江若国境の高島トレイル上の山々のうち水坂峠以北は野坂山地と呼ばれている。“野坂”の名を負う野坂岳(914m)は福井県に飛び出した先端部にある。敦賀市から見る野坂岳は美しく敦賀富士と称される。敦賀の市民からこよなく愛され西方ヶ岳、岩篭山と合わせて敦賀三山にも数えられている山である。
写真: 野坂岳(送電線尾根より)
例会No.3019 野坂岳 《関西百名山シリーズNo41》 平成22年6月5日(土)
48期 山本浩史
江若国境の高島トレイル上の山々のうち水坂峠以北は野坂山地と呼ばれている。“野坂”の名を負う野坂岳(914m)は福井県に飛び出した先端部にある。敦賀市から見る野坂岳は美しく敦賀富士と称される。敦賀の市民からこよなく愛され西方ヶ岳、岩篭山と合わせて敦賀三山にも数えられている山である。
【参加者】 西田和美L、尾崎稔、辻春見、辻博史、藤堂尚久(体験山行)、吉良聡恵(体験山行)、山本浩史TC 計7名
【行 程】 桂川7:45-9:50敦賀10:00=10:15山集落10:31~12:26稜線12:50~13:05 P797 13:07~13:33野坂岳14:01~14:06三ノ岳~14:12二ノ岳~14:28一ノ岳~14:46トチの木地蔵14:55~15:11いこいの森登山口~15:40粟津駅15:52=16:05敦賀16:23-17:57京都
【登山データ】 天候:晴れ 歩行10.0㎞ 5時間09分 延登高 912m 延下降 927m 4座登頂
今回は入会したばかりの二人と体験山行二人を含むフレッシュなメンバーで京都駅8:15発JR新快速“湖西レジャー号”に乗り込んだ。湖西線も敦賀まで直通するようになり便利になった。敦賀駅では舞鶴から来た尾崎さんと合流しタクシーに乗り込んだ。黒河川(ころこがわ)に沿って進み“山”集落の外れに「野坂岳登山口」と云う標識を見つけタクシーを降りた。
辻春見さんと辻博史さんは共に歩荷ポイントに挑戦、計量で荷重20㎏をクリアし、西田L訓示の後歩き出した。黒河川を離れ支流の谷沿いの道を遡る。出発時点からミッション1「稜線までの歩行ルートの地図への書き込み」が始まっており、周りの地形を確認しながら進む。すぐに一本南の谷に移り林道を進む。左手の樹林越しに見えていた送電線はいつの間にか右手に移っている。右岸に渡渉し、沢の分岐を左側に進んで行った。やがて谷筋を離れの左岸の斜面に取り付いた。
この辺りまで来ると辻春見さんの足が止まりだした。暑くもあり歩荷の負担が堪えているようだ。行程は余裕があり少々遅れても大丈夫、それでも耐えられなかったら歩荷を中止しても一向に差し支えない。あくまでも自己判断だ。その後も苦しいながらもやり遂げ歩荷ポイントをしっかりGETされた。
標高400mを越えたあたりで尾根に乗り、送電鉄塔のところで皆に追いつき一息入れた。ここからは送電線下の尾根を忠実に登る。2番目の鉄塔は展望が利き、北西方向の谷越しに目指す野坂岳が姿を現した。送電線は北側の谷間に逸れて行き尾根の上空はスッキリした。標高700mで稜線に乗りあがると時刻は12時を過ぎていた。皆のお腹の空き具合を考慮して西田Lは休憩を宣した。ブナの木陰で丁度良く空腹を満たした。
鞍部に下り、登りに転じたところに送電鉄塔があり西へと跨ぎ去った。P797は南東側から敦賀・美浜市町界に沿って回り込むようにしてピークに達した。ここでミッション2:「野坂岳までの所要時間を予想」する。距離は1.1㎞、少し下った後はずっと登りで標高差は120mほど、皆の予想は20~35分で、先頭を行く西田Lの歩行ペースでカウントすることにした。最初なだらかに進み少しの間は急勾配で、山頂域に達すると草原状になる。市町界は南端の稜線から西へ行ってしまい完全に敦賀市内の山となっている。
野坂岳(914m)山頂には方向指示板には白山など遠方の山々が描かれているが、霞んで遠望は利かない。傍らには1等三角点「野坂岳」がある。標石が真新しく調べてみると昭和59年に交換されたものだった。さてミッション2の結果は「19分」、皆長い目に予想してしまい辻博史さんと藤堂さんが20分で最も近かった。約束の豪華賞品“皆で拍手喝采”して讃えた。
そしてミッション3は「乗鞍岳を山座同定」、コンパスの使い方をレクチャーし黒河川を隔てた尾根のずっと先にぽっかり飛び出したピークを乗鞍岳(865m)と特定した。ついでに先月行った同じ野坂山地の三十三間山も同定したが雲が出ていて姿は見えなかった。山頂から30m北に避難小屋がありなんとその中に野坂嶽大権現の祠が入っていた。麓の案内版に依ると弘法大師が開いた山とされ、平重盛が「見るたびに 富士かとぞ思う 野坂山 いつも絶やさぬ 峰の白雪」と詠んだことから敦賀富士の名が冠されたようだ。
北への縦走路を歩きだすと歌にある「いつも絶やさぬ 峰の白雪」を象徴するように根の曲った木が目に入る。900m程度の山ながら冬の厳しさを現している。野坂山地は前回の三十三間山でも感じたがブナ林が清々しく、新緑が心を和ませてくれる。野坂岳は4つのピークからなり三ノ岳(約820m)、二ノ岳(約810m)となだらかな所にしっかりと山頂標識が現れた。展望もなく通過していくと一ノ岳の標識を見た。これは全くピーク性のないところでおかしい。2.5万図の電波塔のあるところが一ノ岳の筈で皆は行ってしまったので、TCだけ少し引き返して分岐を見つけピークを極めた。一ノ岳(746m)山頂は電波塔があるだけで展望はなく、山頂標識すらなかった。
