京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3128 沢登り 板取川/海の溝谷

懸垂下降をして谷に下りる。F1の滝は2mほどの美しい様相であったが、水量は予想以上に強く激しいものだった。右岸に取り付くもなかなか足場が見つからず、突破の手がかりをつかめないまま時間が経過していった。

 

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[No.3128]2011年7月23日(土)~24日(日)

沢登り 板取川/海の溝谷

 

計時 48期 寒川 陽子 記録 52期 小泉 賀奈子

【参加者】CL 上坂 淳一 寒川 陽子 AT 小松 久剛 小泉 賀奈子 本田 勇樹  会員6名

【天候】23日、24日ともに曇り

【行程】1日目(7/23)

20:00烏丸御池20:35―(マイカー)→22:30長良川SA→22:45美濃IC→23:15道の駅ラステンほらど(幕営)、0:30就寝

2日目(7/24)

5:30起床、6:15出発―(マイカー)→6:55海の溝谷出合○P、7:30出発・・→懸垂下降開始・・→8:00 F1滝下・・→10:55 F1滝上・・→11:45 F2滝下・・→13:30 F2滝上・・→13:45 レスト13:55・・→14:55 5m滝下/撤退開始・・→15:10林道15:25・・→16:20海の溝谷出合○P16:40―(マイカー)→20:00京都市内、解散

 

 1日目 この日は入渓地近くの道の駅「ラステンほらど」で前夜泊をし、翌日の行動時間をたっぷり確保することにした。軽くお酒を飲みながら作戦を練り、就寝。

 

 2日目 朝食をとって車で移動。海の溝谷は観光名所になっていて、10台ほど停められる駐車場と、その奥には観光トイレが設けられていた。ここで前夜泊をすることも可能だろう。

 身支度を終えて、橋の上からゴルジュの様子を偵察。切り立った崖に抱かれ、廊下状の川がいくつも小滝を織り成していた。

 懸垂下降をして谷に下りる。F1の滝は2mほどの美しい様相であったが、水量は予想以上に強く激しいものだった。右岸に取り付くもなかなか足場が見つからず、突破の手がかりをつかめないまま時間が経過していった。滝の1m手前は浅瀬で足がつくが、滝の直下はたいへん深く、水流に押し込められるのでライフジャケットを着ていても危険極まりない状態だった。2時間半ほど試行錯誤を繰り返した頃、小松が右岸の岩を伝い、フリーで突破成功。続いてTも滝上に身を乗り上げた。しかし、後続が続けず、4人は岩を登り返してF1の滝上に懸垂下降で下り、通過した。

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(F1に挑む本田)

 

 太陽の日が差した谷はとても美しく、コバルトブルーの水が織り成す渓谷美が印象的だった。側壁をへつったり、岩を乗り越えたりしながら沢をつめていく。途中で数箇所、足のつかない深瀬に出くわした。勢いをつけて対岸めがけて飛び込まないと流されてしまいそうなほど水流は強く、時折フローティングロープを出して安全に進んだ。

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(水路のような狭いゴルジュが続く)

 

F2の滝では右岸に残置ハーケンが2つあった。さらに滝側にもう一つハーケンを打ち足して鐙を3本かけた。滝は水流が強いので鐙を利用して滝上の岩に足をかけ、突破した。お助け紐とロープをフル活用し、また、体を引っ張りあげてなんとか全員が通過できた。

F3の滝にたどり着いた頃には3時前になっており、左岸のルンゼを登って林道にエスケープ。林道を歩いてみると、今回の遡行はわずか200mほどの距離だったことが分かり、海の溝谷の奥深さ、手強さにメンバー一同感服した次第であった。

 

【感想】52期 小松久

例会紹介には「水遊び」「日帰りの短いルート」などと記載がありましたが、ネット上で調べてみればかなり険悪なゴルジュ沢とのことで、何としても少しでも奥に進んでやろうと事前に相当気合を入れ、直前の明王谷例会の三ノ滝なども泳ぎのリードや登攀のリードなどで慣らしておりました。

それでも実際現地に入ってみて、青々とした淵とオレンジ色の側壁を持った想像以上の険悪なゴルジュに圧倒されました。

ただ、誇るべきは私たちがその険悪なゴルジュにしっぽを巻いて逃げだしたわけではなく、大水量のF1はハーケン連打とカムで滝に近づいたうえでフリーで抜けきりましたし、F2についてもかなりシビアな状況の中、A1ではありましたが抜けきることが

