京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉「RDBの会」 第19回植生観察「剣山・三嶺」

剣山・次郎笈三嶺に別れを告げて、森の中へ。小鳥がさえずり新緑の葉に光が揺れている。耳を澄まして鳴き声の主を探す。木の実を拾い、枝の香を嗅ぎ、葉をなぞる。至福の時を過ごした

 

100529次郎笈

 

次郎笈

 

 

[個人山行]「RDBの会」 第19回植生観察「剣山・三嶺

 

【日 時】平成22年5月28日(金)夜-30日(日)

【参加者】CL山本憲彦 SL西田和美 安井一枝 辻野喜信 葛城美知子 奥野淳子 MM 計7名

【天 候】晴れ

 

【記 録】                      50期 奥野 淳子

5/28(金)京都駅前19:00=(神戸淡路鳴門自動車道徳島道)=24:00見ノ越P(仮眠)

5/29(土)見ノ越P3:40-大剣神社5:25-剣山山頂(1955m)6:10-次郎笈7:00-丸石8:18-高ノ瀬10:25-P1732(昼食)12:08-白髪避難小屋13:00-白髪山分岐13:20-カヤハゲ14:15-三嶺山頂(1893m)15:35-15:48三嶺ヒュッテ

5/30(日)三嶺ヒュッテ6:40-ダケモミの丘7:30-平尾谷登山口8:52-9:40名頃10:43=(四国交通バス)=11:03見ノ越P

 

夜明け前、見ノ越を出発する。リフトの西島駅に着く頃、はるかな山並みが見え始めた。剣山山頂付近は笹原を守るために木道が巡らされている。ここから西方の三嶺まで約12kmを縦走する。一部は樹林帯で、多くは平坦な笹原だ。歩いて来た道が長く伸びている。これから歩く道も長~く伸びている。三嶺は見えているが距離がなかなか縮まらない。

 

ガイドマップの「笹深いブッシュ」は現在は膝下で茶色に傷んでいる。大木の何本かは根と幹をプラスチックネットで覆われている。樹林の一角はネットとロープで二重に囲われ、その中だけ草が青々と茂っている。美馬市役所の担当者に伺うと「温暖化の影響か、十年くらい前から鹿が山の上方まで上がるようになり食害を受けている。固有種を順次保護して行っている」とのことだ。

 

白髪山分岐を過ぎ、三嶺が少しずつ近づく。ようやくゴールと安堵したのも束の間、谷底へ2度の急降下。最後はクサリ付きの岩場をよじ登る。山頂から小屋まで水場を探すが、あるのはよどんだ池のみ。「蒸留して飲める」とリーダーは仰るが… 小屋の先客に教わり、全員で水を汲みに行く。名頃への下り「水場」の標識を右折した先に渾々と水が湧き出ている。小屋から7、8分の距離だった。夕食をとり、6時には寝てしまう。(記録係だけ?)

翌朝は、次々と早立ちするパーティの気配の中でまどろみ続ける。今日は名頃まで4km余り、標高差1000mを下るだけだ。剣山・次郎笈三嶺に別れを告げて、森の中へ。小鳥がさえずり新緑の葉に光が揺れている。耳を澄まして鳴き声の主を探す。木の実を拾い、枝の香を嗅ぎ、葉をなぞる。至福の時を過ごした。

 

 

【感想】第52期 MM

剣山~三嶺の縦走に参加しました。天候に恵まれ最高の縦走でした。

行程表から長距離であるのは覚悟してましたが思っていたよりアップダウンがあり三嶺に着いたときにはもうへとへとでした。山頂からは縦走路を一望できてその軌跡を思うとよくみんな頑張ったなと改めて思いましたし、メンバーの力強さも再認識しました。

道中はウラジロモミやダケカンバの林、ササ原やシロヤシオの花などもみれて気持ち良かったです。シカの害はここでも顕著で保護の取り組みがはじめられている状況でした。

トレランのメジャーコースらしくランナーも見かけました。縦走中は荷が重くて考えられなかったけど、名頃に着いてから、名頃天狗塚往復や剣山~名頃は走ってみると気持ちいい上に楽しいにちがいないと確信ました。天気の良いときにトライしてみたいです。

