2013年5月18日(土)
揚梅の滝は見た目も豪快だったが,とにかく怖かった。セカンドで落ちることはないにしても,ぬめっていたし,水流で体が冷やされ・・・
動画:
[NO.3296-B] 比良獅子ヶ谷 楊梅の滝に登って遊ぶ
【参加者】CL AT、長野 浩三、小松 久剛、辻 博史 計 会員4名
【日時】 2013年5月18日(土)
【天候】快晴
【行程】
8:30北小松登山口の駐車場⇒楊梅雌滝8:50→楊梅雄滝9:50→雄滝落ち口12:15→遡行終了12:50→獅子岩13:15→北小松登山口の駐車場
↓動画もご覧ください。(1080pで見ると綺麗です。)
【記録と感想】51期 AT
比良の獅子ヶ谷にある楊梅の滝は、雄滝が落差40m、薬研の滝 落差21m、雌滝 落差15mの三段からなる落差76mの滝。
この滝に二年ほど前くらいから小松さんと、「登りましょう!」という話をしていたのだったが、小松さんの仕事が忙しくなり登攀がかなわなかった。
去年のちょうど同じ時期、獅子ヶ谷へ沢登りに行く機会があり、楊梅の滝を見上げたのだったが「これを登ってしまうと小松さんが怒るだろう」ということで、けっきょく登らずに2年間寝かしておいたものである。
今回、「今年は絶対登ります」という小松さんの言葉で、梅雨に入る前のこの時期に登ることにしたのであった。
夏日が続くとはいえ季節はまだ夏まで一歩手前というところで、朝晩はまだまだ気温が低い。
また獅子ヶ谷自体の遡行も極めて短いものであるため、時間には余裕がある。
少し遅めの出発で8:30分に北小松の駐車場に着くと、ゆっくりと沢装備の準備を始める。
駐車場のすぐ横斜面から入渓。
あまり遡行対象にはならない沢ということもあり、蜘蛛の巣だらけなので、枝を拾って蜘蛛の巣を巻き取りながら遡行していく。
岩が昨年と比べてずいぶんぬめっていて足元が滑る。前2日間が好天で、気温も高かったために苔が発達したのかもしれない。
少し遡行すると、直ぐに楊梅雌滝(15m)に到着。さっそくロープを出して登攀するも、苔が発達しているため滑ってスリルな登攀。(しかしタワシで磨いた部分はものすごくフリクションが良い)
途中で持っていたバイルを滝壺に落としてしまう。
上まで登ってロープアップをと思ったが、他のメンバーは「これは面倒くさそうだ」とパスして右岸から巻いて上がってきた。
プロテクションは小松さんが懸垂下降で上から回収して下さり、滝壺に落としたバイルは長野さんが拾って下さっていて、バイルを探すのに滝壺に潜ってずいぶん寒い思いをされたようであった。(お二人ともどうもありがとうございました)
雌滝の上にある薬研の滝を登っていくと、すぐまた雄滝(40m)に到着。
いつもは沢登りでは50mのダブルロープを使用しているが、今回は登攀が主目的であるため60mのシングルロープを持参してきた。
雄滝を下から見上げてルートを確認。
下から見るぶんには段々になっていて簡単に登れそうに見える。
「階段みたいですね」と言うと小松さんにそんな訳ないでしょと言われる。
早速アンザイレンして登攀開始。
雄滝を少し上がって段になったところに、ペツルのボルトが2本打ってあり捨て縄がかかっているので、そこでまずはランニングを取る。
このボルトはいったい誰が打ったものなのだろうか?懸垂下降支点のようだけど、すごく下の方(5mくらい?)だし、記念撮影して下りるための支点とか?
そこから上は角度がやや立ってくるが、凹凸がぼこぼこしていて何かとホールドになるものがあるのではないか、と下からは見えた。
しかし、じっさいに取り付いてみると意外にどれも外傾しているし、苔でヌメヌメとしていて、どうもこれといったホールドがなかなか見つからないため、ステミングを多様して登って行く。
また、クラックも外側にフレアしているものが多く、どこにでもカムデバイスが入りそうで、じっさいには中々うまく効まるところが見つからない。
そうしている間にも氷水の様な冷たい水がボタボタと頭の上から落ちてくるものだから、だんだん体の筋肉が硬直していくようで恐ろしい。
また、上を向くと目の中に水が入ってしまって目が見えなくなるため、下を向きながら手探りでホールドを探りながらの登攀。
そんなわけで、登攀内容自体はせいぜいⅤ級程度ではないかと思うが、とても難儀な登攀となってしまった。
だいぶ上のほうまで登って来て、あと少しというところで、またしても持っていたバイルを落としてしまう。
バイルは、滝の岩にぶつかって「コーン」と高い音を出して跳ねながら、25m程の高さを勢いよく転がり落ちていく。
落ちていくバイルの行く末を見守りながら「バイルって丈夫だなあ」という素朴な感想を持つ。
下から見ている三人も、空からバイルが降ってくるのでさぞかし驚いたことだろう。
さっき落としたばかりでまた落としているので、これは後から怒られそうだなと思ったが、後から合流すると笑って許してくれたので、おおらかな人達で良かったなあと思った。(おおらかな人でなければ、だいたいが滝を登ろうなんていう馬鹿げたことに付き合ってくれないだろうけども。)
だが落としたのも二回目なので、さすがに「後から自分で拾え」とのことであった。
その後ついでに大きな落石もふたつ落とした。
落ち口間際のテラスで、生えている樹に支点を取ってフィックス。
記録では、他の人達はもう少し下の方でピッチを切っているそうであるが、我々は60mロープを持参だったため、もすこし上に伸ばすことが出来た。
