関西百名山シリーズNo.71 　　湖南アルプス・太神山

関西百名山シリーズの平成24年前半最後の山行は湖南アルプス太神山とした。“アルプス”を感じる部分はほんの少しだけで東海自然歩道を忠実に紫香楽の宮へと歩いた。

写真１：太神山山頂にて（何故か合掌）

[個人山行] 関西百名山シリーズNo.71 　　湖南アルプス・太神山

　　平成24年6月9日（土）

【参加者】　山本浩史L、奥野淳子、尾崎稔、藤松奈美、鹿嶽眞理子、鈴木かおり、東野政行　　　計9名

【行　　程】　京都7:32－7:47石山7:55＝8:20アルプス登山口8:23～10:21太神山～10:32不動寺11:02～11:58田代川国道～12:15三筋の滝～12:47田代～13:06林道出合～14:38紫香楽宮跡～14:59紫香楽宮跡ST 15:03－15:17貴生川－16:12京都

【登山データ】　天候：小雨一時曇り歩行 20.8㎞ 6時間36分延登高 790m 延下降 625m　1座登頂

夜半は激しく降ったようだが帝産バスでアルプス登山口バス停に着く頃には小降りとなっていた。雨具を着て尾崎さんを先頭に天神川沿いの車道を歩き始めた。今日はほぼ全コース東海自然歩道で車道の方が多い。2㎞程歩くと右手に迎不動の祠がありその傍らには公衆トイレもある。少し先に駐車場があり巡回に来たパトカーが折返して行った。此処が事実上の登山口で駐車している車もありそうなものだが此の天候では1台もなかった。鎧ダムへの分岐点でもあり、渡渉して支流を遡ると鎧ダムに到り堂山（384m）に繋がる。鎧ダムは堆砂でほぼ埋まりダム湖には殆ど水はない。今日は鎧ダムはパスして太神山を目指す。

この先は軽車道（一本線）が続き橋を渡る。2.5万図ではヘアピンカーブの地点から徒歩道（点線道）が分岐し川沿いに行くが、車道の方に「←太神山」の表示があった。此の道はとんでもない方に行ってしまっているのだが・・・以前来たことがある鹿嶽さんは「徒歩道は途中で行止りになる」と云うので軽車道を進んだ。そうすると2つ目のヘアピンカーブの処で登山道が分岐し安心した。川を見ると大きな堰堤が出来てきて、此れがルートが変わった原因だと知った。

堰堤の先で対岸に渡り、地図にある道に復すと湖南アルプスの名にし負う地形、花崗岩の脆い層の登山道となる。右手は矢筈ヶ岳(562m)の稜線、こちらもアルプス的な所が見える。中不動の祠を左手に見てその先には自然の岩に彫られた泣不動がある。別に泣いている表情でもなく、どうして泣不動と云うのだろうか？　その先で矢筈ヶ岳への道が分岐するが、「崩落のため通行止め」との表示があった。その傍らには誰かが書き加えた「矢筈ヶ岳までは行けます」の文字。矢筈ヶ岳も今日は行かない。真すぐ進むとやがて鳥居形の門、二尊門は結界の入口のような趣で優しい表情で手を合わす矜羯羅（こんがら）童子と頬杖をついた制多迦（せいたか）童子が迎えてくれる。

不動寺は太神山山頂域にある比較的規模の大きなお寺であるが常時人がいるのかどうか・・・此のお寺の凄いのは本堂で急な石段を登ると大岩に寄り添うように、事実屋根は大岩と一体になり清水の舞台の如く、10mもあろうかと云う柱の上に乗っかっている。貞観元年（859）創建の本堂は国の重要文化財となっている。当時重機も使わずに良くこんな所に建てたものだと感心する。電灯もない本堂は薄暗く、丁度住職がお勤めの最中で低い読経の声が聞こえて来た。本堂が寄り添っていた大岩は神仏習合の時代は御神体として崇められていた磐座でその隙間を縫い胎内くぐりをして太神山(600m)山頂に到る。展望はなく沢山の山頂標識に囲まれて2等三角点「不動山」があった。10m程先には奥の院の祠がある。寺務所前の休憩舎で休憩を取り思い思いに昼食やおやつ食べた。尾崎さん北陸土産の白海老の煎餅が皆に配られ賞味した。

今日のミッション1は「不動寺から県道までの所要時間を予測で47分から65分の予測を立て出発した。すぐ右手に林道が分岐し此の道を4㎞下る。道中特徴もなく横に広がってお喋りをしながら進み田代川を渡ると県道に飛び出した。ミッションの結果は56分で55分を予想した尾崎さんが1分違いで最も近かった。

此処からは県道の舗装道路を歩き田代川を遡る。1㎞程行くと三筋の滝が樹林越しに見える。下までは行けないのが残念だ。遊歩道があり対岸に渡り500mほどの間谷の道を歩く。再び車道に上がりミホミュージアムへの道を左に分け田代集落に到ると東海自然歩道は左に分岐する。此処からミッション2「歩速計測」を行う。林道に出会うまでの1.352㎞を早いと思う人から順に約30秒間隔で出発し自分のペースで歩き所用時間を計った。ルートは途中に峠越えがあり延べ106m登り、45m下降するコースで、帰ってから山道を歩く速度を計算した。その結果は以下の通り。