 

 

【感想】48期 葛城美知子

初めての四国の山で、一番感じたことは山深い事です。天気に恵まれクマザサの稜線に出ると、剣山からは三嶺への縦走路、三嶺からは剣山からの道がU字型に見えた。素晴らしい展望で、頑張って歩いた感じは無く山を楽しんだように思えます。花は濃いピンクのトサノミツバツツジシロヤシオの群生が綺麗でした。天然記念物のコメツツジは新芽が出始め、余りの小さな葉に驚きました。コメツツジが一面に咲く頃に又登りたい。

 

 

【感想】40期 西田 和美

 「人々の歓喜を欲しいがままにした三嶺」と山の宣伝文句にもうたわれているように、その山頂には、国の天然記念物に指定されているミヤマクマザサとコメツツジのすばらしい群落が広がっていました。

 コメツツジの花の時期には少し早く、小さな白い米粒のような花を見ることはできませんでしたが、三嶺の山頂から遠く西へと続く稜線を眺めていると、もっと先まで行ってみたいという思いに駆られました。(とても無理でしたけど…。)

 薄暗い森の木陰から、何種類もの美しいテンナンショウ属の仲間が手招きしていたり、鹿の食害から保護するため、幹にネットをかけられたオオヤマレンゲ(四国最大の自生地があるそうです。)の古木がひょっこり現れたり、興味は尽きませんでした。

 6月下旬には、コメツツジやオオヤマレンゲの花が咲き始めます。もう一度、あの道を引き返してみたい…そして、もっと先まで行ってみたい…と思っているところです。

 

【感想】14期 安井一枝

 四国の山は8年前の夏剣山でキレンゲショウマ、石鎚山でシラヒゲソウを見て以来です。三嶺は花の百名山ユキモチソウなど期待できますし、90種の野鳥、鹿、狸、ウサギ、カモシカ、サル、四国では絶滅の恐れがあるツキノワグマもいるという山なので行きたいなあと思いました。しかし避難小屋泊まりの装備で10時間の縦走かつ最後に鎖場ありの急坂が控えている行程は体力的に無理なので、結局剣山頂上ヒュッテ泊まりで参加しました。

2日目次郎笈で皆と別れて剣山山頂に戻り、一ノ森をめざして笹原からシコクシラベの林の中を下り、一ノ森手前の殉難碑からキレンゲショウマ群生地への道をとり、群生地から刀掛けの松、ヒュッテへと周遊しました。コミヤマカタバミがあちこちに愛らしく咲いていましたが、植物の種類は少なく感じました(昨年5月下旬に歩いた佐渡のドンデン山の多種多様なお花の乱れ咲きとは対照的)。毒草のマムシグサ類、バイケイソウトリカブトが目につきました。

咲いていた花:コミヤマカタバミ、イワセントウソウタカチホガラシ、ミヤマハコベ、ミツバテンナンショウ、イワボタン、シロバナネコノメ、ヤマエンゴサク、ワチガイソウ、オオカメノキ、コヨウラクツツジ、ツルギミツバツツジ、ニワトコなど

近年鹿が増え林業被害のみならず過去過度な摂食経験がなく耐性のない剣山の植物は大きな影響を受けやすいとのこと、防鹿柵を設置しているキレンゲショウマの周囲はミツバテンナンショウ、弱い毒性があるヤマシャクヤクが混じるトリカブトの大群落になっていました。近年発見された多紀連山のクリンソウ大群落を5月中旬に見に行きましたが毒草のクリンソウが鹿に食べられずに繁殖したと思われるとのこと、また剣山の後、宮崎県御池野鳥の森、えびの高原、鹿児島県中岳を歩きましたが計20頭位見かけました。御池では希少種の野鳥の繁殖に影響を及ぼしヤマヒルも大発生していますし、えびの高原、高千穂河原ではあちこちに消毒液のマットが用意されていました。口蹄疫のウイルスに鹿が感染したら・・・何と恐ろしいことでしょう。生態系に悪影響を及ぼす鹿の増えすぎを真剣にしかも緊急に考えなければいけない時期にきていると思われます。

 3日目7時15分出発、遊歩道をゆっくり下山しました。剣山に鳥が多いのは予想外でした。カッコウツツドリホトトギス、ジュウイチが鳴きながらそこら中を飛び回っているのです。葉が茂っていないので杜鵑科すべての姿が見られたなんてスゴイ!

