京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3110 比良55-20 蛇谷から蛇谷ヶ峰

2011年5月15日(日)

稜線から山頂にかけての新緑の長閑な景色と、緊張の連続する登下行。迷いまくりの読図と大変バラエティに富んだ企画でした。

 

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写真:蛇谷ヶ峰山頂にて

 

【参加者】L)秋房伸一、上坂淳一、寒川陽子、AT、小松久剛、須河麻衣、酒井敏行、藤松奈美 会員8名、合計8名

【天候】快晴

【記録】

烏丸御池7:30=(マイカー)⇒7:50八瀬=(マイカー)⇒9:00富坂P9:20→10:20北谷出合→10:35休憩50→11:30蛇谷ヶ峰北登山道出合→11:40蛇谷ヶ峰12:10ー(中谷)→15:25南谷出合→1600富坂P

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地図:GPS軌跡

 

 後に「比良の父」といわれた角倉太郎氏は『比良連嶺』朋文堂1941、で蛇谷ヶ峰については次のように述べている。

「・・・この山名の由来する「蛇谷」は、頂上から南東の富坂部落へ流れる谷であるが、村人に聞いてもこの谷の蛇に就いては特別の話を持っていない。水量の少ない会豁明朗な谷で、富坂から少し登った処に僅かばかりの露岩地帯があるだけで、別に畏怖されるほどの凄みもない。

 村の子らは栗の実が いがらからのぞく時分になると、平気で谷を遡って行く」

 

 地元では「蛇谷ヶ峰」といっても知らず、地区によって呼び名は違うが、単に「西山」と呼んだり、「オグラス」と呼んだり様々な呼び方をしていたとのことである。

 

 近くにある「須川峠」も、地元では使われていない「ボボフダ峠」とされていた期間が長かったし、比良連峰が登山の対象として「発見」された時代に、都会の登山家によって命名されたのかもしれない。“エベレスト”がエベレストと命名されたのと似た構造か。

 

 天気は快晴。富坂の林道ゲート手前に車をデポし、沢装束に身を固め、スタート。酒井は、今回が沢靴デビュー。

 

 沢経験者と初心者をペアにして、マンツーマンで安全を確保する意図で、オーダーを組む。先頭はTと酒井。2番手は上坂と藤松、続いて小松と須河、寒川は遊軍としてフリー。

 

 地図にない堰堤が数個あり、最終堰堤を越えたところで入渓。といっても、河原歩きの雰囲気。青空に新緑が映える。黒色の取水ホースが並行。人の手が加わった風景であり、緊迫感は少ない。但し、足下はザレ気味。

 

 しばらく歩くと、倒木が何重にもあり、それを避けるために、高巻く。

 

 蛇谷本流は 標高550m付近で「北谷」「中谷」「南谷」に分かれる。

 

 登りは本流である「中谷」、帰路は「南谷」を下降する計画であったが、後でわかったのだが、実は、北谷に入ってしまっていた。

 

 小さな滝があるがすぐ横を普通に歩ける。すぐに水流がなくなり、やけにあっさりした谷という印象。

 

 涸れ沢となっても谷の形状は明瞭だが、倒木が多く、右岸の小尾根に登り、そのまま稜線にでる。稜線は風が爽やかであった。

 

 本来の計画である中谷を詰めるとピークにでるはずが、北方にずれていることは、途中から理解していたので、ピークで一休みした後、下降は中谷に変更。

 

 下り初めはなだらかで穏やかだが、だんだん切れ込みが深くなる。道に迷って、沢を降りてはいけないというが、実際降りるとどうなるのかを学習するよいチャンスである。

 

 結局2回懸垂下降し、デポ地にたどり着いた。“大滝”の懸垂箇所では下降して待機していた須河のヘルメットにどこからともなく落ちてきた小石がヒットした。ヘルメットをかぶっていて良かった。

 

 水流が少なくいわゆる沢登りの魅力には欠ける沢であったが、濡れたザレザレの斜面を登ったり降りたりする良いトレーニングとなった。やはり沢靴とヘルメットは必携の谷である。

 

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 写真:蛇谷中谷 滝を懸垂下降

 

【感想】 48期 寒川陽子

 いろんな意味で予想を裏切らない沢だった。樹林帯の暗くて狭い沢かと思っていたが、規模の割に明るめで、蛇谷ヶ峰同様さわやかなイメージを持った。

 

