京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3374 大峰の沢 北山川水系 岩屋谷

 

2014年4月25日(金)前夜泊~4月27日(日)

 

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写真:雄滝(130m)前にて

  

【参加者】CL小松久剛 SL長野浩三 計2名

【天候】4月26日(土)晴れ  4月27日(日)晴れ

 

【記録】

4/25 20:00京都駅八条口発~23:20岩屋谷林道着、幕営

4/26 6:50岩屋谷林道発~7:25斜瀑5m~7:50CS三段滝~10:40 40m滝~12:15 40m滝巻き終わり~13:00二俣~13:44大CS滝~14:56大CS滝巻き終わり、雌滝前 幕営

4/27 7:00雌滝前出発~7:30悪いルンゼ登攀開始~9:00ルンゼ登攀完了~9:25雄滝前到着~10:00大滝横ルンゼ出発~10:30尾根着~11:17小峠山着~13:10岩屋谷林道対岸まで下降、登り返し~14:19水尻バス停に下山~駐車位置~帰京

 

4/25 いつもどおりの京都駅を20時に出発。深夜の169号線を南下し、かつて、白川又川本流遡行の際に入った白川又林道に入り、岩屋谷橋を越えて林道に入る。あまり駐車適地がないが、何とかスペースを見つけて駐車。ささやかな宴会の後、就寝したが、4月のテントは寒く、あまりよく寝られず、翌日が不安だ。

 

4/26 明け方は寒く、太陽が昇るまでは動けない。太陽が上ると一気に気温が上がり、遡行を開始。大岩を巻いたりしているうちにすぐに最初の核心部といわれる斜瀑5mにたどり着く。釜は深いが、斜瀑のためあまり威圧感はなく、あれよあれよという間に長野がノーロープで越えてしまい、小松も後に続いた。

ここまでは予想外にあっさりと進んだものの、その後は小滝の巻きやら、巨岩の乗り越しやらで、なかなか一筋縄ではいかない遡行が続く。今回は前年の黄蓮谷の苦い経験から二人ともアクアステルスシューズを履いていたが、巻き中心の遡行ではこの選択は大正解だった。

 

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写真:巨岩を越えてゆく

 

沢の渓相は基本的に巨大CS+深い釜、という構成になっていて、ほとんど直登はできず、なんとかCSの脇を通り抜けるか高巻くしかなく、なかなかスムーズには進まない。

そうこうしているうちに40m滝前に到着。青空の下、すっきりとした姿で美しい。

 

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写真

 

遡行図には右岸のぬめったルンゼを登る、とあるが、いくら眺めても泊まりの荷物を持って登攀できる自信が出てこなかったので、大巻きすることに決定。40m直前の5m滝を懸垂下降し、谷の右岸から尾根の上部に上がると、巻き道なのか、赤テープを見つけた。赤テープ地点から上流へはいったん水平にトラバースする。一部悪い部分もあったのでロープを出したりもしたが、それほど危険を感じることもなく、40m滝の上流に出ることが出来た。Webなどでは40m滝を高巻いている記録は見たことがなかったのだが、無理して直登して荷揚げをしたりするよりは時間が短縮できるような気がする。

 

40m滝を越えた後はしばらくは平易な渓相が続くが、雌滝が近づくにつれ、この沢特有の巨大CSの滝が連打するようになる。CS滝を巻いていると、よくWebでも写真を取り上げられている大CS滝が前方に見えてきた。遡行図では右岸のスラブを登れるが、無理をするな、とあったので、手前のCS滝を巻いたついでに大CS滝前で沢に降りずに、大CS滝も右岸からそのまま巻くことにする。

 

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写真:大CS滝

 

この巻きが今回の核心部のひとつで、急斜面の泥土壁に薄い岩が乗っかっているところをロープをつけてだましだましトラバースして、最後は泥壁にバイルをつきたてながら攀じ登り、立ち木のある場所にたどり着いた。

立ち木のある場所までたどり着いてしまえば雌滝前までは簡単な懸垂下降で降りることが出来る。

 

この時点で15時となっており、小松がかなり疲労困憊していたので、それ以上の核心部といわれる雌滝の巻きはやめておいて、雌滝の前で幕営することにした。翌日の雌滝の巻きは絶悪であったのでこの選択は実に正しかった。

幕営地では焚き火職人の長野がすばやく盛大な焚き火をつくり、ソーセージやらサラミやら餅やらを焼きつつ、酒を飲み交わし、沢の夜が更けていった。

 

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写真

 

4/27 明け方、寒さで寝られず、震えながら日の出を待つ。ちなみにこの日の小松の装備は、上半身は沢用ボディシャツの上に薄い防寒着、ダウン、ゴアの上着。下半身は冬用のタイツの上にダウン、ゴアのパンツ、登山用靴下、これにシュラフカバーというものであった。ダウンの夏用シュラフを使っていた長野は普通に寝られたようだ。

日が昇ると、滝の前の温度が一気に上がって虹も出て行動可能な状態になってきた。雌滝の前で幕営している記録も見たことがないので、この虹の写真は結構希少なのではないだろうか。

 

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写真:雌滝に虹がかかる

 

7時に出発。出発してすぐに滝の左のルンゼを登り始める。ルンゼはすぐに行き止まりになっており、正面は滑った壁に、右からは細いルンゼが入っているので、細いルンゼに進路を取る。多くの記録でこの沢最大の核心部といわれているところで、緊張感が走る。