見聞きした鳥:トラツグミアオゲラコゲラキセキレイ、ミソササザイ、コマドリ、ウグイス、メボソムシクイ、シジュウカラ、ヒガラ、カケス、カラス、カッコウツツドリホトトギス、ジュウイチ、オオルリルリビタキ、トビ、タカ類、アマツバメ類など

その他:ノネズミ、(ヒュッテ前から)瀬戸内海、船窪の赤いオンツツジ群落

 山行前に山上は1℃と聞き不安でした天候にも恵まれて気温が上がり、皆についていけずですがとても楽しい山行でした。お世話になりました皆様、ありがとうございました。

 

 

【感想】36期 辻野喜信

 天候にも恵まれ素晴らしい展望がえられた山行でした。西島から見える三嶺はきれいで、山頂付近南側の笹原が黄色く見え、案外近くに見えた。頂上ヒュッテからは瀬戸内海が見えた。小豆島の奥に天気が良ければ大山が見えるとヒュッテの伯母さん。

 剣山から次郎笈あたりの笹原には鹿の踏み跡が縦横についている。ここでも鹿が増えすぎて問題になっている。鹿対策は三嶺付近で始まっているようだ。

 最初は鹿の食害などで笹原になったと思っていた。地図には三嶺・天狗塚のミヤマクマザサ及びコメツツジ群落の天然記念物の表示(∴)があり、帰って調べたら「剣山から三嶺・天狗塚にかけての笹原は、地理的な条件の下で成立した風衝草原で、おおむね標高1600m辺りから上にあり、ミヤマクマザサで占められている」とあり、学術的価値が高く天然記念物に指定されたとのこと。

 1500m以上にはいなかったといわれる鹿の数が増え過ぎて、このミヤマクマザサにも影響を与えているという。

 三嶺からの下りは鹿談義と花や樹木の解説をして頂き、時間をかけて下り、膝への負担が少なかったためか何時もの膝の痛みが出なかった。軽量でゆっくり歩けばまだ山を楽しめると思った。講師の皆さん有難うございました。

 

【感想】44期  山本憲彦

 まだあの剣山から次郎笈・丸石・高ノ瀬・白髪山までのたおやかな稜線、そしてその稜線が急に落ち込んでまた急傾斜で今の自分の足元に続いている。その長い長い稜線が鮮明に脳裏に浮かびます。そして手前に夕日を受けた三嶺の池。遙か西の方に天狗岳とおぼしき険しく突きたった石鎚山らしき山のシルエットがうす赤い夕日に映っています。もう一度東を見ると、真正面にラフォーレつるぎ山がま後ろにある丸笹山の西面が夕日にまだまぶしい。

 この縦走、約10-15kg以上をしょって12時間以上歩き通したのは本当に久しぶり。歩き通せたのは、ルートの傾斜がおだやかだったことと、道中に花が途絶えることがなかったことが大きい。それに鹿の食害も途絶えることはなく、ため息をつきながら行くことになったのも、疲れを忘れさせてくれた理由だったのかもしれない。

 植物は記録してくれると思うが、四国を代表する名山の植生は豊富だった。三嶺下山中のテンナンショウ類も固有種も多いようで、記録が楽しみだ。実は近いうちに大峰にシロヤシオを見に行きたいと思っていた。それがこの例会でいけなくなって残念と思いきや、なんと間近にずっと私たちの目を楽しませてくれた。

 順番に山野草(特に咲いているものを中心に)を列挙すると、ミヤマカタバミ、ヒナスミレ、ツボスミレ、ハタザオ、ツマトリソウカタクリ(葉)、ユキザサ(葉)、など、まだまだこれからいろいろな花が咲くだろう。

 樹木では、ミズキ、コバノガマズミ、ムシカリミツバツツジシロヤシオ、オオヤマレンゲ(葉)、コメツツジ(葉)などが見られた。

 特に今回のルートでは、丸石避難小屋あたりから三嶺小屋までの間の両側は樹木の花で埋め尽くされていたと言ってもいい。これで、剣山のキレンゲショウマが咲いていなくても、自分としては、これで十分に満足できたのではないか?