できました。

今回は久々に全力投球の沢でしたので、非常にすがすがしい一日となりました。

人工登攀能力、フリーの能力、泳ぎの能力、高巻きの能力をさらに磨きあげて、いつか海の溝谷を攻略したいと思います。

素晴らしい沢企画を企画してくださった上坂リーダーをはじめ、パーティーの皆様ありがとうございました。

 

【感想】51期 AT

持っている道具とかクライミングとかチームワークとか、すべて使ってなんとか滝をふたつ越えるという、噂どおりのすごい沢でした。

F3は、ネットの記録を読むと「無理」という意見と「簡単」という意見に別れているみたいですが、その二つの意見の違いは、じっさいに取り付いてみたかどうかというところに違いがあるのではないかと思いました。

滝登りはじっさいに取り付いてみないと解らないので、せめて一度取り付いてみてから帰っても遅くはなかったかなと思いました。(仮に登れたとしてもパーティー全員が通過出来たかどうかは?ですが)

とはいえF1F2とも登り方はわかったので、次に行った時はだいぶ時間の節約が出来ると思います。少数精鋭で臨めば次回突破は可能であると思います。

 

【感想】48期 上坂淳一

 山登りのマネゴトを30年続けて来たが、いまだによくわからない遊びである。

 思えば街にいても酒、タバコ、賭博…怪しい遊びがあふれていて、しかも子どもは禁止なんておよそ不条理で身勝手な大人どもの理屈がまかり通っている。それに比べれば海の溝の水遊びは健全で健康的で正直なものである。

 初めてなので間違ってるかもしれないが、この日の水量は少し多かったと思う。しかし僕たちの目的は突破ではなく「水遊び」。落差1mの滝を二つばかり超えるのにウエットスーツとフローティングベストに身を固め、ハーケンを連打して、ほぼ丸一日を費やした。

 穏やかに見える水流も狭い水路のようなゴルジュでは端から端までぜ~んぶ流芯。その水圧に足を取られ、押し倒され、流され、翻弄される。海の溝は少しばかり意地悪で頑固なヤツではあったが、我々愚かな闖入者を「お呼びじゃないよ」と優しく諭してくれているようであった。

 川遊びをするなら誰もが一度は訪れてみたいと言われる板取に癒された一日でした。

 

【感想】 48期 寒川陽子

 真剣に水遊びをするといえば、残圧計を気にしながらスクーバをするかひたすら25mプールを泳ぎ続けるか、そんな経験しかなかった私にとっては、新たな水遊びの実践であった。

比良山に入るまでは沢はへつり・巻きで突破していた性質としては泣きが入りそうな沢の様相をしており、F2も50kg超ある人間一人を上から引っ張り上げてもらったに近かった。

 今例会で痛感したのはひよわな上半身。A1のF2に苦労した原因は明らかに腕力のなさや腕力の使い方にある。定期的にボルダーに通っていればそこまで苦労しなかっただろう。

スポーツ科学の話になるが、通常ならばランニングに代表されるような有酸素運動をしても筋力は分解されない。筋トレをしてはいるものの、有酸素運動無酸素運動のアンバランスが顕著且つ筋トレ強度が足りないようだ。

 垂直ないしそれ以上のフェースの登攀、そんな課題を知らしめてくれた猛々しくも美しい谷であった。

 

【感想】 53期 本田勇樹

「ゴルジュと言えば海の溝」というフレーズが妙に頭から離れず、ちょっと遅れて参加表明しました。個人的には流されて滝から落ちたり、F1ではなんどもガチ落ちしてご迷惑かけたりと水遊びのような感じでしたが力いっぱい遊ぶのは心地よいもので楽しい時間でした。

橋からはるか下を流れる溪谷にとても得がたいロケーションのなか、300メートルでも前進すれば、静かな流れのゴルジュが現れたり、雨のように滝が降っていたりと変化があり綺麗でした。

皆様ありがとうございました。

 

【感想】 52期 小泉賀奈子

 一年ぶりの沢登り。「海の溝谷」という名前から、穏やかで凪いでいるような沢をイメージしてこの日を楽しみにしていました。しかし、前泊の作戦会議でそれは大きな誤解だということが分かり、ゴルジュを目の当たりにしてさらに怖気づいてしまいました。夏なのに、日の光が届かない谷底はとても冷たくて寒く、体温がどんどん低下していくのが分かりました。泳いでもどんどん流されていったり、激流のそばをへつらなくてはならなかったり。泣きが入りそうでしたが、みなさんの雄姿を見ていると、私のせいで撤退?!なんてことは恐れ多すぎて言えず・・・。足をひっぱりまくりましたが、見捨てずに最後まで連れていってくださって、本当にありがとうございました。とても素敵な景色が見られて、この夏一番の思い出になりました。