平成29年1月21日(土)
先週の大雪で愛宕山(924m)にも30㎝余りの積雪があった。宕陰出張所から地蔵山に登り愛宕を目指そうと計画したがJR八木駅からのバスは神吉口から先は積雪のため運行できないと運転手が云うので保津峡に引き返し、つつじ尾根を登ることにした。下山は猪谷を下ったが積雪と倒木に阻められ、思ったより時間を要した。恒例の水尾つじの家に14時5分前に駆け込み、柚子風呂と鶏の水炊きを楽しんだ。
【メンバー】 山本浩史L、高橋秀治、土井司、藤井康司、梅村重和、塩見孝浩、江村一範、水岩雄一 計8名
【行 程】 京都7:42-8:21八木8:29-8:46保津峡8:56~9:54荒神峠~10:40水尾分れ~11:17社務所前11:32~11:40愛宕山11:56~12:15猪谷下降点~13:43府道出合~13:55水尾・つじの家16;:30=16:53保津峡17:07-17:27京都
【登山データ】 晴れ一時雪 歩行9.3㎞ 4時間59分 延登高960m 延下降758m 1座登頂
1月15日の大雪は、愛宕山に恵みの雪をもたらした。一気に降り過ぎ越畑地区へはバスが未だに不通でJR八木駅から京阪京都交通バスに乗り込もうとすると途中の神吉口までしか行かないという。仕方が無いのでJRで引き返し保津峡からつつじ尾根を登ることにした。山間の駅は標高75m程あり道脇には雪が残っていた。水尾川の橋を渡り尾根の先端部に取付いた。2.5万図には尾根の西側の谷から登山道が描かれているが、この道はなく、府道50号線を落合側に少し行った所に登山口がある。他にも数組の登山者があり比較的歩かれている道である。
つつじ尾根の先端は等高線が詰り険しい。南側の斜面には「壁岩」と2.5万図にも載る岩壁があり保津峡の渓谷に落ち込んでいる。最初の急登で稜線に這い上がるとなだらかな稜線歩きとなり、標高が150mを越えると雪がしっかりし残り躑躅の葉っぱにもしっかり乗っていた。昨夜市内で降った雨は、標高150mより高い所は雪だったようで、標高に従って積雪量が増してきた。北側に落合尾根が迫ってくると荒神峠(こうしんとうげ)に到った。保津川・水尾川添いの府道ができるまで水尾集落の人々は荒神峠を越えて京都市街地との間を行き来していた。この山越え道は「米買道」と呼ばれ嘗ての生活道路出会ったことが偲ばれる。愛宕山に登るつつじ尾根が交差し、いつの頃までか茶屋もあったと云うから驚きだ。荒神峠は庚申峠、長坂峠とも呼ばれたと案内板に書かれていた。
荒神峠から先のつつじ尾根は、落合尾根に乗り上がるため急登となった。落合尾根に達すると登山道はなだらかになり積雪20㎝位の植林帯の穏やかな登山道となった。やがて表参道と合流し水尾分れに達した。流石に表参道は人の気配が多い。水尾への道が分岐し少し行くと“ハナ売り場”の小屋があった。嘗て参詣者に火災護符の樒(しきみ)が売られていたが水尾の集落の高齢化と需要の減衰で最早小屋が開くことはない。護符としての樒は、今では山頂の愛宕神社で求めることができる。
アイゼンを装着し表参道を進むと右にケーブル愛宕駅跡への道を分け緩やかに表参道を進むと早くも下山してくる人がちらほら見かけるようになった。千日詣の時なら「おのぼりやす」と声が掛るのだろうが今日は無言の人が殆どだ。廃仏毀釈前に存在した白雲寺の山門であった黒門に達すると登山道の左手に雪庇ができ愛宕らしからぬ風景を見せていた。
トイレがあるので社務所前で休憩し、軽く行動食を食べた。気温は氷点下4℃、余り長く休むと冷えるので15分で出発した。愛宕神社の石段は雪が完全に覆い単なる斜面と化していた。愛宕神社は全国に900社あると云われる愛宕神社の総本社として1,300年の歴史を刻む。創建当初は神仏習合の山岳霊場で役小角と白山開祖の泰澄が開いたとされている。本殿の背後にある若宮は、嘗て天狗太郎坊が祀られていたと伝わる。
山頂を後にし、予定通り猪谷(ししだに)を下ることにした。竜ヶ岳への分岐を過ぎ岩ヶ谷北の尾根を乗越し、なだらかな谷へと踏み込んだ。愛宕山の北側に入ると積雪量は増し40㎝位になった。トレースは全くなく新雪を気持ちよく踏んで下って行くと谷はS字にカーブし両壁が迫り急峻になってきた。明瞭な道はなく荒れている上に15日の大雪で折れたであろう枝が邪魔をして歩き難い。
この谷は嘗て硯石を産出していた。谷を下ってくると途切れ途切れに石組みの跡が現れだした。掘り出した硯石を木馬(キンマ)で運び出し、米買道をベタ(牛に牽かせた荷車)に乗せ荒神峠と六丁峠を越えて嵯峨の地で“嵯峨硯”に加工されたと云う。時代が下がり採算が合わなくなり100年ほど前には途絶えてしまったという。谷を下るに付け道跡が明瞭になり歩き易くなってきた。左岸尾根が収束し、その先端を越えて岩ヶ谷に入り府道50号線に飛び出した。
つじの家へは、14時迄に入らなければならない。猪谷は予定以上に時間が掛かり、谷を下っているときから若干焦りを覚えていた。府道に出ると取り敢えず一人先行し約束時間の5分前に駆け込んで取り繕った。皆も2分前に到着し、直前に到着した女性客がこれから入浴と云うので結果は気兼ね無かったが、女将さんに叱られずに済んだ。今年は鶏の水炊きで柚子風呂と体の内外から暖まり、雪景色を見ながら楽しんだ。
15日の大雪は水尾の集落にも被害があり、停電、電話不通、保津峡駅までの自治会バスは4日間走れなかったと女将さんが語っていた。冬の愛宕には雪を期待するが、一挙に降る雪は一寸困りもので、程々が良い。「また来年」と女将さんに送られ水尾集落を後にした。