京都比良山岳会のブログ

山好きの社会人で構成された山岳会です。近郊ハイキングからアルプス縦走までオールラウンドに楽しんでいます。

個人山行《山紀行712》 大千軒岳・駒ヶ岳

毎年恒例の7月北海道山行、ここ数年蝦夷梅雨に泣かされてきたが、今年もまた泣かされた。松前の大千軒岳と登山解禁したての渡島駒ヶ岳に登った

20100716千軒岳1

大千軒岳(旧道登山道より)

個人山行《山紀行712》 大千軒岳・駒ヶ岳            平成22年7月15日(木)~19日(月)

48期 山本浩史  (単独)

毎年恒例の7月北海道山行、ここ数年蝦夷梅雨に泣かされてきたが、今年もまた泣かされた。松前の大千軒岳と登山解禁したての渡島駒ヶ岳に登った。

1日目(7/15)  アプローチ   曇りのち晴れ

【行  程】  京都5:46-(はるか1号)-7:11関西AP8:00-(ANA)→9:55新千歳AP 10:48=(レンタカー)=千歳IC=(道央道)=八雲IC=15:00乙部温泉15:30=16:53松前城17:00=18:10▲旧道登山口

20100716千軒岳大千軒岳地図

大雨の断続する関西空港を札幌行ANA始発便で飛び立った。札幌は曇り、レンタカー営業所まで送迎バスに乗る。こんな規模の大きなレンタカー営業所はここにしかないだろう。千歳インターから道央道に乗り八雲へと向かう。事前に調べておいたホームセンター(ホーマック)でEPIガスを買い登山準備を整えた。今日は車中博する松前の登山口まで走るだけ。日本海側に峠を越え乙部温泉に立ち寄る。入浴料は400円と格安だが石鹸もシャンプーも無く浸かっただけだった。

松前に立ち寄り古城を見た。松前は江戸時代北海道で唯一藩が置かれ松前氏が治めた。城域が松前公園として整備され桜の名所として名高い。登山口へは松前町朝日から道道607号線に入りやがて未舗装の林道となり30キロ近く分け入る。

2日目(7/16)  大千軒岳(1,072m) 雨

【行  程】  ▲旧道登山口5:07~6:17中千軒岳~6:40前千軒岳6:48~7:08中千軒岳~7:16千軒平~7:38大千軒岳7:46~8:22新道登山口~8:55旧道登山口9:17=10:33松前温泉12:00=12:26青函トンネル記念館12:56=14:51トラピスト修道院15:03=16:10▲赤井川ゴルフ場奥

【登山データ】  歩行10.5㎞ 3時間48分 延登高 845m 延下降 845m 3座登頂

20100716千軒岳2000年新山地

登山口で車中泊していると、朝方雨の音。天気予報どおり雨が降り出した。雨具に身を固め5時7分歩き出した。旧道コースは中千軒岳から西に流れる尾根通しに進む。雨は時々強く降り先行きが思いやられる。このルートには渡渉はなく心配ないが、あの長い林道が心配だ。時間雨量何ミリで閉鎖すると警告がありゲートが幾つもあった。あれが閉じられてしまってはどうにもならない。

一部危険個所があると登山口に表示があったが、トラバース道で若干足元が悪い程度だった。P844は北側を巻き稜線に乗ると樹林越しに大千軒岳の姿がちらり、雨模様で輪郭がはっきりしないながらも樹林の切れ目で全姿を現した。千軒平のすぐ手前に分岐があり“前千軒岳”を示している。勿論行かなければならない。周回ルートから外れ前千軒岳を目指すとすぐに中千軒岳(約1,020m)に達する。樹林帯を抜けており展望は良いが山頂を示すものは何もない。メインルートを外れるこのルートは草の被りがひどく足元の踏み跡を外さないように注意して進む。中大千軒岳の下りは急斜面で2段の固定ロープで下る。ここが一番の“難所”だ。鞍部から登り返しも藪漕ぎが続き前千軒岳(1,056m)に到る。薄れた山頂標識があり、晴れていれば360°の展望がある。

