京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

No.3018 比良の沢/ヘク谷~大岩谷

どう考えても日帰りで終わってしまいそうなヘク谷でしたが、無理やりキャンプというソースをからめ、読図のスパイスをふりかけて一泊山行で企画しました。

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(8mの滝、下段核心部をリードする小松)

 

 

№3018 比良の沢/ヘク谷~大岩谷

2010年5月29日(土)~30日(日) 

参加 L上坂淳一 堤 潤 AT 秋房伸一 小松久剛 (5名)

天候:両日とも晴れ

 

【記録】上坂

<29日> 天候:晴れ

7:30出町柳バス停集合7:45出発→8:40下坂下~9:10ヘク谷入溪~15:00二俣15:20~16:00シャカ谷源頭のコル~16:10シャカ谷幕場

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 天候は晴れていたが、このところ気温も低く、雨も多かったので安曇川出合の水量も多め。5月下旬というのに沢登りにはやや寒そうな予感。

 入溪するとトップ小松、セカンドTの絶好調コンビが飛ばすので後続が途切れがち。行く手に2条2段の8m滝が立ち現われ、巻き道を探しているとトップから「ロープ下さい」の声。小松が直登するらしい。

 

簡単にオブザベーションをして右の滝の左わきを登るが行き詰まり、ギブアップかと思えばセカンドのTから「右端から絡めばいける」との指令。冷え切った体に鞭打つように小松が再度チャレンジ、落ち口で少し手こずったが、下段をクリア。そのまま上段もクリアしてホイッスル。

 その先も小滝が休むところもなく続き寒い(真夏ならよかったのに)。

 小滝の応接にも飽きてきた頃、2条12mの斜瀑。またも小松のリードでクリア。その先の15m滝ではもう午後1時を過ぎていたので直登はあきらめてもらう。

 最後の18mの滝も小さく巻いて左に枝谷を見送ると間もなくトリカブトの群生する二俣。

 遡行図では「本谷はこの先で左」となっているが、堤がGPSで定位すると、どうもこの本谷は右俣本谷のことらしいので、二俣から左俣をとり、最後は植林帯を詰め上がると狙い通りにシャカ谷源頭のコルに出た。

 シャカ谷を10分ほど下った適地に幕。

 夜も更けるとずいぶん冷え込んできたが、モノ好きな小松はツエルトに一人で寝た。

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(酒と焚き火さえあれば…)

 

 

<30日> 天候:晴れ

起床7:00シャカ谷幕場9:30~10:00木戸峠~比良岳ユリ道~11:00大岩谷~12:10荒川登山口~13:10志賀駅(解散)

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木漏れ日とミソサザイの囀りの中で、ホットサンドの朝食。

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(快適なテントサイト)

幕場を出て、ケモノ道をたどりながらシャカ谷を下降しチャンピオンゲレンデからビワコバレイのハイキングコースを使って木戸峠へ。縦走路を20分ほど進み、比良岳の登りにさしかかったところでユリ道の分岐を探すが見つからず、強引にコンターラインを北へと進む。比良岳の南西に延びる尾根に出ると、明瞭な登山道を発見。落ち葉が堆積してやや歩きづらいが迷うところはない。

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(大岩谷への下降)

尾根上の標高880mの台地を過ぎたところから、道は北側の斜面へと向かい、大岩谷へ下りる。沢中をしばらく下ると右岸に巻き道があり、これを進むと標高500m付近で左岸に渡渉。そのまま左岸の巻き道を辿るとほどなく荒川峠の登山道に合流した。

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(T先輩の秘密兵器は室内用のスリッパ)

 

【感想】 L上坂

 どう考えても日帰りで終わってしまいそうなヘク谷でしたが、無理やりキャンプというソースをからめ、読図のスパイスをふりかけて一泊山行で企画しました。

 まず、二日間の好天をもたらしてくれた移動性高気圧に感謝しなければならないのでしょうが、メンバーにはそれ以上にこの山域のもたらす恵み、我々の所属する会が何故「京都比良山岳会」を名乗っているのかをあらためて確認することが出来たのではないでしょうか。

 また、山の恵みだけではありません。個性豊かなメンバーが揃ったことにも不思議なパワーが働いていたように思われました。

 行動面では沢登りパートで直登コンビが目覚ましい活躍をしてくれたのですが、後続に一癖も二癖もありそうなオッサントリオを従えていたことは、負担以上に充実感があったのではないかと勝手に想像しています。

 最後になりましたが、優しいだけが自然ではありません。条件の悪い時には無理を通さず引き下がることもいずれ経験する時が来るでしょうから、それもまた山の恵みと理解しておきましょう。

 

