれて山頂標識もある。

 

東に少し進むと金勝寺林道に到る。公衆トイレの前には自衛隊のテントが張られ通信の調査か何かをやっているみたいだった。一番高い所に馬頭観音堂が建っている。肝心の馬頭観音は昨年の4月に良からぬ輩に盗まれやはり中は空のようだ。

此処からは林道を歩き金勝寺方面に進む。金勝寺の北にある山が金勝山(612m)で寺名の「こんしょうじ」とはちがい「こんぜさん」と読ませる。登山道はなく藪を漕いでピークを取った。小さなプレートが2枚木に掲げられていた。さて金勝寺へは地形から判断すると真南に下りればいいが、境内へどう入るのかが問題だ。林道へ下りることも選択肢にして右へ迂回して回り込むことにした。この選択は正しく金勝寺最奥の大講堂跡の遺跡に下りてきた。

金勝寺は此の山中に比較的広い寺域を擁し聖武天皇勅願寺として733年に建立された金勝山大菩薩寺がそのルーツであるとされている。今は最奥に虚空蔵堂、釈迦如来像を安置する本堂、二月堂と仁王門が現存している。折しもこの日は境内の紅葉が見頃で夜間ライトアップのため参道に行燈が並べられている。ボランティアガイドも沢山おられたが参拝者はまばらで静かに拝観できるのは有難い。それに甘酒の接待もありいい日に行き合わせたものだ。

林道を通り馬頭観音、白石峰へと戻る。馬頭観音の駐車場にはまだ沢山の車が止まっている。登山道に入ると軽装の人達が何組も下山して来た。考えてみれば上桐生より馬頭観音の方が、標高が高く最短距離で天狗岩に行ける。白石峰からは“狛坂線”に入り下山に掛かる。まず出てくるのが重岩、大岩が不安定に二つ重なっており奇観だ。国見岩は特に表示がなく後から考えるとベンチのあった所が国見岩のようだ。近江の国を見渡せるほどの展望があった。

 

 狛坂磨崖仏は花崗岩の大岩に彫られた如来座像で両側に菩薩を従えている。この地は狛坂寺の跡で石垣や整地されたのであろう平地にその痕跡を留めている。その昔女人禁制の金勝寺の代替として女性の参拝のために建てられた寺であったようだ。

 谷筋の道を下り南谷林道との“出合”に達すると林道歩きで上桐生へと戻る。此処には20年程前に来たことがあるが主体的に歩かなかったので記録も残さず、今回辿ってみて記憶を呼び戻した。ただその時はまだ新名神はなかった。今では金勝アルプスの真下をトンネルで抜けている。新名神の高架を潜り暫く行くと“逆さ観音”があったがついつい見落としてしまった。南谷の橋を渡るところにあるオランダ堰堤は日本最古の割石積堰堤でオランダ人技師の手によって作られたそうだ。

物々しく一般人の立ち入りを制限しているキャンプ場の横を抜けると元のバス停に到着、11分後のバスに乗り草津へと戻った。  《山紀行723》 

 

20101121金勝山2

写真2: 天狗岩と鶏冠山(北峰縦走線より)

 

20101121金勝山3

写真3: 馬頭観音のピークと金勝山(竜王山東稜線より)