自分は、本格的なマルチピッチクライミングの経験というものが無い。
はじめは誰か会外の経験者にお願いして、その人に連れて行ってもらおうかと考えていた。
しかし何となくそれでは後に何も残らないような気がして、会の例会として一度募集をかけてみることにした。
[No.3324] 錫杖岳 「左方カンテ」と「見張り塔からずっと」 *テント泊
2013年9月20日(金)夜〜23日(月)
【メンバー】
AT(CL)、辻 博史、小松 麻衣、粟田 直和、k 計5名
【行 程】
20日(金)19:00、京都駅集合〜12:00頃? 道の駅上宝にて仮眠
21日(土)02:30起床03:00発〜03:45クリヤ谷登山口〜04:45渡渉地点〜05:30錫杖沢出合(幕営して荷物をデポ)〜06:40錫杖前衛壁左方カンテ〜07:37/3ピッチ目〜08:50/6ピッチ目〜10:30前衛壁終了点〜懸垂下降〜14:00北沢〜14:30錫杖沢出合(幕)
22日(日)錫杖沢出合04:30起床05:30発〜06:10北沢大滝06:40登攀開始〜11:00大洞穴11:30登攀開始〜13:10/8ピッチ目〜16:00錫杖岳〜牧南沢〜21:13錫杖沢出合(幕)
23日(月)錫杖沢出合08:30起床〜09:30クリヤ谷渡渉地点〜10:00登山道入り口〜京都
動画:左方カンテ
動画:見張り塔からずっと
【記録と感想】51期 AT
錫杖岳に登るきっかけとなったのは、1年前に笠ヶ岳に登った際、クリヤ谷から錫杖岳の姿を見たことだった。
その時クリヤ谷から見上げた錫杖岳を後に自分が登ることになるとは、当時クライミングにはあまり関心のなかった自分には思いもしないことだった。
しかし、そのとき見た錫杖岳の姿が堂々としていて、強く心に残った。
秋冬が過ぎて3月になると雪も溶けて春となり、その間に色々と思うところあり「自分はマルチピッチクライミングがやってみたい」と思う様になっていたが、「登るならまずはあの錫杖岳から始めてみたいものだ」と考えていた。
自分は、本格的なマルチピッチクライミングの経験というものが無い。
はじめは誰か会外の経験者にお願いして、その人に連れて行ってもらおうかと考えていた。
しかし何となくそれでは後に何も残らないような気がして、会の例会として一度募集をかけてみることにした。(自分の実力では無理があるかとも思ったが)
登るルートとしては、とりあえず入門用ルートとしてよく名前を聞く「左方カンテ」ルートを登ることにする。
はじめ、「錫杖岳」という山に色んな方向から登るルートが作られていて、左方カンテもその中の1ルートなのだろうと思っていたが、その後ルートや概念などについてよく調べてみると、一般的に錫杖におけるクライミングというのは錫杖の「前衛壁」を登るものらしく、錫杖岳本峰の方にはほとんどルートが存在しないらしい。
クリヤ谷で見上げた錫杖岳と思っていたものは、実は前衛壁であるらしかった。
「左方カンテ」ルートは錫杖岳前衛壁を、クリヤ谷から見上げた左側(南側)の端にあるルンゼから取り付き、後半から露出感のある左側(南側)のカンテ部分に出て、前衛壁上部のテラスに至るというルート。
そして数年前からこのルートは、ハーケン等の残置物が定期的に取り除かれ、ビレイ点のボルト以外、プロテクションは基本的に全てナチュラルプロテクションでとっていかなければならないルートになっている、ということであった。
そこでいざ例会として実施するとなると、参加者は、5.8程度であれば絶対に落ちることなく、安定して登ることが出来るだけの登攀力があって、カムのセットが出来て(カムをひと通り買いそろえてもらう必要もあって)ロープワークが素早く出来て
懸垂下降について素早く確実に下降・回収等が出来て、鐙によるロープ登高やトラブル時の対処などをある程度身に付けていて
というようなたくさんの条件を満たさなければいけない。
自分がひとりが登るということは出来たとしてもパーティーでとなると大変である。
経験もほとんどない自分が、これまたほとんど経験の無い人を募集してクライミングしようというのだから、今考えるとずいぶん楽観的だったかなと思うが、しかし少なくとも計画段階で楽観的でなければ、山に登ることなど出来ないことだと思う。
はじめ上坂さんから反対されるのでは?と思っていたが、理事会にて例会計画を提出すると「それはけっこう、おおいにやりたまえ」といった調子であったので、例会を行うことにした。
例会計画書には例会を行う日時は未定とし・経験は問わないが、最低でも月に一度は一緒に練習出来る人、また平日ジム練習も行える人、誰も募集が無ければ例会は中止する、という条件を付け、会報3月号から募集をはじめた。
会にはクライミングを、ことにマルチピッチクライミングをしようという人は極めて少ないというのに、こんなたいへんな山行にはたして誰か応募してくるものだろうか?と思っていたが、幸いすぐに6人もの応募があって、慌てて募集を締め切ることになった。
その後諸事情で2人が辞退され、最終的には粟田さん、小松麻衣さん、辻博史さん、kさんの4人が一緒に登って下さることになった。