 全般的に岩砂利が多く嫌なザレ、足場があまり信用できなかった。しかし水量がないため、水中の良さげな足場を選べたのが救いだった。障害物も多く、沢の巻きや登山道の悪路を行く練習にはもってこいの沢だと感じた。

 しかし、連日の雨続きで地図の沢規模と水量の勘が、山から離れていたため距離感が、それぞれ鈍っており、北谷出合にて北谷へと進路を取ってしまった。中谷や南谷よりも先に合流する事を地図読みしていたし、北谷に入ってからも確認する機会が何度かあっただけに残念である。

 前回参加の例会は恥ずかしながら打ち身だらけの上に例会直後より3日程筋肉痛に悩まされたが、今回は悩まずに済みそうである。登山における体力や様々なスキル。年間入山数は限られているのだから、日々の生活における努力維持について意識的に取り組んでみたい。

 

【感想】 53期 酒井敏行

思い起こせば私が比良山岳会に入会したのは、比良55と関西百名山の合同企画、白滝山→森山岳→蓬莱山直登のプチ薮こぎコースに体験参加させていただき、大変楽しかったのがきっかけでした。

今回久しぶりに比良55シリーズに参加させていただきましたが、想像以上にマニアックで楽しい山行でした。迷い込んだ支谷であまりにも唐突に沢が消えたときにはいったいどうなることかとも思いましたが、山頂では谷を詰めたものだけに許される(?) 素晴らしい眺望が出迎えてくれました。

下りの本谷では水も美しく、ガレガレかつ倒木だらけの急な沢筋下降は、大変実践的な良い練習になったと思います。懸垂は下降器のセッティングがイメージどおりにいかなかったので、この点は次回の課題です。

また、今回沢初体験でしたが、沢の中を歩くことの難しさと面白さも、ちょっとだけ分かったように思いました。機会があれば、蛇谷再チャレンジしたいですね!

今後も比良を歩きつくしましょう!

 

【感想】 54期 藤松奈美

 登りも下りも緊張と恐怖の連続で、体ががちがちでした。

 どこに足をおいても崩れる岩、砂。大きな岩ですら崩れ、何も信用できない沢でした。

 

 何でみなさんがすいすい行ってるのか理解できず(もちろん能力と経験の差であることは分かってます)

 遅れたらいけないとあせって、余計に固くなりました。

 思い返せば、リトル比良の初スノーシューでは、ハイキング気分が味わえますと言われて、

 80度のように思えた斜面をやぶこぎするはめになり、

 春の山だと思って軽装でのぞんだ水晶小屋では、雪山でビニール袋をスパッツ代わりに。

 

 今回は、さわやかさはないかもしれないですが危険はないです、との言葉に勇気づけられたのに。

 だまされると思いつつ参加するのは、未知を歩く麻薬みたいなものに、取りつかれたのでしょうか。

 登山道じゃない道は、山の素顔が見えるような気がします。

 

 怖かったけど、それでもやっぱり楽しかったです。(降りてから思えたんですけど)

 それでもすがわさんの「なみさんゆっくり、がんばって」といういつもの言葉がなかったら心が折れてました。 まいちゃんありがとう。石がまいちゃんの頭に落ちたときは本当にびっくりでした。

 無事でよかった。沢にいるときは絶対にヘルメットをはずしてはいけないと、痛感しました。

 

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写真:中谷を下降

 

【感想】 53期 須河麻衣

「比良55シリーズは今回で三度目です。毎回、味わい深い経験が出来る不思議なシリーズなので、今回も是非とも行きたい気持ちに駆られました。

沢の感想は、とりあえず足場が悪く小さい岩ならまだしも大きいものまでぐらつく、掴む岩が脆く崩れ、とにかくどの岩も信頼出来ないといった感じでした。救いは意外と滑りにくかった点です。

足場ばかりに目が行きがちでオロオロしながらの登行でしたが、ふと見上げた時の新緑の綺麗さには心救われました。皆さんそれぞれの高評価の沢の感想が、良かったですね。

 

