京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3120 比良中谷アルファルンゼ(比良55-23)

2011年6月19日(日)

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【参加者】
CL AT、SL秋房 伸一、寒川陽子、小松久剛、須河麻衣、酒井 敏行、高橋秀治 計会員7名

【日時】 2011年6月19日(日)
【天候】曇り時々雨
【行程】
7:30烏丸御池=(マイカー)⇒8:25荒川登山口駐車箇所
荒川登山口駐車箇所8:55→9:25大岩谷堰堤→9:30F1→14:00F4→15:15登山道出合→15:20クロトノハゲ35→15:50源頭部懸垂下降17:00→18:00F2→20:00大岩谷堰堤→20:20荒川登山口駐車箇所
荒川登山口駐車箇所20:25=(マイカー)⇒21:15京都市

【記録と感想】51期 T
 7:30にロッジ前に集合、9:30頃にアルファルンゼ取り付きに到着した。
 3月あたりにいちどアイゼントレで訪れたアルファルンゼは、雰囲気的にけっして気持ちの良い谷とは言えなかったことから、気分の盛り上がりに欠けるCLとは対照的に(だったら企画するなという話だけど)、何故か妙にテンション高いメンバー方々。

 ルンゼ内の滝がほとんど雪に埋もれていた前回とは違い、岩肌が全てがあらわになっていて、いくつかの涸滝(水がチョロチョロとは流れている)が、難関として行く手を遮っている。
 中には少し難しい滝などもあったが、クライミングジムに通っているメンバーが多数いるということもあってか全員登攀意欲が高く、「こわいこわい」と言いながら果敢に突破していく。
 ルンゼの上部、両岸を岩壁にはさまれた狭い廊下状の斜面があり、そこを抜けるとルンゼは源流部のようであった。
 そこからは足場がザレザレになっていて、落石が多く危険だったので、右岸の尾根にうつって稜線まで詰め上がると、クロトノハゲから目と鼻の先ほどの登山道に出た。
 クロトノハゲで少しだけ休み、時間が押しているのですぐ下山にかかることにしたが、ここで計画である懸垂下降での下山に、メンバーより反対意見が出る。

 理由は、落石を避けるため尾根筋から懸垂下降を開始しようとしていたため、そのまま尾根を下って遭難する恐れがあることと、すでに15時をまわっていて時間が遅いので、日が暮れてしまうと懸垂下降をすることは危険である、多少遠回りでも登山道から安全に下山したほうがよいということからであった。
 これにたいし、懸垂下降の方が早く下山できること。落石の危険があるのはルンゼの上部ごくわずかな区間だけであったことから、そこだけをまいて、あとはアルファルンゼをそのまま下降するだけの単純明快なルートをとれば、道に迷う心配が無いこと。一年中でもっとも日が長い時期なので、多少下山が遅れても暮れるまでには下山できるだろうということ。実践的な懸垂下降の良い訓練になるだろう、という考えからCLの独断で懸垂下降にて同ルート下降下山をすることにした。
 
 しかし時間に対する見通しがたいへん甘く、アルファルンゼに戻るために尾根筋から懸垂下降を行ったところ、全員が下降し終わるまでに1度の懸垂下降で1時間以上もの時間がかかったことから、これは間違いなく日が暮れるであろうと思い、CLの判断が間違っていたことを詫びた。
ルンゼ下降をしていると雨が降ってガスが出てきたりして視界が悪くなり、谷中はうす暗くいかにも険悪な雰囲気になってきたが、見かけは別としてこの下山ルート自体は、明瞭なルンゼを下っていくだけでよいので、どんなに視界が悪くても道迷いの心配は無い。
 また谷中の岩はどれも脆そうに見えるが、全体に安定しているものが多く落石は少ないし、ゴツゴツした岩や涸滝は威圧感があるが、地形的にはむしろ、懸垂下降の練習場として適していると言ってもいいほど、懸垂下降しやすい地形である。
 
 それらの要素から、見かけよりずっと安全な下降ルートだと言えると思う。(懸垂下降で降りることを前提にした話だが。)
 そこで、もし危険な要素があるとすればそれは、雰囲気にのまれて必要以上にあせったり怖がったりしてミスをするという、メンタル面から引き起こされる事故だと思った。(懸垂下降は適切に行えばとても迅速安全な技術だと思う。)
 