1P目は若干かぶっているものの、ノーロープで長野がリードで登りきり、短いロープで小松を引き上げた。2P目はさらに細いルンゼを小松がリードし、腐葉土の詰まった急斜面で頼りない根っこにロープを固定した。

 

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写真:2P目をフォローする長野

 

3P目は小松がリード。最初、腐葉土の急斜面、その後、ヌメったスラブを登り、ルンゼにつまったCSを右壁から乗り越えていくが、まともな中間支点を取らずにボルダーチックな動きでCSを乗り越えなくてはならず、恐怖感との戦いとなった。CSを乗り越えるとまた腐葉土の詰まった急斜面になるので、バイルを突き立てつつ進み、立ち木の根っこにビレイ。過去の記録ではCSの記載は見当たらなかったので、最近CSがふさがり、難易度が上がったのではないだろうか。

4P目は腐葉土の詰まった急斜面を長野がリード。無事雄滝の見える尾根上にたどり着いた。

尾根上には雄滝の滝見道らしき赤テープがつけられているが、ズルズルでいまいちな道なので、途中から懸垂下降して降り立った。

大滝130mはさすがに大きく。青空に映えて素晴らしい。厳しい遡行をくぐり抜けてきてよかったと思える瞬間だ。

 

 

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写真:巨大な岩屋谷雄滝 右下に長野が見える

 

雄滝でしばし休憩した後は雄滝の右側に下りてきているルンゼをつめあがるが、これは危ないところもなく、しんどいだけ。

尾根に上がった後は南東に進路を取り、小峠山までは順調に進んだ。

他の山行の記録を見るとここから岩屋谷林道付近に直接降りられる道があるようで、実際テープもあるのだが、途中で見失ってしまい、岩屋谷林道の駐車位置が見えるところまで下降したものの藪のため進めなくなり、仕方なく300m登り返して水尻の集落に降りた。そこからは平易な車道を歩き車に戻った。

 

【感想】46期 長野浩三

 岩屋谷がこれほどやばいとは知らずに割と気楽な気分で参加した。しかし,結構やばいところがあり,特に,支点のない泥壁と,同じく支点がない雌滝の巻きのもろい岩の登攀はほんとにやばいところだった。いずれも小松さんがリードしてくれたからセカンドで安心して登れたが,小松さんのメンタルグレードはあがったのではないだろうか。もうすぐ子どもも生まれるので今後はあまり無理しない様にしましょう。

 岩屋谷の滝はどれもなかなか立派で,特に雌滝70mと雄滝130mは圧巻だった。普通は雌滝前では幕営しないのだろうが,われわれはたまたま幕営することになった。雌滝前は雌滝からの水が常に霧のように降り注いでいて,カッパを着ていないとすぐに雨に濡れたようになる。しかし,たき火は大丈夫で,かなり充実したたき火となった。液体のメタを持っていくとすぐ火をつけられる。また,今回は,25cmのステンレスの串を持っていき,ウィンナー,餅,サラミなどを焼いて食べた。シングルモルトと一緒にやると最高だった。

 2日目の朝一は雌滝の巻きだったが,ここがほんとに悪かった。落ちると死ぬかもな~という感じのところだ。これを抜けてさらに斜面を50mほど登ると雄滝が目の前に現れた。雄滝は130mの高さから雄大に水を落として,天気が良くて感動した。

 下山道は踏み跡があったが,最後の最後に北側へ降りる登山道がわからなくなり,薮となって進むことができず,一度675mピークまで約300mくらい登り返したのはこたえた。かなりのトレーニングにはなった。おかげでしばらく筋肉痛が続いた。

 今回の沢はいままでの沢の中で一番むずかしかった気がする。小松さん,(危ないリードを含めて)ほんとにありがとう。

 

 

【感想】52期 小松久

夏の本番沢(当初の予定では立合川)に備えて、早めに難しめの沢に行っておこう、というのが今回の岩屋谷のコンセプトでしたが、今のわれわれの実力では難しすぎました。

岩屋谷は関西周辺の沢100では2級上にグレーディングされており、黒石谷やらヌタハラ谷やらと同じグレードということなのですが、昨年遡行したそれらの谷と比べても、比べ物にならないほどの難しさでした。(直前に沢の大先輩にお話を伺った限りでは「4級にしては登りやすい沢」とのこと)

体感的にはまだ懸垂下降もまともに出来ない頃に行った芦廼瀬川と同じくらいのがんばり度合いで何とか遡行を終えることが出来ましたが、遡行の内容的には十分満足しています。というのも、ほとんどの遡行記録ではなぜか直登している40m滝横ルンゼを自分たちなりのルートでそれなりの合理的なラインで巻き終えたり、雌滝横の絶悪ルンゼも、おそらく過去の遡行記録の状況よりも悪くなっている(ルンゼにCSが挟まり、これを越えざるを得なくなっている)にもかかわらず、それなりに自分たちでルートを見つけて登攀を無事完了させることが出来たからです。

沢の醍醐味のひとつに、登攀能力に若干劣っていてもルートファインディングで、自分たちの実力にあったルートを見つければ何とか突破することができる、という点がありますが、そういう意味での沢の実力としては少しずつ、ついているのかな、という実感を持つことが出来ました。(体力的にはまだまだですが)

とはいえ、不安なく思い切ったラインを巻いたり、リードできたりするのは間違いないセカンドがいるからであり、長野さんなくしてはこの遡行は成功しなかったと思います。

長野さんありがとうございました。また焚き火でいろんなものを焼きつつ飲みましょう。