北東尾根に踏跡がありそのまま進むと踏跡は薄れ、トチの木地蔵の谷へトラバースし対岸の道に一行の歩く姿が見えたのでコールを交わした。谷“道”を進みトチの木地蔵で正規の登山道に出た。ほぼ同時に西田Lに率いられた一行も到着したが尾崎さんがいない! 西田Lが携帯をかけると、山本TCが一ノ岳へ行ったので戻ってくると思い待っているという! 責任を感じて尾崎さんの追いつくのを待ち皆の後を追った。
谷筋の快適な道を進み広くなって来ると、いこいの森登山口で、旧式のバンガローが10数棟あり下の方にはテントサイト、団体の利用か、沢山のテントが張られていた。後は車道歩きで建設中の舞鶴若狭道の高架をくぐりJR小浜線粟野駅へと向かった。1時間に1本程の電車は15分前に行ったばかり、タクシーを呼んで敦賀駅へと向かった。車で来た尾崎さんと別れ往路と同じ“湖西レジャー号”に乗り帰路に着いた。京都駅前での反省会には3名が参加し山談義に花を咲かせた。
【感 想】 53期 辻 博史
晴天に恵まれ、新緑の中を気持ちよく山行しました。と書きたいのですが、ボッカポイント挑戦のため、フラフラになりながらの山行でした。休憩や、途中の眺めの良いポイント以外は地面しか見ておらず、所々の記憶しかありません。それでも山頂からの敦賀市内の眺望や、若狭国境の山々の景色は最高に気持ちが良かったです。また、山頂での山本TCの読図講習ではコンパスの使用方法を聞き、山座同定の仕方に感心しました。今回は個人的に余裕のない山行になりましたが、いつかこの山をゆっくりと登ってみたいと思いました。また、山頂から見えた野坂岳からの三国山、赤坂山への縦走も面白そうで、こちらも是非行ってみたいと思いました。
【感 想】 53期 辻 春見
野坂岳山行において、歩荷に挑戦させていただきました。お米2袋分の重量を頂上まで担ぐだけでOK。と言うことで、あまりにも甘く考えていました。
友人でもある後輩の山岳部経験者が、30kgとかを担いで、肩がずるずるになった話も、あまり自分にオーバーラップさせて考えたこともありませんでした。今思えば、縦走の経験といっても、小屋泊まりの夏山の経験しかなく、20kgなんて担いだ事が無かったわけで、横着極まりないと言えます。まして、年齢が若かったり、日頃体を鍛えていたりと言う条件が揃っていたら、まだ何とかなったかもしれませんが、その両条件がない。結局遅れをとり、皆さんに迷惑をかけてしまいました。
「迷惑とは思うな。」と山本TCはおっしゃってくださいますが、これは自分の横着さです。自分の短い目標は、夏山でテント泊縦走です。勿論長いスパンでは冬山でのテント泊も経験したいですが、残念ながら、山を歩くスタートが遅すぎたように思います。せめて、その短い目標を達成できるべく、地道に努力しようと思いました。
歩荷によるバテがなければ、野坂岳は大変美しい山だったと思います。眺望もすばらしかったし、遠くから眺めた姿も美しかったです。下山して初めてその余裕を取り戻せました。
最後になりましたが、西田L他、同行頂いた方々のフォローに感謝いたします。
【感想】 (体験山行)藤堂 尚久
2回目の体験参加として敦賀富士・野坂岳登山に同行させていただいた。2週間前に、同じ福井県西方の若狭富士と呼ばれる青葉山に行った関係で、”富士”つながりで関心を持って参加した。好天の下、登りは山集落から裏登山道?のやや急勾配のジグザグ道を行く。汗が一気に噴き出すが、空気が乾燥しているのかベトベト感はない。山頂は、広い草原で遮るものがなく、文字通り360度の眺望が楽しめる。あいにく霞がかかりうっすらとではあるが、若狭湾や敦賀湾、東、南には白山や琵琶湖が確認でき、まさに変化に富んだ展望である。
下りの表登山道は広く、よく整備され、ブナ林の中にある二ノ岳、三ノ岳あたりはとても美しい。初夏の季節、快適な山行を楽しめたが、紅葉の頃や雪道の頃にもまた
来たいと思う。
皆様には大変お世話になりありがとうございました。
【感想】 (体験山行)吉良聡恵
今回初めて山行体験させて頂きました。私にとって野坂岳は一人ではなかなか行くチャンスが無いところでもあるので、そういう点でも楽しみにしていました。
山登りはほぼ初心者ですし体力にも自信が無いので心配でしたが、大量に汗を流し、息も途切れ途切れになりつつも、なんとか山頂まで辿り着きました(スニーカーとジーンズで(汗)。
天気が良く気持ち良い景色に恵まれたこともありますが、経験豊富なCL、TCの方々と一緒に登って頂けたことで安心して登山を楽しむことが出来ました。
皆さん、ありがとうございました。
【リーダー感想】 40期 西田和美
春の初め、北陸自動車道を走った時のこと、車窓から雪をかぶった大きな山が見えました。『野坂岳』と教えてもらいました。
頂上からの展望が素晴らしかったことは言うまでもありませんが、谷筋にピンク色の真珠を流したように、一面埋めつくしたタニウツギの群落は他では見たことがなく、印象に残る美しい光景でした。
ご一緒いただいた皆さん、ありがとうございました。
写真: 乗鞍岳から続く尾根(野坂岳山頂より)
写真: 野坂岳山頂にて