 ところがその点において、初心者のメンバーの方々はむしろ落ち着いていて、楽しんでいるようにさえ見えたので、これには大変救われた。(逆に僕はあわてて下山中二回も転んでしまった。)
 下山するうち、だんだん手際が良くなって下山スピードも上がり、パーティーのチームワークも非常に高くなった。
 懸垂下降は二本のロープを使って一度に50m懸垂をかけていたが、あとから考えると正直に全部の滝を50m懸垂するのではなく、1本ロープで行けるところは25m懸垂をして、1人がロープをしまっている間にもう1人がもう1本のロープを持ち、先に進んだところで懸垂下降のセットをしておいて、それを交互に繰り返すというやり方のほうが、時間を短縮出来て効率的だったかもしれないと思う。
 
 F1を全員懸垂下降し終えるあたりで7:30くらい。なんとかギリギリ日没で滝を下りられてひと安心。
林道までの道を慎重に歩き、無事駐車場まで帰ってこられた。(8: 30くらいになってしまった。)
今回は僕の判断ミスのせいでパーティーの皆様にはずいぶんご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。
時間にたいする見通しが大変甘く、反省しております。
 パーティーのメンタル面の強さから、あせらず落ち着いて降りられたことは、とても良かったと思います。(じっさいに何かあった時、メンバーがどんな反応・動きをするかというのは、純粋な訓練では垣間見られないことで、貴重な経験だと思いました。)

 百戦錬磨ではないので、こういった判断ミスはこれからもたびたびあることと思いますが、広い心でお付き合いいただけたらと思います。
 それと、寒川さんがパーティーの進行がスムーズになるように行うさり気ない動きには、いつもながら感心しました。(こういう人がいると、リーダーは安心感があるなと感じました。)
冒頭の時間記録も、依頼してないにも関わらず翌日まとめてメールで送って下さり、記録作成が大変楽になりました。ありがとうございました。

【感想】35期 高橋秀治
 安易な気持ちで「中ノ谷αルンゼ」に参加表明しましたが、参加表明してから「中ノ谷αルンゼ」を検索してビックリ・・・
 打見岳と比良岳から東南に流れでた中ノ谷流域のうちのクロトノハゲから東南に延びる尾根の北側に刻まれたもので、高度差にして400m、流れはほとんどなく、終始両壁の立つ完全なルンゼで、主な滝は4ツで、残置ハーケンも有り、三級(金毘羅山Y懸尾根)の上程度と有りましたが、写真を見ると「こんな所行けるのかいな」と不安が募り、さらに前日に「127時間」を観てブルーな気分一杯でで集合場所に立っていました。
荒川峠の近くに車をデポして、大堰堤まで進み、大堰堤から中ノ谷の河原に降り、 河原を少し歩くとすぐに左手にαルンゼの入口が見えて来ました。
 前日の雨で岩肌は滑りやすくなり自らテンションを上げて岩と取り組みます。何とか二つの滝をやり過ごし、次に15m程の滝が現われました。
最初の取り付きで足が出ず1m程滑落、ハーネスからの直接的なテンションが、股間を・・・
初めての衝撃を全身で受け止めました(笑)
 後は皆さんの後ろ姿を必死に着いて行き、気が付けば、クロトノハゲの標識が目に入って来ました。
 「下りは、懸垂下降しながらの方が早い」と最初のガレ場を避け途中まで尾根を下り、予定通りのいきなりの懸垂下降です。
 何とか必死で懸垂下降の連続を繰り返し無事に大堰堤に戻って来ました。
 今回、安易な気分で参加を表明しリダーの皆様をはじめご一緒頂いた皆様にも大変ご迷惑をお掛け致しまして失礼いたしました。
 まだまだ練習不足ですが、今後もよろしくご指導の程をお願い致します。


【感想】48期 寒川
 例会案内通りのジメジメした天候。前日の雨のためルート中程までは流水があり濃いガスに囲まれて、待機中はひんやりと寒い位だった。フェルト 靴しかないため、悩んだ挙句装着したのは沢遊び用のシューズ。底が薄く靴も軽くグリップも効く、と今回の山行にはベストマッチだったのではと思っている (見栄えのせいか、参加者からの評判は頗る悪かったが)。但しヘッドランプを失念し携帯用のLEDライトしかなかった事については、大いに反省している。 巻きのない岩登りルートであり、普段走り等で粗雑に足を置いている私には丁度良い難度で、久々に登攀の面白さを感じた。トップロープに頼ってしまったF3 が非常に心残りである。
 
