2017年12月30日~2018年1月1日
【メンバー】
江村一範+I(会員外)
【日程】
2017年12月30日〜2018年1月1日
【行程】
12月30日 8時半河口湖駅集合 富士急行バス・河口湖駅9時5分発~
天下茶屋9時半着、
10:00 天下茶屋~10:54 御坂山~12:13 黒岳~13:32 中藤山〜14:20 大石峠(ビバーク)
12月31日 6:00 大石峠~6:57 節刀ヶ岳~7:19 金山〜7:42 鬼ヶ岳~8:39 鍵掛峠〜9:55 王岳~11:25 五湖山〜12:09 女坂峠〜12:49三方分山~14:38 パノラマ台〜15:54 本栖湖~17:15 本栖湖キャンプ場(泊)
1月1日 3:36 本栖湖キャンプ場~端足峠~6:09 雨ヶ岳~7:03タカデッキ~8:20毛無山~10:30 朝霧グリーンパーク下山
富士急山梨バス 朝霧グリーンパーク発~河口湖駅着(当初乗る予定だったバス)
(はじめに)
御坂山地は甲府盆地と富士山北麓の間に位置し、東の三つ峠から西の三方分山まで伸びる山塊である。端から縦走すると南に富士五湖と富士山を拝めながら歩く事ができ、また多くの峠が繋がっているので甲府側へも富士五湖側へも降りやすい。地味ながらも手軽に富士山の眺望が長く楽しめる縦走ルートなのである。
(写真 黒岳からの眺め)
ここ数年、関西に住む私は東京在住の友人・Iさんと2人で正月山行を奥秩父の山で行ってきた。一年前には雁ヶ腹摺山から三つ峠まで縦走し、三つ峠で正面に見える富士山と西へ伸びる御坂山地に感激した。次はぜひ続きをやろうと意気込み、今年は大晦日までに御坂山から本栖湖まで縦走し、正月を富士山の西に位置する毛無山で富士山からのご来光を見ようと計画した。
(1日目 12/30 天下茶屋〜大石峠)
この日の行程では水場は峠から降りたところが多く確実ではないので、水を一人5Lボッカすることにした。8時半に河口湖駅に集合し、富士急行バス・9時5分発天下茶屋行きのバスに乗り天下茶屋で下車する。 富士三景のひとつであるここからの眺めは、絵葉書のような富士と河口湖が見える。茶屋周辺の道路から太宰治の文学碑のある遊歩道へ入っていく。文学碑には「富士には月見草がよく似合ふ」と刻まれている。
(写真 天下茶屋からの上り)
最初の登りはきつくはないが、急登がありそれを登り切ると御坂山だ。山頂の展望は雑木のせいでそれほど良くはない。
御坂山を下ると、枝越しに富士山が見えるポイントが何箇所かある。
御坂峠まで下りると小屋があるが廃屋となっている。そこから尾根を下りて旧坂を登るとすぐに黒岳である。展望良と書かれた道標を頼りに南へ200Mほど行くと、開けた展望場所が設けられ富士山と河口湖、南アルプスの山々が見える。少し離れているがこの展望場所はぜひ行っておいた方がいいだろう。
黒岳山頂に戻り破風山・中藤山を目指す。正月休みだというのに他の登山者とは遭遇しない。代わりにトレイルランナーと数人すれ違った。この辺りは比較的平坦な尾根が多く、極端なアップダウンも少ない。山を走るには最適だろうと思うも、我々は生活水を満載にしたザックを背負っている。破風山を過ぎて新道峠へ。ここにはカメラ台つきの展望台があった。中藤山・不遭山を過ぎてここに来て私とIさんもだんだん富士山の景色にも飽きてきた。
(写真 疾走するトレイルランナー)