所要時速

山本 13’30” 6.01㎞/h

奥野 19’00” 4.27㎞/h

尾崎 19’55” 4.07㎞/h

藤松 19’00” 4.27㎞/h

鹿嶽 17’59” 4.51㎞/h

鈴木 19’58” 4.06㎞/h

東野 18’40” 4.35㎞/h

計測歩行の最後で林道出合が見えた処に木橋があり、桃谷川を渡るが傾いていて、しかも濡れているので足を滑らす人が続出した。この後は単調な林道歩きが続く。316mの標高点の位置で此の林道と別れ自然歩道らしくなりやがて民家が見え出すと信楽町黄瀬の里、信楽焼の釜元らしき家もある。大戸川を渡ると東海自然歩道の標識があり右を指している。此れはおかしい、真っ直ぐに丸太階段があり、階段の上にはフェンスが張り巡らされている。様子を見に上がってみると鹿除けで「通り抜けできる」と書いてあった。コンパスの方向が正しいので扉を開け中に入ると、信楽焼の窯に使うのであろう薪が丁寧に積み上げられ覆いをされた列が幾つもあった。恐らく紫香楽宮跡のエリアに入っているのだろうが樹林帯で道が幾つも分岐し分り辛い。北側に出てしまったようで遠回りで紫香楽宮跡に達した。

紫香楽宮は、聖武天皇がこの地に大仏を造ること発願し離宮を営んだのが最初で天平17年（745）１月に恭仁京から都が遷された。しかし畿外に置かれ臣下の賛同が得られなかったことや天災が続いたことから同年5月には早くも平城京に遷都となった。この遺跡は甲賀寺の寺域で実際の宮があったのはもう少し北の宮町地域であるらしい。なお宮名は遷都により甲賀宮と称したとの説が有力。宮跡には甲賀寺の金堂、講堂、五重塔などの礎石が残っている。金堂の跡には紫香楽宮（神社）が祀られていた。

駅への道は一寸複雑で、ミッション3に「紫香楽宮跡から駅までの歩行ルートを書き込む」を設定した。時計を見ると14時44分、調べて来た時刻表によると15:03に貴生川行がある。900m程なので余裕で行けると思っていたら宮跡を出て直ぐに道を間違えてしまい南に進んでしまった。国道307号線に出て300mも余計に歩くことになり若干焦った。

信楽高原鉄道列車衝突事故は今の紫香楽宮跡駅の直ぐ北側で平成3年5月14日に発生した。事故現場に最も近い国立療養所紫香楽病院（現独法紫香楽病院）は多数の負傷者が運ばれ、ごった返していた。21年前の忌まわしい事故は忘れえない。

その病院の前を通り14:59駅に到着、列車は直ぐに来た。信楽の友人宅を訪問するという藤松さんに見送られ高原列車は紫香楽宮跡を後にした。貴生川、草津と乗換えはスムーズで守山に住む東野さんまで京都に足を伸ばし反省会。今日は来月12日から留学のため渡米する尾崎さんの壮行会でもあり河内長野へ帰る奥野さんも含めて皆残ってくれた。尾崎さんは舞鶴在住にも拘らず関西百名山シリーズにはよく来てくれた。日本に居なくなるのは寂しい。1年後に帰国後すると関西で働くと云うのが心強い。仕事を辞めてまで勉強しに行くとは何ん云うエネルギーだろう。頑張れ！《山紀行No.772》　

【感　想】 50期　　奥野　淳子

太神山不動寺の二尊（コンガラ童子・セイタカ童子というらしい）はユーモラスで可愛らしい像でした。恒例のミッションですが、「田代川橋～田代分岐間で歩速計測」は、前後の人と距離を置いて一人で歩くのが新鮮で面白かったです。歩数は途中でわからなくなりましたが。

【感　想】 52期　尾崎　稔

関西百名山は去年の伊吹山以来の参加でした。７月からアメリカに留学をするので、比良山岳会に入るきっかけを頂いた関西百名山シリーズに渡米する前に必ず参加したいと前から考えてりました。天候は小雨が降っていましたが、楽しく登ることができました。太神山にある不動寺の立派な脚組みを見て、こんな山奥に清水寺のようなお寺があることに驚きました。紫香楽宮跡は一度訪れたいと思っていました。昔、聖武天皇がここにいたと考えると何でこんな山奥に都をと思ってしまいました。京都駅の反省会では、皆さんにアメリカ留学に向けて応援のお言葉を頂きうれしかったです。比良山岳会に入り一番参加させて頂いたのは関西百名山シリーズです。コンパスの使い方など全く分からない私にいろいろ指導してくださった山本さん、ありがとうございました。また来年、帰国後の関西百名山シリーズに参加させて頂くのを楽しみにしております。これからもよろしくお願い致します。

【感　想】 54期　藤松　奈美

登山道にお地蔵さんやお不動さんがところどころに安置し、丁寧に掃除もしてあって、地元の人にとって大切な信仰の場だということがよく分かる山でした。雨交じりでもやがかかっており、幻想的な雰囲気。ひっそりと静かでろうそくの灯りだけがともる暗い本堂に読経が響き、山行途中だということを一瞬忘れました。アメリカ留学される尾崎さんが、何度も丁寧に手を合わされているのが印象的でした。２０キロにのぼる長い道のりも、おしゃべりしながらあるけばあっという間。途中、歩測ミッションしましたが、山本さんの早さには改めてびっくりでした。奥野ベーカリーもたいへんおいしく、穏やかな楽しい山行でした。ありがとうございました。ちなみに、信楽の友人と会うために帰りはみなさんと別行動しましたが、友人に「石山から歩いてきた」と話すと、すっかりあきれられました。帰り着くまで４万２０００歩。新記録です。

【感　想】 54期　鈴木　かおり

小雨の太神山なかなか素敵でした。迎えてくれた石仏も、お堂も、樹々たちも。雨の山もいいもんだネ。飽きてしまうような自然歩道も、皆さんと話しながら歩いてたら着いてしまいました。信楽まで歩けるんだ。帰りに尾崎さんのプチ壮行会ができて良かったです。皆さん楽しい１日ありがとうございました。