京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

〈個人山行〉近畿百名山シリーズNo.100 三国岳

平成28年5月14日(土)

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写真1: 夜叉ヶ池山の斜面でニホンカモシカと遭遇

 

近畿百名山シリーズは最終回、福井・岐阜・滋賀県境の藪山・三国岳(1,209m)に登った。岩谷林道は未だ冬季閉鎖で広野ダムの岩谷橋にあるゲートに鍵が掛かり、4.6㎞の林道歩きを強いられた。夜叉ヶ池から北方向の三周ヶ岳(1,292m)と合わせて藪漕ぎ山行を行った。

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【メンバー】 山本浩史(単独)(車)

【行  程】 京都2:32=京都IC=(名神中国道)=今庄IC4:41岩谷橋4:585:50岩谷登山口~7:11夜叉ヶ池~7:23夜叉壁ノ頭~8:14三周ヶ岳8:289:14池ノ又谷下降点~9:29夜叉ヶ池山~9:42夜叉姫ヶ岳~10:48三国岳11:1112:19夜叉姫ヶ岳~12:37夜叉ヶ池山~12:48夜叉ヶ池~13:39岩谷登山口~14:22岩谷橋=今庄IC16:03朽木温泉16:4817:09▲葛川キャンプ場

【登山データ】 曇りのち晴れ 歩行23.2 9時間24 延登高1,614m 延下降1,614m 5座登頂

 

藪漕ぎと20㎞を超える歩行で参加希望者は誰もなく深夜の高速道路を走り北陸道今庄ICを降りた。国道365号線から県道231号に入り広野ダムに到り、ダムサイトを走り岩谷橋達すると林道ゲートに鍵が掛けられていた。6月上旬までは冬季閉鎖で、登山口まで4.6㎞を余分に歩かなければならない。岩谷川沿いに進み1時間足らずで登山口に到ると桂の巨樹があり、案内板に樹齢400年と記されていた。

夜叉龍神の鳥居をくぐり登山道に入ると暫くは岩谷川沿いに進み恐ろしく高巻き出すと本流に3段になった勇壮な滝があった。名前は無いのだろうか2.5万図にも滝のマークはなく勿体ない感じ。滝の上部で右岸に渡り又左岸に戻ると今度は栃の大木があり樹齢は300年あるそうで「岩谷のトチノキ」と紹介されていた。枝沢を渡渉すると登山道は尾根道となり傾斜が増して夜叉ヶ池へと突き上げた。標高600m位から上は雲の中に突入してしまい夜叉ヶ池は対岸すら見えない霧となってしまった。静かな湖面は波も立たず多くのイモリと固有種のヤシャゲンゴロウを見ることができた。

目的の三国岳は南に進むがこの天気なので三周ヶ岳を先に行くことにした。稜線鞍部に這い上がり、北への縦走路を進むとすぐに夜叉壁ノ頭(1,150m)に達した。ガスの中を先に進むと笹が煩く登山道に被ってきた。岩交じりの稜線は東側の切れ込みが大きく方向の転換点となるピークは存在感がある。無名であるのが惜しいくらいだ。北東方向から北に進路が変わると空が少し明るくなったようだ。今日は晴れる筈なので早く雲が取れてくれることを望むだけだ。終りかけの石楠花が沿道にあり、元気な花を捜して進む美しく咲き誇る花を見つけた。此の他にはイワウチワやイワカガミ、タムシバハルリンドウ、キジムシロ等が見られた。

越美国境と別れ北上を続けると三周ヶ岳(1,292m)に達した。1等三角点「三周岳」があるだけで山頂標識がなく一寸寂しい。休憩していると雲の域を脱したのか近辺の山の輪郭が現れだした。南東にある高丸(1,316m)は存在感があり尾根繋がりだが登路はない。

夜叉壁ノ頭から下ると夜叉ヶ池が姿を現すと山中の稜線にある大きな池がワイングラスに満たされた白ワインの如く不思議な感じがした。夜叉ヶ池への分岐点に帰り着くと岐阜県側には池ノ又谷からの登山道が合流し谷間へ明瞭な道が続いていた。夜叉ヶ池山への登路は岩交じりで険しい。登山道を外れた尾根の先端を見ると何とニホンカモシカ! 憩っていたのに人の気配に立ち上がりじっとこっちを見ている。素早くカメラを取り出してベストショットの写真を撮ることができた。夜叉ヶ池山(1,210m)山頂に達するが此処にも山頂標識はなかった。南南東に進路を変え夜叉姫ヶ岳に向けて進むとまた藪が濃くなってきた。