14時半に大石峠に到着。ここは富士山と毛無山の大展望である。ここで今日の幕営地で迷う。明日は本栖湖のキャンプ場まで下りたいので今日はなるべく先へ進みたい。だがここから先の節刀ヶ岳と鬼ヶ岳はザレていて気を抜けない箇所が多いと聞いていた。鋭く尖った節刀ヶ岳に気持ちが負けて、日没に間に合わず核心部で暗くなるのはゴメンだと今日は大石峠でビバークする事にした。写真を撮ったり、コーヒーを飲んだりしていると時間は経ち、17時には日が傾いてきた。Iさんお手製の餃子野菜鍋をつつきビールを飲みながら、夕日に染められた黄金色の枯れすすきと富士山が茜色から群青色に変わる光景に見とれてしまう。景色が勿体無いので、火を止めた鍋が凍結するくらい寒いにもかかわらず、私達はテントに入らずギリギリまで外で時間を過ごした。ここからの富士山の眺めは天下茶屋よりも素晴らしい。太宰治もここなら素直に富士の美しさを受け止められたろうにと考えながら就寝した。
(写真 大石峠でビバーク)
2017年の山納め。明るくなるのを待って6時に大石峠を出発する。夜明け前から雪がちらついており、薄く積もっていたが軽アイゼンを付けるほどではない。ゆるいアップダウンを繰り返し、急登を少し登ると節刀ヶ岳に着いた。節刀ヶ岳は御坂山地では最高峰の山であり、晴れていれば眼下に西湖・正面に富士山が見える好展望らしいが、この日は白くガスっていて何も見えなかった。金山分岐点を過ぎて、十二ヶ岳方面を見るもガスで何も見えない。ここから十二ヶ岳へも行ってみたいが、今日は行程がたんまり残っているので先を急ぐ。此処から先、ザレた急峻なアップダウンが続くが、鎖やお助けロープが張られており注意すれば問題ない。鬼ヶ岳というおとぎ話に出てきそうな山を過ぎて、崩れた登山道のある岩をトラバースして、鍵掛峠へ。そこから西へ少し進むと2張りくらい張れそうなビバーク箇所がある。寒いので黙々と足を進める。
(写真 鍵掛峠の登り)
王岳に着くとガスも多少晴れて、急峻な下りも落ち着いてきた。標高が低くなると雪も溶けて、空から晴れ間が差してきた。熊笹の茂る尾根を何度か過ぎた後、五湖山へ。ここでIさんが靴ずれが痛みだしたので応急処置をする。西を見るとこれから登る三方分山が遠くに見えた。
車道の車の音がだんだん近くなってきて、正午ごろに女坂峠を通過する。ここから南へ30分も降りると精進湖だ。町へ下って温かい物でも食べたいなと一瞬思う。エスケープし放題というのも考えものだ。眼の前の町の誘惑に惑わされる。女坂峠から50分位で三方分山に到着する。三方分山はその名の通り、北に釈迦ヶ岳、南へ行くと精進峠を過ぎて本栖湖へ下りる尾根とに分かれている。私達はここで昼ごはんを食べて、精進山・精進峠へと進む。精進峠を過ぎるとパノラマ台という展望良さそうな箇所がある。
(写真 樹海しか見えないパノラマ台)
本来ならここから、毛無山と富士山が眼前に見えるのであろうが、昨日あんなに見えていた富士山は雲に隠れ、樹海しか見えなかった。ここから南の烏帽子岳を下って本栖湖に降りても良いのだが、車道歩きは極力避けたいので、中之倉峠に連なる尾根を歩く。ここで私は寒さのあまり具合が悪くなり、Iさんには申し訳ないが走って身体を温める事にした。穏やかな尾根が続き、とても気持ちよく走れるトレイルだった。中之倉峠から本栖湖に降りた。本当は浩庵キャンプ場という所でテントを張るつもりだったのだが、テン場は正月を過ごすお客さん達で溢れ返っていた。年末とは言えまさかここまで人が多いとは予想しておらず、トイレで水を給水しながらIさんと対応を考える。翌日は少しでも毛無山に近づいた方がいいだろうと、本栖湖の南にある、いこいの森キャンプ場でビバークしようという事になった。ただしここは冬季閉鎖されているので、管理している浩庵キャンプ場の事務所に赴いて交渉しビバークする許可を取った。車道を一時間ほど歩いて本栖湖いこいの森キャンプ場へ。 先ほどとは打って変わって誰も居ない真っ暗なキャンプ場でテントを張った。ラジオで明日の天気予報と紅白歌合戦を聞きながら、夕食の年越しそばを食べる。天気予報では明日は晴れるみたいだ。本当は宴会でもしたいところだが、今日は景色も見えず寒く長い一日で、とても私達は疲れていた。明日のご来光で全てチャラにしたいと願って就寝した。