【感想】 52期 小松

 やや肌寒いとはいえ、良く晴れた天気のもと、水量たっぷりの沢を遡行でき、非常に充実した沢行きとなりました。

 沢の遡行については、今回はトップをやらせていただき、滝も無事リードし、ロープの固定、ラストのビレイ、と一連の動作を素早くできたのでその点では満足しています。

反省点としては

① トップの義務である、「パーティー全体の状況をふまえたスピードコントロール」という仕事は全くこなせておらず、ただ自分の楽しいスピードでどんどん進んでしまったこと

② 巻き道を初めとする沢以外のルートファインディングが全然できておらず、遡行後のつめあがり、2日目の谷の下降については秋房さんの抜群のルートファインディング能力にまかせっきりであったこと

がありますのでこの反省を次にいかしたいと思います。

 今回は遡行だけでなく、焚火、ツエルト泊(小松のみ)という、山岳会に入ってから初めての体験をさせていただきました。

 焚火については想像以上に着火に手間取ることから、杉の枝を見つけ次第、一束抱えておくか、ガムテープを巻いたものを持っていく必要があると感じました。

また、ツエルト泊については予想以上に保温性があったものの、やはり早朝深夜の冷え込みには弱く、ツエルトがあれば大丈夫、という過信は禁物であることが分かりました。

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(小松さん、ついにマイホームをGET!)

 

今回の遡行を振り返って、私としては皆様の足を引っ張らない程度に沢には慣れてきた実感がありますので、今後はパーティーの一員としての役割をしっかり果たせるよう、ますます精進していきたいと思っています。

リーダーを初めとするパーティーの皆様、充実した山行をありがとうございました。

 

【感想】 52期 秋房

小松さんとは同期で、しかも沢はまったく同時に始めて、沢経験でも同じようなものなのですが、今回の山行で彼岸と此岸というか、彼が、初心者を脱して一皮むけた実力を見せてくれて、刺激になりました。この違いは何かと考えるのに、やはりフリークライミング技術の差でしょう。クラックスに通う小松さんと、毎日仕事にかこつけて酒を飲んでいる私の違いといえるのではないのでしょうか。年齢的違いは、まだ、大丈夫だと勝手に思っています。

このままの勢いで小松さんが沢に通い続けると、相当の蓄積が得られることでしょう。もっとも、仕事や諸々の事情で同じようなペースで山に行き続けられるとは限らないかもしれませんが、しぶとくしなやかに、精進していただきたいものです。

 

先日、京都労山から発行された『伊藤達夫 冬の黒部記録集』を入手しました。冒頭、以下の記述がありました。

『世の中は(中略)、クライミング界もハードフリー一色に塗りつぶされようとしている。(中略)ハードフリーはそれなりにおもしろいが、筋力・柔軟性・平衡感覚といった肉体的要素に依存する部分が多く、これらはトレーニングによって多少は改善されるもののほとんど先天的ともいえるので、最初は慣れることによって急速に上達するがじきに限界が見えてしまう。もちろんアルパインライミングにおいてもこのような肉体的能力は重要であるが、それに加えて装備・食料計画・登攀・荷揚げの方式、天候の良し悪しなど実にさまざまな要素が山行成功のカギとなる。したがって、登攀能力の優れた者がいつも成功するとは限らず、うまく計画しチャンスをつかめば弱いパーティーでも大きな山行を成し遂げることができる。アルパインライミングの醍醐味は総合力が要求されるという点にあり、それは登山本来のおもしろさでもある』

 

小松さんもそのようなことを本能的に感じ取って上記の感想を書かれているのだと思いますし、この間の、上坂リーダーの狙いにも大きな違いはないと思っています。

今回の山行も「総合力」を意識する山行でした。ヘク谷を普通につめ上げて小女郎池に出るのではなく、あえて遡行対象とはなりがたい沢をつめる、地形図での読図など、新人対象の「ポイント」はなにもありませんが、まさに教育的見地にあふれた、といっても別に堅苦しくやっているわけではなく楽しい例会であったことを、ご報告しておきます。最後に、Tさんには、いっぱい助けていただきまして、ありがとうございました。堤さん、ぜひ、またご同行願います。センス良く登られていて、やはり私もクラックスに行かねばと思いました。

 

【感想】 51期 T

ヘク谷についてインターネットや本などで記録を読んでみると、たいてい「初級者に最適な沢」だとか「ほとんどの滝を直登できる楽しい沢」ということが書いてありました。

秋房さんが以前に行ったときの感想を聞くと「難しい沢では無かった」ということをおっしゃっていたし、また出発前に上坂さんも「今回ロープはいらんやろけど、一応持ってきた」みたいなことをおっしゃったので、これはよほど気楽に行けるものだろう、とたかをくくっていましたらとんでもない。

自分にとってはなかな難しい遡行でした。

まず入渓して感じたことは「水が流れているところを踏んでいるのに、やたら足元が滑る」ということでした。

その日は二日前の雨のせいで増水していて、もしかするとこれは、増水していて普段は水が流れていない部分を水が流れていて、そこを踏んでいるせいなのだろうか?