3月始め、さっそく集まったメンバーでまずは金比羅ワイケン尾根からロープワーク練習を始める。
練習をはじめるにあたり、ロープワークやマルチピッチクライミングについての本を何冊か読み直したり新たに買い足したりしてもう一度基本から勉強をし直した。
ロープワークも基本的なことからもう一度練習し、それらがより正確・迅速に行えるよう、金比羅に三回も通ってひたすら基本ロープワーク、懸垂下降などの練習を行なう。(はじめの練習には野崎会長も来て下さり、ご指導くださった。)
僕がそんな頼りない状態だし、参加者も初心者ばかりのメンバーなので心配していたが、はじめに金比羅で集まった時、皆さんのモチベーションがすごく高くて、このメンバーならきっと行ける!と思った。
その後、例会実施までの半年間の間に、御在所、小豆島、雪彦、小川山、堡塁岩などでマルチピッチ練習を行ったり、金比羅岩、千石岩、椿岩、烏帽子・駒形岩、北小松の岩場などのゲレンデで練習を行った。(ちょっとやりすぎとも思ったが、錫杖岳へ事前に偵察に出かけ、3ピッチだけ試登したり、ということまで行った。)
他にもトラブルがあったときにある程度対処出来る様になるため、ロープの登り返しの練習や、アブミを使った人工登攀練習、文登研のセルフレスキュー講習会に参加するなどした。(土日に休むことが難しい小松麻衣さんについては、過去に会に在籍されていたOkaさんが平日にご指導下さっていて、おかげで技術的にも充分以上に足並みを揃えることが出来た。)
そうやって練習を重ねるうちに、はじめは5.7をリードすることも危ういというようなメンバーもみるみる上達していって、最終的には10台のルートをかんたんに登れる様な実力がついていたのであった。(小松麻衣さんや粟田さんなどには、あっさりと抜かされてしまった感まであった。)
パーティー編成について、自分も含めて5人パーティーであるので、リードの希望を聞いた結果、粟田・小松/T・k・辻という2人+3人という編成で登る事にする。
例会を実施する日について、2連休ではせわしなくなるので3連休に実施しようと考えていたが、そうなると左方カンテのほかにもう1ルート登りたいところである。
左方カンテは前衛壁ということだったが、それでは錫杖岳の山頂に立つルートは無いのか、とルート集を調べてみると、北沢から11ピッチで山頂へと至る「見張り塔からずっと」というルートが目につく。
このルートは前衛壁の左にある北沢から北沢大滝を登り、「大洞穴」から「見張り塔」である本峰へ至る11ピッチのルートである。
見張り塔に登るまでの北沢大滝は2級〜3級程度のスラブという半分アプローチのようなピッチから、5.8の「見張り塔」である本峰に至るという、「錫杖岳の山頂立つ」ということを目的とした、「クライミング」というよりは「山登り」のようなルートだと感じ、自分はそこに強く惹かれた。
そこで、もう一日はこの「見張り塔からずっと」に登ることにし、例会は9月21日〜23日に実施することに決定した。
9月20日(金)
19:00に京都駅南口に集合。南口には野崎さんが見送りに来て下さって、日本酒を差し入れにプレゼントして下さる。(途中SAにて粟田さんをピックアップ)
00:00頃、道の駅上宝にて仮眠
9月21日(土)
02:00頃起床。
2時間ほどしか眠っていないので眠い。
日程については色々思案した結果、どうしても初日に左方カンテを登らないといけないが、人気ルートである左方カンテは混雑するようなので、前がつかえて時間オーバーとなるのは絶対に避けたい。何とかして一番乗りしたいと考え、このような強行スケジュールとなったのであった。
行きの車の中で運転手以外は居眠りをして睡眠をとっておこうと話していたが、結局皆興奮して、ほとんど眠ることはなかった。
03:50
真っ暗な中を、ヘッドランプをつけてクリヤ谷登山道を登る。
1時間40分ほど歩いて錫杖沢出合に着いた頃、日が昇って辺りが明るくなってきた。
幕営地にはまだ誰もテントを張っておらず、計画通り順調である。
06:00
テントを張って登攀具を身に付け、左方カンテ取り付きへ向かう。
錫杖沢を詰めて左方カンテ取り付きへ到着。
狙い通り一番乗りで到着することが出来た。
07:00
準備をして登攀開始。T・k・辻パーティーが先行して登り、後に小松・粟田パーティーの順番で登る。
1ピッチ目:ルンゼの中を登る。灌木や岩が階段状になっていて易しいが、念のために灌木に支点を1〜2つとり、40メートルほど登ったところで左側のハンガーボルト2つでピッチを切る。
2ピッチ目:ルンゼからハンガーボルトがあるピナクルまで。灌木は徐々に無くなり、クラックにカムをセットしてプロテクションを取りながら登る。易しい。
3ピッチ目:ピナクルの上から少し右にトラバースし、高度感のあるフェースを越えてテラスへ。
ガバホールドを取りに行く手前でしばらくカムをセット出来るところがなく、落ちるとただではすまない感じだが、大きなホールドがたくさんあって易しい。