 大所帯で時間意識に乏しい行動をしていたため、下山時困る羽目になった。時間に急かされての懸垂は事故リスクが高いので荒川峠からの登山道を 推しつつも、所要時間は同じ位だと考えていた。しかし今回のコースはルート距離が短いにも関わらず登り6時間かかっているのだから、その内訳の大半がロー プワークと考えるべきで、下山見込み2時間は無理であり4時間位が妥当と判断。この時既に尾根からの懸垂に入っていたが稜線には暗雲が広がっており、その 稜線に向かって引き返す判断を提示できなかった。
 わかっていてなぜ言えなかったのか。リーダー一任、この言葉に甘えていなかったか。
 トラブルがありながらも無事下山できたのは、全行程を通して参加者の前向きな精神力に支えられた内容だったからではと思う。パーティーの士気は最後まで高かった。

【感想】52期 秋房伸一
 一応、サブリーダでありましたので、こういうことを申し上げると、ナンではありますが、個人的には、めちゃくちゃ面白かったの一言に尽きます。致命的なリスクが無いなかでの(といっても油断禁物でちょとしたところで命を落とすケースもありますので反省すべきところ大なのですが)、リスク対応(日が暮れるまでに降りないといけない)、とか、水が無いだけで沢登りの要素満載でエキサイティングでした。最後のガレと草付きを詰めるところなど、大好きです。中谷アルファルンゼ、もう一度行きたいです。

【感想】52期 小松久
 私の会社でもそうなのですが、ほとんどの同種事故防止対策は実際のトラブル、事故をもとにその再発を防止するために作られています。
 逆に言えば、多くの人にとってはトラブルを実際に経験しないとトラブル予防策への本気での取り組みは期待できないということでしょうか。
 その意味で今回の例会では、ラテルネ懸垂にて土砂降りの沢から撤退という、ほぼすべての悪い条件が整った状況下での無事帰還であり、参加者の今後のために非常に意義深いものとなりました。
 リーダーまたは、それに準ずるメンバーにとっては午後3時を越えてから沢に入る決断をすることは非常な危険を伴うことが認識できたと思われますし、それ以外のメンバーにとっては非常用ツール(ヘッドランプ・予備ヘッドランプ・予備電池・ツエルト・雨具)を常時山には携帯することの重要さを身をもって認識できました。
 今後も今回で身をもって感じたトラブル防止策をもとに、安全登山を続けていきましょう。
 また、あえて強調する意味でも追記しておきますと、非常に悪いコンディションの中、モチベーション高く最後まで無事故で帰宅できたのは、Tリーダー・秋房サブリーダーの的確な判断とメンバーのポテンシャルの高さによるものです。
 ありがとうございました。ちょっと怖かったですが、面白かったです。
 酒井さん、ヘッドランプの電池は今すぐかえときましょう。

 

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【感想】53期 須河麻衣
 αルンゼ、名前から何かに惹かれるものがあり参加させてもらいました。参加前から、持ち物に沢靴、クライミングシューズ と書かれていたので、いったい沢なのか、岩なのかどっちなんだろと思いつつも悩んだあげく二つとも持って参加しました。
 結局のところ、沢靴で充分でした が。今回の例会では、自分の反省点と課題が解り良かったと思います。まず反省点、小滝を登る際に登行器を装着せず、無理をした事で膝が外れかけ落ちてし まった事です。実力が不十分な上に危険予知が欠けていたと思います。また、脱臼ぐせがあるのにも関わらず対策をしていなかったのは反省すべき点です。沢や 山を安全に長く続けて行くためにも、今後気をつけていきたいと思います。課題は、懸垂下降のセッティングやプルジックの装着方法が素早く出来ず時間を費や してしまったので、どんな条件下でも的確にセッティング出来るよう事前に練習をしようと思います。
 短い距離でしたが空中懸垂をして、怖かったのでまた練習 したいです。たった一日の例会でしたが、内容深い体験をする事が出来楽しかったです。リーダーのTさん、サブリーダーの秋房さん、最後まで的確なアド バイスやサポートありがとうございました。一緒に参加した皆様大変御世話になりありがとうございました。

【感想】53期 酒井敏行
 冬にアイトレで訪れた際にはけっこうビビッたアルファルンゼですが、今回はジムでの練習の成果か、恐怖感もなく、わりとさくさく登れたので嬉し かったです。次回は核心部もリードチャレンジしたいと思います。いろいろあった下山ですが、最後、林道に抜けた先行組を追って単独で行動している ときに、まさかのヘッ電電池切れ・・・。闇の中で後続を待つ間の時間の長く感じられたこと。
 換えの電池はもちろんですが、これからは予備のヘッ電 も持っていくようにしようと思います。それから、慣れたと思っていた懸垂ももう少し練習が必要だと思いました。機会を見つけて空中懸垂の練習をし たいと思いますので、またよろしくお願いします。

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