(写真 大晦日なので年越しそば)
(3日目 1/1 元旦 本栖湖〜毛無山)
元旦。寝坊して3時に起床。一富士二鷹三茄子を見れたかは覚えていない。棒ラーメンを主食に、正月気分にと雑煮とインスタントおしるこを食べた。3時半に出発するも雨ヶ岳へ続く端足峠の登山口がわからない。しばらく徘徊して、道標を見つけてやっと登山道へ入る。標高が上がると、雪がうっすらと積もっている。寝てる間に雪が降ったのか、それとも一昨日の雪が残っていたのか。とりあえず今は雪は降っておらず、空も星が見えている。
(写真 夜明け前の富士を背に歩く)
夜明けが近づくに連れて、6時過ぎ、雨ヶ岳にて富士山のシルエットが薄っすらと浮かんできて、これは素晴らしいご来光が拝めるぞとほくそ笑む。だがご来光には時間がない。これはもう毛無山でご来光を迎えるのは無理そうだ。
7時、当初のビバーク予定地であったタカデッキに着いた頃には完全に日の出を迎えた。それでも富士山の背後から初日の出が出てくる瞬間は見ることが出来た。今年も良い山に登れますようにと合掌してみる。もう日は昇ってしまったので、落ち着いて毛無山へ進む。
(写真 タカデッキからのご来光)
昨日とは打って変わって今日は雲ひとつ無い快晴である。だんだん暖かくなってくる。雪は積もっているが少ないので、ギリギリまでアイゼンを履かずにストックを差して歩く。8時過ぎについに毛無山山頂に到着。辺りは朝霧高原から登ってきたであろう人がチラホラいる。 富士山をバックにIさんと記念写真を撮った。幸先の良い写真が撮れたので二人で満足して東の朝霧高原の方へ下りる。太陽の当たるこの斜面には雪は全くついておらず、暑いくらいだった。10時半、毛無山登山口へ下山。 だがバスの便が無い時間帯なので、そのまま車道歩きで朝霧高原の道の駅まで1時間半ほど歩いた。道の駅のレストランでビールと定食を食べ、河口湖駅行きのバスを待つ。30分過ぎてもバスは来ない。どうやら初詣のお客さんで遅延が発生しており、次に来るのは2時間後という情報がきた。ここでIさんがヒッチハイクをやろうと言い出し、薄汚れた登山者なんて無理だろと思いながらも笑顔でサムズアップをしてみる。10分ほど経つと、なんと親切な車が一台停まってくれた。やってみるもんだ。河口湖駅へは行かないが、本栖湖へは行くとの事。そこまで行けば別の系統のバスがあるだろうと乗せてもらう。乗せてくれたご夫婦に、さっき撮った初日の出の写真を見せて山の話をした。いい人はいるものである。本栖湖で降ろしてもらい、別の系統のバスにうまいこと乗れてなんとか河口湖駅へ。河口湖駅からはホリデー快速で東京のIさん宅へ向かい、改めて正月を祝った。
(写真 ホリデー快速に乗って帰京)
(ふりかえって)
御坂山地は峠からエスケープできる箇所がとても多く、どこからも入山できて、どこからも降りれる安心感があった。今回は東の端から西の端まで歩いたが、もっとバリエーション豊かな様々なプランを考えられるだろう。ただ確実な水場が少ないので、初日は多めに水のボッカをしなくてはならない。また毛無山までつなぐとなると行動時間も長くなり、多少の脚力も必要だと感じた。この年はたまたま雪が少なかったが、年によっては雪で苦労を強いられるだろう。また2日目に幕営した本栖湖いこいの森キャンプ場は冬季は通常閉鎖されており、毎回許可を貰える訳ではない事も注意が必要だ。
それでも御坂山地から毛無山は、晴れてさえいれば終始富士山が眺められて正月山行にはこれ以上無いうってつけの山域だった。また正月以外にも歩きたいと思う。
(了)