以前偵察に来た時はすごく恐い思いをして登ったものだったが、今回は全く恐怖を感じることなく登れ、「いったいあれは何だったのだろう?」と思う。フェースを乗り越してすぐのところにあるハンガーボルトでピッチを切る。辻さんが「疲れた」と言いながら登ってくる。
4ピッチ目:前回の偵察では3ピッチまで試しに登っただけだったので、ここからは未知のピッチで、「この先はどうなっているのだろう?」とものすごくワクワクしてくる。ハンガーのあるテラスから一段上がったところから、大きなチムニー状を上がる。
チムニー状だが、はさまって登るということもなく、ステミングや易しいフェース登り。カムがきまるクラックも豊富にあるので、プロテクションにも困らない。登ったところのテラスでピッチをきる。(立派な木が生えていたが、後続に場所を空けておくのと次ピッチのビレイのしやすさの関係から、確か木の左のハンガーを使った様に思う。)辻さんが「疲れた」と言いながら登ってくる。
5ピッチ目:右のチムニーをステミングで登り、名前の由来である?カンテ部の肩に上がったところのテラスにあるハンガーでピッチをきる。
プロテクションはチムニーの中に残置されたハーケンとカムで。易しかったが、あとから調べると他の人はチムニーからでなくチムニー左のフェースから登るらしく、ランナウトするのでけっこう恐い思いをするようだ。チムニーの中にハーケンがいくつか残っているので「はて?」と思ったがそのようなわけで本来のルートとは少し違ったのかもしれない。
5ピッチ目の終了点の背後は「注文の多い料理店」ルートで、立木に懸垂下降用の捨て縄がいくつかかかっている。帰りは我々もここから懸垂下降するわけである。辻さん「疲れた」と言いながら登ってくる。
6ピッチ目:チムニー状をステミングで登りリッジに出て、上部のフェース?スラブ?をランナウト気味に登ってテラスのハンガーでピッチを切る。
出だしが少し難しく、ボルダーチックな動きで登るが、ここだけボルトで支点が取れるので思い切って登れる。中間部のチムニーはステミングで登れる易しいチムニー。チムニー内はクラックが豊富にありプロテクションも容易に取れる。上部は易しいが、ランナウトしていてスリルがあった。
全ピッチの中で一番高度感があり、最もクライミングらしく楽しいピッチだった。辻さん「疲れた」と言いながら登ってくる。
7ピッチ目:脆そうなフレーク状のフェースを登り、草付き上部のハンガーでピッチをきる。
左の方にボルトがあって、それをめざして登ったが、他はプロテクションも怪しいので恐くなって右の草付に逃げる。草付から上は急斜面を歩いて登る。
8ピッチ目:草付・ブッシュを歩いて前衛壁の上へ。
7、8ピッチはクライミング的には面白みがないということで6ピッチ目で帰るクライマーが多い様だが、我々は初めて左方カンテに来たことだしまずは前衛壁に上に立ってみたいということで、最後まで行ってみることにする。
岩やブッシュ、木の根を掴んだりしながら上がっていくと、なだらかな笹藪の広いテラスに出てルート終了。
10:30頃、全員危なげなく登攀完了。
左方カンテに登ると銘打って半年間訓練してきた例会だが、技術的に難しいところもなく(入門ルートなので当然といえば当然だが)あんまりあっさり登れたものだから、なんだか拍子抜けするような思いである。
半年間の練習の間に、時には左方カンテよりも上のグレードであったり、より長いピッチのルートも登って来たため、実力がついたのだろうと思う。
時間も早いことだし、ゆっくりしていこうとkさんが言うので、それもそうだなあと思い腰掛けやすいところを探す。
とくにここがいちばん上という所もなく、笹藪をかきわけていくのもおっくうであるので、適当なところまで上がって腰掛け、皆でお昼ご飯を食べる。
その前週はたいへんな大雨が降って京都でも大変なことになっていたものだが、この日は気持ちの良い快晴で、東の方には焼岳から西穂奥穂、槍ヶ岳までの稜線が全てすっきりと見渡せる。
目指してきた左方カンテに無事登れたことで、皆とてもハイテンションになっていて、奇妙な記念写真をたくさん撮る。
皆で満足感に包まれていたが、前衛壁の上から明日登る予定の錫杖岳本峰の姿を見て「ほんとうにあんなところを登れるのだろうか?」と不安な気持ちでいっぱいになった。
ルートの核心部である大洞穴は写真では見ていたが、実際に目にしてみるとすごい迫力である。
11:15
前衛壁の上から眺める景色をすっかり堪能したので、下山にかかる。
笹藪を歩いて少し下り、7ピッチ目の終了点から懸垂下降で順番に下りる。
Tが最初に下降したが、6ピッチ目の終了点を飛ばしてそのまま下りてしまい、5ピッチ目の終了点手前のチムニーでロープが足りなくなってしまった。
5ピッチ目の出だしのボルトにスリングをかけて下りるが、後続も下りるのに難儀してけっこう時間がかかってしまった。
登って来た大阪の山岳同人所属のお二人を少し待たせてしまい、お詫びすると快く許してくださった。
このお二人はご夫婦のようで、おじさんのコールの声がものすごく大きい。