そして、滝も増水しているせいでいちいち迫力がある。水が流れてなかったら、あるいは水を多少浴びながらなら登れそうな滝が多かったのですが、ドボドボと水が落ちている滝はどうも登る気になれません。

ためしに戯れで、まともに滝の水を浴びることを覚悟で2mくらいの滝を登ってみると、上から20キロくらいの重りを乗せられたような水圧がかかり、あやうく落ちそうになってしまい、水圧というのは本当に恐ろしいものだなと実感させられました。

もうひとつ苦戦したのが荷物が重いこと。なんでもないところでも、よいしょと立ち上がるとフラフラ~となり「おっとっと」とバランスを崩しそうになって危なかったです。

まあ解りきったようなことだけど、沢の荷物は軽量化につとめなければいけないなと思いました。

そして今回もっとも悪かったと思うのは防寒対策です。と、言ってもいつもと同じ服装で行ったんですが今回はやたらと寒かった。寒いとほんとやる気が無くなって、出来るだけ水につからないルート、出来るだけ水を浴びないルートを選んで消極的になってしまいます。防寒対策の強化は個人的には急務と感じました。

上坂さん秋房さん小松さんという「おなじみの」メンバーは普段から山行を共にしているので割とスムーズに役割みたいなものを心得ているのですが、今回堤さんが沢は初だということで来られていて、自然とゲストな感じになり、役割が無いことにちょっと恐縮されている様に感じました。

逆に、リードをする小松さんはとても活き活きしていて(お腹が減ると元気無くなりましたが…)

パーティーにおけるチームワークというか、役割分担というのは大事なものだなと感じました。

特に沢ではチームワークが遡行の成否を大きく左右することも多いと思います。

その点、上坂さんはメンバーに役割を巧みに与える人で、いつも「うまいなあ」と感じます。

自分もふくめ、昨年の芦廼瀬川のときと比べると格段に動きが良くなった僕たちのパーティーで、果たして今年の大峰台高はどこまで通用するか、楽しみなところです。

 

【感想】 50期 堤

 

今回は初めての沢登りであり、超緊張状態でスタートしました。最初は川底が見えないため、よろめきながら歩いてました。

ヘク谷は最初は小さな滝をいくつか越えていきましたが、水量が少し多くてなんだかすごく楽しかったです。しかし最初の難関?が来ました。二段8m滝は小松君がロープを張ってくれて、上坂CLが貸してくれたアッセンダーをつけて登ります。しかし水量がけっこう多くて、順番待ちの間に体が冷えて、取り付いてどう登ろうかと思っている間に手が冷えて感覚がなくなりそうになりました。ゆっくりしてては危ないので必死に登りました。次の難関は12m滝。ここは落差はあるものの、8m滝よりも楽に登れました。もちろん小松君がセットしてくれた固定ロープありですが。次の15m滝は急斜面の恐怖の高巻き、18m滝も高巻きでした。楽しさ半分、恐怖半分で植林小屋跡に着いた時はホッとしました。ここで小休止&エネルギー補給して、今度は釈迦谷方向へ枝谷をつめました。急斜面を登りきって鞍部へ出たら、そこからはきれいな自然林でした。そこからテント適地はすぐに到着しました。テントを設営して、夕食の闇鍋はCLと秋房さんが、焚き火興しは大肺活量?Tが頑張ってくれました。テント泊まりで美味しい闇鍋と炊き立てご飯、こんなご馳走を食べられるとは思っていなかったので、うれしくて感謝でした。その後は焚き火を囲んで、ジュウイチやホトトギスが鳴く中、夜半まで色んな話をしました。この後はテントでぐっすりと思ってたんですが、シャツはまだ半渇きでおまけにシュラフカバーだけでは寒くて寒くて、明け方まで震えてあんまり寝むれませんでした。

2日目朝はすごくいい天気で、テン場は明るいきれいな木漏れ日に包まれてました。

朝食はなんとT君特製ホットサンド。プラス焼きアンバン。これまた朝からこんなご馳走とは思ってなかったので、感激でした。疲れ+寝不足だったのですが、やはり美味しいものを食べると元気がでました。

ゆっくり朝を過ごした後は、スキー場から木戸峠。そこから少し行ったところから廃道を行きます。取り付きは少し違っていたようですが、進むとけっこう良い道で、大岩谷への急下降を心配していた僕はホッとしてました。その後は、沢沿いやら高巻きの道を歩いて大岩谷分岐、そして林道から志賀駅へやっと到着しました。

今回は沢登りを初め、テント泊まりでも貴重な体験を沢山させていただき、非常に有意義な山行でした。皆さんのガッツある登りに勇気をもらえて、よい刺激となりました。このような企画にも少しずつ参加して、レベルアップしたいと思います。ご一緒していただいた皆様ありがとうございました。