激しく降る時もあったが雨は小降りになりひと安心。来た道を戻り分岐に達すると、千軒平はすぐそこ。知内川コースの登山道が東から合流し広場になるとそこは千軒平、指導標があり休憩にはちょうど良い場所だ。一帯はお花畑でイブキトラノオタカネナデシコ、エゾキスゲ(あるいはエゾカンゾウか?)、ハクサンシャジン等々が咲いているが雨ではカメラも出せない。

千軒平には真ん中に輪の付いた十字架が立っている。ここは1612年徳川幕府により出されたキリシタン禁教令により内地を逃れたキリシタンたちが最後に辿り着いた地だった。この山にあった金山で人夫として働き、暫くの間は安泰であったが、1637年島原の乱が起きると幕府の弾圧は益々強くなり終に松前藩はこの地で106人のキリシタンを処刑した。その礼拝堂があったのは知内川コースの途中にある金山番所付近でそこにも立派な十字架があり7月の最終日曜日にはミサが行われるそうだ。“千軒岳”は1617年松前藩が金の採掘を始め千軒の家があったと云うのが名の由来で、蝦夷の奥地にこんな歴史があることに驚きを感じた。

小雨は続き写真が撮れず欲求不満を残しながらお花畑の草原を進み大千軒岳への登りに掛る。山頂手前に松前町、上ノ国町と福島町の3町界があり北東方向の尾根上に燈明岳(931m)がある。大千軒岳(1,072m)は、1等三角点「千軒岳」が設置されている。これは明治29年(1896年)7月18日北海道で初めて選点(点標設置は翌年8月14日)された三角点の一つで、平成8年(1996年)測量開始100周年を記念して国土地理院と福島町、松前町、上ノ国町による記念名盤が山頂に設置されている。

ここも晴れていたら360°の展望が楽しめるが行動食を食べ水分布補給しただけで出発した。新道コースは西に続く尾根を下り林道に達する。危険個所は全くなく、距離も短いので2.3㎞程度と短いのでこの道がメインの登山道であるようだ。新道登山口は指導標、登山届のBOXそれに数台止められる駐車場もあり登山口として機能している。林道を2.7㎞歩き旧道登山口に戻る。二股川を越えるところまでは下りだが旧道登山口までは登りが続く。最後のカーブの先に車が見えるとホッとした。誰にも遭うことも無く周回登山を終え、山頂で飲めなかったコーヒーを車の中で飲み、人里へ向けて出発した。

この林道は結構夏草が被り車でも藪漕ぎを強いられる。レンタカーだから汚れには無頓着でどんどん進む、人里に出るまで20数キロすれ違う車もなかった。海岸沿いを走る国道に出るとやれやれと一安心、松前温泉に立寄った。時刻は10時半、営業開始までまだ30分ある。開店を待って入るが石鹸、シャンプーは無いよと受付の小母さん。タオルを取りに戻っている間に「これを使い」とそっと差し出してくれた。嬉しい心遣いに感謝感激。入浴料は格安の380円。

明日は駒ヶ岳、登山口の森町赤井川へは110キロの距離、夕方までに着けばよい。カニ族の頃に行き漏らしていたトラピスト修道院に行きたい。福島町を走っていると青函トンネンル記念館という看板に誘われ立寄った。入館料400円に躊躇していると、他にお客は誰も居ず受付嬢がこちらを見ていて気恥ずかしく、奮発して入館した。青函トンネルが開通したのは昭和63年3月、もう22年も経ったのだ。

トラピスト修道院渡島当別の山手にある。江差線の踏切を越え真っ直ぐな並木道の突き当たりに静かに佇んでいる。残念ながら事前に申し込まないと中に入ることはできず鉄格子の門越しに覗いて来た。(男の園なので女性は申込みもできない)