今回我々は2パーティーの間で連絡を取りやすいため、トランシーバーを持参していたが、こんな大声が出せれば必要なさそうである。
我々の姿を見て「さいきんアルパインクライミングをする若者が増えてきてるんかなー」とおっしゃったが、そんなことは特にないと思います。
全員5ピッチ目の終了点まで下り、そのまま注文の多い料理店の方へ懸垂下降。
5ピッチ目の終了点から数メートルだけ下降したところで、注文の多い料理店のハンガーボルトがあるので、それで一端ピッチを切る。(誰かから、5ピッチ目の終了点から直接懸垂下降すると、50mロープではギリギリになると聞いたためである)
下を見ると注文の多い料理店をクライミングしているパーティーが見えたが、壁左側のクラックの中を登っており懸垂下降するラインにはかぶらないようなので、そのまま続けて下降させてもらう。
注文の多い料理店のフェースは、とてもすっきりしたフェースで、下降していても目もくらむようなものすごい高度感。
懸垂下降の途中、注文の多い料理店を登るクライマーの横まで来たので、リード中のクライマーに「恐そうですね」と声をかけると「もう帰りたいです。」「来たことを後悔している」というような事をおっしゃった。(半分冗談、半分本気なのだろうと思う。)
40〜45m?ほど下降したところで、注文の多い料理店の2ピッチ目?の終了点のハンガーボルトが少し右のほうに見え、右に移動してハンガーでピッチを切る。
13:50
続けて40m?ほど懸垂下降してようやく北沢へ下りることが出来た。
全員下降完了し、撤収。
14:30
テント場に戻って夕食準備。
kさんが持ってきてくれた豪華な牛肉と、生卵によるすき焼きを食べる。
今しがた登って来た前衛壁を眺めながらのすき焼きとビールの味は、本当に格別である。
我々がテントを張った隣には、さきほど5ピッチ目の終了点で出会った大阪のご夫婦がテントを張っておられた。
寝不足のうえ翌日も早いことなので、早めに就寝。
9月22日(土)
04:30
起床。
05:30
昨日と同様、錫杖沢を登って北沢へ。
本日は「見張り塔からずっと」ルートを登る。
昨日下降した注文の多い料理店のフェースを右に見ながら、1ピッチ目である北沢大滝の前で登攀準備。
06:40 登攀開始。
以前にαルンゼ例会で実施した
「先行者が全員のロープを持って上がり、後続が登っているあいだに先行してロープをフィックスしておく。後続はアッセンダーで登り、最後尾がロープを回収」という作戦で登れば、多いピッチの通過も時間短縮が出来るのでは?と思い前半では実施したが、これは全員リードが出来るクライマーだけのパーティーには全く無意味な作戦であり、必要以上に時間がかかってしまった。(おまけにルートミスで大きく時間ロスをしてしまった。)
1ピッチ目:北沢大滝を登る。テープがあり、それに導かれて登っているといつの間にかルートを外れてしまい、どうもⅢ級とは思えないクラックの走ったフェースに出てきた。(このときはまだルートを外れているとは思っていなかった。)
わりとしっかりしたハーケンが数本打ってあったので、カムで支点を作り、ハーケンでバックアップをとってピッチをきる。
2ピッチ目:クラックのフェースを直上し、笹藪のテラスからルートを探るがよくわからない。一段上のテラスに登るフェースに、一本だけ錆びた残置ハーケンを発見し、「うーん、本当にここから?」と思ったが、ハーケンのところから登る。
かなりランナウトしながら登り、けっこう恐い思いをした。Ⅱ級やⅢ級とは思えない。
登った先は猛烈な笹藪の急斜面で、ツルツル滑ってしょうがないので、立木でセルフを取ってビレイ。
さすがにルートを間違えたようだと気付き、トランシーバーで後続に「ルートを間違えたようで、難儀します」と伝えると
「では私がリードして、本ルートから登って合流しても良いですか?」と小松麻衣さんが言ったので、そうしてもらうことにして、正しいと思われるルートを伝える。
3ピッチ目:ツルツルの笹藪をトラバースして、強引に右に見えている北沢に下りる。ピッチを切る場所に悩むが、めざとく見つけたクラックにマイクロカムを2本きめてピッチを切る。
4ピッチ目:とても簡単なスラブ状を登る。沢は大きく開けていて、どこを登っても良いという感じ。
見上げると青空でとても気持ちが良い。
ロープが一杯になったあたりに残置ハーケンが2本打ってあったので、ピナクルにスリングをかけてフィックスし、ハーケンでバックアップをとる
下を振り返ると小松麻衣さんらも結局は似たルートをたどってしまったようで、笹藪をトラバースして同じところから出てくるのが見えた。
「なんだか冒険みたいでワクワクする」と言っているのが聞こえるが、自分も全く同感である。
5ピッチ目:歩いて登れるようなスラブだし、なんだか確保しているのもバカバカしいようなので、後続に「ここ確保なしでもいいですか?」と確認し、大洞穴の下までは歩いて登る。
登って行くと、右に昨日の前衛壁終了点が見え、その上には大迫力の烏帽子岩が見えた。