ピッチを切ったところがもう落ち口からすぐそこというところだったので、もしかすると60mロープならワンピッチで登れたのかもしれない。(ビレイして下さった小松さんによると、ピッチを切った時点で残り10mほどという感じだったということなので、ギリギリで落ち口まで行けるか行けないかというところだろうか。)
ホイッスルを吹くとミッテルが登ってくるが、やはり角度が立ってくるあたりから、滝の水をもろにかぶるところで難儀しているようである。
そこを過ぎると、三人とも体温が下がって疲労も激しい様子で、ひどくヘロヘロになりながら雑に登ってくる。
修行僧などが頭から滝の水を浴びて修行するという話だが、この修行で煩悩が無くなるという話も大いに納得である。
あまりに気力が奪われ、登攀意欲まで無くなってしまうため、後に我々はあの水をかぶる難所を「解脱ポイント」と呼ぶことにした。
ラストの小松さんがガタガタ震えながら上がってきたところでテラスは一杯。
登攀準備をして2ピッチ目。
2ピッチと言っても、落ち口がすぐそこなので1.2ピッチという感じである。
テラスからの登りは、ハンドサイズくらいのクラックが走っていて、短い間隔でピトンが数本打たれている。
きっと先に登った人は恐かったんだろうなあ、という気持ちが伝わってくる様である。
落ち口まで登って来て、太い樹に120cmスリング二本を繋げて巻き、支点をとってフィックス。
4人とも無事に楊梅の滝を登ることが出来た。
雄滝に登る前に自分が「階段ですねこれは」と言っていたが、後に登って来た小松さんに
「いったいどこにこんな登りにくい階段があるのか」
「どこの世界にステミングで登る階段があるのか」
と言われ、至極もっともだと思った。(そもそも階段にはふつう水が流れていないものだ。)
その後、登山道とぶつかるあたりで遡行終了。
登山道を追って戻るが途中で登山道を見失い、適当に沢を下降。
獅子岩の頭に出たのでそこから楊梅雄滝の滝壺まで落としたバイルを拾いに行く。
長野さんと辻さんがバイルの落ちた場所を詳細に覚えていて、「この辺りだ」というところを、長野さんの水中ゴーグルを借りてのぞき込んでみるが、暗くてよくわからない。
滝壺の中をこうしてまじまじとのぞき込むのは始めてかもしれないが、枯れ葉がたくさん積もっていて思ったよりも汚い。
のぞき込みながら歩くものだから水が濁ってもう何も見えなくなり、捜索は難航。
見かねた三人も手伝って下さることになり、終いには雪崩の遭難者捜索にならって、四人で肩を組んで一列になりながら探してみたが、それでも見つからない。(ヘルメットをかぶった怪しい装束のオヤジ四人がスクラムを組んで横一列に滝壺の中をゆっくり行進する姿が他の登山者に目撃されなくて本当に良かった。)
あきらめ切れないので、この辺りに落ちたという所を慎重に足で探ってみると、足に何かそれらしい感触が。
手で持ってみると確かにバイルで、ようやく見つかって大喜びであった。(登攀が成功した時以上の達成感があったのではないだろうか)
その後、新緑祭に合流する前に「朽木温泉てんくう」に入浴したが、バイル捜索を手伝って下さった皆さんに感謝して、ソフトクリームをご馳走した。
お風呂から出た所でばったり山本浩史さんと会う。
山本浩史会員は「準備手伝うのめんどくさいから温泉にゆっくり入って会場には遅れて行く」とのことであったが、我々は一刻も早く新緑祭の準備を手伝うため、大急ぎで坊村へ向かった。
【感想】52期 小松久剛
楊梅の滝は去年からTさんに誘われていたところでしたが、多忙を理由に、実際は自分の実力不足から来る不安から、延ばし延ばしになっていたところでした。
今回ようやく宿題を済ませられたという安堵と、宿題を誰かにかわりにやってもらったときのような恥ずかしさが入り交じったような心境です。
今回の滝は今の自分では絶対に越えられない滝でした。特に、流心を越えるポイントから先は、ひたすらにゴボウで、実質引き上げてもらったようなものでした。
いつか、この滝を越えられる日が来るのか、または永遠に無理なのかはわかりませんが、少しずつ行ける範囲を広げていきたいと思います。
【感想】46期 長野浩三
揚梅の滝は見た目も豪快だったが,とにかく怖かった。セカンドで落ちることはないにしても,ぬめっていたし,水流で体が冷やされ,解脱ポイントですべての煩悩が洗い流された。修験者が滝で修行して煩悩を洗い流すのもなるほどと思った。解脱ポイントをすぎると登攀意欲まで洗い流されて,面倒なところはごぼうで登ってしまった。これをリードしたTさんのメンタルはすごい!揚梅の滝を登った感は充実感はあった。今後もTさんについて行きます(^_^)
【感想】 53期 辻博史
前回の中の谷は比較的あっさりした遡行でしたので、今回はルートこそ短いが滝を登ると聞き、楽しみにしていました。
沢遡行自体は非常に短いものでしたが滝に上ってみると激しい水しぶきで息ができない上に冷たさで体が思うように動かず、この滝をトップで上ったTさんの技量とメンタルの強さを改めて知りました。自分は『解脱ポイント』ですっかりどうでもよくなり、ゴボウしまくりのかなり恥ずかしい登攀でした。下から見ているだけではわからない、登ったものだけがわかる沢の面白さを体験できました。
みなさまこれからも宜しくお願いします。