 今度はぜひ、コメツツジの咲く頃に、天狗峠の方まで足を伸ばしてみたい。またあの古木のオオヤマレンゲの花も愛でてみたい。

 それにしても、安井さんも当初は縦走を目指そうとしてくれた。すばらしい意欲だ。その日の体調でコースを選択してもらうことにしていたが、彼女は剣山の山頂小屋に泊まって、行きに我々といっしょに次郎笈まで往復して、私たちを見送ってくれた。そして、我々、女性3人=西田さん・葛城さん・奥野さんと男達3人=辻野さん・向さん・山本が同じ歩調でほぼ同じ荷重で同じ時間を歩き通したのだ。天気も良かったし、展望も良かった。

 引き返した見ノ越で7人が揃ったのだった。が、だれも京都には帰りたくないと思うほどの印象深い縦走だった。みなさん、お疲れ様でした。すばらしい縦走と植物観察を全うできて幸せな2日間でした。また時を変えて行きたいですね。そのときはよろしく。

【記 録】                      50期 奥野 淳子

5/28(金)京都駅前19:00=(神戸淡路鳴門自動車道徳島道)=24:00見ノ越P(仮眠)

5/29(土)見ノ越P3:40-大剣神社5:25-剣山山頂(1955m)6:10-次郎笈7:00-丸石8:18-高ノ瀬10:25-P1732(昼食)12:08-白髪避難小屋13:00-白髪山分岐13:20-カヤハゲ14:15-三嶺山頂(1893m)15:35-15:48三嶺ヒュッテ

5/30(日)三嶺ヒュッテ6:40-ダケモミの丘7:30-平尾谷登山口8:52-9:40名頃10:43=(四国交通バス)=11:03見ノ越P

 

夜明け前、見ノ越を出発する。リフトの西島駅に着く頃、はるかな山並みが見え始めた。剣山山頂付近は笹原を守るために木道が巡らされている。ここから西方の三嶺まで約12kmを縦走する。一部は樹林帯で、多くは平坦な笹原だ。歩いて来た道が長く伸びている。これから歩く道も長~く伸びている。三嶺は見えているが距離がなかなか縮まらない。

 

ガイドマップの「笹深いブッシュ」は現在は膝下で茶色に傷んでいる。大木の何本かは根と幹をプラスチックネットで覆われている。樹林の一角はネットとロープで二重に囲われ、その中だけ草が青々と茂っている。美馬市役所の担当者に伺うと「温暖化の影響か、十年くらい前から鹿が山の上方まで上がるようになり食害を受けている。固有種を順次保護して行っている」とのことだ。

 

白髪山分岐を過ぎ、三嶺が少しずつ近づく。ようやくゴールと安堵したのも束の間、谷底へ2度の急降下。最後はクサリ付きの岩場をよじ登る。山頂から小屋まで水場を探すが、あるのはよどんだ池のみ。「蒸留して飲める」とリーダーは仰るが… 小屋の先客に教わり、全員で水を汲みに行く。名頃への下り「水場」の標識を右折した先に渾々と水が湧き出ている。小屋から7、8分の距離だった。夕食をとり、6時には寝てしまう。(記録係だけ?)

翌朝は、次々と早立ちするパーティの気配の中でまどろみ続ける。今日は名頃まで4km余り、標高差1000mを下るだけだ。剣山・次郎笈三嶺に別れを告げて、森の中へ。小鳥がさえずり新緑の葉に光が揺れている。耳を澄まして鳴き声の主を探す。木の実を拾い、枝の香を嗅ぎ、葉をなぞる。至福の時を過ごした。