6ピッチ目:ルートを少し左の尾根気味にとり、つるつる滑る笹藪をひたすら歩いて登っていると、なんだかまるでクライミングをしに来ているのか何なのだかという気分になってくるが、沢登りみたいで楽しく思う。
10:25
登り切ったところに先行して歩いていた辻さんと粟田さんが立っていて、そこまで上がってみると、その向こう側についに本峰フェースが見えた。
少し遠目から見る大洞穴は恐ろしい絶壁。近づいてみても昨日前衛壁の上から見た時と印象は変わらず、すごい迫力でとても登れそうには見えない。
ともあれこういうものは壁の下に来てみないじっさいのところはとわからないものだ。
見張り塔の下の谷から余所の大人数のパーティーが歩いて登って来て、いったい何処へ行くのですかと聞くと烏帽子岩の上に登るのだそうだ。
飛騨山岳会の方々だそうで、地元であれば錫杖岳にも気軽に来られるわけで、羨ましい限りである。
覚悟を決めて、ガレと草付をトラバースしながら大洞穴まで歩く。足元が草で滑り、岩も脆いので落石をおこさぬ様に気を使う。
大洞穴の下まで来ると、思ったよりずっと凹凸やクラックが豊富にあって、離れたところから見ていたよりはずっと取り付くしまがありそうというか、登れそうな雰囲気であり、俄然やる気が出て来た。
大洞穴の下で少し長めの休憩をとる。
「あんなところにスリングがかかっている」と粟田さんが言うので指さすところを見て見ると、大洞穴を上がってトラバースするところに、紫の真新しいスリングがかかっているのが見えた。トラバース部分はランナウトしてしまうので恐い、と聞いていたが、誰かがハーケンごと残置していったのだろうか?そうであれば気休めでもプロテクションがとれて心強いが。。。
11:30
7ピッチ目:出だし、洞穴の壁の少し手前の方から登ろうとするが、皆から「もっと奥から登った方が良い」とアドバイスをもらい奥の段の上に上がる。しかし、自分の見ていたラインとは違い、結局手前の方に移動して登る。
はじめに段に上がって、背伸びしたところに1番くらい?のカムを1つセットしたが、この先で難しいところがあったときカムが弾切れになると困るので、ランナウト気味に出来るだけ使わないように我慢しながら登った。
あとから振り返れば5.8というグレード通りで簡単だが、絶対に落ちたくないのでものすごく力みながらの登攀。
恐怖でハアハア言いながらクラックの途中に生えた松の木まで到達。細い松の木にガースヒッチでスリングを巻いて支点を取ると「はあー」と溜息が出た。この松の木がどれほどの強度なのかは解ったものではないが。
そこから先はクラック沿いに登るが、ホールドは豊富にあって易しいものの、恐怖感からがちがちに力みながら登った。
草の生えた大きなテラスに出て、岩の凹角部分に残置ハーケンが二本あるので「ここか」と思い、ピッチを切る。
クラックにマイクロカムや小さめのサイズを3個ほど入れて確保支点。残置ハーケンにバックアップをとる。
後続で登って来たkさんが「すごく恐かった。やっぱり本当はマルチピッチってこうですよね」と言う。
昨日の左方カンテは簡単だったので拍子抜けをしたが、本来はこうやって恐怖でハアハア言いながら登る「とんでもないところへ来てしまった」という感じが、いかにもマルチピッチらしい。という様なことを言いたいわけだ。100%同感である。
今回皆さんには、僕を含め全員初心者から始めたメンバーばかりの隊であるため、事前に「危険を感じるところでは、CLがバックロープを引いて上がるので、自己判断でバックロープを利用してもらうこと」「面白さより安全を優先してもらうこと」ということをお願いしていた。
トランシーバーで、リードの小松麻衣さんに「恐かった」ということと、「もしバックロープが必要なら、フォローの辻さんに引いて上がってもらうが、ルートが斜めにトラバースしているので後から必要になっても上から垂らすことは出来ない。バックロープで登るかどうか、今決断してください」というようなことを尋ねると、間を空けず「バックロープ使います」と返ってきた。
麻衣さんはOkaさん仕込みでクライミングが上手いので、登れば問題なく(もちろん粟田さんも)リードで登ることは出来るだろうが、無理せず安全を優先した判断をしてもらえるのは、リーダーの身としてはとても有り難い思いである。
そんなわけで、辻さんには別途持参しておいた40m弱のダブルロープをバックロープで引きながらフォローしてもらう。
バックロープをフィックスして後続にも登ってもらう。
8ピッチ目:凹角部分をステミングで登ってチョックストーンを越えトラバース、ランナウトしながら左上してテラスへ。
凹角部分にはカムがきまるクラックがいくらでもあるので支点には困らないが、先ほどのピッチ同様緊張しながら登る。
凹角に最後フタをするように、ひと抱えくらいのチョックストーンがはさまっているが、これが触ってみるとグラングランと動くチョックストーンで、越えるために持つことが出来ないので非常に恐い。
仮に落としてしまったら自分もただではすまないし、下にいるビレイヤーも絶対ただでは済まないだろうということで非常に緊張しながら越えた。