夜叉姫ヶ岳(1,206m)山頂にも山名を示すものはなく展望もないようだ。さてここからが正念場、ネットの記事によると三国岳への1.4㎞は略道形のない密林とのことでしっかりコンパスを合せ、尾根を外さないように進みだした。歩けそうなところには赤テープが巻かれ、これが頻繁に現れ心強い。夜叉姫ヶ岳から西南西に進路を変え長い尾根下りで赤テープがあっても気まぐれで太い笹と灌木に悩まされた。それでも2.5万図には点線道が描かれ嘗てはしっかりした道であったのか所々藪の中に踏み跡が見いだせた。

雪の重みで複雑に絡み合った笹は節も固く体も絡み取ってしまいそうだ。鞍部に達し登り返しになったとき、小さな沢を横断した。こんな稜線部でもう水が出ているのとは凄いものだ。“激藪”は白砂山~佐武留山間を筆頭に白峰南嶺の這松尾山、白山北東の間名古の頭、御嶽山南方の夕森山など何回か突入した経験があるが今回もそれらに劣らない険しさだ。藪漕ぎで膝から下は痣だらけになり笹が当たると痛い。

上空に青空が覗きだし日差しも出て来た。激闘の末達した三国ヶ岳(1,209m)山頂は直径5m程が刈り払われ広場になっているが山頂標識は此処にも無かった。これで今日登った5座は何れも山頂標識のない寂しい山頂だった。それもその筈越前と美濃、近江を分ける三国境の山で登山意欲をそそられるが此の藪の濃さでは訪れる人が少ないのも頷ける。近畿百名山の中で最も困難な山であろう。最後に登りシリーズの締めくくりとなった印象深い山だった。天候が回復した山頂からは高丸を始め蕎麦粒山(1,473m)、金糞岳(1,317m)、白倉山(1,271m)、貝月山(1,234m)などを望むことができた。

昼食休憩を取って疲れを癒し、元来た道、いや元来た藪に突っ込んだ。北側の尾根は幾つもあり間違えないように進まなければならない。来た時と違うところを歩いているのか赤テープが見当たらない、方向を確認すると間違いはない、藪の薄そうなところを依って下って行くと左から赤テープが現れ一安心した。所々にある微かな踏み跡もずっとは続かない。単純な地形なので間違う心配はないだろうが長い、天候が回復したので時々前方の夜叉姫ヶ岳や振り返っての三国岳を望むことができた。

往路と同じ時間を要し夜叉姫ヶ岳に戻り激藪から解放された。とは云え、まだこの先も藪が被っている。夜叉ヶ池山に近づくと朝見えなかった三周ヶ岳が姿を現し素晴らしい。夜叉池山から北東の尾根に人の姿が見えた。池ノ又谷登山道や夜叉ヶ池の畔にも・・・いつの間に来たのだろう? どこに行ってきたのだろう。斜面で二人組と話を聞くと池ノ又谷を登って来たと云う。岐阜県側の林道も冬季閉鎖中で8㎞位余分に歩いたと云う。夜叉ヶ池に戻ると2組が昼食中でどこまで行くのかと聞くと、林道歩きで疲れたので三周ヶ岳は諦めて夜叉ヶ池だけを見て帰ると云う。

温泉に立ち寄る時間を捻出するため早々に下山に掛かり2組追い越した。皆夜叉ヶ池岳を目的としたそうだ。岩谷登山道は2.5万図のルートとかなり食い違っており尾根も1本違い、谷のルートも違っていた。登山口に達するとランナー数人が屯していた。男女の2名のパーティーを見なかったかと問われたので、途中で追い越したのでもうすぐ降りてくるだろうと云った。先を急ぐので立ち止まらずに林道に入ると2/3位歩いた処で先程のランナーが走ってきて追い抜いて行った。最後に来た3人は後ろから姿を捉え追い抜こうとしたがいつまでも追いつかなかったと云って緩く追い抜いて行った。岩谷橋に戻ると車が4台に増えておりこの季節でもそこそこの人が入っているようだ。

時間がないので沿線で知っている朽木温泉に立ち寄ることにし今庄ICから北陸道に入りまだナビに表示されない舞鶴若狭道を通ると上中ICまでは早かった。40分余り温泉で寛ぎ、新緑祭の行われている葛川キャンプ場に急いだ。夜になると眠たくて20時半頃には寝てしまった。

 

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写真2: 酷い藪山の三国岳(1,209m)

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写真3: 三周ヶ岳(1,292m)と夜叉ヶ池 夜叉ヶ池山北稜線より