帰りは、懸垂下降の場面が二度程あり、まだまだ手際が悪く下垂時の手のロープの送りもぎこちなく経験不足だと痛感。

大滝の懸垂下降後、ホッと安心し、エイト環を外しにかかっているとエイト環・カラビナ外しに手こずり、もたもたしていると「ゴンッ」と小突かれた衝撃があり、瞬時はもたつきをみての喝かなぁ…と。いやいやまてよ、もしかして落石!!ヘルメットの前方部に凹みがありその時初めて状況把握が出来き、ヘルメットの重要性とともに落石の怖さを知る体験となりました。今振り返れば、エイト環外しに、もたつきがなければ、顔に直撃だったような気がします。無事で良かった。

 

しかし、無事に下山した後での今回の感想はやはり比良55の秋房さん例会シリーズは毎回貴重な体験と、普段味わえない厳しさ、

「下山時には不思議とまた山が好きになっている気がします。病みつきになりますね、 秋房さん例会はまたまた是非とも参加させてもらいたいと思います。

一緒に参加した皆様ありがとうございました。ワラビの天ぷらも美味でございました。藤松さん沢山とってくれてありがとうございました。(翌日、ワラビの食べ方を検索したらアク抜きは必ずしてから天ぷらをと…。してません。)

 

【感想】 51期 AT

怪しい山行をすることで定評のある秋房例会ですが、今回も蛇谷ヶ峰の蛇谷に行ってみようという、なかなか興味深いマニアックな企画です。

はじめ、導水パイプが通っているほうの谷が蛇谷と勘違いして登っていて、ロクなものではないな。と思っていましたが下りに使った本当の蛇谷は思ったより悪くない沢で、水はとても綺麗でした。岩もアクアステルスとは相性よくぜんぜん滑らない。滝も、ひとつだけとはいえ20mくらいの見ごたえある滝がありました。

ただ、ハエがたくさんいたり、倒木に阻まれたりして大変で、何より谷中の岩がほとんど浮いていて、通常は絶対に動かないような大きな岩でも、足を乗せるとゴロンゴロンと転がってしまうのは大変危険でした。(「ルンゼ」の一歩手前なのでは?)

怪しい例会に参加する怪しいメンバーもだんだんお馴染みになってきた感があります。

怪しいメンバーのみなさま、ご一緒いただきありがとうございました。

 

【感想】 52期 小松久

「比良55」と検索すれば、「廃道」、「藪漕ぎ」、「懸垂下降」、「秋房さん」というワードが出てきそうなほど、マニアックなコースをたどる例会だとお聞きしており、暫くは参加を見合わせていました。

久しぶりに参加させていただいて、やはり聞きしにたがわぬマニアックなコースを歩くことができました。

そもそも、蛇谷を遡行している記録がほとんど無く、数少ない記録にも「藪沢」「送水ホースが興ざめ」など書いてあったことから、どんなところを歩くのやら、と戦々恐々でしたが、実際に遡行していて記録どおりのなかなかのハードな道でした。

なにより、他の感想にもありましたが浮石とこれに伴う落石がひどく、大滝の懸垂下降の終了点で須河さんの頭部に落石が直撃し、ヘルメットがへこんでいたのが衝撃的でした。須河さん生きてて良かった。。

今回は落石の多い箇所では絶対にヘルメットは脱がない、常に頭上に気を配る、という教訓を得たり、浮石を踏まない歩き方の練習が出来たりと、非常にためになる例会でした。

また、遡行終了点から山頂までは新緑も美しく、清清しい山歩きを楽しむことが出来ました。

皆様ありがとうございました。

 

【感想】 48期 上坂淳一

稜線から山頂にかけての新緑の長閑な景色と、緊張の連続する登下行。迷いまくりの読図と大変バラエティに富んだ企画でした。

 歩きながらもみんなで「比良55とは何ぞや」と盛り上がっていましたが、結局のところ「秋房例会」という解釈あたりに落ち着く(落ち着いてない?)のではないでしょうか?それにしても秋房氏の遊び人としてのセンスは出色ですね。

また「比良」山岳会を名乗る当会にとってもこの55シリーズは大変有意義であると同時に、技術的にも【ためになる】山行であったことを申し添えておきます。

 

【感想】 52期 秋房伸一

山は全国に無数にあり、行きたい山だけでも一生のうち実際に行けるのは限られています。

そこをあえて「比良山系に55回、比良山岳会55周年までに行こう!」というのが「比良55シリーズ」と銘打つ一連の企画の趣旨です。今回でようやく20回になりましたが、比良山系だけでもまだまだ行きたい所は沢山あります。今後とも、みなさん、よろしくお願い申し上げます。