個人的にはこのチョックストーン越えが全ピッチの中でいちばん恐かった様に思ったが、後から聞くと他のメンバーはここは全く恐くなかったらしく、自分としては寂しい限りである。(映画の感想に似て、一緒に登った人が自分とは全く違う感想を持っていると寂しいものである)
チョックストーンの上はまた小さなテラスの様になっていて、トラバースした先には下から見上げていたスリングが見えた。
息をととのえて右のトラバースに入る。
トラバースは足を置くところもたくさんあり、手もガバホールドが豊富にあって易しい。
ただしプロテクションを取るところは見当たらず、「とりあえず先ほど見えていたスリングのところまで行けばひと安心だ」と慎重にトラバース。
ところがスリングのところまで行ってみると、スリングの先には何も付いておらず、思わず目を疑う。
スリングは、ただ壁にひっかかっていただけだったのであった。
これにはガッカリというか、頭が真っ白になるとまではいかないが、ランナウトしてきたことが急に恐くなる。
ともあれスリングはちゃっかり回収し「もうけたもうけた」という思いと「恐い恐い」という思いがごっちゃになりながら登攀。
スリングがひっかかっていた辺りから右上してテラスへ。
大げさかもしれないが、テラスに上がってきたときは地獄から天国に這い上がってきたかの様にホッとする。テラスの上に残置ハーケンが数本ある。ピナクルで支点を作り、残置ハーケンでバックアップをとってビレイ。(それにしてもこんな絶壁にスリングだけがひっかかっているとはどういう状況なのか。)
反対側を見ると、塔の様な烏帽子岩のてっぺんに、先ほどの飛騨山岳会の方が立っているのが見えた。
遠くからみると、なんだかとんでもないところに立っている様で凄い。
下では登って来た小松麻衣さんが烏帽子岩の上に立つ人に向かって「ヤッホー」と叫んでいるので、自分も彼等に「かっこいいですよー」と叫んだ。
すると「あなたもかっこいいよー」との返事が返ってきた。
後続をビレイする際に、ロープを張るとトラバース部分で引っぱられるようで「ゆるめてくださーい」というやり取りが何度かあった。
ここまで登ってくると、皆安堵でテンションが上がっている。
9ピッチ目:Ⅱ級の歩いて登れる大きなテラスを、50m一杯まで歩き、クラックにカムをセットしてビレイ。念のためロープを出したが、登ってみるとやはり大丈夫な様だったので、肩がらみでビレイする。
10ピッチ目:9ピッチ目のビレイ点から少し本峰側に歩いて、2mほどの壁の前でビレイしてもらう。
2mほどの壁を越えて、急斜面の草付ルンゼ?を、灌木をつかんだりしながら登る。草付がつるつる滑るし、岩は脆くて落石だらけ。沢登りしている様な雰囲気。
上のテラスまで行けるかと思ったが中途半端なところでロープ一杯のコール。仕方なしに少しだけ下りて、立木と脆そうな岩のクラックにはめたカムでビレイ。
11ピッチ目:ピッチを切ったところの場所があまり良くなかったので、見張り塔の由来?である、塔の様になっている山頂の岩の直下にあるテラスでピッチをきる。這松にスリングを巻いてビレイ。
12ピッチ目:クラック沿いに登る。ホールド・スタンス豊富で易しい。見上げると、もう上には青空以外には何も見えない。
カンテ状を乗越すと、錫杖岳の山頂に出た。感激が胸に込み上げてくる。
山頂のピナクルに、辻さんより借りた長いスリングを巻いてビレイ。
後続パーティーから「お助けロープしてもらったほうが良い?(難しい?)」と聞かれたので「簡単だからリードで登れるよ」と伝える。
16:38、最後に小松麻衣さんが登って来て、全員無事登頂完了。
この時の感動というものはどうも言葉にあらわせないものだが、今まで登ったどの山よりも感動したのではないかと思う。
嬉しいことは一緒にがんばって登った皆さんが同じ様に感動していることで、それが自分の感動と同じものなのかは解らないが、ともかく皆で半年間頑張って練習して、気持ちをひとつにして、命をかけて山に登って下さったこと。そのことが何より嬉しくて誇らしかった。人には大げさと思われるかもしれないが。
山頂で、クライミングの練習でご一緒して下さった酒井さんから「酒井さんの魂」として貰ってきた一本のタバコを吸う。
午後4時をまわってしまったので、日は陰ってきている。
ひと休みしてすぐに下山にかかる。
下山は南のコルから牧南沢を下って錫杖沢出合に戻るルートだが、もう幕営地までに日没を迎えるのは確実である。
全員ヘッドランプを出しておく。
ピッケルピークから踏み後が反対側になっていたのに気が付かず、ひどい薮漕ぎをしてまた踏み後に戻る。
その後踏み後をたどって順調に下りるが、コルのあたりでふたたび踏み後を見失い、無理矢理下りて背丈ほどの笹藪をこいで下りる。
しかし自分が方角を勘違いしていて、コル手前からあらぬ方向に下りていた様子で、しばらく行ってからまた稜線近くまで戻る。
このあたりで辺りは真っ暗になりヘッドランプを点ける。全員疲労困憊。