3日目(7/17) 渡島駒ヶ岳(1,131m) ガスのち曇り時々晴れ

【行  程】 ▲赤井川ゲート手前3:38~6合目4:25~8合目4:41~馬ノ背分岐5:06~5:16隅田盛5:18~5:30馬ノ背分岐~5:56剣ヶ峰6:00~6:30円山~6:41馬ノ背分岐6:43~7:23砂原岳7:39~8:26西円山8:29~9:07望洋の森~10:10砂原4丁目10:25=(タクシー)=10:56赤井川ゲート手前11:06=12:00濁川温泉12:47=13:03森駅13:30-(SL函館大沼号)-15:20函館駅17:27-18:47森駅18:50=19:10▲望洋の森

【登山データ】  歩行21.5㎞6時間32分 延登高 1,258m 延下降 1,468m 5座登頂

(諸般の事情により前段は非公開)

今日の立ち寄り湯は濁川温泉として20㎞ほど走った。山中の温泉街で日帰り施設の“にごりの湯”(入浴料\500)に入った。其の名の通り白濁した湯が心地よい。森駅に寄るとなんとSLが止まっている。函館から森駅を往復する“SL函館大沼号”で折り返しは25分後、みどりの窓口で聞くと上り函館行は空きがあると云う。駅前に町営の無料駐車場もあることだし乗ってこよう!

C11 171のけん引する列車はゆっくりと砂原周りで駒ヶ岳の東側を走り1時間50分かけて函館に到着した。函館では朝市どんぶり横町で海鮮丼を賞味し森に引き返した。夜は静かそうな望洋の森に戻り車中泊3泊目。

4日目以降(7/18~19) 曇り時々小雨のち晴れ

【行  程】 ▲望洋の森5:12=7:40洞爺湖10:00=10:10西山火口北口P~10:28 2000年新山10:33~10:48西山火口北口P =11:15壮瞥温泉12:47=12:45レイクヒルファーム13:12=15:40札幌~△R&Bホテル~札幌8:25-9:01新千歳AP 10:25-(ANA)-12:20関西AP 13:16-(はるか20号)-14:31京都

登山最終日は狩場山を予定していた狩場山は日本海側に雷注意報が出て北海道で一番天気が悪そうだ。あっさり登山を諦め観光に切り替えた。そうだ!洞爺湖行こう。どこかで聞いたようなキャッチフレーズで望洋の森を5時過ぎに出発し高速道路は使わず一般道をゆっくり走ったが7時40分に洞爺湖に着いてしまった。雨が上がった湖畔で暫く時間を潰し、平成12年に噴火した西山火口を見に行った。あれから10年、洞爺湖駅と洞爺湖を結ぶメインの国道の真ん中から噴火し、隆起して“2000年新山”を形成した。今では噴煙上がる火口付近へ観光客が行けるようになっている。

登山とは言えない観光地だが一応名前のある山に登ったのでこの日も登山としておく。本来は下りだった町道の跡は隆起して登りになってしまった。隆起でできた沼の向こうに国道の続きが見え、沼の中に道路標識や電柱も残っている。2000年新山山頂に達すると、ぐちゃぐちゃになったお菓子の工場や噴煙の上がる火口を間近に見ることができ、映像で見たあの噴火の光景をまざまざと思い起こした。西山火口南口に回ると此れも何度も何度も映像で映されていた幼稚園が爆撃を受けたように火山弾が天井を突き破り廃墟をさらしていた。

洞爺湖に戻り日帰り入浴のできる温泉を探すと壮瞥町に入って厳密には壮瞥温泉のHサンパレスに立ち寄った入浴料なんと1500円!プールも付いているので仕方ないが、私には必要ない。

夜は現地の友人と落ち合いネオンの街に繰り出し札幌の夜を楽しんだ。翌19日10:15の関空ANA便で帰京、関西は猛暑の中だった。

【登山データ】  歩行1.8㎞ 0時間38分 延登高 44m 延下降 44m 1座登頂

【登山データ計】  歩行33.8㎞ 10時間58分 延登高 2,147m 延下降 2,357m 9座登頂

20100716千軒岳2

写真:大千軒岳山頂

20100716千軒岳3

写真:渡島駒ヶ岳(小沼より)

20100716千軒岳4

写真:平成12年噴火で断層が走った町道