2014年12月28日(日)夜~31日(水)
【参加者】酒井 敏行(L)
AT(CL)
比留間照幸
渡邉 桂 計4名
【天候】晴れ
【行程】
12月28日PM9:00 神戸三宮
12月29日AM1:00 神戸港出航
AM7:30 小豆島・坂出港着
AM11:00 吉田の岩場
PM5:00 吉田の岩場発→宿
12月30日AM9:00 拇岳登山口
PM4:30 拇岳登山口→宿
12月31日AM8:30 吉田の岩場
PM0:00 吉田の岩場発
PM3:45 坂出港出航
PM7:00 神戸港着
【記録と感想】57期 渡邉 桂
12月28日
雨の中、三宮に集合してこの先3日間の合宿がうまくいくよう決起飲み会。人生初の代行運転を利用して神戸港第三突堤へ。車中にてフェリー乗船を待ちわびる。
12月29日
雨の神戸に別れを告げ、イルミネーション煌めく港から暗い瀬戸内海へ向けてフェリーは出航した。この先待つ景色や岩、冒険に沸き立つ心を抑え、フェリー内で大人しく就寝。途中何度か船内放送で起こされたもののさわやかな目覚めと共に、明るくなった海原の先に小豆島の島影を見た。小豆島に降り立つと、晴れてはいたが路面は昨夜の雨で濡れていた。岩場も濡れていることが予想されたため、まずは観光を兼ねて島内一周ドライブ。至る所に岩や採石場があり、この島が岩でできた島だという事を再認識した。
機を見て吉田の岩場に到着。他パーティはなく、貸し切り状態であった。たくさんのクライミングエリアがあるため、歩きながら乾いていそうな岩を探した。まずはベムロック下部左で花崗岩のスラブを堪能。
続いてトポに載っていないエリアへ。酒井さんが酒井比留間ルート(仮称)暫定グレード5.11bをマスターでトライした。1ピン目がややランナウトしていたため下部のクラックでカムを設置し、3ピン目まで伸ばした。その後酒井比留間ルートは酒井さん、比留間さんの両氏によってトライされ続けた。その間私は渡邉ルート(仮称)体感グレード5.8~9をマスターでトライしており、お二人の雄姿を見逃してしまった。渡邉ルート(仮称)はガバの多いスラブ壁で上肢筋群に負担を強いることなく登れたが、ルート自体が長く、1度テンションが入ったため少し怖かった。しかし終了点に到着できた時の満足感とそこから眺める小豆島の山々や海の景色は素晴らしいものだった。結局酒井比留間ルート(仮称)はRPならず、日も傾き始めたためATさんが渡邉ルート(仮称)から岩上部へ上がり、酒井比留間ルート(仮称)にかけられたクイックドローを回収して1日目のクライミングは終了。
その後は宿のある道の駅へ行き、夜間受付である民家の玄関でチェックインを済ませ、土庄にある大型スーパーまで買い出しに向かう。道の駅併設の温泉で一日の疲れを癒やした後は、鍋とビールで酒盛りをした。酒盛りは深夜まで続き、これがいけなかった。
12月30日
拇岳マルチピッチの合宿2日目。朝食の準備や行動の準備があったため早起きしたが、不覚にも私は宿酔状態であった。早々に就寝した酒井さん以外、全員がコンディション良好とはいかない中、入念なギアチェックを行い拇岳へ向かった。
今回のルートは大チムニーから取り付く正面壁ダイレクトルート 130m 5.9~5.10b。すべてATさんがリードし、比留間さんがATさんをビレイ、比留間さんおよび私がセカンドで登り、最後に私が酒井さんをビレイするというシステムで行った。
登山口から取り付きまでは東南アジアのジャングルのような山道を30分ほど登る。この日も幸運なことに他パーティなし。取り付き付近ではニホンザルが我々を迎えてくれた。靴をクライミングシューズに履き替えてやっと宿酔から解放され、来たる大冒険への期待と不安でいっぱいになりながらチムニーをリードで登っていくATさんの姿を見送った。
ATさんがひとつ目の支点まで登り終え、ザックを引き上げると次は私の順番。登り始めてすぐにチムニーを登るのが初めてだったということに気が付いた。どこまで入り込んでよく、どこから出て行ったらよいかよく分からず、滑落の恐怖と戦いながらの1ピッチ目となった。樹林帯であり景色もよくない。励まされるものが何もない中、なんとか支点まで登りきった。いつものフリークライミングならここでロワーダウンして終了するところだが、今回はマルチピッチ。この先も仕事がたくさん待っていた。比留間さんが後続で登ってから、ザックの引き上げやロープアップ、そして酒井さんのビレイ準備。準備ができたら酒井さんをセカンドビレイ。
その間にATさんは2ピッチ目へ。セカンドで比留間さんが登っていき、酒井さんと待っている間に写真撮影したり眼下の景色を眺めたり、わずかな休息を楽しんだ。2ピッチ目は高度感があったがルートとしての難度は高くなく、あまりよく覚えていない。時短のためにA0でトライしたため、普段より腕力に頼った気がする。支点のあるテラスまで来て見慣れた顔を見つけたときの安心感は測り知れないものがあった。