笹藪をトラバースしながら稜線付近を進むと、笹藪の中に踏み後を発見。たどっていくがどんどん南西の方へ下りてゆく様なので、これでは反対側に下りてしまうのでは?と思い、ちょっと広いところでビバークして、明るくなってから地図をよく確かめようということになった。
GPSを取り出して辻さんと相談したところ、「ここはまだコルの途中なのではないか」とのことで、自分はもうコルから谷筋を下りているものだとばかり勘違いしていたが、確かにコルを下りているのであれば方角が合う。そこで再度荷物をまとめて出発。
21:13、しっかりした踏み後をたどって行くと無事牧南沢へ出て、無事錫杖沢まで戻ってくることが出来た。
疲労困憊するメンバーで乾杯して、各自食事をとって就寝。
9月23日(日)
06:00頃起床。
昨日の帰りが遅かったので、隣にテントを張っていた例の大阪のご夫婦が心配して、下山してくるクライマーに僕達のことを「見かけなかったか」と聞いて下さっていたらしい。ありがとうございます。
kさんがサプライズで持ってきてくれたメロンを皆で食べ、荷物をまとめて出発。
08:15クリヤ谷渡渉地点
08:45クリヤ谷登山口
温泉に入り、小松麻衣さんたっての希望である「飛騨牛」を食べて帰京した。
左方カンテについては、残地物を全て取り除いたとのことで、はじめ「あればあった方が良いのに、どうしてわざわざ取り除いたりするのだろう?」と思っていたが、練習の過程でじっさいにナチュラルプロテクションのルートを登ってみると、その魅力がすぐに解った。
そもそもクライミングとは「安全なボルトがあって、そのボルトにヌンチャクをかけて登っていく」ものだ、と思っていたところがあったが、ナチュラルプロテクションで登るということは、自分で登るラインを読み、自分で安全を考えながらクライミングしていくということである。
だから、「登らされてる感」がないというか、「自分で登っている」という実感が得られること、それが魅力だと感じた。(ただし恐怖もリスクも自分持ちになるが、それも魅力の内だ。)
もうひとつのルート(というかメインイベントだったが)である「見張り塔からずっと」についても、完全ナチュプロルートということで、例会を実施するにあたって、これほどクライミングの支点について真面目に考えたり悩んだりする機会は、今まで無かった。
ボルトがいっさい無くなってしまうと、「いったい【クライミングルート】とは何なのだろう?」とか、そういったこともたくさん考えた。
また、あらゆるクライミングのスタイルというのは、支点によってその性格が大きく左右されているのだなということが解った。
大げさな言い方かもしれないけど、一緒に命をかけて山に登って下さった辻 博史さん、小松 麻衣さん、粟田 直和さん、kさん、本当にありがとうございました。
振り返ってみると、練習してきた半年間はほんとうに幸せな時間だったなと思います。みんなで錫杖岳に登ったこと、一生忘れません。
そして諸事情から叶わなかったけど一緒に登ろうと言って下さった方々、ご指導くださった野崎会長、カムやハンマー、鐙をかして下さった丸山さん秋房さん、一緒に練習してくださった酒井さんM岡さん、小松さんが技術的に遅れないようご指導くださったOkaさん、その他にもお世話になった多くの方々本当にありがとうございました!
【感想】55期 k
1年前、笠ヶ岳への道中で初めて錫杖岳を認識しました。室内クライミングしかしたことのなかった私には、巨大なザックを抱えて歩くクライマーは別世界の人間でしたが、“錫杖は5.8が登れれば行けるよ”とフリークライミング仲間に教えてもらったことがきっかけで、ぼんやりと登攀対象に見えるように。(今思うと完全に舐めていた) 自信はなかったけれど、参加するからにはやれるだけのことはやろうと思いました。
メンバーが決まってからパーティ編成は早い段階で決まり、私はフォローで登ることに。まず第一に足を引っ張らないように、あわよくばサポートできるようにと練習に取り組んできました。練習を重ねる中で、次第にチームとして成長していく感覚がとても嬉しかったです。ただ、本番を迎えて思ったのは、やっぱり私はリードがしたかった。登攀前の緊張した面持ちや登りきった後の安堵した表情、どこで苦労したとか、プロテクションがどうだったとか話す笑顔を前にすると、切ないような寂しいような、何とも言えない複雑な気持ちになりました。でも決して悲観的にはなっていなくて、その時感じたものが私にとってのマルチピッチクライミングの魅力なんだと思います。フォローだからこそ見えるものがありました。こんな想い越しでいつか自分のリードで登れたら、またちょっと違う達成感が得られるような気がします。でも今はそんなことよりも、このメンバーで錫杖岳の上に立ったことに胸を張りたいです。
性別も年齢も職業もてんでバラバラの5人が、錫杖岳に行くという共通の目標で最高のチームになりました。メンバーも応援してくれた人達も、誰一人欠けてもきっと山頂には立てなかったです。
この半年で随分思いの変化がありましたが、どんな形であれ山登りからは離れられなさそうです。みんなで練習して錫杖岳に登ったこと、一生忘れません!
【感想】53期 辻博史
リーダーのTさん、そしてご一緒いただきました小松さん、kさん、粟田さん、みなさんのおかげで左方カンテ、そして「見張り塔からずっと」を登れました。ありがとうございました。
今回、2本のルートを登れたのは皆様のおかげです。今回、パーティの力ってすごいと思いました。また、みんなで錫杖岳の頂上に立てたときは今までにないくらい感動しました。
特に2日目の「見張り塔からずっと」は取りつき時点で体力的に厳しいかもと思いましたが、このパーティなら何かあっても頼れると思い、みんなに甘えて登らせていただきました。
みんな無事に登り、下山できたことがこんなにすばらしいと感じたのは初めてです。
また、今回、例会企画の他、数多くの練習の場を設けていただき、みんなで取り組んできたので本当に感動しました。
内容の濃い3日間で、いろいろな事があり、時間のたった今でもなかなか整理がつきません。
とにかくご同行いただきました皆様、そしてTリーダー、大変ありがとうございました。そして又の山行をよろしくお願いします。
【感想】54期 粟田 直和
僕が山岳会に入った最大の理由に「ロープを使って2人ぐらいで絶壁をよじ登ってみたい」というのがあり(当時マルチなんて言葉知りませんでした)例会案内見て即参加表明。しかし、ロープが無い!ギアが無い!そしてなによりクライミングスキルが無い!という無い無いづくしのスタートでした。参加される皆さんに迷惑だけはかけまいと言う思いから普段できる事は積極的に取り入れようと決め、筋トレと減量を始めましたがこの生活が結構辛く「何でこんな思いしなあかんねん💢」とさながらボクサーの試合前のような心境でした(ボクシングした事無いですが)
そのかいあってか前衛壁の頂上に立った時の感動は絶対に一生忘れない思い出になりました。入会前に想像していた以上の楽しさ、厳しさがあり、参加した事を誇りにさえ思いました。これからもマルチピッチ辞められそうにありません。
最後にご指導いただいた皆様、本当に有難うございました。
そして最高のメンバーとチームワークで完登出来た事、本当に嬉しかったです。
有難うございました!
【感想】53期 小松 麻衣
錫杖岳例会が企画にあがった時に、以前からクライミングで山に登ってみたいという気持ちがあり念願が叶う思いで参加表明しました。でも、その時は実際にマルチピッチの経験があるわけでなく、ロープワーク技術も全く知らず室内ジムの経験しかない状態でまさに無謀だったと思います。
半年前から皆での練習企画があがり、参加したいけど仕事が重なり参加できない。どんどん皆との技術の差が間が空いていくような気がしてすごく焦りと不安がありました。そんな中、以前山岳会に入会されていたOさんと出会いクライミング練習を一から丁寧に指導し付き合っていただいたお蔭で、外岩の楽しさと厳しさを学ぶ事が出来ました。そして休みが合えば錫杖メンバーや、会長さん、酒井さんと共に数々の岩場に行き練習し本番へ臨むことが出来ました。
無事に左方カンテ・見張り塔を完登できたのは、この二日間だけでなく、それまでの経過があっての完登だったと思います。待ち遠しかった2日間はあっという間に過ぎてしまい達成感や言葉にできない感動、こんなにも素敵なメンバーと登りきったことは、私にとって一生に思い出となりました。常にメンバーの安全を第一に考え、動いてくれ、どんな難しいルートでも突破してくれたリーダー(ものごいヤロー)、虫が大好きで、そしていつも笑顔でかわいいメンバーのアイドル(メロン女)、登攀中、一番ボッカしていたはずなのにのに安定した登攀力は凄かったよ。いつもクールで、優しかった(まな板ヤロー)ビバーク寸前で、きちんと読図してくれて本当助かりました。
そしてザイルパートナーの野獣(でがらしヤロー)私が緊張する中、笑い交じりの事を言ったり、安心させて登らせてくれて感謝です。一緒にザイルを組めて本当に良かったです。4人のメンバー全員に感謝の気持ちで一杯です。皆さんのあだ名つけてすみませんでした。
また、この半年間初心者の私を一から丁寧に指導し、練習に付き合っていただいた岡さんにも本当感謝の気持ちで一杯です。
最後に、旦那様に家庭よりクライミングを優先させてくれて本当にありがとう。一杯迷惑かけました。
今は改めて振り返ると、こんな打ち込んで一つの事をやり遂げた事は初めてで、私の人生の糧になるなと思います。