そして最も難儀した3ピッチ目。先行するATさんが慎重で、比留間さんは途中でレストする程だったので、私も抜けられるのか登る前から心配だった。心配通り、腕が途中でパンプしてどうしようもなくなった局面が何度かあった。その度にセルフビレイを取り、レストしながら掴めるものは全て掴みながら必死の思いで何とか支点まで登ることができた。あまりに大変で泣きそうになりながら登ったが、先行の両氏から褒めてもらえたことと高度が上がってさらに素晴らしくなった海と島の景色とに元気をもらい、頑張った甲斐があったと思った。後続の酒井さんにはギア回収の任務が課せられていたが、カムの抜き取りに難渋して腕が音を上げていたらしい。
ここまで来ると拇岳の頂上も近くまで迫っていた。しかし残り時間とルートの難度を鑑み、4ピッチ目半ばでATさんが登頂断念を決めた。60m懸垂下降で一気に取り付きまで下ったが、大腿部が途中から疲労し、慣れない私にはとてつもなく長く感じられた60mだった。地上でハーネスを脱ぎ、靴を履き替えるとやっと人心地がつけた気がした。暗くなる前に全員無事で下山できたことが、とても嬉しかった。
今回のマルチピッチは2回ロープワークを練習しただけの私や5年ぶりという経験の浅いメンバーが多く、通常行うようなシステムではない方法で行われた。ロープ配分ひとつをとっても、腕力のない私がダブルロープをロープアップすればよいように細かなところまで配慮されシステムが考案されていた。計画からギア類の準備、事前練習、そして全行程のリードに至るまで、ATさんに負うところが過大だった。不利な状況と分かっていながらも連れて行ってもらい、感謝の念に絶えない。とてつもなく大変で怖い思いをし、結果的に登頂は果たせなかったけど初のマルチピッチは良い思い出、良い経験となった。下山後はペンションにて夕食、入浴、飲酒、トランプ、お散歩といった平和な一日の締めくくりを過ごした。
12月31日
合宿最終日は再び吉田の岩場でフリークライミングを楽しんだ。時間があまりないのでエリアを一箇所に絞り、夕暮れロックで思い思いにエンジョイクライミング。
ATさんが第三の男5.10cをMRPするも終了点がランナウトし過ぎていたため一つ手前のボルトでロワーダウン。比留間さんがトライ。私は酒井さんのビレイで多情5.8をOn siteした。ガバだらけでフリクションの良く効く、2ピンだけの短いルートだったが記念すべき初On site。ロワーダウンしてから酒井さんに握手してもらい、しばらくしてそのことに気が付いた。
そしてATさん、酒井さんがトップガン5.11bに、比留間さんと私がTR状態の第三の男にトライ。私は何度か粘ったが上まで抜けられず、力尽きて諦めた。比留間さんはムーブを掴み、上まで抜けて最終日終了。景勝地である寒霞渓で少し観光し、フェリーに乗って小豆島を後にした。
【感想】51期 AT
親指岳に登ってみて、改めてクライミングはグレードではないなと思いました。
自分の本当の実力というか、メンタルの弱さがあらためてよくわかりました。しかしながら、「どんな手を使ってでも登りたい山」というのは絶対良い山です。敗退してしまいましたが、またみんなで山頂に立ちたいものです。
【感想】53期 酒井敏行
常々、自分はフリークライマーなんでマルチはやらないと言ってきましたが、今回みんなのおかげで拇岳にチャレンジでき、とても貴重な経験となりました。残念ながら途中敗退となりましたが、ぜひこのメンバーでまたリベンジしたいと思います。いっぽう、吉田の岩場もけっこう面白くて、いままで考えたことなかったけど自分はスラブ好きなんかな?とちょっと思いました。今年一年のクライミングを締めくくるにふさわしい充実の小豆島合宿でした。
【感想】57期 比留間照幸
温暖な瀬戸内海にある小豆島でクライミング三昧。吉田の岩場はクラシックというだけあり、錆びたボルトばかりで、メンタルを強く刺激する。小さい粒をホールドし、スメアリングを効かせて、バランシーに登る。何のことか良く分からない表現だが、吉田の花崗岩はこんな感じの岩だった。マルチピッチは拇岳ダイレクトルート。初心者に圧巻の垂壁は、約130mの高さ。しかも今回はATガイドに客3名(酒井・渡邉・比留間)という感じで、ATさんにはかなり負担を掛けてしまった。結局、3ピッチ目で時間切れとなりあえなく敗退となる。1ピッチ目のクラック初体験、そして3ピッチ目のハング越え&トラバース、そして約50mの懸垂下降など良い体験ができた。残念ながら今回は頂上には登れなかったが、撤退は総合的に良い判断だった。そして、これからの課題は、リードであり、A0やA1などの技術習得も必要だと実感する。3日間はあっという間に過ぎ、フェリーから遠ざかる小豆島を眺め、旅(合宿?)は終わりを告げた。